室井のマーケット視点
8月18日の米国株式市場は、S&P500が-0.69%、Dow30が-0.22%、NASDAQが-1.33%となり、主要3指数がそろって下落しました。WTI原油先物は84.10ドルへ+0.43%、米10年国債利回りは終値では4.706%へ低下しましたが、取引時間中には一時4.746%まで上昇しています。私は、この「終値では金利低下なのに、株は大きく下がった」というところが、この日の相場を見る重要なポイントだと思っています。
とはいえ、S&P500が-0.69%だったという数字だけでは、市場内部で起きた変化は見えてきません。先端技術(Technology)は-2.51%、工業・産業(Industrials)は-1.82%、素材(Basic Materials)は-1.49%となった一方、ヘルスケア(Healthcare)は+1.40%、エネルギー(Energy)は+1.09%、生活必需品(Consumer Defensive)は+0.95%でした。市場から資金が一斉に逃げたというより、これまで大きく上昇してきたAI・半導体・データセンター関連から、安定した利益を出しやすい分野へ資金が移った一日と見ています。
特に目立ったのが、Coherent-12.75%、Lumentum-9.87%、Seagate-9.18%、Sandisk-9.01%、Ciena-8.90%でした。さらにMicron、Marvell、Western Digitalなども大幅安です。少し前まで相場の主役だったメモリー、ストレージ、光通信が、今度は下落率上位に並びました。AI需要が1日で消えたわけではありません。金利上昇をきっかけに、将来の高い成長まで株価に織り込んでいた銘柄から、いったん利益を確定する動きが広がったと考える方が自然です。
もう一つ興味深いのが、Vertiv-6.80%、GE Vernova-6.90%、Comfort Systems USA-7.55%、Eaton-5.29%と、AIデータセンターを支える設備関連株まで大きく下落したことです。私はデータセンターの建設や改修工事に携わってきましたが、AIはGPUだけでは動きません。受変電設備、無停電化、バックアップ電源、空調、水冷、高速通信など、大量の設備投資が必要です。ただし「需要が増えること」と「株価がどこまでも上がること」は同じではありません。今回はその当たり前のことを市場が思い出したように感じます。
経済指標も一方向ではありませんでした。7月の住宅着工件数は123.9万件と予想134.0万件を大きく下回り、中古住宅販売保留も前月比-2.3%でした。一方、建築許可件数は144.3万件と予想137.0万件を上回り、鉱工業生産も+0.2%を維持しています。さらにアトランタ連銀GDPNowは第3四半期成長率を+4.0%と推計しています。住宅は高金利の影響を受けていますが、米国経済全体が急速に景気後退へ向かっているデータでもありません。
そこで厄介なのが原油と金利です。中東情勢を背景にWTI原油先物は84ドル台を維持しています。原油高が長引けばガソリン、輸送費、製造コストへ波及し、インフレを再び押し上げる可能性があります。そうなるとFRBは金融緩和へ動きにくくなります。この日は米10年国債利回りが途中で4.74%台まで上昇したところで、高PER(株価収益率が高い銘柄)のAI・半導体株が強く売られました。終値だけを見ると4.706%まで下がっていますから、日中の値動きを見ないと株安の理由を見誤ります。
VIX指数は+4.08%の15.81でした。これだけAI関連株が大きく下落したにもかかわらず、VIXはまだ20を大きく下回っています。私はここにも今回の相場の性格が表れていると思います。市場全体が恐怖で売られたのではなく、高くなり過ぎた銘柄を中心に株価評価を修正している段階です。実際、Targa Resourcesは+7.13%、Insuletは+5.96%となり、買われる銘柄にはきちんと資金が向かっています。
私自身のポートフォリオも-0.79%となり、FANG+やNASDAQ100の下落がS&P500連動資産より大きくなりました。しかし、こういう日は長期投資では何度もあります。コロナショックでは何日も続けて大幅安となりましたが、それでも私は積立を止めませんでした。1日の株価から将来を予測するより、企業利益、設備投資、現金収入、そして市場全体のお金がどこへ移動しているのかを見る方が大切だと考えています。
8月18日の相場を一言で表すなら、「AI需要の失速」ではなく「AI関連株の株価評価の調整」ではないでしょうか。半導体、メモリー、光通信、電力設備、冷却設備まで同時に売られたからこそ、今後は実際の利益成長によって高い株価を正当化できる企業と、期待が先行し過ぎていた企業との差がさらに明確になると思います。私はそこを見ながら、ETFを中心に市場全体の成長を長い目で追い続けます。
投資は自己責任にてお願いします。
S&P500ヒートマップ
5%以上上昇したS&P500構成銘柄
- TRGP:Targa Resources Corp.(エネルギー) +7.13%
Targa Resourcesは、ExxonMobilとの大型契約発表を受けて大幅高となりました。パーミアン盆地で3つの天然ガス処理施設を建設し、20年間にわたり集荷・処理サービスなどを提供する計画です。AIデータセンターの電力需要増加に伴い天然ガス需要の拡大も期待されており、エネルギーインフラ企業としての成長余地が改めて評価されました。 - PODD:Insulet Corporation(ヘルスケア) +5.96%
インスリンポンプ「Omnipod」を手掛けるInsuletは反発しました。8月上旬に米国販売の鈍化を理由として2026年の売上高成長見通しを引き下げ、株価が急落していましたが、その後は売られ過ぎた水準から買い戻す動きが続いています。直近決算ではEPSが市場予想を上回っており、中長期的な糖尿病治療機器需要への期待も残っています。
5%以上下落したS&P500構成銘柄
- COHR:Coherent Corp.(先端技術) -12.75%
AIデータセンター向け光通信関連として急上昇してきた反動から、大幅な利益確定売りとなりました。この日は米長期金利が急上昇し、フィラデルフィア半導体指数も5%超下落しました。AI関連株の高い株価評価への警戒も強まり、光通信分野の中でも特に上昇率が大きかったCoherentに売りが集中しました。 - LITE:Lumentum Holdings, Inc.(先端技術) -9.87%
AI向け高速光通信需要への期待から株価が大きく上昇していたため、半導体・光通信株全体の調整局面で利益確定売りが膨らみました。米長期金利の上昇によって高PER(株価収益率)の成長株が売られやすくなったことに加え、AI関連投資への期待が先行し過ぎているとの警戒も影響しました。 - STX:Seagate Technology Holdings PLC(先端技術) -9.18%
AIデータセンター向けストレージ需要への期待から直前まで上昇していたメモリー・記憶装置関連株が一斉に売られました。前日までSandisk、Western Digital、Micronなどとともに買われていただけに、その反動も大きくなりました。業績悪化というより、金利上昇をきっかけとしたAIハードウェア株全体のポジション調整と見ています。 - SNDK:Sandisk Corporation(先端技術) -9.01%
前日に約9%上昇するなど、AI需要を背景としたメモリー株人気の中心となっていましたが、この日は一転して大幅安となりました。米長期金利の急上昇とAI関連株への利益確定売りが重なり、短期資金が急速に流出しました。需要環境そのものが急変したというより、短期間に上昇した反動の色が濃い下落です。 - CIEN:Ciena Corporation(先端技術) -8.90%
AIデータセンター間を接続する高速ネットワーク需要への期待から大幅に上昇してきましたが、光通信関連株全体への利益確定売りに巻き込まれました。CoherentやLumentumと同じく、AIインフラ投資の拡大を先取りして株価評価が高まっていたため、長期金利上昇をきっかけにバリュエーション調整(株価評価の見直し)が進みました。 - TER:Teradyne, Inc.(先端技術) -8.77%
半導体試験装置を手掛けるTeradyneは、半導体株全般の急落に連動して大きく下落しました。AI向け先端半導体の生産拡大から試験装置需要への期待が高まっていましたが、この日は米国債利回りの上昇を背景に成長株から資金が流出しました。個別の悪材料より、半導体セクター全体の調整による影響が大きかったと考えられます。 - JBL:Jabil Inc.(先端技術) -8.45%
サーバーやデータセンター向け電子機器製造でAI投資拡大の恩恵を受ける銘柄として買われてきましたが、この日はAIインフラ関連株全体の調整に押されました。金利上昇による株価評価の見直しに加え、急ピッチで上昇していた銘柄から利益を確定する動きが強まりました。業績よりも市場全体の資金移動の影響が大きい下落です。 - MRVL:Marvell Technology, Inc.(先端技術) -7.82%
AI向けネットワーク半導体やカスタム半導体への成長期待から買われてきたMarvellも、半導体株の全面安に巻き込まれました。米10年国債利回りが高水準へ上昇したことで高PER銘柄への警戒が強まりました。AI関連の長期的な需要見通しが崩れたわけではありませんが、市場の期待値が高かった分だけ調整幅も大きくなっています。 - GLW:Corning Inc.(先端技術) -7.68%
AIデータセンター向け光ファイバー需要の拡大を背景に上昇していたCorningは、光通信関連株の利益確定売りに押されました。Coherent、Lumentum、Cienaなどが大幅安となる中、AIネットワーク関連として一括して売られた形です。光ファイバー需要の長期的な拡大期待とは別に、短期的な株価上昇の反動が表れました。 - FIX:Comfort Systems USA, Inc.(工業・産業) -7.55%
データセンター向け空調・電気設備需要の拡大を背景にAIインフラ関連株として大きく上昇してきました。この日はAI関連株全般の調整に加え、高い株価評価への警戒から利益確定売りが強まりました。データセンター建設需要自体は続いていますが、急速に上昇した設備関連株にも株価水準を見直す動きが広がっています。 - FLEX:Flex Ltd.(先端技術) -7.51%
データセンター向け電源や電子機器製造などAIインフラ投資の恩恵を受ける企業として買われてきましたが、この日は関連銘柄から資金が流出しました。半導体、光通信、サーバー関連まで幅広く売られており、Flexにも利益確定売りが波及しました。個別企業の業績悪化というよりAIハードウェア株全体の調整色が強い動きです。 - WDC:Western Digital Corporation(先端技術) -7.43%
前日までAIデータセンター向け記憶装置需要への期待から大きく買われていましたが、一転して利益確定売りが優勢となりました。Sandisk、Seagate、Micronなどメモリー・ストレージ関連がそろって急落しています。米長期金利の上昇に加え、短期間で上昇したAIハードウェア株の過熱感を冷ます動きと見るのが自然です。 - CVNA:Carvana Co.(一般消費材) -7.26%
CarvanaはAI関連株とは異なる固有要因で下落しました。大株主の一人を巡る連邦当局の調査報道を受け、市場では保有株が売却される可能性への警戒が強まりました。同社株はもともと値動きが大きく、株価評価も高いため、需給悪化への懸念が出ると売りが加速しやすい状況となっています。 - MU:Micron Technology, Inc.(先端技術) -6.99%
AI向けHBM(高帯域幅メモリー)需要への期待から直近5営業日で大幅上昇していた反動で、利益確定売りが強まりました。米長期金利上昇による半導体株全体の調整に加え、メモリー価格が将来的に低下する可能性への警戒もあります。ただしAIサーバー向けメモリー需要そのものは依然として強く、短期的な調整の側面が大きいと見ています。 - GEV:GE Vernova Inc.(工業・産業) -6.90%
発電設備や電力インフラ需要の拡大を背景にAIデータセンター関連銘柄として大幅に上昇してきましたが、この日は利益確定売りに押されました。長期金利上昇で高評価の成長株が売られる流れが、電力設備関連にも広がりました。AIによる電力需要増加という長期テーマは変わりませんが、株価上昇の速さに対する調整が入った形です。 - VRT:Vertiv Holdings Co.(工業・産業) -6.80%
AIデータセンター向け電源・冷却設備の代表的な銘柄として大きく上昇してきたため、この日のAIインフラ株調整で利益確定売りが集中しました。高い成長期待を株価が織り込んでいるだけに、長期金利上昇時には値動きが大きくなりやすい銘柄です。データセンターの電力・液冷需要という事業環境そのものが急変したわけではありません。 - APH:Amphenol Corporation(先端技術) -6.61%
高速通信コネクターなどを提供し、AIデータセンター需要の拡大から評価を高めてきましたが、光通信・半導体関連株とともに売られました。AIサーバーでは高速で大量のデータを送る接続部品も不可欠ですが、この日は事業内容よりもAIインフラ関連株全体の利益確定が優勢でした。株価上昇後のバリュエーション調整と考えられます。 - INTC:Intel Corporation(先端技術) -6.58%
Intelもフィラデルフィア半導体指数が5%超下落する全面安の影響を受けました。AI半導体分野での競争力回復や製造事業再建への期待から買われる局面もありましたが、長期金利上昇で半導体株への投資家心理が悪化しました。収益力の回復途上にある企業だけに、市場全体がリスク回避に傾くと売られやすい面があります。 - AKAM:Akamai Technologies, Inc.(先端技術) -6.32%
クラウド配信やサイバーセキュリティを手掛けるAkamaiは、先端技術セクター全体への売りに押されました。長期金利の上昇によって成長株の株価評価が低下する中、クラウド関連にも資金流出が広がっています。明確な個別悪材料よりも、AI・クラウド関連を含むTechnology銘柄全体のリスク縮小の影響が大きかったと考えられます。 - MPWR:Monolithic Power Systems, Inc.(先端技術) -5.85%
AIサーバー向け電源管理半導体への期待から高い株価評価を受けているため、半導体株全体の下落局面で売りが強まりました。PERが高い成長株は長期金利上昇の影響を受けやすく、将来利益の現在価値が低下すると考える投資家が増えます。AI向け需要への期待は残りますが、高い期待値ゆえに値動きも大きくなっています。 - TEL:TE Connectivity plc(先端技術) -5.71%
データセンター、自動車、産業機器向け接続部品を手掛けるTE Connectivityは、AIインフラ・電子部品関連株への利益確定売りに巻き込まれました。高速データ通信や電力設備の増設は中長期的な需要拡大要因ですが、この日は米長期金利上昇を受けて成長期待の高い電子部品株全体で株価評価を引き下げる動きが優勢でした。 - KEYS:Keysight Technologies Inc.(先端技術) -5.58%
通信・半導体向け電子計測機器を手掛けるKeysightは、半導体と通信関連株の全面安に連動しました。AIデータセンターや高速通信網の拡大は計測機器需要にもつながりますが、この日は光通信株や半導体関連株から一斉に資金が流出しています。個別材料よりもTechnologyセクター全体の急速な利益確定の影響が大きかったとみられます。 - NRG:NRG Energy, Inc.(公益事業) -5.57%
NRG Energyは、直近決算で金利負担の増加などから利益が市場予想を下回っており、高金利環境への警戒が残っています。この日は米長期金利が一段と上昇したため、借入金負担の大きい電力会社には厳しい環境となりました。AIデータセンターによる電力需要増加という期待はあるものの、金利上昇による資金調達コストとの綱引きが続いています。 - KLAC:KLA Corporation(先端技術) -5.33%
半導体製造工程の検査装置で高い競争力を持つKLAも、半導体株の全面安を受けて下落しました。AI向け先端半導体の設備投資拡大は中長期的な成長要因ですが、この日は米国債利回り上昇によって半導体製造装置株にも利益確定売りが広がりました。業績悪化というより、セクター全体の株価評価調整の影響が中心です。 - ETN:Eaton Corp. plc(工業・産業) -5.29%
AIデータセンター向け電力設備や配電機器需要への期待から上昇してきたEatonは、AIインフラ関連株の調整に巻き込まれました。データセンターではサーバーだけでなく受変電設備やバックアップ電源への大規模投資も必要ですが、市場はこれまでの高い成長期待をかなり織り込んでいます。長期金利上昇を契機に利益確定が進みました。 - Q:Qnity Electronics, Inc.(先端技術) -5.10%
半導体・電子材料関連株への売りが広がる中で、Qnity Electronicsも下落しました。AI関連ハードウェア株はこれまで強い成長期待から買われてきましたが、この日は米長期金利の上昇とフィラデルフィア半導体指数の急落を受け、関連銘柄全般で短期資金が流出しました。個別の明確な悪材料というより、セクター全体の調整による影響が中心とみられます。
セクター別騰落率
市場全体では、ヘルスケア(Healthcare)とエネルギー(Energy)が上昇する一方、先端技術(Technology)、工業・産業(Industrials)、素材(Basic Materials)が大きく下落し、明確な資金移動が見られました。特に半導体、AI、データセンター関連など、これまで上昇を続けてきた成長株への利益確定売りが強まりました。一方、景気や金利変動の影響を比較的受けにくいヘルスケアや生活必需品へ資金が移っており、市場のリスク選好がやや後退した一日だったと見ています。
- ヘルスケア(Healthcare) +1.40%
ヘルスケアは全11セクターで最も大きく上昇しました。AI・半導体など高成長株が大きく売られる中、医薬品や医療関連企業のように景気変動の影響を受けにくいディフェンシブ銘柄へ資金が移りました。米長期金利が高水準で推移し、成長株の株価評価への警戒が続く局面では、安定した利益や現金収入を持つ企業の相対的な魅力が高まりやすくなります。 - エネルギー(Energy) +1.09%
エネルギーはWTI原油先物が84ドル台で高止まりする中、堅調に推移しました。中東情勢を巡る供給不安が残っていることに加え、原油・天然ガス価格の高水準が石油・ガス企業の収益改善につながるとの期待があります。AIデータセンターの電力需要増加も長期的にはエネルギー需要を押し上げる要因です。先端技術株から資金が抜ける中で、エネルギーへの資金移動も目立ちました。 - 素材(Basic Materials) -1.49%
素材は大きく下落しました。AIデータセンターや電力網整備による銅などの需要拡大期待は続いていますが、この日は成長期待を背景に上昇してきた関連銘柄への利益確定売りが優勢となりました。さらに米長期金利が高水準にあることで、景気や設備投資の先行きへの慎重姿勢も出ています。AIインフラ投資という長期テーマと、短期的な株価調整を分けて見る必要がある局面です。 - 工業・産業(Industrials) -1.82%
工業・産業は大幅に下落しました。Vertiv、GE Vernova、Eaton、Comfort Systems USAなど、データセンター向け電力・冷却・設備関連として上昇してきた銘柄に利益確定売りが集中しました。AI投資ではGPUだけでなく建物、受変電設備、非常用電源、空調、水冷設備まで必要になりますが、その需要の強さと株価評価は別問題です。この日は高い成長期待を織り込んだ株価の見直しが進みました。 - 先端技術(Technology) -2.51%
先端技術は全セクターで最大の下落となりました。半導体、メモリー、光通信、電子部品などAIインフラ関連が幅広く売られ、Coherent、Lumentum、Seagate、Sandiskなどでは大幅安となりました。米長期金利が一時4.74%台まで上昇したことで、高PER(株価収益率が高い銘柄)の株価評価が厳しくなっています。AI需要が急減したというより、急上昇してきた銘柄の利益確定と株価評価の調整が同時に起きたと見ています。
主要3指数とドル円の動き
- S&P500(7,691.76、前日比-0.69%)
S&P500は3日続落となりました。中東情勢の緊張を背景に原油価格が高止まりし、インフレ再燃への警戒から米長期金利が上昇しました。特にAI・半導体関連株への利益確定売りが強まり、指数を押し下げています。一方、ヘルスケアや生活必需品などには資金が移っており、全面的なリスク回避というより、高値圏まで買われた成長株からの資金移動が中心です。長期投資家としては、指数の下落率以上に資金の行き先を見たい一日でした。 - Dow30(53,343.40、前日比-0.22%)
Dow30は小幅安にとどまり、NASDAQとの差が鮮明になりました。長期金利上昇や原油高という厳しい環境ながら、構成銘柄にはヘルスケア、生活必需品、景気敏感株などが多く、AI・半導体株の急落による影響が比較的小さかったためです。市場全体が崩れたというより、これまで上昇してきた先端技術株から安定収益型企業へ資金が移動した相場と見ています。指数分散の意味がよく表れた一日です。 - NASDAQ(26,289.71、前日比-1.33%)
NASDAQは主要3指数で最大の下落となりました。米国債利回りの上昇を受けて高PER(株価収益率が高い銘柄)の成長株が売られ、特に半導体、メモリー、光通信、AIデータセンター関連に大幅安が相次ぎました。Micron、Sandisk、Coherentなど、直前まで上昇の中心だった銘柄ほど下落が大きくなっています。AI需要そのものが急に弱まったというより、高値まで買われた銘柄の株価評価を見直す動きと考える方が自然です。 - ドル円(159.665円、前日比+0.18%)
ドル円は159円台後半まで上昇しました。米国では原油高によるインフレ再燃への警戒から長期国債利回りが上昇し、日米金利差を背景としたドル買いが入りました。一方、8月初めには日米当局による円買い介入が実施されており、160円台では再介入への警戒も強く、円安が一方向に加速しにくい状況です。米国株を円建てで保有する投資家には円安が評価額を押し上げますが、私は株価と為替を分けて見ています。
原油先物・米10年国債利回り・VIX・金先物の動き
- WTI原油先物(84.10ドル、前日比+0.43%)
WTI原油先物は小幅に上昇しました。米国とイランの対立が続き、ホルムズ海峡を巡る供給不安が消えていません。中東からの原油輸送が制約される状況が長引けば、原油価格は高止まりしやすくなります。株式市場にとっては、エネルギー株にはプラスでも、インフレ再燃から金利上昇につながる点が厄介です。8月18日は、この原油高が債券市場にも波及しました。 - 米10年国債利回り(4.706%、前日比-0.38%)
米10年国債利回りは終値では4.706%へ低下しましたが、取引時間中には4.74%台まで上昇し、2025年1月以来の高水準を付けました。中東情勢と原油高によるインフレ懸念に加え、世界的な長期債売りが重なっています。終盤には債券が買い戻され利回りは低下したものの、NASDAQや半導体株が大きく売られた背景には、この日中の金利急上昇があったと見ています。 - VIX指数(15.81、前日比+4.08%)
VIX指数は15.81へ上昇しました。水準そのものは20を下回っており、市場が強い恐怖状態に入ったわけではありません。ただ、この日は半導体やAI関連株が大きく下落し、中東情勢、原油高、長期金利上昇という複数の不安要因が重なりました。私は、VIXがまだ15台にとどまっている点から、全面的なリスク回避ではなく、高値圏の成長株を中心とした調整局面と見ています。 - 金先物(4,398.80ドル、前日比-1.67%)
金先物は大幅に下落しました。中東情勢が緊迫しているため本来なら安全資産として買われやすい局面ですが、この日は米国を中心に長期金利が急上昇しました。金は利息を生まないため、国債利回りが上がると相対的な魅力が低下します。原油高によるインフレ懸念が金を押し上げる力より、金利上昇による売り圧力の方が強かった一日です。長期的なインフレ対策と、日々の金価格の動きは分けて考えています。
私の米国株ポートフォリオ -0.79%(前日比)
私のポートフォリオは前日比-0.79%となりました。S&P500連動型では1655が-0.62%、2558が-0.67%、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)は-0.27%でした。一方、成長株の比率が高いiFreeETF FANG+は-1.64%、MAXISナスダック100上場投信は-1.10%と、NASDAQやAI関連株の下落がより強く反映されています。これに対し、GX超短期米国債は+0.28%となり、株式とは異なる値動きを見せました。今回はAI・半導体・光通信など、これまで上昇してきた銘柄に利益確定売りが集中した影響が大きかったと感じています。
私はETF中心の長期投資なので、1日の下落で投資方針を変えることはありません。むしろ、S&P500、NASDAQ、FANG+で下落率に差が出たことで、どこに売りが集中したのかが分かりやすい一日でした。
経済指標発表結果
- 住宅着工件数(123.9万件、予想134.0万件、前回141.5万件)
7月の住宅着工件数は年率123.9万件となり、市場予想を大きく下回りました。前月比でも-12.4%と急減し、高い住宅ローン金利や住宅価格、建設コストが住宅市場を圧迫していることが改めて確認されました。景気には弱い内容ですが、債券市場ではFRBの追加利上げ圧力を弱める方向に働きます。ただし、この日は原油高や世界的な長期金利上昇の影響が強く、株式市場を押し上げるまでには至りませんでした。 - 輸入物価指数(前月比-0.4%、予想+0.1%、前回-0.3%)
7月の輸入物価指数は前月比-0.4%となり、市場予想の+0.1%を大きく下回りました。海外から輸入する商品の価格低下は、米国内のインフレ圧力を和らげる方向に働きます。前年比でも+5.9%と前月の+7.1%から鈍化しました。ただ、この日は中東情勢を背景に原油価格が高止まりしており、市場は過去の輸入物価低下よりも、今後エネルギー価格が再びインフレを押し上げる可能性を警戒していました。 - 鉱工業生産(前月比+0.2%、予想+0.3%、前回+0.3%)
7月の鉱工業生産は前月比+0.2%と市場予想をわずかに下回りました。ただし製造業生産も+0.2%を維持し、米国の製造業が急速に失速している状況ではありません。特に半導体やハイテク設備などAI関連の設備投資が製造活動を支えています。一方で、この日はAI・半導体株が大きく下落しており、実体経済でのAI投資の強さと株価の短期的な調整が同時に起きた点が興味深いところです。 - 建築許可件数(144.3万件、予想137.0万件、前回137.4万件)
将来の住宅建設の先行指標となる建築許可件数は144.3万件となり、市場予想を上回りました。住宅着工件数が大きく落ち込んだ一方で、今後の建設計画まで全面的に悪化しているわけではないことを示しています。住宅市場では高金利による逆風が続いていますが、供給不足という構造的な問題もあり、住宅建設需要が完全に消えているわけではありません。弱い着工件数と強い許可件数が混在する結果となりました。 - 中古住宅販売保留(前月比-2.3%、予想+0.1%、前回-4.8%)
中古住宅の契約動向を示す販売保留件数は前月比-2.3%となり、市場予想を下回りました。住宅ローン金利が依然として高く、住宅購入者の負担が大きい状況が続いています。住宅は家具、家電、建材、金融など幅広い産業へ波及するため、低迷が長期化すると個人消費にも影響します。ただし前月の-4.8%からは下落幅が縮小しており、住宅市場が一段と急速に悪化しているとは言い切れません。 - アトランタ連銀GDPNow(2026年第3四半期+4.0%、前回+4.3%)
アトランタ連銀のGDPNowは第3四半期の実質GDP成長率を+4.0%と推計し、前回の+4.3%からやや引き下げました。それでも4%という成長率はかなり高く、住宅市場が弱い一方で米国経済全体は依然として底堅いことを示しています。景気が強ければ企業利益にはプラスですが、同時にFRBが金融引き締めを長く続ける余地も生まれます。この日の株式市場では、強い成長と高金利のどちらを重く見るかが改めて問われました。
主要銘柄の決算発表結果
- HD:The Home Depot, Inc.(一般消費材)
Home Depotは調整後EPSが4.92ドルとなり、市場予想の4.73ドルを上回りました。売上高も478.6億ドルと予想472.3億ドルを上回り、前年同期比では5.7%増となりました。米国既存店売上高も+1.3%とプラスを維持し、小規模な住宅改修需要の底堅さが確認されています。会社側は2026年度の業績見通しを据え置きました。通常取引では-0.12%と小動きで、時間外では+0.21%でした。住宅着工が弱い中でも業績を維持している点は、大型小売企業としての底力を感じます。 - KEYS:Keysight Technologies, Inc.(先端技術)
Keysight Technologiesは調整後EPSが3.07ドルとなり、市場予想2.48ドルを大幅に上回り、売上高も18.4億ドルと予想17.5億ドルを上回りました。特に通信部門の売上高は前年同期比43%増となり、AIインフラ、高速通信、半導体向け計測需要の強さが表れています。次四半期の売上高見通しも19.3億~19.5億ドル、調整後EPS3.34~3.40ドルと強気です。通常取引では半導体・AI関連株の全面安に巻き込まれて-5.58%でしたが、好決算を受け時間外では+3.38%へ反発しました。 - JKHY:Jack Henry & Associates, Inc.(金融)
金融機関向け決済・基幹システムを提供するJack Henryは、8月18日の取引終了後に2026年度第4四半期および通期決算を発表しました。添付データではEPSと売上高の実績値・市場予想が表示されていないため、ここでは数値比較は行いません。通常取引では+2.15%と上昇した一方、時間外では-0.08%とほぼ横ばいでした。市場が決算を大きな上振れ・下振れとは受け止めていないことが株価反応からうかがえます。銀行のIT化や決済システム更新という長期需要を確認したい銘柄です。
主な経済ニュース
- 世界的な国債売りで米長期金利が急上昇
米国、日本、欧州で国債売りが広がり、米30年国債利回りは一時5.32%台、米10年国債利回りも一時4.74%台まで上昇しました。背景には原油高によるインフレ懸念、各国政府の財政赤字、国債発行増加があります。高金利は将来利益の現在価値を低下させるため、PERの高いAI・半導体株には特に厳しい一日となりました。(Reuters:08/18) - AI・半導体株に大規模な利益確定売り
長期金利の急上昇をきっかけに、半導体やAIインフラ関連株が大幅に売られました。Micron、Marvell、Intel、Western Digital、Coherentなど、直前まで相場を牽引していた銘柄ほど下落率が大きくなっています。AI需要そのものが急減したというより、期待先行で上昇した株価のバリュエーション(企業価値評価)が見直された動きです。NASDAQが主要3指数で最も大きく下落した理由もここにあります。(Reuters:08/18) - 米国とイランの緊張再燃で原油供給不安
イラン側が強硬姿勢を強め、米国側も停戦合意の延長に否定的な姿勢を示したことで、中東情勢への警戒が再び強まりました。ホルムズ海峡を通る原油輸送への不安から原油価格は高止まりしています。原油高はエネルギー企業には利益増加要因ですが、米国経済全体では物価上昇から金利高につながるため、株式市場には複雑な影響を与えています。(Reuters:08/18) - AI投資の巨額債務負担に市場の警戒が強まる
大手テクノロジー企業によるAIデータセンター投資が急拡大する一方、その資金調達負担への懸念も強まっています。Amazon、Alphabet、Microsoft、Meta、Oracleなどでは、AI関連設備投資に伴う社債発行増加が注目されています。AIインフラ投資は成長の原動力ですが、電力、冷却、通信、半導体まで含めれば必要資金は巨額です。私はデータセンター建設の経験からも、需要の強さと投資採算は分けて見る必要があると考えています。(Reuters:08/18) - 住宅着工が急減し米住宅市場の弱さが鮮明
7月の住宅着工件数は前月比-12.4%の年率123.9万件となり、市場予想134.0万件を大きく下回りました。高い住宅ローン金利が購入や建設を抑えている状況です。一方、建築許可は予想を上回っており、住宅市場が全面的に失速しているわけではありません。金利上昇が実体経済へ与える影響を確認するうえで重要なデータです。(Reuters:08/18) - 製造業はAI設備投資を背景に底堅さを維持
7月の鉱工業生産は前月比+0.2%と市場予想+0.3%をわずかに下回りましたが、製造業生産はプラスを維持しました。AIデータセンター向け需要や半導体関連設備投資が製造活動を支えています。株式市場ではAI関連株が大幅安となりましたが、設備投資そのものが急速に縮小しているわけではありません。株価調整と産業需要を分けて見る必要があります。(Reuters:08/18) - Home Depotは予想を上回る決算も住宅市場には慎重
Home Depotは第2四半期売上高478.6億ドル、調整後EPS4.92ドルとなり、いずれも市場予想を上回りました。住宅ローン金利の高さから大規模リフォーム需要は弱いものの、修理や小規模改修需要が売上を支えています。住宅関連指標が弱い中でも消費者が必要な住宅支出を続けている点は、米国消費の底堅さを示しています。(Reuters:08/18) - 米国とカナダが関税を巡り期限直前の交渉
米国とカナダは追加関税を巡って協議を続けています。自動車、木材、食品など北米域内の幅広い産業が対象となる可能性があり、関税強化は企業コストと消費者物価の双方を押し上げます。インフレ再燃が懸念される局面では、通商政策もFRBの金融政策や長期金利へ波及するため、米国株投資家にとって無視できない材料となっています。(Reuters:08/18) - Anthropicの大型資金調達に注目
生成AI「Claude」を開発するAnthropicでは、IPO(新規株式公開)を見据えた大型の資金調達が注目されています。AIモデルの開発には計算能力、データセンター、電力、通信設備など巨額の資金が必要です。AI企業の成長が株式市場だけでなく銀行融資や社債市場まで動かしている点は、現在のAI投資規模の大きさを象徴しています。(Reuters・Bloomberg:08/18) - 資金は先端技術からヘルスケアとエネルギーへ移動
S&P500では先端技術(Technology)が大きく下落した一方、ヘルスケア(Healthcare)、生活必需品(Consumer Defensive)、エネルギー(Energy)には資金が流入しました。VIX指数も上昇しましたが15台にとどまっており、市場全体がパニック状態に入ったわけではありません。私は今回の動きを、AI相場の終わりではなく、高値銘柄から安定収益型企業への資金循環と見ています。(Reuters:08/18)
経済指標発表予定
以下の経済指標が発表される予定です。
主要銘柄の決算発表予定
以下の主要銘柄の決算発表がなされる予定です。
おわりに
8月18日の米国株市場は、AI・半導体関連株に大きな利益確定売りが入り、NASDAQを中心に厳しい一日となりました。一方で、ヘルスケアやエネルギーには資金が移っており、市場全体が崩れたというより、これまで上昇してきた銘柄からの資金循環が進んだと感じています。
長期投資では、こうした調整局面も避けて通れません。私自身、毎日の値動きよりも、米国企業の利益成長やAI投資が実際の需要につながっているかを見ながら、市場に居続けることを大切にしています。
毎朝このブログを読んでいただき、ありがとうございます。これからも個人運営で米国市場を追い続けていきます。
それでは、今日も一日、明るく元気に笑顔で過ごしましょう。
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投資は自己責任にてお願いします。
おことわり
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図表のレファレンス
- S&P500ヒートマップ: finviz
- 主要3指数とドル円: Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
- セクター別騰落率: finviz
- 経済指標結果/予定: investing.com日本語版
- 決算発表結果/予定: investing.com日本語版
- 主要指数の動き : Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
- 自分の米ドル建ポートフォリオ: Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
著者プロフィール
室井一夫(Kazuo Muroi)
Muroi Universal Research on Investment LLC 代表社員
一級建築士・建築1級施工管理技士・工学修士
Facebookグループ「米国株_投資の部屋」管理人(約4.7万人)
米国株式市場と経済動向に関する情報を毎日発信しています。
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