室井のマーケット視点
7月2日の米国市場で最も重要だったのは、S&P500が前日比+0.00%だったことではありません。Dow30が+1.14%で史上最高値を更新する一方、NASDAQは-0.80%となり、指数の内側で大規模な資金移動が起きたことです。
先端技術(Technology)は-1.72%となり、半導体製造装置、メモリー、光通信、AIサーバー関連がそろって急落しました。SanDiskは-14.13%、Teradyneは-13.63%、KLAは-11.51%、Lam Researchは-10.19%です。AI関連企業に何か一つの重大事故が起きたというより、これまで上昇してきた銘柄から一斉に利益を確定する動きだったと私は見ています。
AI需要が止まったのであれば、半導体だけでなくデータセンター建設計画や電力需要の見通しも崩れるはずです。しかし、現時点でそこまでの変化は確認できません。今回売られたのは、業績が悪化した企業だけではなく、利益成長が続いているMicron Technology、Applied Materials、Dell Technologies、光通信関連企業まで含まれています。これは事業の将来性より、株価に織り込まれた期待値が高くなりすぎたことへの調整と考える方が自然です。
その資金は市場の外へ逃げたわけではありません。ヘルスケア(Healthcare)は+2.80%、生活必需品(Consumer Defensive)は+2.26%、素材(Basic Materials)は+2.09%、公益事業(Utilities)は+1.94%となりました。VIX指数も16.15へ低下しています。市場全体が恐怖に包まれたのであれば、VIXは上昇し、幅広いセクターが売られるはずです。今回はAI関連株の暴落というより、割高になった成長株から出遅れていた大型株へのセクターローテーション(投資資金が別の業種へ移動すること)です。
雇用統計も相場の方向を複雑にしました。非農業部門雇用者数は+5.7万人と予想の+11.4万人を大幅に下回りましたが、失業率は4.2%へ低下し、新規失業保険申請件数も21.5万件にとどまりました。企業は新規採用を抑え始めた一方、大規模な人員削減には動いていません。米国経済は急速な景気後退ではなく、拡大速度が緩やかになっている段階と考えられます。
一方で、平均時給は前年比+3.5%を維持し、米10年国債利回りは4.485%へ上昇しました。雇用が弱かったからといって、FRBが直ちに大幅利下げへ向かうわけではありません。財政赤字や国債発行増加も長期金利を高止まりさせており、高PER(株価収益率が高い状態)の銘柄には厳しい環境が続きます。
私は個別株ではなくS&P500やNASDAQ100などのETFを中心に保有しています。今回のように半導体株が急落しても、ヘルスケア、生活必需品、金融、公益事業まで含むS&P500はほぼ横ばいでした。市場の主役を正確に予測することは困難ですが、指数へ投資していれば、売られた分野だけでなく、次に買われた分野も自動的に保有できます。分散投資の価値がよく表れた一日だったと思います。
AI相場が終わったと判断するのは早すぎます。しかし、AI関連ならどの銘柄でも上昇する段階は過ぎ、設備投資を実際の売上高と利益へ変えられる企業が選別される局面に入った可能性があります。長期投資家としては、1日の急落に反応して売買するより、企業利益とAIインフラ投資の持続性を確認しながら、市場に居続ける姿勢を維持したいところです。
投資は自己責任にてお願いします。
S&P500ヒートマップ
5%以上上昇したS&P500構成銘柄
- GPC:Genuine Parts Company +12.92%
自動車・産業用交換部品を扱うGenuine Partsは急伸しました。景気変動に左右されにくい補修部品需要と安定配当が評価され、割安感の強かった銘柄を買い戻す動きが加速しました。先端技術株から生活密着型の事業を持つ企業へ資金が移ったことも、大幅上昇につながったと考えられます。 - MRNA:Moderna +10.01%
Modernaは、mRNA技術をワクチン以外の治療分野へ広げる長期戦略への期待から大幅高となりました。季節性インフルエンザワクチンの承認期待に加え、がん治療薬を含む開発パイプライン(新薬候補群)への評価も高まっています。ヘルスケア株へ資金が移る流れも上昇幅を拡大させました。 - EFX:Equifax +6.10%
信用情報大手のEquifaxは、住宅ローン関連事業の回復期待と割安株を見直す動きから上昇しました。高金利環境の長期化で住宅市場の低迷が続いてきましたが、将来の金利低下によって信用照会件数が回復する可能性があります。これまで下落幅が大きかった反動による買い戻しも加わりました。 - VRTX:Vertex Pharmaceuticals +6.03%
Vertex Pharmaceuticalsは、主力の嚢胞性線維症治療薬から得られる安定収益と、新しい疼痛治療薬などへの期待を背景に上昇しました。大型ハイテク株が売られる中、景気の影響を受けにくく利益成長を維持できる医薬品株が選ばれています。ヘルスケアセクター全体の上昇も同社株への買いを強めました。 - SPGI:S&P Global +6.01%
金融情報大手のS&P Globalは、事業分離の完了による経営効率の改善期待と、アナリストによる投資判断引き上げを受けて上昇しました。信用格付け、指数、金融データという収益性の高い中核事業へ経営資源を集中できる点が評価されています。前日に続いて買いが入り、上昇基調を維持しました。 - ISRG:Intuitive Surgical +5.87%
手術支援ロボット大手のIntuitive Surgicalは、主力製品「da Vinci 5」の普及拡大と手術件数の増加期待から上昇しました。同社は装置販売だけでなく、手術ごとに使用する器具や保守契約から継続収入を得る事業構造を持っています。成長性の高い医療機器株として資金が戻りました。 - LDOS:Leidos Holdings +5.60%
政府向けIT・防衛サービスを手掛けるLeidosは、米政府の防衛・サイバーセキュリティ支出が高水準で続くとの期待から上昇しました。長期契約を中心とするため業績の予測可能性が高く、景気の不透明感が残る局面では安定成長株として選ばれやすい企業です。割安な株価評価も買いを呼び込みました。 - NOC:Northrop Grumman +5.59%
防衛大手Northrop Grummanは、ミサイル防衛、宇宙、防空関連への政府支出拡大期待から買われました。地政学的緊張が続く中、各国が防衛予算を増やす流れは長期化する可能性があります。大型ハイテク株から景気との連動性が低い防衛関連株へ資金を移す動きも加わりました。 - TYL:Tyler Technologies +5.45%
地方自治体向けソフトウェア大手のTyler Technologiesは、公共機関のデジタル化需要が続くとの期待から上昇しました。行政向けクラウドサービスは契約期間が長く、景気が減速しても収益が比較的安定しています。先端技術セクター全体は下落しましたが、継続課金型の安定事業を持つ同社には選別買いが入りました。 - AJG:Arthur J. Gallagher +5.33%
保険仲介大手Arthur J. Gallagherは、保険料上昇による手数料収入の増加期待と、企業買収を通じた成長力が評価されました。保険仲介会社は保険金を直接負担せず、契約額に応じた手数料を得るため、比較的安定した収益構造を持っています。金融株への資金流入も株価上昇につながりました。 - FICO:Fair Isaac +5.32%
信用スコア大手Fair Isaacは、住宅ローン市場での高い競争力と利益成長への期待から上昇しました。信用スコアの直接提供を進める事業戦略によって、金融機関や住宅ローン会社との取引拡大が期待されています。高い利益率を持つ一方で株価変動も大きく、信用情報関連株がまとめて買い戻された一日でした。 - MDT:Medtronic +5.04%
医療機器大手Medtronicは、心臓・血管、糖尿病、手術機器など幅広い製品を持つ安定性が評価されました。景気変動の影響を受けにくい医療需要に加え、配当利回りの高さも投資家の関心を集めています。成長株からディフェンシブ株へ資金が移動する中、出遅れていた大型医療機器株として買われました。
5%以上下落したS&P500構成銘柄
- SNDK:SanDisk Corporation -14.13%
AI関連のメモリー株全体に利益確定売りが広がる中、上昇率の大きかったSanDiskは急落しました。AI向け需要の成長期待が失われたというより、急騰後の割高感と供給能力の拡大に対する警戒が重なった形です。NAND型フラッシュメモリーは価格変動が大きく、好況期ほど将来の供給過剰を先回りして株価が調整しやすい点には注意が必要です。 - TER:Teradyne -13.63%
半導体検査装置を手掛けるTeradyneは、半導体株全体の急落に巻き込まれました。AI向け半導体の生産増加は検査装置需要の拡大につながりますが、これまでの株価上昇で成長期待を相当程度織り込んでいました。AI設備投資の過剰感を警戒する動きが強まり、業績拡大を先取りしていた銘柄ほど売りが大きくなりました。 - KLAC:KLA Corporation -11.51%
半導体製造工程の検査・計測装置大手KLAは、半導体設備投資関連株への一斉売りで大幅安となりました。同社の競争力や高い収益性が急に変化したわけではありませんが、AI向け設備投資の拡大を前提に株価評価が上昇していました。高PER(株価収益率が高い状態)の銘柄から利益を確定する動きが強まりました。 - FLEX:Flex Ltd. -10.86%
電子機器の受託製造を手掛けるFlexは、AIサーバーやデータセンター関連株の調整を受けて下落しました。同社は電源装置やサーバー関連機器の需要増加から恩恵を受けてきましたが、AI設備投資の伸びを巡る警戒から利益確定売りが優勢となりました。出来高が平常時より少なく、積極的な買い手が不在だったことも値下がりを大きくしました。 - GLW:Corning -10.81%
光ファイバー大手Corningは、AIデータセンター向け通信インフラ株の急落に連動しました。AI処理量の増加には高速通信網が不可欠ですが、同社株は需要拡大を見込んで大きく上昇していました。AI関連投資の回収期間や設備能力の過剰を警戒する動きが強まり、長期的な光通信需要とは別に短期の株価評価が修正されました。 - STX:Seagate Technology -10.38%
ハードディスク大手Seagateは、メモリー・データ保存関連株への売りが広がり大幅安となりました。AIデータセンターでは保存するデータ量が増えるため長期需要は期待できますが、同社株はその成長を先取りして急騰していました。AI投資の過熱感と高い株価評価への警戒から、SanDiskやWestern Digitalとともに利益確定の対象となりました。 - LRCX:Lam Research -10.19%
半導体製造装置大手Lam Researchは、SOX指数(米国の主要半導体株指数)の急落に連動しました。AI向けメモリーの増産は同社の装置需要を増やしますが、設備投資の拡大が将来の供給過剰につながる可能性もあります。業績見通しそのものよりも、半導体関連株に集中していた資金が一斉に引き揚げられた影響が大きい下落です。 - WDC:Western Digital Corporation -9.92%
データ保存装置大手Western Digitalは、ストレージ関連株の全面安で急落しました。クラウドやAIデータセンター向けの大容量記憶装置需要は増加していますが、株価には高い成長期待が織り込まれていました。SanDiskやSeagateと同時に売られたことから、個別企業の問題というより、メモリー・ストレージ株全体の利益確定と見る方が自然です。 - MRVL:Marvell Technology -9.84%
AI向け通信半導体を手掛けるMarvellは、AIインフラ関連株への売りが強まり下落しました。同社はデータセンター内の高速通信やカスタム半導体で成長が期待されていますが、株価には将来の大幅な利益拡大が織り込まれていました。AI投資の過剰感が改めて問われる中、光通信関連企業とともに株価評価が調整されました。 - COHR:Coherent -9.57%
光通信部品大手Coherentは、AIデータセンター関連株の利益確定売りで大きく下落しました。GPU同士を高速で接続する光トランシーバー需要は中長期的に増える可能性がありますが、同社株は成長期待から急騰していました。株価収益率も高水準にあり、AI投資の持続性を巡る不安が高まると売りが集中しやすい状態でした。 - LITE:Lumentum Holdings -9.09%
光通信用レーザーを手掛けるLumentumは、CoherentやCorningなどとともに売られました。AIデータセンターの高速化には同社製品が不可欠ですが、光通信関連株には短期間で資金が集中していました。今回は事業環境の急変よりも、期待先行で上昇した銘柄から資金を引き揚げる動きが中心であり、値動きの大きさが改めて示されました。 - JBL:Jabil -9.07%
電子機器の設計・製造を受託するJabilは、AIサーバーやデータセンター設備関連株の調整で下落しました。同社はクラウド事業者向け機器や電力設備の需要増加から恩恵を受けてきましたが、株価上昇後の利益確定売りが強まりました。製造受託企業は顧客企業の設備投資計画に左右されるため、投資減速への懸念が出ると反応が大きくなります。 - CIEN:Ciena Corporation -8.65%
通信ネットワーク機器大手Cienaは、光通信関連株の全面安で大きく値下がりしました。AI処理の拡大による通信量増加は同社にとって長期的な成長要因ですが、株価にはその期待が相当織り込まれていました。株価収益率が高い中で市場の評価基準が厳しくなり、将来利益を先取りしていた部分が修正されたと考えられます。 - Q:Qnity Electronics -7.58%
電子材料や半導体関連製品を扱うQnity Electronicsは、半導体・電子部品株への売りに押されました。直近12カ月のEPS成長率がマイナスである一方、株価には今後の回復期待が織り込まれていました。AI関連銘柄全体の評価が見直される局面では、足元の利益成長が弱い企業ほど投資家の売りが先行しやすくなります。 - TSLA:Tesla -7.49%
Teslaは四半期の納車実績が堅調だったにもかかわらず、大幅に下落しました。株価収益率が非常に高く、好材料を相当程度織り込んでいたため、発表後に利益を確定する売りが膨らんだとみられます。電気自動車事業だけでなく、自動運転やロボットへの期待も株価に反映されており、実績が高い期待値を超えられるかが問われています。 - AMAT:Applied Materials -7.35%
半導体製造装置最大手のApplied Materialsは、半導体株全体の急落に連動しました。AI向け先端半導体や高性能メモリーの増産は長期的な成長要因ですが、装置メーカーの業績は顧客の設備投資サイクル(増減の周期)に左右されます。最近の上昇で株価評価が高まっていたため、設備投資の過熱を警戒する売りが膨らみました。 - DELL:Dell Technologies -7.27%
Dell Technologiesは、AIサーバー関連株への利益確定売りで下落しました。AIサーバーの受注拡大は続いていますが、競争激化によって利益率が伸びにくい点が以前から課題です。売上高の拡大だけでは市場の高い期待を満たしにくくなっており、AI設備投資の成長性よりも、実際に得られる利益を重視する姿勢が強まりました。 - APP:AppLovin -6.65%
広告配信技術大手AppLovinは、成長株全体の利益確定売りで下落しました。AIを活用した広告配信の効率化によって業績は急成長していますが、株価も大幅に上昇し、高い期待を織り込んでいました。半導体株の急落をきっかけに投資家がリスクを減らす中、値動きの大きい高成長株からも資金が流出しました。 - FIX:Comfort Systems USA -6.64%
空調・電気設備工事を手掛けるComfort Systems USAは、データセンター建設関連株の調整で下落しました。同社はAIデータセンター向けの冷却設備や電気工事需要から恩恵を受けていますが、株価には今後の工事量拡大が強く織り込まれていました。AI投資の回収期間を巡る不安が広がり、半導体以外の関連企業にも利益確定売りが波及しました。 - GNRC:Generac Holdings -6.50%
非常用発電機大手Generacは、AIデータセンターの電源関連株として買われてきた反動から下落しました。データセンターでは停電時にも稼働を継続するため、バックアップ電源の設置が不可欠です。一方で、同社の足元の利益成長率は弱く、株価評価は高水準でした。成長期待と現在の収益との隔たりが改めて問われました。 - KEYS:Keysight Technologies -6.48%
電子計測機器大手Keysight Technologiesは、半導体・通信機器関連株への売りに連動しました。次世代通信や高速データ伝送の開発には同社の測定装置が必要ですが、顧客の研究開発投資が鈍化すれば受注に影響します。AIや光通信分野への期待で株価が上昇していたため、関連銘柄の調整局面で売りが膨らみました。 - HPE:Hewlett Packard Enterprise -6.19%
Hewlett Packard Enterpriseは、AIサーバー・ネットワーク関連株の調整で下落しました。同社はAI向けサーバー受注の拡大から評価されてきましたが、ハードウェア事業は売上高の伸びに比べて利益率が低くなりやすい特徴があります。AI需要の拡大だけでなく、受注を利益へ変えられるかを厳しく見る市場へ変化しています。 - MU:Micron Technology -5.49%
メモリー大手Micron Technologyは、好決算後に急騰した反動と半導体株全体の利益確定売りで下落しました。AIサーバー向けHBM(広帯域メモリー)の需要は強いものの、メモリー業界は増産が進むと価格が下落しやすい循環産業です。好業績そのものを否定する動きではなく、高い成長期待を織り込んだ株価の調整と考えられます。 - INTC:Intel Corporation -5.25%
Intelは半導体株全体の下落に連動し、5%を超えて値下がりしました。同社は工場投資と製造技術の立て直しを進めていますが、直近12カ月のEPSは赤字であり、収益回復には時間が必要です。AI半導体市場での競争力や巨額設備投資の採算に不透明感が残る中、投資家が半導体株への配分を減らす動きの影響を受けました。
セクター別騰落率
7月2日は、これまで相場を主導してきた先端技術(Technology)から幅広いセクターへ資金が移動する展開となった。ヘルスケア(Healthcare)や生活必需品(Consumer Defensive)などのディフェンシブ株が大幅に上昇する一方、素材(Basic Materials)やエネルギー(Energy)、金融(Financial)にも買いが広がった。大型ハイテク株への集中が一服し、出遅れていたセクターを見直す動きが鮮明である。
- ヘルスケア(Healthcare) +2.80%
医薬品、医療機器、医療保険など、景気変動の影響を受けにくい大型株を中心に買いが広がった。先端技術株の値動きが不安定になる中、利益や需要の予測が比較的立てやすい企業へ資金を移す動きが強まったと考えられる。高齢化や医療需要の増加という長期テーマもあり、成長性と安定性を併せ持つセクターとして再評価された一日である。 - 生活必需品(Consumer Defensive) +2.26%
食品、飲料、日用品など、景気が減速しても需要が急減しにくい企業が大きく上昇した。高値圏にある先端技術株から利益確定の資金が流入し、安定した売上高や配当を持つ企業への評価が高まった形である。一般消費材が下落した一方、生活必需品が買われたことから、消費関連でも価格や景気への耐久力を重視する選別が進んだとみられる。 - 素材(Basic Materials) +2.09%
金属、鉱山、化学などの素材関連株に幅広く買いが入った。先端技術株からの資金移動に加え、電力網、データセンター、製造設備などへの投資拡大が、銅や工業用素材の中長期需要を増やすとの期待が背景にある。AI投資は半導体だけで完結せず、建物、電力設備、通信網まで大量の資材を必要とするため、素材企業にも恩恵が及ぶ構図である。 - 公益事業(Utilities) +1.94%
電力会社を中心とする公益事業は、安定収益を求める資金とデータセンター向け電力需要への期待が重なり上昇した。従来は景気後退時に選ばれやすいディフェンシブ株であったが、現在はAI設備投資の拡大による電力需要増加という成長面も評価されている。先端技術株そのものが売られる一方、AIを裏側で支える電力インフラへ資金が向かった点が特徴である。 - 不動産(Real Estate) +1.20%
REIT(不動産投資信託)や不動産運営会社に買いが入り、金利の影響を受けやすいセクターが上昇した。高配当銘柄としての魅力に加え、データセンター、物流施設、通信設備など成長分野に関係する不動産への需要も評価されたと考えられる。ハイテク株への集中を避けながら一定の収益性を確保したい投資家にとって、資金の移動先になった可能性がある。 - エネルギー(Energy) +1.18%
石油・天然ガス関連株は、資源価格への期待と出遅れ修正の買いによって上昇した。エネルギー企業は原油価格の変動を受けやすいが、株主還元が比較的厚く、先端技術株とは異なる値動きをするため、分散先として選ばれやすい。データセンターの電力消費増加も長期的なエネルギー需要を押し上げる要因であり、AI投資の恩恵が間接的に波及している。 - 金融(Financial) +1.14%
銀行、保険、資産運用などの金融株にも買いが広がった。大型ハイテク株から割安感の残るセクターへ資金が移り、金利収入や融資需要によって利益を確保できる企業が選ばれたと考えられる。景気への強い悲観が後退している一方、保険会社や大手銀行の安定した収益力も評価されており、成長株だけに依存しない市場の広がりを示す上昇である。 - 先端技術(Technology) -1.72%
半導体、ソフトウェア、大型ハイテク株を中心に売りが広がり、全セクター中で最大の下落となった。AI関連企業の成長期待が消えたというより、これまでの上昇で株価評価が高くなった銘柄から利益を確定し、ディフェンシブ株や素材、金融などへ資金を移す動きが主因と考えられる。長期的なAI需要は続くものの、短期的には割高感を確認する調整局面である。
主要3指数とドル円の動き
- S&P500(7,483.24、前日比+0.00%)
S&P500は前日比+0.01ポイントと、ほぼ横ばいで取引を終えました。構成銘柄の3分の2以上が上昇したものの、AI・半導体関連株の大幅下落が指数全体を相殺しています。指数だけを見ると静かな一日ですが、内部では先端技術株からヘルスケア、生活必需品、金融などへ資金が大きく移動しました。幅広い企業へ分散するS&P500の特徴が表れた相場であり、長期投資家としては指数の騰落率以上に市場の資金循環を見ておきたい一日です。 - Dow30(52,900.07、前日比+1.14%)
Dow30は594.83ドル上昇し、終値で史上最高値を更新しました。雇用の伸びが市場予想を下回ったことで、FRBが7月に利上げする可能性は低いとの受け止めが強まり、景気敏感株やディフェンシブ株へ買いが広がりました。先端技術株が大きく下落する中でも、医薬品、生活必需品、金融、工業関連などが指数を押し上げています。NASDAQからDow30への鮮明な資金移動であり、上昇相場の主役が一時的に交代した形です。 - NASDAQ(25,832.67、前日比-0.80%)
NASDAQは207.36ポイント下落しました。半導体製造装置、メモリー、光通信、AIサーバーなど、これまで上昇相場を牽引してきた銘柄に大規模な利益確定売りが広がっています。AI需要の成長が止まったというより、高い利益成長を先取りしてきた株価を調整する動きと見る方が自然です。Dow30が最高値を更新する一方でNASDAQが下落したことは、米国株全体の弱さではなく、大型ハイテク株への集中が巻き戻されたことを示しています。 - ドル円(161.107円、前日比-0.87%)
ドル円は162.508円で始まった後、一時160.620円まで下落し、161.107円で取引を終えました。米雇用者数の伸びが予想を大きく下回ったため、FRBによる追加利上げ観測が後退し、米金利低下を見込んだドル売り・円買いが進みました。日本人投資家にとっては、円高が米国資産の円換算評価額を押し下げる方向に働きます。ただし、依然として161円台という円安水準であり、1日の変動だけで為替の長期基調が変わったと判断する段階ではありません。
原油先物・米10年国債利回り・VIX・金先物の動き
- WTI原油先物(68.48ドル、前日比-0.15%)
WTI原油先物は小幅に下落しました。中東情勢や供給不安が価格を支える一方、米国の雇用指標が景気減速を示したことで、将来の原油需要に慎重な見方が出ています。OPECプラスの供給方針も確認したい状況であり、エネルギー株には強い方向感が生まれませんでした。ただし、67ドル台では買い戻しが入り、下値も限定的でした。 - 米10年国債利回り(4.485%、前日比+0.22%)
米10年国債利回りは4.485%へ小幅に上昇しました。雇用の伸びが鈍化したため短期的な利下げ期待は残りましたが、財政赤字や国債増発に対する警戒から、長期債を積極的に買う動きは限られました。長期金利の上昇は高PER(株価収益率が高い状態)の先端技術株に不利となり、NASDAQの下落とDow30の上昇というセクター間の差を広げました。 - VIX指数(16.15、前日比-2.65%)
VIX指数は16.15へ低下しました。NASDAQでは半導体やAI関連株が大きく売られましたが、Dow30は史上最高値を更新し、ヘルスケアや生活必需品など幅広い銘柄が上昇しています。市場全体が恐怖に包まれたのではなく、特定の成長株から別のセクターへ資金が移った相場と考えられます。ただし、低いVIXが急変動の可能性まで否定するものではありません。 - 金先物(4,135.40ドル、前日比+1.30%)
金先物は53.00ドル上昇し、4,135.40ドルとなりました。米雇用の伸び鈍化によって将来の利下げ期待が残ったことに加え、ドル指数の下落がドル建て金価格を押し上げました。株式市場ではDow30が最高値を更新しましたが、半導体株の急落や財政・地政学リスクへの備えから、安全資産としての金にも資金が入りました。株高と金高が同時進行する、分散志向の強い相場です。
私の米国株ポートフォリオ
私のポートフォリオは、ほぼ横ばいで終えました。日本市場で取引されるETFや投資信託には前日の米国市場の動きが反映され、iFreeETF FANG+が+1.27%、MAXIS米国株式(S&P500)上場投信が+0.06%と上昇しました。一方、iシェアーズ S&P500米国株ETFは-0.34%、MAXISナスダック100上場投信は-0.40%、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)は-0.26%となり、全体では小幅なマイナスです。
FANG+の上昇が全体を補いましたが、S&P500連動資産とNASDAQ100の下落を完全には打ち消せませんでした。指数連動商品でも取引時間や為替、基準価額の反映時点が異なるため、同じ米国株を対象としていても騰落率には差が出ます。個別株の急変に振り回されにくいETF中心の分散投資だからこそ、この程度の変動は落ち着いて受け止めています。
経済指標発表結果
- 非農業部門雇用者数(+5.7万人、予想+11.4万人、前回+12.9万人)
6月の雇用者数は市場予想を大幅に下回り、米国の雇用拡大ペースが明確に鈍化しました。景気減速への懸念が強まる一方、FRBが追加利上げを急ぐ必要性は低下したと受け止められ、ドル円は円高方向へ動きました。株式市場では金利低下の恩恵よりも、AI・半導体株の利益確定売りが目立ちました。 - 失業率(4.2%、予想4.3%、前回4.3%)
失業率は予想に反して4.2%へ低下し、雇用者数の弱さだけで景気後退を判断できない内容となりました。企業の新規採用は鈍化しているものの、失業の急増には至っていません。市場にとっては「雇用は冷えているが崩れてはいない」という結果であり、Dow30の大型安定株が買われやすい環境につながりました。 - 平均時給(前月比+0.3%、前年比+3.5%)
平均時給は前月比、前年比とも市場予想と一致しました。賃金上昇率は前月の前年比+3.4%から+3.5%へわずかに加速しており、インフレ圧力が完全に消えたわけではありません。雇用者数の鈍化だけを理由にFRBが直ちに利下げへ転じる状況ではなく、長期金利が小幅に上昇した背景の一つと考えられます。 - 民間部門雇用者数(+4.9万人、予想+11.0万人、前回+9.7万人)
民間企業の雇用増加は市場予想の半分以下にとどまりました。政府部門を除いた企業の採用姿勢が慎重になっていることを示し、景気に敏感な中小企業やサービス業で人員需要が弱まりつつある可能性があります。個人消費の先行きを考える上でも注意が必要ですが、金利上昇圧力を抑える面では株式市場に一定の安心感を与えました。 - 労働参加率(61.5%、前回61.8%)
労働参加率は61.5%へ低下しました。失業率が4.2%へ改善した一因には、職探しをする人の割合が減った影響も含まれます。そのため、失業率だけを見て雇用市場が強いと判断するのは適切ではありません。雇用者数の伸び鈍化と合わせると、労働市場は表面的な数字以上に減速している可能性があります。 - 新規失業保険申請件数(21.5万件、予想21.9万件、前回21.6万件)
新規失業保険申請件数は予想を下回り、企業による大規模な解雇が増えていないことを示しました。採用は鈍化している一方、既存の従業員を削減する動きは限定的です。今回の雇用統計は、雇用市場が急速に悪化しているのではなく、企業が新規採用を抑えながら人員を維持している状態を映しています。 - 失業保険継続申請件数(181.4万件、予想181.0万件、前回181.2万件)
継続申請件数は予想をわずかに上回りました。新たな解雇は増えていないものの、一度失業すると次の仕事を見つけるまでに時間がかかり始めている可能性があります。雇用市場の需給が徐々に緩んでいることを示す数字であり、今後も増加が続けば個人消費や景気見通しへの警戒が強まります。 - 製造業新規受注(前月比-1.3%、予想-1.7%、前回+5.3%)
製造業新規受注は前月から減少しましたが、市場予想ほどの落ち込みにはなりませんでした。前月の大幅増加の反動が大きく、輸送機器を除く受注は+1.9%と増加しています。製造業全体が急失速したわけではなく、設備投資や企業活動には一定の底堅さが残る結果でした。
主要銘柄の決算発表結果
7/2には主要銘柄の決算発表はありませんでした。
主な経済ニュース
- 弱い雇用統計でFRBの追加利上げ観測が後退
6月の非農業部門雇用者数は+5.7万人にとどまり、市場予想の+11.4万人を大幅に下回りました。失業率は4.2%へ低下しましたが、労働参加率も下がっており、雇用市場が見た目ほど強いとは言い切れません。市場では7月の追加利上げ確率が低下し、金利に敏感な銘柄には安心感が出た一方、景気減速への警戒も残りました。(Reuters:07/02) - Dow30が史上最高値を更新
Dow30は594.83ドル高の52,900.07となり、終値で史上最高値を更新しました。ヘルスケア、生活必需品、金融、工業・産業など幅広い大型株が上昇し、先端技術株から出遅れ分野への資金移動が鮮明です。NASDAQが下落する中での最高値更新は、米国株全体が崩れたのではなく、相場の主役が交代したことを示しています。(WSJ:07/02) - 半導体株の急落でNASDAQが下落
AI向け半導体、製造装置、メモリー、光通信関連株に一斉に利益確定売りが広がりました。SanDisk、Teradyne、KLA、Lam Researchなどが2桁下落となり、NASDAQは-0.80%で取引を終えています。AI需要が消えたというより、高い成長率を先取りしていた株価評価を見直す動きであり、AI関連株への資金集中の大きさが改めて示されました。(Reuters:07/02) - AI投資の採算性と設備過剰への警戒が再燃
クラウド大手やAI企業による巨額設備投資に対し、投資額に見合う収益を得られるのかという疑問が強まりました。GPUだけでなく、サーバー、光通信、メモリー、電源、冷却設備まで売られた点から、個別企業の問題ではなくAIインフラ全体への評価調整と考えられます。長期需要と短期の株価過熱は分けて見る必要があります。(Bloomberg:07/02) - Teslaは納車台数が市場予想を上回るも急落
Teslaの四半期納車台数は市場予想を上回りましたが、株価は-7%台まで下落しました。好材料が出ても上昇しなかった背景には、自動運転、ロボット、AIなど将来事業への期待が株価に大きく織り込まれている事情があります。市場は販売台数だけではなく、利益率や成長率が現在の高い株価評価に見合うかを厳しく確認しています。(Reuters:07/02) - ドルが下落しドル円は161円台へ
弱い雇用統計を受けて、FRBが早期に追加利上げへ動く可能性が低下し、ドル指数は約2カ月ぶりの大幅安となりました。ドル円も一時160.62円まで下落しています。円高は日本人投資家が保有する米国資産の円換算額を押し下げますが、依然として161円台という歴史的な円安水準です。1日の動きだけで為替の長期傾向が転換したとは判断できません。(Reuters:07/02) - 金価格が上昇し4,100ドル台を回復
金先物は前日比+1.30%の4,135.40ドルまで上昇しました。雇用減速を受けたドル安に加え、AI関連株の急落や地政学リスクへの備えとして金へ資金が向かっています。Dow30が最高値を更新する一方で金も上昇しており、投資家が株式を全面的に売るのではなく、保有資産を分散しながらリスクを管理している相場です。(Bloomberg:07/02) - 米国とイランの協議を受け原油は小動き
WTI原油先物は68.48ドルと小幅安でした。米国とイランを巡る外交協議への期待が供給不安を和らげる一方、中東情勢の不確実性と夏場の需要が下値を限定しています。原油価格が70ドル前後で落ち着けば、企業の輸送費や消費者のガソリン負担を抑え、インフレ再加速を防ぐ方向に働きます。FRBの政策判断にも関係する重要な価格帯です。(Reuters:07/02) - ヘルスケアと生活必需品へ資金が移動
ヘルスケアは+2.80%、生活必需品は+2.26%と大幅に上昇しました。Moderna、Vertex Pharmaceuticals、Intuitive Surgical、Medtronicなどが買われ、先端技術株から業績の安定した企業へ資金が移っています。景気後退を強く織り込む全面的な守りではなく、AI関連株の利益を一度確定し、割安な大型株へ振り向ける資金循環と考えられます。(WSJ:07/02) - 米10年債利回りは雇用減速でも小幅上昇
米10年国債利回りは4.485%へ小幅に上昇しました。弱い雇用統計だけを見れば債券利回りは低下しやすいものの、財政赤字の拡大や国債発行増加への警戒が長期金利を高止まりさせています。短期的な政策金利見通しと長期の財政リスクが異なる方向に作用しており、高PER(株価収益率が高い状態)の先端技術株には厳しい金利環境が続いています。(Bloomberg:07/02) - VIX低下が示すのは暴落ではなく資金循環
VIX指数は-2.65%の16.15まで低下しました。NASDAQや半導体株は大きく下落しましたが、市場全体の恐怖心理はむしろ後退しています。Dow30の最高値更新や多数のセクター上昇と合わせると、今回は市場から資金が逃げたのではなく、先端技術株からヘルスケア、金融、素材などへ移動した可能性が高いと判断できます。(Reuters:07/02)
経済指標発表予定
7/3は休日です。週明け7/6には以下の経済指標が発表される予定です。
主要銘柄の決算発表予定
7/6まで、主要銘柄の決算発表は予定されていません。
おわりに
米国株市場は、Dow30が史上最高値を更新する一方、NASDAQでは半導体やAI関連株が大きく売られました。指数だけを見ると方向感が分かれていますが、市場全体から資金が逃げたというより、これまで上昇してきた先端技術株からヘルスケア、生活必需品、金融などへ資金が移った一日だったと感じています。
長期投資では、こうした主役交代を予想して売買を繰り返すより、幅広い企業へ分散して市場に居続けることが大切です。毎朝の市場整理が、皆さまの投資判断や相場理解に少しでも役立てば嬉しく思います。
それでは、今日も一日、明るく元気に笑顔で過ごしましょう。
本ブログは個人で継続して運営しています。ご参考になりましたら、こちらから応援いただけると嬉しいです。
おことわり
投資は自己責任にてお願いします。
このブログには広告が挿入されています。この広告はGoogle社が読者の好みに応じて選んで提供しているものです。興味がございましたらご覧いただければ幸いです。投資に関する広告が表示されても、私の推奨ではないことをご理解ください。
図表のレファレンス
- S&P500ヒートマップ: finviz
- 主要3指数とドル円: Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
- セクター別騰落率: finviz
- 経済指標結果/予定: investing.com日本語版
- 決算発表結果/予定: investing.com日本語版
- 主要指数の動き : Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
- 自分の米ドル建ポートフォリオ: Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
著者プロフィール
室井一夫(Kazuo Muroi)
Muroi Universal Research on Investment LLC 代表社員
一級建築士・建築1級施工管理技士・工学修士
Facebookグループ「米国株_投資の部屋」管理人(約4.7万人)
米国株式市場と経済動向に関する情報を毎日発信しています。
コメントを残す