【20260624】米国株式市場 投資研究レポート

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室井のマーケット視点

6月24日の米国市場を振り返ると、S&P500は-0.10%、NASDAQは-0.43%と小幅に下落する一方、Dow30は+0.35%上昇しました。指数だけを見れば方向感に乏しい一日ですが、市場内部では資金の移動がはっきりと表れています。

この日の最大の特徴は、大型ハイテク株から住宅、旅行、ヘルスケア、公益事業などへ資金が移ったことです。ヘルスケア(Healthcare)は+0.96%、公益事業(Utilities)は+0.86%、一般消費材(Consumer Cyclical)は+0.74%となりました。反対に、エネルギー(Energy)は-2.17%、素材(Basic Materials)は-1.44%と大きく下落しています。

背景にはWTI原油先物が-4.37%、金先物が-3.53%と急落したことがあります。原油安は石油会社には厳しい一方、航空会社、旅行会社、小売業、物流企業にとっては燃料費や輸送費の低下につながります。United Airlines、Booking Holdings、Expediaなどが7%前後上昇したのは、この原油安を企業収益の改善要因として市場が受け止めたためでしょう。

住宅関連株も目立ちました。新築住宅販売戸数は58.0万戸と市場予想を大きく下回り、住宅ローン金利の高さが需要を抑えていることが確認されました。それにもかかわらず、PulteGroup、D.R. Horton、Lennar、Home Depotなどが大きく上昇しています。市場は足元の弱い販売統計よりも、住宅供給策や米10年国債利回りの低下が将来の住宅市場を改善する可能性を先に評価したように見えます。

一方、金融(Financial)は-0.62%となり、Apollo、Blackstone、Ares Managementなどが5%を超えて下落しました。プライベートクレジット(銀行以外の運用会社が企業へ融資する仕組み)の一部で解約請求が増え、換金制限への警戒が強まったためです。高い利回りだけを見ていると見落としがちですが、資産を必要な時に現金化できるかという流動性リスクは、金融商品を評価する上で非常に重要です。

NASDAQは軟調でしたが、取引終了後に発表されたMicronの決算は内容が大きく異なりました。EPS、売上高とも市場予想を大幅に上回り、時間外取引では+9.44%まで上昇しています。AIサーバー向けHBM(大量のデータを高速処理する高性能メモリー)の需要が、依然として非常に強いことが確認されました。

AIはGPUだけでは動きません。大量のメモリー、高速通信網、電源設備、非常用電源、空調、水冷設備がそろって初めて安定稼働します。Micronの好決算は、AI投資が一部の半導体企業だけの話ではなく、データセンター全体の設備投資として続いていることを示していると思います。

ただし、「AI関連なら何でも上がる」という相場ではなくなっています。市場は売上高の成長だけでなく、利益率、設備投資負担、財務体質まで厳しく確認する段階に入っています。AIという大きな成長テーマは続いていても、その中で勝ち残る企業と期待を裏切る企業の差は、今後さらに広がるでしょう。

ドル円は161.8090円まで上昇しました。円安は日本から米国株へ投資する私たちの円建て評価額を押し上げますが、為替介入や将来の円高反転も考えておく必要があります。私はこの日、iFreeETF FANG+(316A)を買い増しましたが、短期的な底値を当てようとしたわけではありません。成長性が失われていないと判断した資産を、値下がりした局面で少しずつ増やすという長期投資の一環です。

指数が小幅に動いた日ほど、どの分野からどの分野へ資金が移ったのかを見ることが重要です。この日は原油、金、金融株から、住宅、旅行、ヘルスケアへ資金が動き、取引終了後にはAIメモリーの強さが改めて確認されました。表面的には静かでも、市場の内部では次の主役を探す動きが続いています。

投資は自己責任にてお願いします。

S&P500ヒートマップ

5%以上上昇したS&P500構成銘柄

  • IQV:IQVIA Holdings Inc.(ヘルスケア) +8.37%
    IQVIAは、割高感が警戒される大型ハイテク株からヘルスケア関連へ資金が移る中で大幅高となりました。医薬品開発支援や臨床試験データ解析への需要は安定しており、利益成長を続ける企業として買い直されたとみられます。この日に株価を直接押し上げる明確な個別材料は確認しにくく、セクター内の資金循環による上昇の色合いが強い動きです。
  • UAL:United Airlines Holdings, Inc.(工業・産業) +7.39%
    原油価格がイランとの紛争前に近い水準まで下落し、航空燃料費の負担が軽くなるとの期待から航空株が一斉に上昇しました。航空会社は燃料価格の変動が利益率へ直結しやすく、原油安の恩恵が大きい業種です。中東情勢の緊張緩和によって国際線や出張需要が正常化するとの期待も加わり、United Airlinesには強い買いが入りました。
  • BKNG:Booking Holdings Inc.(一般消費材) +7.30%
    原油安と中東情勢の緊張緩和を受け、航空会社だけでなく旅行予約関連にも買いが広がりました。燃料費の低下は航空便の運航コストを軽減し、旅行需要の回復を後押しする可能性があります。Booking Holdingsはホテルや航空券の世界的な予約需要から収益を得るため、海外旅行と企業出張の正常化を期待した資金が流入しました。
  • PHM:PulteGroup, Inc.(一般消費材) +7.09%
    米議会を通過した住宅供給拡大法案が住宅建設業界の中長期的な成長につながるとの期待から、住宅建設株が全面高となりました。法案には賃貸住宅建設や住宅供給を増やす施策が含まれており、PulteGroupの事業機会拡大が期待されています。新築住宅販売は弱かったものの、政策による供給支援への評価が経済指標の弱さを上回りました。
  • EXPE:Expedia Group, Inc.(一般消費材) +7.04%
    ExpediaはBooking Holdingsと同様に、原油価格の急落と旅行需要回復への期待から大きく上昇しました。中東情勢の落ち着きによって国際線の運航や企業活動が正常化すれば、航空券や宿泊施設の予約増加が期待できます。旅行関連株は紛争中に燃料費上昇や需要低下を警戒して売られていたため、その反動も上昇幅を大きくしました。
  • GDDY:GoDaddy Inc.(先端技術) +7.00%
    GoDaddyには、この日の上昇を説明する明確な大型ニュースは確認しにくく、下落が続いた銘柄を買い戻す動きが中心だったとみられます。同社の株価は過去1年間の高値から大きく下落している一方、ドメイン、ウェブサイト作成、電子商取引支援から安定した現金収入を得ています。割安感に注目した買いと空売りの買い戻しが重なった可能性があります。
  • SWK:Stanley Black & Decker, Inc.(工業・産業) +6.88%
    住宅建設株の上昇が、工具や建築関連製品を供給するStanley Black & Deckerにも波及しました。住宅着工や改修工事が増えれば、電動工具や建築用品の販売拡大が期待できます。住宅供給拡大法案への評価に加え、原油安によって輸送費や製造コストが軽くなる可能性もあり、住宅関連の景気敏感株として買いが集まりました。
  • MAS:Masco Corporation(工業・産業) +6.62%
    水回り製品や住宅改修用品を扱うMascoは、住宅建設・住宅設備関連株への資金流入を受けて上昇しました。米議会を通過した住宅供給拡大法案が新築住宅や賃貸住宅の建設を増やせば、同社の蛇口、シャワー設備、建築用塗料などの需要拡大につながります。個別材料というより、住宅政策を起点とした業界全体の上昇です。
  • DHI:D.R. Horton, Inc.(一般消費材) +6.47%
    米最大級の住宅建設会社であるD.R. Hortonは、住宅供給拡大法案への期待から大幅高となりました。高金利と住宅価格上昇によって購入需要は低迷していますが、規制緩和や建設支援策が進めば、供給戸数を増やせる可能性があります。新築住宅販売の弱い結果よりも、今後の政策支援と住宅不足という中長期的な事業機会が評価されました。
  • LEN:Lennar Corporation(一般消費材) +6.39%
    Lennarは、米議会の住宅供給拡大法案を受けた住宅建設株の一斉高に加わりました。同社は戸建て住宅に加えて賃貸住宅開発にも関わっており、法案が支援するビルド・トゥ・レント(賃貸専用住宅の一括開発)の拡大から恩恵を受ける可能性があります。住宅販売環境は依然厳しいものの、政策面からの改善期待が買いにつながりました。
  • GLW:Corning Incorporated(先端技術) +5.99%
    Corningは前日の光通信関連株の急落から反発し、AIデータセンター向け光ファイバー需要への期待が改めて評価されました。生成AIの処理には大量のデータを高速で送る通信設備が必要であり、光ファイバーや接続部品を供給する同社はAI設備投資の恩恵を受けます。ただし株価は今年すでに大きく上昇しており、短期的な値動きの拡大には注意が必要です。
  • NVR:NVR, Inc.(一般消費材) +5.87%
    住宅建設大手のNVRも、住宅供給拡大法案の成立を見込んだ業界全体の買いによって上昇しました。同社は在庫を大量に抱えず、土地を取得する権利を活用して住宅を建設するため、財務負担を抑えやすい事業構造を持ちます。高金利下でも比較的安定した経営を続けており、政策支援による住宅市場回復の恩恵を受けやすい企業として選好されました。
  • UBER:Uber Technologies, Inc.(工業・産業) +5.82%
    Uberは原油価格の下落と旅行関連株の上昇を受けて買われました。ガソリン価格が下がれば、運転手の燃料負担が軽くなり、配車サービスの供給改善や利益率向上につながる可能性があります。空港利用や観光、企業出張が回復すれば配車需要も増えるため、中東情勢の緊張緩和による旅行活動の正常化を期待した資金が向かいました。
  • RVTY:Revvity, Inc.(ヘルスケア) +5.78%
    医療診断・生命科学機器を手掛けるRevvityは、ハイテク株からヘルスケア関連へ資金が移る流れの中で上昇しました。医薬品研究や検査需要は景気変動の影響を比較的受けにくく、株式市場の不透明感が残る局面では安定性が評価されやすくなります。この日に特有の大きな企業発表よりも、同業のIQVIAやDanaherと歩調を合わせたセクター単位の買いが中心です。
  • DHR:Danaher Corporation(ヘルスケア) +5.64%
    Danaherは、生命科学・診断機器株への買い戻しと大型ハイテク株からの資金分散を受けて上昇しました。バイオ医薬品の製造工程や診断分野は、中長期的に安定した需要が見込まれます。中国需要や研究機関の設備投資には不透明感が残りますが、前日までの株価調整によって割高感がやや薄れ、業績回復を見込む資金が流入しました。
  • HD:The Home Depot, Inc.(一般消費材) +5.63%
    Home Depotは住宅建設株の上昇に連動し、Dow30を押し上げる主要銘柄となりました。住宅供給の拡大や中古住宅取引の回復は、建材、工具、住宅設備、改修用品の販売増加につながります。新築住宅販売の弱さは懸念材料ですが、市場は当日の数字よりも住宅政策による中長期的な需要回復を優先し、住宅関連小売りにも買いを広げました。
  • AXON:Axon Enterprise, Inc.(工業・産業) +5.47%
    警察向け電気ショック銃、ボディーカメラ、クラウド証拠管理システムを展開するAxonは、成長株への買い戻しによって上昇しました。AIを活用した映像解析や報告書作成、ドローン対策などの成長分野を持ち、売上高も高い伸びを続けています。この日に新たな大型発表は確認しにくいものの、前日から続く上昇と業績成長への評価が買いを呼びました。
  • LII:Lennox International Inc.(工業・産業) +5.32%
    空調機器大手のLennox Internationalは、住宅建設・住宅設備関連株への資金流入を受けて上昇しました。新築住宅や賃貸住宅の供給が増えれば、冷暖房設備の設置需要も拡大します。さらに、古い空調設備を省エネルギー型へ交換する需要も同社の収益源です。住宅政策への期待が、建設会社だけでなく設備メーカーへ波及しました。
  • DLTR:Dollar Tree, Inc.(生活必需品) +5.18%
    Dollar Treeは、ハイテク株から生活必需品や小売株へ資金を分散する動きの中で上昇しました。同社は低価格商品への需要を背景に通期利益見通しを引き上げており、家計負担が大きい消費者だけでなく、中高所得者が低価格店へ移る動きも取り込んでいます。原油安による輸送費の低下期待も、小売企業の利益率にはプラスに働きます。
  • TGT:Target Corporation(生活必需品) +5.14%
    Targetは大型ハイテク株への集中が緩み、小売株や消費関連株へ資金が移ったことで上昇しました。原油価格の下落は輸送費を抑えるだけでなく、消費者がガソリン代に使う金額を減らし、衣料品や家庭用品に回せる余地を広げます。ただし、同社は価格競争や消費者の節約志向という課題を抱えており、この日の上昇は業績改善の確認というより買い戻しの性格が強いとみられます。

5%以上下落したS&P500構成銘柄

  • APO:Apollo Global Management Inc. -6.13%
    Apolloの個人投資家向けプライベートクレジット(銀行以外が企業へ融資する仕組み)ファンドで、四半期の解約請求が運用資産の16.8%に達したことが嫌気されました。実際の換金は上限の5%に制限されており、資産内容そのものに加え、必要な時に換金できない流動性リスクへの警戒が強まりました。
  • BX:Blackstone Inc. -5.90%
    Blackstoneは、主力の個人向けプライベートクレジットファンドで解約請求が増え、四半期の換金上限を適用したことが改めて不安視されました。会社側は長期投資家を守る仕組みと説明していますが、市場は解約増加が資金流入や運用報酬の伸びを鈍らせる可能性を警戒し、代替資産運用会社全体へ売りを広げました。
  • HOOD:Robinhood Markets, Inc. -5.85%
    ビットコインが4%超下落して約5万9,000ドルまで値を下げ、暗号資産関連株が一斉安となりました。Robinhoodは株式取引だけでなく暗号資産取引からも収益を得ているため、価格下落による顧客の売買減少が警戒されやすい企業です。暗号資産から大型新規上場銘柄へ資金が移る動きも、株価下落を大きくしました。
  • ARES:Ares Management Corporation -5.72%
    Ares Managementも、プライベートクレジットファンドの解約増加に対する警戒から売られました。ApolloやBlackstoneなどで換金制限が相次ぎ、問題が個別企業ではなく業界全体へ広がる可能性が懸念されています。貸出資産の価値が直ちに悪化したとは限りませんが、資金流出が続けば運用資産や手数料収入の成長が鈍る可能性があります。
  • COIN:Coinbase Global, Inc. -5.10%
    Coinbaseはビットコインの急落に連動して下落しました。同社は暗号資産の売買手数料への依存度が高く、価格下落と取引量減少が同時に進むと収益への影響が大きくなります。ビットコインは過去12か月の安値を更新し、暗号資産市場全体でリスクを減らす動きが強まりました。長期的な普及期待とは別に、短期の業績は相場変動に左右されます。
  • PFG:Principal Financial Group, Inc. -5.07%
    Principal Financialは、Bank of Americaが営業利益の伸び鈍化を理由に慎重な投資判断を示したことに加え、生命保険会社が保有するプライベートクレジットへの不安から売られました。前日まで株価が52週高値を更新していたため、利益確定売りも出やすい状態でした。保険会社は長期資金を運用するため、信用損失への懸念が高まる局面では評価が急変しやすくなります。

セクター別騰落率

市場全体では、ヘルスケア(Healthcare)や公益事業(Utilities)などのディフェンシブ系が上昇し、景気変動の影響を受けにくい分野へ資金が移りました。一方、原油と金をはじめとする商品価格が大きく下落したため、エネルギー(Energy)と素材(Basic Materials)が突出して下落しました。先端技術(Technology)や金融(Financial)も軟調で、主要指数の小幅な動き以上にセクター間の差が大きい一日でした。

  • 素材(Basic Materials) -1.44%
    金先物が前日比-3.53%と急落したほか、原油や一部の工業用資源も値下がりし、鉱山・資源関連企業を中心に売りが広がりました。ドル高は米ドル建て商品を海外投資家にとって割高にするため、金属価格には逆風となります。AIデータセンターや電力網整備による銅需要という長期テーマは残っていますが、この日は将来の需要期待より商品価格の下落が株価へ強く反映されました。
  • エネルギー(Energy) -2.17%
    WTI原油先物が前日比-4.37%の70.01ドルまで下落し、石油・天然ガス関連株がセクター全体を押し下げました。中東の供給不安がやや後退し、原油在庫の減少よりも供給正常化への期待が優先された形です。原油安は航空、旅行、小売などにはコスト低下の恩恵がありますが、エネルギー企業では販売価格と利益の低下につながります。この日の資金はエネルギー株から住宅、消費、ヘルスケアへ移りました。

主要3指数とドル円の動き

  • S&P500(7,358.22、前日比-0.10%)
    S&P500は一時7,428.06まで上昇しましたが、午後に失速して小幅安で終えました。原油価格の下落や住宅関連株の急伸が市場を支えた一方、割高感が警戒された大型ハイテク株への売りが指数を押し下げています。AI投資の成長期待は続いているものの、借入金に依存した設備投資や将来の採算性を厳しく見直す動きが出ています。長期投資家としては、指数が小動きでも内部ではハイテク株から住宅、旅行、工業・産業へ資金が移っている点に注目したい一日です。
  • Dow30(51,848.90、前日比+0.35%)
    Dow30は一時52,248.69まで上昇し、主要3指数で唯一プラスを確保しました。原油安による燃料費や輸送費の低下期待から旅行、航空、小売関連が買われ、住宅供給拡大法案を巡る期待もHome Depotなど住宅関連銘柄に波及しました。一方、半導体や高PER(株価収益率が高い状態)の成長株への依存度が比較的低いため、NASDAQの下落とは異なる動きになっています。資金が一部のAI銘柄だけでなく、実体経済に近い企業へ広がった点は、市場全体の健全性を考える上で悪くない変化です。
  • NASDAQ(25,476.63、前日比-0.43%)
    NASDAQは午前中に25,840.56まで上昇しましたが、買いが続かず25,476.63で終了しました。Micronの決算を前に半導体株へ慎重な売りが出たほか、AI向け設備投資の急拡大が将来の利益に見合うのかという疑問も残っています。FRBの追加利上げ観測が消えていないことも、将来利益への期待で買われるグロース株には厳しい条件です。ただし、AI需要そのものが消えたわけではなく、現在は「AIなら何でも買う相場」から、利益率や財務体質を選別する段階へ移っていると感じます。
  • ドル円(161.8090円、前日比+0.17%)
    ドル円は161.5310円で始まり、一時161.8430円まで上昇しました。FRBが年内に追加利上げへ動く可能性を市場が織り込み始め、米ドル指数が約13か月ぶりの高水準へ上昇したことがドル買いにつながっています。一方、日本側では円安への警戒発言が続いているものの、日米金利差を反転させるほどの政策材料は乏しく、円は弱い状態です。161円台後半は過去の円安水準に近く、為替介入への警戒も必要です。米国株を円建てで保有する投資家には評価額を押し上げますが、円高へ反転した場合の影響も忘れない方がよいでしょう。

原油先物・米10年国債利回り・VIX・金先物の動き

  • WTI原油先物(70.01ドル、前日比-4.37%)
    WTI原油先物は大幅に下落し、一時69.63ドルまで値を下げました。ホルムズ海峡を通過するタンカーの動きが改善し、米国とイランの協議によって供給障害が緩和するとの期待が広がったためです。原油安はエネルギー株の収益には逆風ですが、企業の輸送費や消費者のガソリン代を抑え、インフレ再加速への不安を和らげます。株式市場全体では、航空、旅行、小売、住宅関連へ資金が移りやすい環境となりました。
  • 米10年国債利回り(4.402%、前日比-2.03%)
    米10年国債利回りは4.398%まで低下し、4.402%で取引を終えました。原油価格の急落によって、エネルギー価格を起点とするインフレ再燃への警戒が後退し、米国債を買う動きが強まりました。FRBの追加利上げ観測は残っていますが、長期金利の低下は住宅ローン金利や企業の資金調達コストを抑える方向に働きます。ただし、この日は大型ハイテク株より住宅や景気敏感株への資金移動が目立ち、金利低下だけでNASDAQが上昇する相場ではありませんでした。
  • VIX指数(19.63、前日比+0.72%)
    VIX指数は小幅に上昇し、取引時間中には20.34まで上がりました。原油安と長期金利低下は株式市場に好ましい組み合わせでしたが、大型ハイテク株の下落やFRBの追加利上げ観測、今後発表されるインフレ指標を前に慎重な姿勢も残りました。終値は警戒水準とされる20を下回っており、投資家が全面的にリスク回避へ傾いた状況ではありません。私は、指数の小幅な変化より、セクター間の資金移動が激しくなっている点を見ています。
  • 金先物(4,003.10ドル、前日比-3.53%)
    金先物は一時3,975.70ドルまで下落し、約7か月ぶりの安値圏へ入りました。FRBが高金利政策を長く続け、追加利上げに動く可能性が高まったことに加え、ドル高によって米ドル建ての金が割高になったためです。金は利息を生まないため、金利上昇観測が強まる局面では資金が流出しやすくなります。地政学リスクが続いていても金が売られた点は、市場が安全資産需要より金利とドルを優先したことを示します。長期的な分散資産として保有する場合も、短期の急落は想定しておく必要があります。

私の米国株ポートフォリオ

私の米国株ポートフォリオは、前日比-0.28%となりました。eMAXIS Slim米国株式(S&P500)が-1.42%、MAXISナスダック100上場投信が-0.67%となり、投資信託を中心に前日の米国市場の弱さが反映されました。一方、1655と2558のS&P500連動ETF、GX超短期米国債の下落は小幅にとどまり、全体では比較的落ち着いた値動きです。

この日はiFreeETF FANG+(316A)を買い増しました。大型ハイテク株には調整色がありますが、AIやクラウドなどの成長テーマが長期的に崩れたとは考えていません。短期的な上下を当てにいくのではなく、価格が下がった局面で少しずつ保有を増やす方針を続けています。

経済指標発表結果

  • 新築住宅販売戸数(58.0万戸、前月比-7.3%)
    5月の新築住宅販売戸数は年率58.0万戸となり、市場予想の63.8万戸、前回の62.6万戸を大幅に下回りました。住宅ローン金利が6%台後半にとどまり、住宅価格も高いため、購入希望者の慎重姿勢が続いています。在庫も増加しており、米国住宅市場の減速が鮮明になりました。景気の過熱を抑える数字であるため米国債利回りには低下要因ですが、住宅関連企業の収益には厳しい内容です。ただし、この日の住宅株は政策関連の報道でも動いており、指標だけで株価を判断しない方がよいでしょう。
  • 米週間原油在庫(-608.8万バレル)
    原油在庫は608.8万バレル減少し、市場予想の390.0万バレル減を上回る大幅な取り崩しとなりました。クッシング在庫も107.7万バレル減少しています。一方、ガソリン在庫は206.4万バレル増、留出油在庫も306.4万バレル増となり、燃料需要の強さには疑問が残りました。原油在庫の減少だけなら原油高要因ですが、この日はホルムズ海峡を通る輸送正常化への期待が強く、WTI原油は下落しました。株式市場では、原油安によるインフレ圧力の緩和とエネルギー株の下落が同時に進みやすい内容です。
  • 経常収支(-2,268億ドル)
    2026年第1四半期の経常赤字は2,268億ドルとなり、市場予想の2,120億ドルを上回りました。前回値も2,211億ドルへ修正され、赤字は前四半期から2.6%拡大しています。海外との貿易や配当、利払いなどを合計した収支が悪化したことを示しますが、米国株への直接的な影響は限定的でした。米ドルは基軸通貨(国際取引で中心的に使われる通貨)であり、経常赤字だけで直ちにドル安へ向かう状況ではありません。長期的には海外資金への依存度を確認する指標として見ておきたいところです。
  • 建築許可件数(141.0万件、前月比-0.9%)
    5月の建築許可件数は年率141.0万件となり、市場予想の141.3万件をわずかに下回りました。前月比では-0.9%となり、住宅ローン金利の高止まりや建設費の上昇を受け、住宅供給側も慎重になっていることが分かります。ただし、戸建て住宅の許可件数には小幅な改善もみられ、住宅建設が全面的に崩れているわけではありません。新築住宅販売の大幅減少と合わせると、FRB(米連邦準備制度)が高金利を長く維持した場合、住宅市場の回復がさらに遅れる可能性があります。

主要銘柄の決算発表結果

  • MU:Micron Technology, Inc.(先端技術(Technology))
    Micronは、調整後EPSが25.11ドルと市場予想の20.49ドルを大幅に上回り、売上高も414.6億ドルと予想の356.9億ドルを大きく超えました。AIデータセンター向けHBM(高帯域幅メモリー)をはじめ、DRAMやNANDの需要拡大と供給不足による価格上昇が業績を押し上げています。通常取引では-0.44%でしたが、決算発表後の時間外取引では+9.44%まで急伸しました。市場の期待値が極めて高い中でも、それを超える成長を示した点が評価されています。
  • PAYX:Paychex, Inc.(工業・産業(Industrials))
    給与計算や人事管理サービスを提供するPaychexは、調整後EPSが1.32ドルとなり、市場予想の1.31ドルをわずかに上回りました。売上高も16.1億ドルと予想の16.0億ドルを小幅に超え、企業の給与計算や福利厚生管理への安定した需要を確認できる内容です。ただし、市場予想との差は小さく、通常取引で-1.72%、時間外取引でも-0.58%となりました。業績悪化というより、株価に織り込まれていた期待を上回る新鮮な材料が不足した反応と考えられます。

主な経済ニュース

  • Micron決算がAIメモリー需要の強さを再確認
    Micronは調整後EPSが25.11ドル、売上高が414.6億ドルとなり、いずれも市場予想を大幅に上回りました。AIサーバーに不可欠なHBM(複数のメモリーを積層し、高速でデータを処理する半導体)の需要拡大と供給不足が収益を押し上げています。通常取引では-0.44%でしたが、時間外取引では+9.44%まで上昇しました。AI投資の成長性を裏付ける一方、今後は高い期待に見合う供給力と利益率を維持できるかが焦点です。(Bloomberg:06/24)
  • OpenAIが独自AI半導体「Jalapeño」を発表
    OpenAIはBroadcomと共同開発した推論用AI半導体「Jalapeño」を発表しました。推論とは、学習済みAIが利用者の質問に回答する処理です。製造はTSMC、システム統合はCelesticaが担当し、NVIDIA製GPUへの依存軽減と計算コスト削減を目指します。AI投資の恩恵がGPUメーカーだけでなく、ASIC(特定用途専用半導体)、受託製造、通信、電源、冷却設備へ広がる流れを示すニュースです。(Reuters:06/24)
  • Cerebras急落が示したAI銘柄選別の厳しさ
    AI半導体企業Cerebrasは、2026年通期の調整後粗利益率を38~41%と予想し、第1四半期の47%から低下する見通しを示したため、株価が約14%下落しました。売上高の成長だけではなく、量産コストや利益率まで厳しく評価される相場へ変化しています。AI関連であっても、市場の高い期待を下回れば大幅安になる点は、現在の先端技術(Technology)セクターの過熱感と選別色を象徴しています。(Reuters:06/24)
  • 米大手32銀行がFRBストレステストを通過
    FRBのストレステスト(深刻な景気後退を想定して銀行の耐久力を調べる検査)では、対象となった大手32銀行がすべて最低資本基準を維持しました。想定損失は7000億ドルを超えましたが、中核的な資本比率は12.8%から11.2%への低下にとどまっています。銀行システムの健全性が確認され、今後の増配や自社株買いへの期待につながります。ただし、今年の結果は資本規制へ直接反映されないため、株主還元は慎重になる可能性があります。(Reuters、WSJ:06/24)
  • プライベートクレジットの解約増加が金融株を圧迫
    Apolloの260億ドル規模のプライベートクレジットファンドでは、投資家から運用資産の16.8%に相当する解約請求があり、実際の換金を5%に制限しました。Blackstoneなどでも同様の動きが続いています。換金しにくい融資資産を保有しながら、投資家には定期的な解約機会を提供する構造には、流動性リスク(必要な時に現金化できない危険)があります。Apollo、Blackstone、Aresなどが5%以上下落し、金融(Financial)セクターの不安材料となりました。(Reuters、MarketWatch:06/24)
  • 住宅供給拡大法案で住宅建設株が急伸
    米議会が住宅建設の規制緩和や環境審査の迅速化を含む住宅供給拡大法案を可決し、住宅建設株が大幅に上昇しました。PHLX住宅指数は+5.4%となり、PulteGroup、D.R. Horton、Lennarなどが急伸しています。トランプ大統領は署名をいったん延期しましたが、拒否権を行使せず議会が開会中なら、一定期間後に成立する可能性があります。住宅販売の低迷が続く中、市場は短期の需要より、中長期的な供給拡大を先に評価しました。(Reuters:06/24)
  • ホルムズ海峡の原油輸送回復で原油が急落
    米エネルギー長官は、過去24時間に約2000万バレルの原油がホルムズ海峡を通過し、輸送量が平常時に近づいたと説明しました。米国とイランの暫定的な合意や、船舶へ通行料を課さないとの説明も供給不安を和らげ、WTI原油先物は70.01ドル、前日比-4.37%まで下落しました。エネルギー(Energy)株には厳しい一方、原油安はインフレ、輸送費、企業コストを抑えるため、株式市場全体にはプラスとマイナスが混在します。(Reuters:06/24)
  • 原油安を受けて航空・旅行・住宅関連へ資金移動
    原油価格の急落によって航空燃料や輸送費の低下が期待され、United Airlines、Booking Holdings、Expediaなど旅行関連株が大きく上昇しました。住宅供給拡大法案への期待も重なり、Home Depotや住宅設備関連にも買いが広がっています。一方、大型ハイテク株とエネルギー株は軟調でした。指数だけを見ると小幅な値動きですが、市場内部ではAI・半導体から、旅行、住宅、消費関連へ活発な資金循環が起きています。(Reuters:06/24)
  • FRB追加利上げ観測でドル高・金安が進行
    インフレの高止まりと米国経済の底堅さを背景に、FRBが再び利上げするとの予想が強まり、ドル指数は約13か月ぶりの高値へ上昇しました。ドル円は161円台後半まで円安が進み、金先物は前日比-3.53%となっています。金は利息を生まないため、政策金利の上昇予想とドル高が同時に進む局面では売られやすくなります。日本の米国株投資家には円建て評価額を押し上げますが、為替介入や円高反転にも注意が必要です。(Reuters:06/24)
  • SK Hynixが米国で最大294億ドルの上場計画
    韓国のSK Hynixは、NASDAQへのADR(米国預託証券)上場を通じて最大294億ドルを調達する計画を示しました。調達資金はHBMや先端メモリーの工場建設、製造装置への投資に振り向けられる見通しです。AIデータセンター需要の拡大が、Micronだけでなく世界のメモリーメーカーへ巨額設備投資を促していることが分かります。一方、供給能力が急速に増えれば、将来的には価格競争や供給過剰へ転じる可能性もあるため、設備投資額だけでなく需要の持続性を見る必要があります。(Reuters:06/24)

経済指標発表予定

以下の経済指標が発表される予定です。

主要銘柄の決算発表予定

以下の主要銘柄の決算発表がなされる予定です。

おわりに

S&P500とNASDAQは小幅安でしたが、Dow30は上昇し、指数以上にセクター間の資金移動が目立つ一日でした。原油と金が大きく下落する一方、住宅、旅行、ヘルスケア関連には買いが入りました。さらに、Micronの好決算からは、AI向けメモリー需要が依然として強いことも確認できました。

毎日の相場では主役が入れ替わります。長期投資では、そのたびに売買を繰り返すより、分散を保ちながら市場に居続けることが大切だと感じています。本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

それでは、今日も一日、明るく元気に笑顔で過ごしましょう。

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おことわり

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図表のレファレンス

  • S&P500ヒートマップ: finviz
  • 主要3指数とドル円:  Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
  • セクター別騰落率: finviz
  • 経済指標結果/予定: investing.com日本語版
  • 決算発表結果/予定: investing.com日本語版
  • 主要指数の動き : Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
  • 自分の米ドル建ポートフォリオ:  Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ

著者プロフィール

室井一夫(Kazuo Muroi)
Muroi Universal Research on Investment LLC 代表社員
一級建築士・建築1級施工管理技士・工学修士
Facebookグループ「米国株_投資の部屋」管理人(約4.7万人)

米国株式市場と経済動向に関する情報を毎日発信しています。


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