【20260724】米国株式市場 投資研究レポート

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室井のマーケット視点

7月24日の米国株式市場は、S&P500が+0.05%、Dow30が+0.46%、NASDAQが-0.64%となりました。指数だけを見れば小動きですが、市場内部では、半導体やAI関連株から不動産、金融、生活必需品、通信株へ資金が大きく移っています。特に目立ったのは、メモリー、ストレージ、光通信関連株の下落です。SanDisk、Coherent、Lumentum、Micron Technology、Western Digital、Seagate Technologyなどが大きく売られました。AI需要そのものが弱くなったというより、短期間で株価が上昇し、将来の利益をかなり先まで織り込んでいた銘柄に調整が入ったと見ています。とはいえ、Appleは上昇し、ServiceNow、Adobe、Workday、Accentureなどのソフトウェア・ITサービス株には買い戻しが入りました。現在の市場は「AI関連なら何でも買う」段階ではありません。半導体を大量に購入する企業よりも、AIを既存サービスへ組み込み、追加料金や業務効率化によって利益へ変えられる企業を選び始めています。

私が注目したのは、Digital Realty Trustが+11.01%となり、不動産(Real Estate)が+2.09%と全セクターで最大の上昇になったことです。AIデータセンターには半導体だけでなく、建物、電力、通信回線、冷却設備が必要です。私自身、データセンター工事に携わった経験がありますが、今後は水冷設備や複数の独立した電源系統など、止めないための設備投資が一段と増えるでしょう。AI投資の恩恵が、不動産や設備インフラへ広がっていることを示す動きです。

米国経済も弱くありません。7月のサービス業PMIは53.6と予想を上回り、新築住宅販売も62.8万戸まで増加しました。景気後退への不安は小さくなりますが、需要が強ければFRBが早期に利下げする必要も薄れます。米10年国債利回りは4.679%へ低下したものの、成長株にとっては依然として厳しい水準です。

原油は90.32ドルへ反落しましたが、中東情勢が落ち着いたわけではありません。原油高が長引けば、輸送費や製造費を通じて物価を押し上げ、企業の利益率や米金利に影響します。恐怖指数と呼ばれるVIX指数は18.58と20を下回っているため、市場全体が全面的な恐怖状態に入ったとは考えていません。ただし、原油、金利、地政学ニュースに対する株価の反応は大きくなっています。

日本人投資家にとって見逃せないのが、トランプ政権による対日関税の変更です。日本から米国へ輸出される商品への税率は、期限を迎えた一時的な10%から、新制度では12.5%へ引き上げられました。既存の関税を含めた合計税率を12.5%に抑える特例が設けられ、すでに12.5%を超える品目には追加されない仕組みですが、日本企業にとって負担が軽いとは言えません。米国向けの売上比率が高い自動車、機械、電子部品、素材関連企業では、関税分を販売価格へ上乗せすれば販売数量が減り、自社で負担すれば利益率が低下します。生産を米国へ移す動きが進む可能性もありますが、工場建設や人件費には大きな費用と時間が必要です。日本株だけでなく、米国株に投資する場合も、日本から部品や装置を調達する米国企業のコスト上昇を考える必要があります。

ドル円は163円台後半まで円安が進みました。円安は米国資産の円換算額を押し上げますが、日本企業にとっては関税負担を一部和らげる半面、原油や原材料の輸入価格を押し上げます。対日関税の引き上げと円安が同時に進むため、輸出企業でも一律に有利とは言えず、米国での販売価格、現地生産比率、為替予約によって差が広がるでしょう。

今週を振り返ると、エネルギー(Energy)は+3.49%、素材(Basic Materials)は+2.23%、公益事業(Utilities)は+1.71%となりました。一方、通信サービス(Communication Services)は-5.82%、一般消費材(Consumer Cyclical)は-5.43%です。大型IT企業やTeslaから、エネルギー、防衛、電力、素材、安定収益株へ資金が移っています。

私は、今回の下落をAI時代の終わりとは見ていません。企業のIT予算は、従来型ソフトウェアからAIサーバー、メモリー、ストレージ、高速通信網へ移っています。ただし、今後は将来の期待だけではなく、現在の利益、現金収入、設備投資負担、株価水準による企業選別がさらに厳しくなるでしょう。

ETF中心の長期投資では、1日や1週間の値動きに合わせて方針を変える必要はありません。コロナショックでも積立を止めなかった経験から、市場に居続けながら、資金がどの分野へ移っているのかを確認することが大切だと考えています。

投資は自己責任にてお願いします。

S&P500ヒートマップ

5%以上上昇したS&P500構成銘柄

  • IP:International Paper Company +11.21%
    紙・包装材大手のInternational Paperは、素材関連株への買いが広がる中で急伸しました。原材料価格や輸送費への警戒は残るものの、包装需要の安定と事業再編による収益改善への期待が高まりました。出来高も通常を大きく上回り、投資家の関心が集中した上昇です。
  • SW:Smurfit Westrock PLC +11.10%
    段ボールや紙製包装を手掛けるSmurfit Westrockは大幅高となりました。北米事業の収益改善や統合効果への期待に加え、景気が急激に悪化しなければ包装需要も維持されるとの判断が買いにつながりました。International Paperとそろって上昇し、紙・包装業界全体が見直されています。
  • SLB:SLB Limited +11.01%
    油田サービス大手のSLBは、原油価格が高水準で推移する中で急伸しました。中東情勢の長期化によって供給不安が続き、石油会社による探査・掘削投資が維持されるとの期待が高まっています。原油生産量だけでなく、海洋油田や設備保守への投資動向も同社の業績を左右します。
  • DLR:Digital Realty Trust +11.01%
    データセンターREIT(データセンターに投資する不動産投資信託)のDigital Realtyは急伸しました。生成AIの普及でサーバー収容能力、電力供給、通信回線への需要が増えており、データセンターの稼働率と賃料上昇への期待が強まりました。AI投資の恩恵が半導体から不動産へ広がった形です。
  • PKG:Packaging Corporation of America +8.76%
    段ボール原紙や包装製品を手掛けるPackaging Corporation of Americaは大幅に上昇しました。包装材は電子商取引や製造業の出荷量と関係が深く、需要の底堅さが景気への安心感につながりました。製品価格の改善と生産効率の向上による利益率回復も注目されています。
  • NOW:ServiceNow +7.44%
    企業向け業務管理ソフトウェアのServiceNowは反発しました。生成AIが既存ソフトウェア企業の業績を圧迫するとの懸念が続いていましたが、AIを業務自動化へ組み込み、契約単価を引き上げられる企業には見直し買いが入りました。高い成長期待に見合う利益拡大を続けられるかが焦点です。
  • VRSN:VeriSign +7.04%
    インターネットのドメイン管理を担うVeriSignは大きく上昇しました。景気変動の影響を比較的受けにくく、継続的な利用料収入を得られる事業構造が評価されています。先端技術株の中でも、設備投資負担が小さく、安定した現金収入を生み出す企業へ資金が向かいました。
  • GDDY:GoDaddy +6.32%
    ウェブサイト作成やドメイン登録サービスを提供するGoDaddyは上昇しました。中小企業のデジタル化需要に加え、AIを使ったウェブ制作や販売支援サービスの拡大が期待されています。広告だけに依存せず、契約更新による継続収入を持つ点も、相場が不安定な局面で評価されやすい特徴です。
  • ADBE:Adobe +6.10%
    画像・動画制作ソフト大手のAdobeは反発しました。生成AIによって従来型ソフトウェアの価値が低下するとの懸念から株価は調整していましたが、AI機能を既存製品へ組み込み、課金収入へつなげられるとの期待が戻りました。株価水準の低下による割安感も買いを呼び込みました。
  • ACN:Accenture +5.95%
    コンサルティング大手のAccentureは上昇しました。企業が生成AIを実際の業務へ導入するには、データ整理、システム接続、情報管理、人材教育が必要です。AI関連投資が半導体購入から業務改革へ移るにつれ、導入支援を担う同社の受注拡大が期待されています。
  • VZ:Verizon Communications +5.84%
    通信大手のVerizonは大幅高となりました。携帯電話事業の契約者動向や収益改善への期待に加え、高い配当利回りを持つ安定銘柄としても買われました。通信各社は5G投資の負担が続いてきましたが、設備投資の一巡と費用削減が進めば、現金収入の改善につながります。
  • WDAY:Workday +5.84%
    人事・財務管理クラウドのWorkdayは反発しました。生成AIによって企業向けソフトウェアが置き換えられるとの懸念が強まっていましたが、人事や会計データを持つ企業はAI機能を既存顧客へ追加販売できます。市場では、AIを脅威ではなく収益源へ変えられる企業の選別が進みました。
  • TMUS:T-Mobile US +5.67%
    携帯通信大手のT-Mobile USは大きく上昇しました。前日までの急落に対する買い戻しに加え、通信契約者の増加や安定した現金収入への評価が改めて高まりました。衛星通信との競争には警戒が必要ですが、地上通信網の速度、容量、利用料金では依然として強みがあります。
  • CTSH:Cognizant Technology Solutions +5.67%
    ITサービス大手のCognizantは上昇しました。企業がAIを導入するには、古いシステムの更新やデータベースの整理が欠かせません。私はBIMの活用でもデータベースの重要性を実感しましたが、AIも基礎となるデータが整って初めて能力を発揮します。こうした導入支援需要が注目されています。
  • INTU:Intuit +5.26%
    会計・税務ソフト大手のIntuitは反発しました。AIが会計ソフトを代替するとの不安から株価は大きく調整していましたが、膨大な会計データと顧客基盤を活用し、経理や税務作業を自動化できる企業として見直されました。成長率だけでなく、株価水準と実際の収益力を比べる動きです。
  • T:AT&T +5.10%
    通信大手のAT&Tは上昇しました。携帯電話契約者の増加や光回線事業の成長が評価され、通信サービス株への資金流入を代表する動きとなりました。派手な成長は期待しにくいものの、継続的な通信料金収入と配当を重視する投資家には、業績の安定性が魅力となります。
  • TRMB:Trimble +5.08%
    測量機器や建設向けソフトウェアを提供するTrimbleは上昇しました。建設現場の省人化やデジタル化が進み、測量データ、位置情報、3次元モデルを連携させる技術への需要が増えています。BIM(建物情報を一元管理する仕組み)や自動施工の普及を背景とする長期的な成長分野です。
  • HPQ:HP Inc. +5.06%
    パソコン大手のHPは上昇しました。パソコン需要の回復期待に加え、端末側でAI処理を行うAIパソコンの買い替え需要が注目されています。ただし、AIパソコンが本格的な販売増加へつながるには、利用者が価値を実感できるソフトウェアの普及が必要です。低い株価収益率も見直し買いにつながりました。

5%以上下落したS&P500構成銘柄

  • SNDK:SanDisk Corporation -10.79%
    データ保存機器大手のSanDiskは、S&P500構成銘柄の中で最大の下落となりました。AI向けデータセンター投資への期待からストレージ関連株は大きく上昇していましたが、株価水準の高さを警戒した利益確定売りが強まりました。AI需要そのものの失速というより、短期間で上昇した銘柄の持ち高調整と見るべき動きです。
  • COHR:Coherent Corp. -9.84%
    光通信部品大手のCoherentは大幅に下落しました。AIデータセンターではGPU間を高速接続する光通信技術の需要拡大が期待されていますが、同社株はその成長期待を先行して織り込んでいました。PER(株価収益率)も高く、半導体・光通信株全体への売りが広がる中で、利益確定売りが膨らみました。
  • CHRW:C.H. Robinson Worldwide -9.25%
    物流サービス大手のC.H. Robinson Worldwideは急落しました。原油価格の高止まりによる輸送コスト上昇や、企業の貨物需要が今後鈍化する可能性への警戒が強まりました。物流株は米国景気の変化を受けやすく、株価には景気減速とコスト上昇の両方が反映されたと考えられます。
  • LITE:Lumentum Holdings -8.47%
    光通信機器大手のLumentumは大幅安となりました。AIデータセンター向け通信需要への期待は続いていますが、株価は将来の高成長をかなり織り込んだ水準にありました。Coherentと同様に光通信関連へ利益確定売りが集中しており、市場はAI関連でも現在の利益と株価水準を厳しく比較しています。
  • INTC:Intel Corporation -7.89%
    半導体大手のIntelは大きく下落しました。AI半導体市場でNVIDIAやAMDに後れを取っていることに加え、大規模な工場投資による収益負担も続いています。事業再建への期待から株価が上昇していた反動もあり、半導体株全体が売られる中で、赤字が続く同社にはより強い売りが入りました。
  • WST:West Pharmaceutical Services -7.67%
    医薬品用包装・投与機器を手掛けるWest Pharmaceutical Servicesは下落しました。医薬品需要は比較的安定していますが、同社株は高い成長率を前提とした株価水準にあります。市場ではAIや通信株だけでなく、これまで安定成長で買われていた高PER銘柄にも利益確定売りが広がりました。
  • FLEX:Flex Ltd. -7.37%
    電子機器の受託製造を手掛けるFlexは大幅に下落しました。データセンターや通信機器向け需要への期待から買われていましたが、電子機器関連株全体の調整に巻き込まれました。AI投資拡大の恩恵を受ける企業でも、部品調達費や利益率の変動が大きいため、業績の確実性が改めて問われています。
  • MRVL:Marvell Technology -7.21%
    通信・データセンター向け半導体を手掛けるMarvell Technologyは下落しました。AI向けネットワーク半導体や特注半導体への成長期待は強いものの、PERは高く、市場の要求する成長水準も非常に高くなっています。半導体株から資金が流出する局面では、高成長期待銘柄ほど値下がりが大きくなりやすい状況です。
  • MU:Micron Technology -6.99%
    メモリー半導体大手のMicron Technologyは大幅安となりました。AIサーバー向けHBM(高速で大量のデータを処理するメモリー)の需要拡大期待から株価が上昇していましたが、メモリー市況の先行きや高値警戒から売りが強まりました。利益成長期待は高い一方、好材料をかなり織り込んだ後の調整です。
  • WDC:Western Digital Corporation -6.90%
    データ保存機器大手のWestern Digitalは下落しました。AIデータセンターの拡大に伴うストレージ需要への期待は続いていますが、SanDiskやSeagateとともに業界全体へ売りが広がりました。AI関連予算がサーバー、メモリー、ストレージへ移る流れは変わらないものの、株価の上昇速度が業績改善を上回っていました。
  • STX:Seagate Technology Holdings -6.75%
    ハードディスク大手のSeagate Technologyは大幅に下落しました。データセンターで保存されるデータ量の増加は長期的な成長要因ですが、株価はすでに高い利益成長を見込んだ水準でした。SanDiskやWestern Digitalと同時に売られており、ストレージ関連株への利益確定売りが鮮明になりました。
  • HOOD:Robinhood Markets -6.57%
    個人投資家向け証券サービスのRobinhood Marketsは下落しました。株式や暗号資産の取引活発化への期待から株価が上昇していましたが、相場の変動率低下や取引収入の伸び鈍化を警戒する売りが入りました。市場全体が方向感を欠く中で、高い成長期待を織り込んだ金融サービス株が調整しています。
  • TER:Teradyne -6.38%
    半導体検査装置大手のTeradyneは下落しました。AI半導体や先端パッケージ向け検査需要への期待は続いていますが、半導体設備株全体に利益確定売りが広がりました。設備投資関連は半導体メーカーの投資計画に左右されやすく、成長期待が高い局面ほど将来の受注鈍化への警戒も強くなります。
  • GLW:Corning -6.03%
    光ファイバーや特殊ガラスを手掛けるCorningは下落しました。AIデータセンター増設による光通信需要への期待から買われていましたが、光通信関連株全体の調整に巻き込まれました。データセンターでは高速通信網が不可欠ですが、この日の下落は需要見通しの悪化より、急上昇後の利益確定の色合いが強い動きです。
  • FIX:Comfort Systems USA -5.33%
    空調・電気設備工事大手のComfort Systems USAは下落しました。データセンター建設に伴う冷却設備や電力工事需要への期待から株価が上昇していましたが、高い株価水準への警戒が強まりました。AI施設では空冷だけでなく水冷設備も必要となりますが、長期テーマが強くても短期的な株価調整は避けられません。
  • MRNA:Moderna -5.17%
    医薬品大手のModernaは下落しました。新型コロナワクチン需要の減少後、新たなワクチンや治療薬の開発が業績回復の鍵となっていますが、赤字が続いており、研究開発費の負担も大きい状態です。将来の新薬承認に対する不確実性が高く、投資家は実際の収益回復を慎重に見ています。

セクター別騰落率

市場全体では、11セクターのうち7セクターが上昇し、4セクターが下落しました。不動産(Real Estate)が+2.09%と突出して上昇する一方、先端技術(Technology)は-1.45%となりました。大型ハイテク株や半導体株から、不動産、生活必需品、金融などへ資金が移る展開です。指数は小幅な動きでしたが、市場内部では成長株から割安株・ディフェンシブ株への資金循環が進みました。

  • 不動産(Real Estate) +2.09%
    不動産セクターは全11セクターの中で最大の上昇となりました。Digital Realty Trustが+11.01%と急伸し、セクター全体を押し上げています。AIデータセンター需要の拡大に加え、REIT(不動産投資信託)の高い分配利回りも再評価されました。先端技術株から利益確定資金が移り、不動産が単なる金利敏感セクターではなく、AIインフラの一角として買われた点が特徴です。
  • 先端技術(Technology) -1.45%
    先端技術セクターは全11セクターの中で最大の下落となりました。Appleが+3.55%と上昇した一方、Micron Technology、Intel、Marvell Technology、SanDisk、Western Digitalなど半導体・メモリー・ストレージ関連株が大幅安となりました。AI需要が失速したわけではなく、短期間に上昇した高PER(株価収益率が高い)銘柄から利益確定売りが広がり、企業ごとの利益成長と株価水準を見直す一日でした。

主要3指数とドル円の動き

  • S&P500(7,411.98、前日比+0.05%)
    S&P500は小幅上昇で取引を終えました。終値だけを見るとほぼ横ばいですが、Appleの上昇や不動産、生活必需品、金融への資金流入が、半導体やAI関連株の下落を補いました。市場全体から資金が逃げたのではなく、これまで上昇してきた先端技術株から割安株や安定収益株へ資金が移った一日です。長期投資家としては、指数の小幅上昇よりも市場内部の資金循環に注目したいところです。
  • Dow30(51,947.25、前日比+0.46%)
    Dow30は主要3指数の中で最も大きく上昇しました。金融、ヘルスケア、生活必需品など、安定した利益や配当を期待できる大型株が買われ、先端技術株の下落とは対照的な動きとなりました。高い成長率だけでなく、現在の利益、現金収入、株価水準を重視する企業選別が進んでいます。NASDAQが下落する中でDow30が上昇したことは、米国株市場全体に投資資金が残っていることを示しています。
  • NASDAQ(24,975.82、前日比-0.64%)
    NASDAQは下落しました。Micron Technology、Intel、Marvell Technology、SanDisk、Western Digitalなど、半導体、メモリー、ストレージ関連株への利益確定売りが広がりました。一方、Appleは大きく上昇しており、先端技術株が一律に売られたわけではありません。AI需要そのものの後退というより、急上昇した銘柄の株価水準と利益成長を見直す調整です。AI関連でも企業ごとの選別が一段と厳しくなっています。
  • ドル円(163.8540円、前日比+0.06%)
    ドル円は163円台後半まで上昇し、円安基調が続きました。米国の金利が高い状態にある一方、日本の金利上昇は緩やかとの見方から、金利差を狙ったドル買い・円売りが続いています。原油価格の高止まりも、エネルギー輸入国である日本の貿易収支を悪化させる要因となり、円には不利です。米国株へ投資する日本人には円建て評価額を押し上げますが、163円台は為替介入への警戒も必要な水準です。

原油先物・米10年国債利回り・VIX・金先物の動き

  • WTI原油先物(90.32ドル、前日比-2.03%)
    WTI原油先物は、前日の急騰に対する利益確定売りから90ドル台前半へ下落しました。高値92.83ドル、安値87.68ドルと日中の値幅は大きく、中東情勢や供給不安に敏感な状態が続いています。原油が90ドル台で高止まりすれば、輸送費や製造コストを通じて物価を押し上げるため、企業利益とFRBの金融政策への影響には注意が必要です。
  • 米10年国債利回り(4.679%、前日比-0.51%)
    米10年国債利回りは、一時4.691%まで上昇した後、4.679%へ低下しました。原油価格の反落によって、インフレ再加速への警戒がわずかに和らいだと考えられます。ただし、4.6%台後半は依然として高い水準です。将来の利益を先に織り込む高PER(株価収益率が高い)銘柄には厳しく、この日は半導体株から不動産や生活必需品へ資金が移りました。
  • VIX指数(18.58、前日比-0.64%)
    恐怖指数と呼ばれるVIX指数は18.58へ小幅に低下しました。一時19.05まで上昇しましたが、原油価格が反落し、S&P500とDow30がプラスで終えたことで、投資家の不安はやや落ち着きました。20を下回っているため、市場全体が全面的な恐怖状態に入ったとは言えません。ただし、中東情勢と米金利の変動が大きく、平常時より警戒感は残っています。
  • 金先物(4,055.30ドル、前日比+0.13%)
    金先物は小幅に上昇しました。米10年国債利回りの低下によって、利息を生まない金を保有する不利がやや小さくなったほか、中東情勢の長期化に備える安全資産需要も続いています。ただし、高値4,085.20ドルからは上昇幅を縮めており、全面的なリスク回避ではありません。私は純金を資産の5%程度保有する考え方は、インフレや地政学リスクへの備えとして有効だと考えています。

私の米国株ポートフォリオ -0.83%(前日比)

私の米国株ポートフォリオは-0.83%となりました。S&P500連動ETFは-0.67%前後、FANG+は-1.43%、NASDAQ100は-1.60%となり、7/23の先端技術株や半導体株の下落が素直に反映されています。Appleは上昇しましたが、メモリー、ストレージ、光通信関連への売りが広がり、成長株中心の資産には厳しい一日でした。一方、GX超短期米国債は+0.45%となり、株式とは異なる値動きで下落幅を和らげています。AI需要そのものが失速したとは考えていませんが、期待先行で上昇してきた銘柄は、利益成長や株価水準を改めて確認される局面に入っています。ETFを中心に分散しているため、1日の下落だけで方針を変えず、米国企業全体の長期的な利益成長を見ていきます。

経済指標発表結果

  • サービス業購買担当者景気指数(7月、53.6)
    サービス業PMIは53.6となり、市場予想の51.3と前回の51.2を上回りました。50を上回ると景気拡大を示すため、米国経済の中心であるサービス分野が想定以上に強いことを示しています。景気後退への不安を和らげる一方、需要の強さが物価上昇を長引かせる可能性もあり、FRBの早期利下げ期待には慎重な見方が残りました。
  • マーケット総合PMI(7月、53.6)
    製造業とサービス業を合わせた総合PMIは53.6となり、前回の51.9から上昇しました。米国の民間企業全体で生産活動が拡大していることを示し、企業利益や雇用の先行きには安心感を与える結果です。ただし、景気の強さは米金利の高止まりにつながりやすく、株式市場では景気敏感株が買われる一方、高PER(株価収益率が高い)銘柄には売りが出やすい状況となりました。
  • 製造業購買担当者景気指数(7月、53.8)
    製造業PMIは53.8となり、市場予想の54.4と前回の53.9をわずかに下回りました。それでも50を上回っており、製造業の拡大基調は維持されています。予想未達は景気過熱への警戒を和らげましたが、サービス業の強さが目立ったため、FRBがすぐに金融緩和へ転じるほど弱い内容ではありませんでした。半導体や設備投資関連では、需要の継続性を確認する材料となります。
  • 新築住宅販売戸数(6月、62.8万戸)
    新築住宅販売戸数は62.8万戸となり、市場予想の60.9万戸と前回の61.8万戸を上回りました。住宅ローン金利が高い中でも販売が増えたことから、米国の住宅需要は想定以上に底堅いと判断できます。不動産、住宅建設、建材、家電などには前向きな内容でした。一方、住宅市場の強さが続けば、FRBが金利を急いで引き下げる必要性は低下します。
  • 新築住宅販売(前月比+1.6%)
    新築住宅販売は前月比+1.6%となり、前回の-4.3%から改善しました。供給不足が続く中古住宅に比べ、新築住宅へ需要が流れている可能性があります。住宅関連株には安心感を与えましたが、米10年国債利回りが高水準にあるため、住宅市場が全面的に回復したと判断するには早いでしょう。長期投資家としては、販売件数だけでなく住宅価格と在庫の推移も確認したいところです。
  • 建築許可件数(6月、137.4万件)
    建築許可件数は137.4万件となり、市場予想の136.7万件を上回りましたが、前回の141.0万件からは減少しました。将来の住宅建設を示す先行指標として見ると、住宅需要は急失速していないものの、金利高が建設計画を抑えていることが分かります。住宅関連セクターには中立的な内容で、新築住宅販売の改善と合わせても、力強い回復というより底堅さを確認する結果でした。
  • 建築許可(前月比-2.6%)
    建築許可は前月比-2.6%となり、市場予想の-3.0%よりは良好でしたが、前回の-0.9%から減少幅が拡大しました。高い住宅ローン金利や建設費が、新規計画の負担となっている可能性があります。新築住宅販売は増えましたが、将来の供給を示す許可件数は弱く、住宅市場には強さと慎重さが混在しています。株式市場全体への影響は限定的でした。

主要銘柄の決算発表結果

  • XOM:Exxon Mobil Corporation(エネルギー(Energy))
    Exxon Mobilは、添付図ではEPSと売上高の実績が未表示でした。通常取引の株価は156.93ドルで+0.03%、時間外取引では157.20ドル、+0.17%と小幅に上昇しています。原油価格が下落した中でも株価は底堅く、事業規模の大きさと安定した現金収入が評価されたと考えられます。決算内容の判断は数値確認後に行う必要があります。
  • AXP:American Express Company(金融(Financial))
    American ExpressはEPSが4.53ドルとなり、市場予想の4.40ドルを上回りました。一方、売上高は196.4億ドルで予想の196.9億ドルをわずかに下回っています。利益は予想を超えましたが、売上高が期待に届かなかったため、通常取引の株価は-4.30%と大きく下落しました。時間外取引も-0.05%で、市場は利益より成長率を厳しく評価しました。
  • VZ:Verizon Communications Inc.(通信サービス(Communication Services))
    VerizonはEPSが1.30ドルとなり、市場予想の1.28ドルを上回りました。売上高は343億ドルで、予想の352.8億ドルを下回っています。それでも通常取引の株価は+5.84%と大幅に上昇しました。売上高の不足よりも、利益確保や通信契約者の動向、現金収入への安心感が優先されたようです。時間外取引では-0.28%と小幅に反落しました。
  • NEE:NextEra Energy Inc.(公益事業(Utilities))
    NextEra EnergyはEPSが1.15ドルとなり、市場予想の1.09ドルを上回りました。一方、売上高は75.3億ドルで予想の81.9億ドルを下回っています。通常取引の株価は-0.02%とほぼ横ばいでしたが、時間外取引では-0.87%となりました。利益は確保したものの、売上高不足が嫌われています。電力需要拡大という長期テーマと、足元の収益内容を分けて見る必要があります。
  • HCA:HCA Healthcare Inc.(ヘルスケア(Healthcare))
    HCA HealthcareはEPSが7.59ドルとなり、市場予想の7.40ドルを上回りました。売上高も202.3億ドルで、予想の193.8億ドルを大きく上回っています。通常取引の株価は+1.54%と上昇し、売上高と利益の双方が予想を超えたことが評価されました。ただし時間外取引では-1.10%となっており、好決算を受けた利益確定売りも見られます。
  • SLB:SLB Limited(エネルギー(Energy))
    SLBはEPSが0.55ドルとなり、市場予想の0.51ドルを上回りました。売上高も89.7億ドルで予想の86.7億ドルを超えています。通常取引の株価は+11.01%と急伸し、今回の決算発表銘柄の中でも市場の反応が特に大きくなりました。原油価格は下落しましたが、油田開発や設備保守への需要が利益へ結びついている点が評価されています。時間外では-0.46%でした。
  • CHTR:Charter Communications Inc.(通信サービス(Communication Services))
    Charter CommunicationsはEPSが10.66ドルとなり、市場予想の10.00ドルを上回りました。売上高は135億ドルで、予想の135.2億ドルをわずかに下回っています。通常取引の株価は-2.52%となり、利益の上振れよりも売上高の伸び悩みが強く反映されました。時間外取引は+0.09%と小幅に戻していますが、通信契約者数と収益成長の持続性が重要です。
  • LW:Lamb Weston Holdings Inc.(生活必需品(Consumer Defensive))
    Lamb WestonはEPSが0.87ドルとなり、市場予想の0.62ドルを大きく上回りました。売上高も17.7億ドルで、予想の16.9億ドルを上回っています。通常取引の株価は+0.81%と上昇しましたが、時間外取引では-0.36%となりました。決算は良好でしたが、市場の反応は限定的です。食品関連では原材料費や外食需要の変化が今後の利益率を左右します。

主な経済ニュース

  • 原油反落でインフレへの警戒がやや後退
    前日に100ドルを超えた原油価格は反落し、WTI原油先物は90.32ドルまで下落しました。中東からの供給不安が消えたわけではありませんが、エネルギー価格の急騰がいったん止まったことで、米国債利回りも低下しました。株式市場では不動産や生活必需品が買われる一方、前日まで上昇していたエネルギー株は伸び悩みました。(Reuters:07/24)
  • 米国株は指数横ばいでも内部では大きな資金移動
    S&P500は+0.05%、Dow30は+0.46%となりましたが、NASDAQは-0.64%でした。半導体、メモリー、ストレージ、光通信株から、不動産、生活必需品、金融、通信株へ資金が移っています。市場全体から資金が流出したのではなく、これまで上昇率の高かったAI関連銘柄から、利益や配当を確認しやすい企業へ資金を移す動きです。(Reuters:07/24)
  • AI設備投資の負担に投資家の視線が集まる
    AlphabetやTeslaが示した大規模なAI関連設備投資を受け、市場では投資額に見合う利益をいつ回収できるのかが厳しく問われています。生成AI需要そのものが消えたわけではありませんが、半導体、光通信、メモリー、データ保存関連株には利益確定売りが集中しました。現在は将来期待だけでなく、現金収入と設備投資負担を比較する段階に入っています。(Reuters:07/24)
  • 半導体・データ保存関連株が相次いで急落
    Micron Technology、Intel、Marvell Technology、SanDisk、Western Digital、Seagate Technologyなどが大きく下落しました。AIサーバーには大量のメモリーや保存装置が必要ですが、関連株はその成長期待を先行して織り込んでいました。私は今回の下落をAI需要の失速ではなく、急上昇した株価と実際の利益成長の差を調整する動きと見ています。(WSJ:07/24)
  • Intelは巨額投資への懸念から大幅安
    Intelは株価が-7.89%となりました。AI半導体や受託製造事業への期待はありますが、大規模な工場投資が利益と現金収入を圧迫するとの警戒が続いています。市場は売上高の増加だけでなく、設備投資の回収期間や利益率まで厳しく評価しています。AI関連であっても、投資負担が重い企業には慎重な姿勢が目立ちました。(WSJ:07/24)
  • トランプ政権の追加関税が企業利益の不安材料に
    米国は複数の貿易相手国を対象とする関税措置を進めており、世界的な貿易摩擦への警戒が続いています。関税は米国内の製品価格を押し上げる可能性があり、原油高と重なればインフレ再加速につながります。製造業、小売業、自動車関連企業では、調達コストの上昇を販売価格へ転嫁できるかが利益率を左右します。(Reuters:07/24)
  • サービス業と住宅市場が米国経済の底堅さを示す
    7月のサービス業PMIは53.6となり、市場予想の51.3を上回りました。新築住宅販売も62.8万戸と予想を超え、高金利下でも企業活動と住宅需要が維持されています。景気後退への不安を和らげる一方、需要の強さが続けばFRBは金利を急いで引き下げる必要がありません。株式市場には景気の強さと高金利継続という両面があります。(Investing.com:07/24)
  • 米10年国債利回りは低下しても高水準を維持
    米10年国債利回りは4.679%へ低下しました。原油価格の反落によってインフレ再加速への警戒がやや和らぎましたが、4.6%台後半は依然として高い水準です。高金利は将来の利益を先に織り込む高PER銘柄に不利に働きやすく、この日はNASDAQが下落しました。不動産や生活必需品へ資金が移った背景にも、株価水準の見直しがあります。(Reuters:07/24)
  • 米国とイランを巡る情勢が原油と株式を左右
    中東では紅海のタンカー航行や米国とイランの対立を巡る警戒が続いています。和平交渉への期待が出ると原油価格は反落しましたが、軍事衝突がホルムズ海峡や紅海の輸送へ広がれば、原油、物価、金利を通じて米国企業全体へ影響します。原油相場の値幅が大きく、地政学ニュースが株式市場の方向を変えやすい状態です。(Reuters:07/24)
  • 来週は巨大IT企業の決算とAI投資の採算性が焦点
    来週はMicrosoft、Amazon、Meta Platforms、Appleなど大型企業の決算発表が予定されています。市場は売上高やEPSだけでなく、AI向け設備投資がクラウド、広告、検索、電子商取引の利益へ結び付いているかを確認します。AI投資の長期的な成長性と、短期的な利益率低下を分けて判断することが重要です。(Reuters:07/24)

今週の動き

  • 今週の個別銘柄ヒートマップ総括
    今週は、AI関連株の中でも明暗が大きく分かれました。NVIDIAは+1.99%、Broadcomは+2.99%、AMDは+5.28%、Micron Technologyは+8.48%となる一方、Microsoftは-3.08%、Alphabetは-7.79%、Meta Platformsは-7.87%、Amazonは-6.12%、Teslaは-17.80%となりました。AI需要が止まったというより、巨額の設備投資に対して、いつ利益として回収できるのかを市場が厳しく見始めた1週間です。資金は半導体、エネルギー、防衛、通信、データ保存などへ分散しました。
  • 今週のセクター別騰落率総括
    セクター別では、エネルギー(Energy)が+3.49%で最大の上昇となり、素材(Basic Materials)が+2.23%、公益事業(Utilities)が+1.71%と続きました。中東情勢の長期化や原油高、電力・資源需要への期待から、実物資産やインフラ関連へ資金が移っています。一方、通信サービス(Communication Services)は-5.82%、一般消費材(Consumer Cyclical)は-5.43%、生活必需品(Consumer Defensive)は-1.57%でした。大型IT企業とTesla、Amazonの下落が指数以上に大きく、今週は成長期待だけでなく、現在の利益、現金収入、株価水準を重視する企業選別が進みました。

経済指標発表予定

以下の経済指標が発表される予定です。

主要銘柄の決算発表予定

以下の主要銘柄の決算発表がなされる予定です。

おわりに

今週の米国株市場は、指数だけを見ると小幅な動きでしたが、内部では大きな資金移動が起きました。AI関連株の中でも、半導体やメモリーが買われる一方、巨額の設備投資を続ける大型IT企業には厳しい評価が向けられています。原油高や中東情勢もあり、エネルギー、素材、公益事業へ資金が移った点も印象的でした。

長期投資では、短期の値動きよりも、企業が利益と現金を積み上げられるかを見続けることが大切です。今週もお読みいただき、ありがとうございました。

それでは、今日も一日、明るく元気に笑顔で過ごしましょう。

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おことわり

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図表のレファレンス

  • S&P500ヒートマップ: finviz
  • 主要3指数とドル円:  Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
  • セクター別騰落率: finviz
  • 経済指標結果/予定: investing.com日本語版
  • 決算発表結果/予定: investing.com日本語版
  • 主要指数の動き : Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
  • 自分の米ドル建ポートフォリオ:  Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ

著者プロフィール

室井一夫(Kazuo Muroi)
Muroi Universal Research on Investment LLC 代表社員
一級建築士・建築1級施工管理技士・工学修士
Facebookグループ「米国株_投資の部屋」管理人(約4.7万人)

米国株式市場と経済動向に関する情報を毎日発信しています。


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