室井のマーケット視点
6月30日の米国市場は、S&P500が+0.79%、Dow30が+0.26%、NASDAQが+1.52%となり、AI・半導体関連株が再び相場を牽引しました。VIX指数も16.45まで低下しており、市場参加者の不安心理は比較的落ち着いています。ただし、この日の上昇を単純な全面高と見るのは少し違うと思います。
先端技術(Technology)は+2.67%、工業・産業(Industrials)は+1.81%となりましたが、不動産(Real Estate)は-1.92%、生活必需品(Consumer Defensive)は-1.46%、公益事業(Utilities)は-1.36%でした。指数は上昇していても、資金は市場全体へ均等に流れているわけではなく、AI関連とその周辺分野へ集中しています。
特に印象的だったのは、Sandisk、KLA、Lam Research、AMD、Marvell Technologyなどが大きく上昇したことです。AI需要が弱まったのではなく、投資対象がGPUだけでなく、メモリー、半導体製造装置、高速通信、電源管理へ広がっています。AIを実際に稼働させるには、演算装置だけでなく、大量のデータを保存する設備、安定した電力、高速通信、冷却設備まで必要です。
一方、Digital RealtyはAIデータセンター資産を取得すると発表したにもかかわらず、株価は5%を超えて下落しました。AI関連という看板だけでは買われず、取得価格、資金調達、株式の希薄化、利益が出るまでの期間まで厳しく評価されています。現在の市場は「AIなら何でも上がる相場」から、事業の収益性を選別する段階へ進んでいます。
JOLTS求人件数は759.4万件と市場予想を上回り、米国経済の底堅さが確認されました。その結果、米10年国債利回りは4.418%へ上昇し、ドル円も162円台後半まで円安が進みました。通常であれば金利上昇は成長株に不利ですが、この日は企業利益への期待が金利上昇の影響を上回りました。強い景気と高金利が同時に続く、米国市場らしい相場です。
6月の1か月間で見ると、さらに興味深い変化があります。Microsoft、Broadcom、Amazon、Metaなどの大型株が下落する一方、半導体製造装置やメモリー関連株は大幅に上昇しました。セクター別でもヘルスケア(Healthcare)、工業・産業(Industrials)、金融(Financial)が上位となり、通信サービス(Communication Services)や一般消費材(Consumer Cyclical)は下落しています。
私は、この動きをAI相場の終了ではなく、資金循環による主役交代と見ています。大型テクノロジー株だけを見ていると相場が弱く感じられますが、AIインフラや医薬品、金融、産業機械まで視野を広げれば、米国企業全体には成長分野が残っています。
私の米国株ポートフォリオも前日比+1.13%となりました。個別銘柄を選ぶのではなく、S&P500やNASDAQ、FANG+などのETFを中心に保有しているため、どの企業が次の主役になるかを当てなくても、市場内部の資金移動をまとめて受け取ることができます。私は長期投資では、この仕組みが大きな強みになると考えています。
短期的には、金利上昇、ドル円162円台、低いVIX指数という組み合わせに過熱感もあります。しかし、日々の値動きを正確に当てることより、企業利益が成長を続けているか、市場の資金がどこへ移っているかを確認する方が重要です。6月は、指数だけを見るのではなく、市場内部の主役交代を見ることの大切さを改めて感じた1か月でした。
投資は自己責任にてお願いします。
S&P500ヒートマップ
5%以上上昇したS&P500構成銘柄
- SNDK:Sandisk Corporation(先端技術) +10.89%
AIデータセンター向けSSD(半導体を使った記憶装置)の需要拡大と、NAND型フラッシュメモリーの供給逼迫を背景に急伸しました。Bernsteinが目標株価を1,700ドルから3,000ドルへ引き上げたことで、長期契約による販売価格と収益の安定化への期待が一段と高まりました。 - AXON:Axon Enterprise Inc.(工業・産業) +9.79%
トランプ大統領が同社株を最大500万ドル取得していたことに加え、その後に米移民・関税執行局が総額2.2億ドル規模のテーザー銃調達を計画したとの報道から、受注拡大への期待が強まりました。ただし、政治と投資を巡る利益相反への懸念も残ります。 - VRT:Vertiv Holdings Co.(工業・産業) +9.07%
AIデータセンター向けの電源設備や液冷システムを手掛ける企業として買いが集まりました。高性能GPUの普及によって消費電力と発熱量が増えており、無停電電源、配電、冷却設備への投資も拡大しています。直前の株価調整からの買い戻しも上昇幅を広げました。 - KLAC:KLA Corporation(先端技術) +8.38%
韓国政府、Samsung Electronics、SK Hynixによる大規模な半導体投資計画を受け、製造装置株が一斉に上昇しました。KLAは半導体製造工程の検査・計測装置で高い競争力を持ちます。AI半導体の微細化と積層化が進むほど、欠陥を検出する同社製品の重要性が増します。 - APD:Air Products and Chemicals Inc.(素材) +8.04%
採算性が見込めないルイジアナ州の低炭素水素・アンモニア計画から撤退し、最大29億ドルの費用を計上すると発表しました。巨額損失を伴うものの、将来の設備投資負担と資金流出を抑える経営判断が評価されました。投資家は事業拡大より資本効率の改善を選びました。 - AMD:Advanced Micro Devices Inc.(先端技術) +7.68%
Wells Fargoが目標株価を505ドルから615ドルへ引き上げたことから大幅高となりました。AI処理に対応するサーバー向けCPUの売上高が2026年に68%増えるとの予測が示され、クラウド各社や企業のAI基盤更新によって、NVIDIA以外にも成長機会が広がるとの期待が高まりました。 - MRVL:Marvell Technology Inc.(先端技術) +7.25%
AIデータセンター向け半導体株が全面高となる中、カスタムAI半導体と高速ネットワーク製品を手掛けるMarvellにも買いが入りました。AI処理能力を高めるにはGPUだけでなく、サーバー間で大量のデータを高速転送する通信半導体も必要であり、設備投資拡大の恩恵が見込まれています。 - ON:ON Semiconductor Corporation(先端技術) +6.74%
半導体株全体への資金流入に加え、データセンターや電気自動車で使用される電力制御半導体への需要期待から上昇しました。AIサーバーの消費電力が増えるほど、電力を効率よく変換するパワー半導体の重要性も高まります。個別の大型発表より、セクター全体の上昇に連動した動きです。 - GEV:GE Vernova Inc.(工業・産業) +6.56%
AIデータセンターの電力需要増加を背景に、ガスタービンや送配電設備への受注拡大期待が続きました。大規模データセンターには安定した発電能力と強固な送電網が不可欠です。同社のガスタービンには複数年分の受注残があり、AI投資が電力インフラ企業の業績へ波及する構図が評価されています。 - INTC:Intel Corporation(先端技術) +6.01%
世界的な半導体設備投資の拡大とAI向け計算需要への期待から、Intelにも買いが広がりました。自社製CPUに加えて他社の半導体を製造するファウンドリー事業の立て直しが進めば、米国内で先端半導体を生産できる企業としての戦略的価値も高まります。ただし、収益改善の確認は今後も必要です。 - APH:Amphenol Corporation(先端技術) +5.95%
AIサーバーや通信設備で使われる高速コネクター、ケーブル、光通信部品への需要拡大期待から上昇しました。演算装置の性能が向上しても、機器間の通信速度が不足すればデータセンター全体の処理能力は高まりません。AI投資の対象が半導体から接続部品へ広がっていることを示す動きです。 - LRCX:Lam Research Corporation(先端技術) +5.46%
Susquehannaが目標株価を385ドルから475ドルへ引き上げたことに加え、韓国で5000億ドルを超える半導体投資計画が発表され、製造装置需要への期待が高まりました。AI向けメモリーの増産には成膜やエッチング(半導体表面を削る工程)装置が不可欠で、同社の受注拡大が見込まれています。 - MPWR:Monolithic Power Systems Inc.(先端技術) +5.30%
AIサーバー向け電源管理半導体への需要拡大を見込む買いが入りました。同社製品はサーバー内部で電圧を適切に変換し、GPUやCPUへ安定して電力を供給します。AI半導体の高性能化に伴って電力制御の難易度も上がるため、演算半導体の周辺を支える企業として評価が高まりました。
5%以上下落したS&P500構成銘柄
- DLR:Digital Realty Trust, Inc. -5.77%
データセンターREIT(不動産投資信託)のDigital Realtyは、Blackstoneが保有する北バージニア州のデータセンター持分を35億ドルで取得する取引を受けて下落しました。対価のうち23億ドルを新株で支払うため、1株当たり価値の希薄化が警戒されました。AI需要を取り込む大型投資ですが、収益への本格寄与は2027年以降となる見通しです。 - HRL:Hormel Foods Corporation -5.66%
食品大手Hormel Foodsは、ブラジルで加工肉を展開するCeratti事業を売却すると発表した後、大幅安となりました。売却条件が公表されず、海外事業の成長余地や今後の収益構造に対する不透明感が残りました。直前まで4営業日連続で上昇していた反動に加え、半導体株などへ資金が移動し、生活必需品株から利益確定売りが出た面もあります。 - ZBH:Zimmer Biomet Holdings, Inc. -5.64%
人工関節大手Zimmer Biometは、Pacira BioSciencesから神経冷却疼痛治療システム「iovera」を最大1.4億ドルで取得すると発表し、株価が下落しました。契約は7000万ドルを先払いし、将来の売上に応じて最大7000万ドルを追加で支払う内容です。事業拡大の狙いはあるものの、買収効果や統合費用に対する慎重な見方が優勢となりました。 - T:AT&T Inc. -5.13%
AT&Tは、SpaceXとCharter Communicationsが衛星通信を利用した携帯電話サービスを検討しているとの報道を受け、通信大手各社とともに売られました。Starlinkが携帯通信へ本格参入すれば、従来型通信会社の契約者数や料金競争へ影響する可能性があります。Russell Top 50指数からの除外に伴う機械的な売りも重なり、2営業日続けて大きく下落しました。
セクター別騰落率
市場全体では、AI・半導体関連を中心に先端技術(Technology)が大幅高となり、データセンター設備や電力機器を扱う工業・産業(Industrials)にも買いが広がった。一方、資金は不動産や生活必需品、公益事業などのディフェンシブ分野から成長株へ移動しており、指数上昇の裏側でセクター間の明確な資金循環が見られた。
- 先端技術(Technology) +2.67%
半導体株を中心に強い買いが入り、全セクターで最大の上昇となった。AMD、Sandisk、KLA、Lam Researchなどが大きく上昇し、AI向け半導体、メモリー、製造装置への設備投資拡大が改めて評価された。AI相場の対象がGPUだけでなく、記憶装置や電源管理、高速通信へ広がっている点が、この日の市場を象徴している。 - 工業・産業(Industrials) +1.81%
VertivやGE Vernovaなど、データセンター向け電源、冷却設備、発電・送電関連企業が上昇した。生成AIの普及には半導体だけでなく、大量の電力、安定した送電網、無停電電源、液冷設備が不可欠である。AI投資の恩恵が建物設備や電力インフラへ波及し、工業・産業セクターがTechnologyに次ぐ上昇率となった。 - 公益事業(Utilities) -1.36%
成長株への資金移動が強まり、安定配当を目的に保有されやすい公益事業株は売りに押された。AIデータセンターの電力需要拡大という長期テーマは続いているが、この日は発電会社よりも電源設備や送配電機器を扱う工業・産業銘柄へ資金が向かった。公益事業は金利動向にも敏感であり、短期的な資金循環の影響を受けた。 - 生活必需品(Consumer Defensive) -1.46%
半導体株やデータセンター関連株への買いが強まる一方、食品や日用品など景気変動の影響を受けにくい銘柄から資金が流出した。Hormel Foodsの大幅下落もセクター全体を押し下げた。生活必需品は業績の安定性に強みがあるものの、投資家が積極的に成長性を求める局面では、相対的に選ばれにくくなる傾向がある。 - 不動産(Real Estate) -1.92%
不動産セクターは全セクター中で最大の下落となった。Digital Realtyがデータセンター資産の大型取得を発表したものの、新株発行による1株当たり価値の希薄化が警戒され、同社株が5%超下落した影響が大きい。AIデータセンター需要は長期的な成長要因だが、取得価格や資金調達方法に対する市場の評価は厳しかった。
主要3指数とドル円の動き
市場はAI・半導体関連株を中心に買いが広がり、S&P500とNASDAQは取引終盤まで上昇基調を維持しました。一方、公益事業(Utilities)、生活必需品(Consumer Defensive)、不動産(Real Estate)などは下落しており、全面高ではなく、成長株へ資金が集中した一日です。ドル円は162円台後半まで円安が進みました。
- S&P500(7,499.36、前日比+0.79%)
S&P500は7,441.27で始まり、序盤に7,438.04まで下げた後、半導体株やAIインフラ関連株を中心に上昇へ転じました。先端技術(Technology)が+2.67%、工業・産業(Industrials)が+1.81%となり、指数は一時7,508.29まで上昇しています。ただし、ディフェンシブ株や不動産株は下落しており、市場全体が一様に買われたわけではありません。長期投資家としては、指数上昇率だけでなく資金の集中度も確認したい局面です。 - Dow30(52,319.20、前日比+0.26%)
Dow30は52,168.18で取引を開始し、52,033.13まで下落した後に持ち直しました。工業・産業関連株の上昇が指数を押し上げましたが、公益事業、生活必需品、ヘルスケア、通信株の弱さによって上昇幅は限定されました。先端技術株の比率が高いNASDAQほどAI・半導体株高の恩恵を受けられず、主要3指数では最も小幅な上昇です。景気敏感株と安定配当株の間で、はっきりした資金移動が見られました。 - NASDAQ(26,213.72、前日比+1.52%)
NASDAQは主要3指数で最も大きく上昇しました。AMD、Sandisk、KLA、Marvell Technology、Lam Researchなどが大幅高となり、AI投資の対象がGPUだけでなく、メモリー、半導体製造装置、通信半導体、電源管理へ広がりました。指数は25,824.47で始まり、安値25,808.06から高値26,253.04まで切り返しています。AI関連企業への期待は強い一方、株価収益率が高い銘柄も多いため、企業利益が市場の期待に追いつくかを冷静に見守る必要があります。 - ドル円(162.594円、前日比+0.43%)
ドル円は161.869円で始まり、安値161.829円から高値162.670円まで上昇しました。米国経済の底堅さと金利の高止まり観測に対し、日本の金利上昇ペースは限定的との見方が残り、日米金利差を背景としたドル買い・円売りが続いています。米国株が上昇するリスクオン(投資家が積極的にリスクを取る状態)の中でもドルが買われており、ドルの基調的な強さが表れました。円建て米国資産にはプラスですが、為替介入や急な円高反転には注意が必要です。
原油先物・米10年国債利回り・VIX・金先物の動き
- WTI原油先物(70.06ドル、前日比-0.98%)
WTI原油先物は70.43ドルで始まり、一時71.60ドルまで上昇したものの、終盤に売りが強まり70.06ドルで取引を終えました。供給不安がやや和らいだことに加え、71ドル台では利益確定売りが出たとみられます。原油安は輸送費や企業コストの上昇を抑えるため、株式市場にはインフレ圧力を緩和する方向に働きます。 - 米10年国債利回り(4.418%、前日比+1.01%)
米10年国債利回りは4.392%から4.418%へ上昇し、一時4.422%を付けました。米国経済の底堅さやFRBによる利下げの遅れを見込む債券売りが続いたと考えられます。通常は高PER(株価収益率が高い)銘柄に不利ですが、この日はAI・半導体株の利益成長期待が金利上昇を上回り、NASDAQは大幅高となりました。 - VIX指数(16.45、前日比-6.80%)
VIX指数は17.54で始まり、16.45まで大きく低下しました。S&P500とNASDAQが取引終盤まで上昇し、投資家が短期的な株価急落に備える動きが後退しています。16台は市場心理が比較的安定している水準ですが、安心感が強まり過ぎると悪材料への反応が急になる場合もあります。長期投資家としては、低VIXでも資金管理を変えない姿勢が重要です。 - 金先物(4,026.80ドル、前日比-0.30%)
金先物は4,032.50ドルで始まり、一時4,078.10ドルまで上昇した後、4,026.80ドルへ下落しました。米10年国債利回りの上昇によって、利息を生まない金の相対的な魅力が低下したことに加え、株高とVIX低下で安全資産需要も弱まりました。ただし、地政学リスクやインフレへの備えとして、資産の一部を金で保有する意味は残ります。
私の米国株ポートフォリオ
私の米国株ポートフォリオは、全銘柄が上昇して前日比+1.13%となりました。6月30日の日本市場では、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)が+1.57%、MAXISナスダック100上場投信が+1.56%と特に強く、S&P500連動ETFもそろって1%を超える上昇です。FANG+は+0.92%、値動きの小さいGX超短期米国債も+0.18%でした。
これらは、その前の米国市場と為替の動きが日本市場のETFや投資信託に反映された結果です。一方、昨夜6月30日の米国市場でもNASDAQが+1.52%となり、AI・半導体関連株の強さが続きました。成長株へ資金が集中している点には注意が必要ですが、個別株の急変に振り回されにくいETF中心の分散投資だからこそ、市場全体の成長を落ち着いて受け取れた一日でした。
経済指標発表結果
- JOLTS求人件数(759.4万件、予想728.0万件、前回758.5万件)
JOLTS求人件数は市場予想を大きく上回り、米国企業の採用需要が依然として強いことを示しました。労働市場の底堅さは個人消費や企業業績にはプラスですが、賃金上昇を通じてインフレを長引かせる可能性もあります。FRBの早期利下げ期待が後退し、米10年国債利回りとドル円が上昇する一方、株式市場では景気の強さを評価する買いが優勢となりました。 - シカゴ購買部協会景気指数(56.7、予想55.7、前回62.7)
シカゴ地区の企業活動を示す指数は市場予想を上回り、景気拡大・縮小の境目となる50を維持しました。ただし、前月の62.7からは大きく低下しており、製造業や企業活動が急加速しているわけではありません。市場は「景気後退ではないが、過熱もしていない」と受け止め、企業利益の拡大期待と金利高止まりへの警戒を同時に織り込みました。 - 消費者信頼感指数(91.2、予想94.4、前回90.6)
消費者信頼感指数は前月から改善したものの、市場予想には届きませんでした。雇用環境は強い一方、物価高や住宅費、借入金利への不満が消費者心理を抑えていると考えられます。米国経済の中心である個人消費が急減速する内容ではありませんが、先行きへの慎重さは残ります。株式市場では、この弱さが金利上昇を抑えるほどではなく、AI・半導体株への資金集中が続きました。 - S&Pケース・シラー住宅価格指数(前年比+1.1%、予想+0.9%、前回+0.9%)
主要20都市の住宅価格は市場予想を上回る伸びとなりました。住宅ローン金利が高水準でも、中古住宅の供給不足によって価格が下がりにくい状況が続いています。住宅価格の上昇は保有者の資産効果(資産増加で消費意欲が高まること)につながる一方、家賃や住居費の高止まりを通じてインフレ鈍化を遅らせる可能性があります。 - FHFA住宅価格指数(前月比-0.1%、予想+0.2%、前回+0.2%)
政府系住宅金融機関が集計する住宅価格指数は予想に反して前月比で低下しました。ケース・シラー指数が前年比で上昇する一方、月次では住宅市場に減速の兆しも見られ、地域や物件によって強弱が分かれています。高い住宅ローン金利が購入需要を抑え始めており、住宅価格が緩やかに落ち着けば、FRBにとってはインフレ抑制を確認しやすくなります。 - レッドブック売上高(前年比+10.5%、前回+10.0%)
大手小売店の売上動向を示すレッドブック指数は伸びが加速し、米国の個人消費が引き続き強いことを示しました。雇用の底堅さと賃金収入が消費を維持している一方、物価上昇によって名目売上高が押し上げられている面もあります。一般消費材や小売企業にはプラスですが、消費の強さが続けばFRBの利下げ時期はさらに遅れる可能性があります。 - 米週間原油在庫(+607.2万バレル、前回-76.5万バレル)
原油在庫は大幅な積み増しとなり、需要の弱さや供給余力を示す結果となりました。在庫増加を受けてWTI原油先物は下落し、エネルギー株には売りが出やすい環境となりました。一方、原油価格の低下はガソリン価格や輸送費を抑え、企業コストと消費者物価の上昇を和らげます。長期投資家にとっては、原油安がインフレと企業利益へ与える両面の影響を確認したいところです。
主要銘柄の決算発表結果
- NKE:NIKE, Inc.(一般消費材(Consumer Cyclical))
NIKEは調整後EPSが0.20ドルと市場予想の0.12ドルを上回り、売上高も110億ドルと予想の108.5億ドルを超えました。ただし、売上高は前年同期比1%減、為替影響を除くと4%減となり、直販部門は7%減、デジタル販売も12%減少しました。中国や欧州の弱さも残り、決算の上振れだけでは事業再建への懸念を払拭できず、通常取引で1.04%下落した後、時間外取引でも4.05%下落しました。 - STZ:Constellation Brands, Inc.(生活必需品(Consumer Defensive))
Constellation Brandsは調整後EPSが3.43ドルと市場予想の3.25ドルを上回り、売上高も24.3億ドルと予想の24.1億ドルを上回りました。ModeloやCoronaを中心とするビール事業について、消費減速への警戒が続いていただけに、利益と売上高の双方が予想を超えたことが安心感につながりました。通常取引では0.39%下落していましたが、決算発表後の時間外取引では3.92%上昇し、業績の底堅さを評価する動きとなりました。
主な経済ニュース
- 半導体株が主導し主要指数は四半期末を上昇で終える
6月30日の米国市場では、半導体やAIインフラ関連株への買いが広がり、S&P500は+0.79%、NASDAQは+1.52%、Dow30は+0.26%となりました。S&P500とNASDAQは2020年以来の大幅な四半期上昇を記録しています。ただし、上昇の中心は先端技術(Technology)に偏っており、指数の強さと市場全体の広がりは分けて見る必要があります。(Reuters・WSJ:06/30) - AI設備投資が2026年下半期の米国株を左右
Microsoft、Alphabet、Amazonによる2026年の設備投資額は合計7300億ドル規模に達する見通しで、AI向け半導体、メモリー、通信、電力、冷却設備への需要拡大が続いています。市場はS&P500企業の2026年利益が26%超増えると予想していますが、巨額投資が実際の利益へ結び付くかが下半期の焦点です。AI投資の規模だけでなく、回収期間と利益率の確認が重要になります。(Reuters:06/30) - 半導体株が急反発する一方で大型テクノロジー株は明暗
SOX指数(米国の主要半導体株で構成される指数)は上半期に大きく上昇し、MicronやSandiskなどメモリー関連株には極めて強い資金流入が続きました。一方、MicrosoftやMetaを含む大型テクノロジー株の一部は年初来で苦戦しています。「AI関連なら一律に上昇する相場」ではなく、設備投資の恩恵を直接受ける企業へ資金が集中する選別相場です。(Reuters:06/30) - 求人件数は2年ぶり高水準でも採用活動には慎重さ
5月のJOLTS求人件数は759.4万件と市場予想の728.0万件を上回り、2024年5月以来の高水準となりました。一方、実際の採用は2カ月連続で減少しており、求人の多さだけでは雇用市場の強さを断定できません。米10年国債利回りは4.418%へ上昇しましたが、株式市場は景気の底堅さを優先し、AI・半導体株への買いを強めました。(Reuters:06/30) - 消費者心理は小幅改善も雇用への不安が拡大
6月の消費者信頼感指数は91.2と前月の90.6から改善しましたが、市場予想の94.4を下回りました。仕事を「見つけにくい」と答えた割合は22.5%となり、2021年1月以来の高水準です。ガソリン価格の低下は家計に好影響を与えていますが、雇用への不安が個人消費を抑える可能性があります。米国経済は失速していないものの、消費者の実感は株価ほど強くありません。(Reuters:06/30) - 最高裁がFRBの独立性を維持
米連邦最高裁は、トランプ大統領によるFRB理事リサ・クック氏の解任を認めず、金融政策を政治から切り離す中央銀行の独立性を維持しました。一方、FTC(米連邦取引委員会)など他の独立規制機関については、大統領の解任権限を拡大しています。FRBへの直接介入が回避されたことは債券・為替市場に一定の安心を与えますが、規制政策が政権交代で大きく変わるリスクは高まりました。(Reuters:06/30) - ドル円は162円台へ上昇し40年ぶりの円安水準
ドル円は一時162.67円まで上昇し、円は1986年以来の安値を付けました。米国の高金利と景気の相対的な強さに対し、日本の金利水準は依然として低く、ドル買い・円売りが続いています。日本政府は必要に応じて対応する姿勢を繰り返しましたが、警告の強さは変わっていません。円建て米国資産にはプラスですが、為替介入が入れば短時間で数円規模の円高となる可能性があります。(Reuters・Bloomberg:06/30) - 米国とイランの協議は不透明で停戦の脆弱性が残る
米国とイランの関係者がカタールのドーハ入りしましたが、両国の高官による直接会談は確認されず、当面は技術的な協議にとどまる可能性があります。6月17日の暫定合意後も攻撃が発生しており、停戦は安定していません。ホルムズ海峡の通航が再び妨げられれば、原油高、インフレ再燃、金利上昇を通じて米国株全体へ影響が及びます。(Reuters:06/30) - 原油は下落し月間・四半期で2020年以来の大幅安へ
WTI原油先物は70.06ドルまで下落しました。ホルムズ海峡の輸送回復と米国・イラン協議への期待に加え、米週間原油在庫が607.2万バレル増加したことで、供給不足への警戒が弱まりました。原油安はエネルギー株の収益にはマイナスですが、ガソリン価格や輸送コストを抑え、インフレと企業コストを軽減します。株式市場全体には比較的好ましい組み合わせです。(Reuters:06/30) - Digital Realtyが35億ドルでデータセンター持分を取得
Digital RealtyはBlackstoneから北バージニア州のデータセンター3施設の持分を35億ドルで取得しました。世界最大級のデータセンター市場でAI・クラウド需要を取り込む戦略ですが、対価のうち23億ドルを新株で支払うため、1株当たり価値の希薄化が警戒されました。AI需要の長期成長性と、巨額投資を回収するまでの時間を市場が厳しく評価した事例です。(Reuters:06/30) - ComcastがNBCUniversalとSkyを分離
Comcastは通信事業とメディア事業を分け、NBCUniversalとSkyを別の上場会社として独立させる方針を発表しました。ケーブルテレビ離れと動画配信競争の激化により、通信と娯楽を一体化した従来の複合企業モデルを見直します。分離後は各事業の価値が明確になり、経営判断も迅速になる可能性があります。米メディア業界の再編がさらに進む契機となりそうです。(Reuters:06/30)
6月(1か月間)の動き
- 6月の個別銘柄ヒートマップ総括
6月は、S&P500全体が一方向へ動いたのではなく、主役が大きく入れ替わった1か月でした。大型株ではMicrosoft-17.15%、Broadcom-15.45%、Amazon-11.94%、Meta-10.94%と、これまで相場を牽引した銘柄が下落しました。一方、Applied Materials+60.65%、KLA+57.00%、Marvell Technology+45.31%、Lam Research+36.19%と、半導体製造装置、メモリー、通信半導体が急伸しています。AI需要が後退したというより、資金が一部の巨大企業からAIインフラの周辺企業へ移った月と捉えています。 - 6月のセクター別騰落率総括
セクター別では、ヘルスケア(Healthcare)が+6.61%で首位となり、工業・産業(Industrials)+5.90%、金融(Financial)+4.36%が続きました。医薬品、医療保険、建設機械、電力設備、大手銀行へ資金が移り、成長株中心だった相場に明確な循環が生じています。一方、通信サービス(Communication Services)は-7.42%、素材(Basic Materials)は-7.30%、エネルギー(Energy)は-6.02%、一般消費材(Consumer Cyclical)は-4.46%でした。指数だけでは見えにくいものの、6月は大型テクノロジー株から景気敏感株やヘルスケアへ資金が分散した1か月でした。
経済指標発表予定
以下の経済指標が発表される予定です。
主要銘柄の決算発表予定
以下の主要銘柄の決算発表がなされる予定です。
おわりに
6月の米国株市場は、AI関連の成長期待が続く一方で、資金の流れは大型テクノロジー株だけに集中せず、半導体製造装置、電力設備、工業・産業、金融、ヘルスケアへと広がりました。月末にはNASDAQが大きく上昇しましたが、指数の強さだけでなく、どの分野へ資金が移っているのかを見ることが大切だと感じています。
長期投資では、毎月の勝ち負けを追いかけるより、企業利益と市場全体の成長を確認しながら投資を続けることが重要です。今月もブログをお読みいただき、ありがとうございました。
それでは、今日も一日、明るく元気に笑顔で過ごしましょう。
ご参考になりましたら、こちらから応援いただけると嬉しいです。
おことわり
投資は自己責任にてお願いします。
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図表のレファレンス
- S&P500ヒートマップ: finviz
- 主要3指数とドル円: Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
- セクター別騰落率: finviz
- 経済指標結果/予定: investing.com日本語版
- 決算発表結果/予定: investing.com日本語版
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著者プロフィール
室井一夫(Kazuo Muroi)
Muroi Universal Research on Investment LLC 代表社員
一級建築士・建築1級施工管理技士・工学修士
Facebookグループ「米国株_投資の部屋」管理人(約4.7万人)
米国株式市場と経済動向に関する情報を毎日発信しています。
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