【20260717】米国株式市場 投資研究レポート

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室井のマーケット視点

7月17日の米国株式市場は、S&P500が-1.01%、Dow30が-0.77%、NASDAQが-1.40%となりました。半導体や大型成長株が売られる一方、WTI原油先物は+4.51%、恐怖指数と呼ばれるVIX指数は18.77まで上昇し、中東情勢とインフレへの警戒が強まった一日です。とはいえ、今回の下落を米国経済そのものの失速と見るのは早いと思います。住宅着工件数は予想を大きく上回り、ミシガン大学消費者信頼感指数も改善しました。アトランタ連銀GDPNowは第2四半期の成長率を+1.7%と見込んでおり、米国経済は高金利の中でも成長を続けています。

市場内部で起きているのは、AI需要の消滅ではなく、AI関連銘柄の短期上昇に期待して資金を集中させる投資家が減ったことです。今週はMicron Technology、Applied Materials、Broadcomなど半導体関連株が大きく下落しました。一方、AppleとMicrosoftは上昇しており、検索、広告、クラウド、端末、業務ソフトなど既存事業から利益と現金を生み出せる巨大IT企業には資金が残りました。企業のIT予算も、従来型ソフトウェアからAIサーバー、メモリー、ストレージ、高速通信網へ移っています。ただし、市場は「AIに関係する」という理由だけでは評価しなくなりました。設備投資に対してどれだけ利益を生み、現金収入を増やせるのか。現在の株価が将来の成長をどこまで織り込んでいるのか。企業ごとの選別が厳しくなっています。

今週のセクター別では、先端技術(Technology)が-4.41%、工業・産業(Industrials)が-3.11%、通信サービス(Communication Services)が-2.43%となりました。一方、エネルギー(Energy)は+4.28%、不動産(Real Estate)は+2.69%、生活必需品(Consumer Defensive)は+1.12%です。市場全体から資金が消えたのではなく、短期上昇した成長株から、原油高の恩恵を受ける企業や比較的安定した分野へ移っています。

原油高には注意が必要です。WTI原油先物が81ドル台まで上昇すると、輸送費、製造費、生活費を通じて再び物価を押し上げる可能性があります。輸入物価指数も予想に反して上昇しました。米10年国債利回りは4.541%へ低下しましたが、依然として高PER(株価に対して利益が少なく割高と評価されやすい状態)の成長株には厳しい水準です。それでも、VIX指数は終値で20を下回っています。市場は全面的な恐怖状態ではありません。半導体株の下落は大きいものの、金融ではTravelersが好決算で+9.22%となり、エネルギーや生活必需品にも資金が向かいました。指数だけを見ると弱い相場ですが、その内側では業績、現金収入、配当、株価水準による資金の再配分が進んでいます。

私は、AI関連株の短期的な人気より、米国企業全体が利益を伸ばし続けられるかを重視しています。成長分野の主役は入れ替わりますが、S&P500へ投資すれば、その時々に利益を伸ばす企業が指数へ反映されます。個別銘柄の急変に振り回されず、米国経済と企業利益の成長を長期で取り込む姿勢を続けたいと思います。

投資は自己責任にてお願いします。

S&P500ヒートマップ

5%以上上昇したS&P500構成銘柄

  • TRV:The Travelers Companies +9.22% 損害保険大手のTravelersは、2026年第2四半期決算が市場予想を大幅に上回り、S&P500構成銘柄で最大の上昇となりました。自然災害による保険金支払いが前年同期より減少し、保険引受利益が拡大しました。債券を中心とする運用収益も増加しており、保険料収入と資産運用の両面で収益力の強さを示した決算です。先端技術株が売られる中、金融(Financial)へ資金が移る動きも加わりました。
  • STX:Seagate Technology Holdings +5.66% データ保存装置大手のSeagateは、前日に約10%下落した反動から買い戻されました。半導体株全体には売りが続きましたが、同社はAIデータセンターで必要となる大容量HDD(磁気を利用してデータを保存する装置)の需要拡大が続くとの評価から上昇しました。AIは計算処理だけでなく、学習用データや生成された情報を長期間保存する設備も必要です。短期的な値動きは荒いものの、AI投資がストレージ分野へ広がる構造は変わっていません。

5%以上下落したS&P500構成銘柄

  • ISRG:Intuitive Surgical -14.15% 手術支援ロボット「ダビンチ」を展開するIntuitive Surgicalは、売上高と利益が市場予想を上回ったものの、通期の手術件数成長率見通しを据え置いたことから急落しました。医療保険制度の変更によって手術需要が鈍る可能性も示され、市場が期待していた上方修正には届きませんでした。成長性の高い企業ほど決算前の期待値も高く、好決算だけでは株価が上がらない難しさが表れています。
  • CDNS:Cadence Design Systems -9.47% 半導体設計用ソフトウェア大手のCadence Design Systemsは、中国のAI企業がオープンソースの設計ツールを使って半導体設計工程を自動化したと伝わり、大幅安となりました。高額な専用ソフトウェアに依存しない設計手法が広がれば、同社の事業モデルや価格決定力に影響する可能性があります。PER(株価収益率)が77倍を超える高評価銘柄であり、新たな競争リスクに敏感に反応しました。
  • SNPS:Synopsys -7.85% 半導体設計用ソフトウェアを提供するSynopsysは、競合するCadenceと同様に、オープンソースのAI設計技術が既存のEDA市場へ与える影響を警戒されました。EDA(半導体の設計を自動化するソフトウェア)は高度な専門性を持つ一方、AIによる設計自動化が進めば競争環境が変わる可能性があります。PERが88倍を超えるため、将来の高成長を織り込んだ株価が修正されました。
  • NFLX:Netflix -7.26% 動画配信大手のNetflixは、前日に発表した決算で次の四半期の売上高と利益見通しが市場予想を下回り、売りが続きました。視聴時間に関する情報開示を今後減らす方針も、事業成長を判断する材料が少なくなるとして投資家の不安を招きました。広告付きプランなど新たな収益源は育っていますが、市場は会員数の増加だけでなく、利益成長を継続できるかを厳しく見ています。
  • AXON:Axon Enterprise -5.81% 警察向け電気ショック銃や装着型カメラ、クラウドサービスを展開するAxon Enterpriseは、成長株全体への売りが広がる中で下落しました。同社の長期的な売上成長への期待は高いものの、PERが200倍を超えており、現在の株価には大幅な利益成長が織り込まれています。金利上昇や市場心理の悪化が起きると、高PER銘柄は将来利益の評価が低下しやすく、値動きも大きくなります。
  • HOOD:Robinhood Markets -5.72% 個人投資家向け証券取引アプリを運営するRobinhoodは、NASDAQの下落と成長株からの資金流出を受けて売られました。株価は最近まで大きく上昇しており、決算発表を前に利益を確定する動きも出やすい状態でした。同社の収益は株式、暗号資産、オプション取引などの売買活動に左右されるため、市場心理が弱まる局面では業績への警戒も高まりやすくなります。
  • AMAT:Applied Materials -5.57% 半導体製造装置大手のApplied Materialsは、AI・半導体関連株に対する売りが世界的に広がり、大幅に下落しました。AI向け半導体の設備投資拡大という長期的な成長テーマは続いていますが、これまでの急上昇によって株価には強い成長期待が織り込まれていました。この日はエヌビディアやマイクロンなども下落しており、個別企業の問題というより半導体セクター全体の調整という側面が強い動きです。

セクター別騰落率

市場全体ではエネルギー(Energy)だけが明確に上昇し、その他の多くのセクターは下落した。原油価格の上昇によって石油・天然ガス関連へ資金が向かった一方、大型ハイテク株、半導体株、インターネット関連株には売りが広がった。通信サービス(Communication Services)と一般消費材(Consumer Cyclical)の下落が大きく、AI需要そのものの失速というより、株価上昇が続いた大型成長株からの利益確定と、原油高や金利への警戒が重なった一日である。

  • エネルギー(Energy) +1.46%
    WTI原油先物が上昇し、石油・天然ガス関連企業が買われた。中東情勢を巡る供給不安に加え、原油価格の上昇によってエネルギー企業の売上や利益が改善するとの期待が高まった。株式市場全体が下落する中でも、原油価格と業績の連動性が高い企業へ資金が移り、唯一1%を超えて上昇したセクターとなった。
  • 工業・産業(Industrials) -1.03%
    工業・産業セクターは、景気敏感株を中心に売られた。原油価格の上昇は輸送費や製造コストの増加につながるため、航空、物流、機械、建設関連企業の利益率低下が警戒された。AIデータセンター建設や電力設備投資という長期的な需要は続いているが、この日は景気やコスト上昇への不安が短期的に上回った。
  • 先端技術(Technology) -1.09%
    半導体株やソフトウェア株を中心に売りが広がった。エヌビディア、Applied Materials、Cadence Design Systems、Synopsysなどが下落し、AI関連株への利益確定がセクター全体を押し下げた。AI向け設備投資の成長見通しが崩れたわけではないが、株価上昇によってPER(株価収益率)が高くなった企業ほど、金利上昇や市場心理の悪化に敏感な状態となっている。
  • 一般消費材(Consumer Cyclical) -1.56%
    Amazon、Tesla、Netflixなど消費や娯楽に関連する大型株が売られ、セクターは大きく下落した。原油高はガソリン代や物流費を押し上げ、消費者が自由に使えるお金を減らす要因となる。高金利が自動車ローンや住宅関連支出にも影響する中、市場は米国消費の底堅さを評価しつつも、高価格商品や選択的消費の減速を警戒している。
  • 通信サービス(Communication Services) -2.13%
    通信サービスは全セクター中で最大の下落となった。Alphabet、Meta、Netflixなど指数への影響が大きい大型インターネット企業がそろって売られたためである。Netflixの決算後下落に加え、広告、動画配信、生成AI関連で高い成長を織り込んできた銘柄に利益確定が広がった。市場全体から資金が流出したというより、エネルギーや一部ディフェンシブ分野への資金移動が起きたと考えられる。

主要3指数とドル円の動き

7月17日の米国株式市場は、主要3指数がそろって下落しました。大型ハイテク株、半導体株、通信サービス株を中心に利益確定売りが広がり、NASDAQの下落率が最も大きくなりました。一方、原油高を受けてエネルギー株は上昇しており、市場全体から資金が一斉に流出したというより、成長株から資源関連株へ資金が移動した一日です。ドル円は162円台で小幅な円安となり、日米金利差と原油高による日本の貿易収支悪化への警戒が続いています。

  • S&P500(7,457.69、前日比-1.01%)
    S&P500は一時7,498.47まで上昇しましたが、その後は売りに押され、安値に近い水準で取引を終えました。エネルギー株は上昇したものの、先端技術(Technology)、一般消費材(Consumer Cyclical)、通信サービス(Communication Services)がそろって下落し、指数全体を押し下げました。市場全体の利益成長見通しが崩れたわけではありませんが、これまで上昇を主導してきた大型成長株の株価水準を見直す動きが強まっています。
  • Dow30(52,146.42、前日比-0.77%)
    Dow30は取引開始直後に52,610.97まで上昇したものの、その後は下落に転じました。大型ハイテク株に加え、工業・産業(Industrials)や金融(Financial)にも売りが広がり、景気敏感株を多く含むDow30も軟調でした。一方、Travelers Companiesのように好決算を発表した銘柄は大きく上昇しており、全面安というより企業業績による選別が進んだ相場です。
  • NASDAQ(25,520.24、前日比-1.40%)
    NASDAQは主要3指数の中で最も大きく下落しました。NVIDIA、Alphabet、Meta、Netflixのほか、半導体製造装置や半導体設計ソフトウェア関連にも売りが広がりました。AI需要そのものが弱まったというより、急上昇してきた銘柄から利益を確定する動きと、高PER(株価に対して利益が少なく割高と評価されやすい状態)銘柄への警戒が重なったと見ています。AI関連でも、現在の利益や株価水準による企業選別が厳しくなっています。
  • ドル円(162.3980円、前日比+0.03%)
    ドル円は162円台で小幅に上昇しました。取引時間中は162.1110円から162.5190円の範囲で推移し、方向感は限定的でした。米国の金利が高い状態にある一方、日本の金利上昇は緩やかで、日米金利差を背景としたドル買い・円売りが続いています。さらに原油価格の上昇は、エネルギー輸入国である日本の貿易収支を悪化させる可能性があり、円安要因となります。米国株へ円建てで投資する立場では、株価下落の一部を円安が和らげる構図です。

原油先物・米10年国債利回り・VIX・金先物の動き

株式市場が下落する中、原油、VIX指数、金がそろって上昇し、投資家の警戒感が強まった一日でした。米国とイランを巡る緊張から原油供給への不安が再燃し、資金は国債や金など比較的安全性の高い資産へ移動しました。米10年国債利回りは低下しましたが、今回は利下げ期待よりも株安を受けた債券買いの影響が強く、市場が景気と地政学リスクを同時に警戒していることが分かります。

  • WTI原油先物(81.81ドル、前日比+4.51%)
    WTI原油先物は一時82.07ドルまで上昇し、81.81ドルで取引を終えました。米国とイランの軍事的緊張が高まり、ホルムズ海峡を通る原油輸送が滞るとの不安が強まっています。原油高はエネルギー株の上昇につながる一方、輸送費や製造コストを押し上げ、インフレ再加速と企業利益の圧迫要因になります。株式市場には歓迎しにくい急上昇です。
  • 米10年国債利回り(4.5410%、前日比-0.61%)
    米10年国債利回りは4.5410%へ低下しました。半導体株を中心とする株安と地政学リスクの高まりを受け、安全性を求める資金が米国債へ向かり、債券価格の上昇とともに利回りが下がりました。ただし4.5%台は依然として高く、高PER(株価に対して利益が少なく割高と評価されやすい状態)の成長株には厳しい水準です。金利低下だけを株高要因と判断しにくい局面です。
  • VIX指数(18.77、前日比+12.19%)
    恐怖指数と呼ばれるVIX指数は18.77へ急上昇し、一時19.50まで上昇しました。大型ハイテク株や半導体株の下落に加え、中東情勢と原油高への不安が重なり、株価変動の拡大に備える動きが強まりました。ただし、一般に強い恐怖状態の目安とされる20は終値で下回っています。全面的な投げ売りではなく、上昇してきた成長株を中心とする調整と考えています。
  • 金先物(4,016.00ドル、前日比+0.60%)
    金先物は4,016.00ドルへ上昇し、一時4,028.90ドルをつけました。株安と米国・イラン情勢への警戒から、安全資産として金を保有する需要が増えました。米10年国債利回りの低下も、利息を生まない金の相対的な魅力を高めています。原油と金が同時に上昇したことは、市場がインフレと地政学リスクの両方へ備えている表れです。私は金を資産の一部に組み入れる意味が確認された一日と見ています。

私の米国株ポートフォリオ

私の米国株ポートフォリオは前日比-1.65%となりました。前日の米国市場でS&P500が-1.01%、NASDAQが-1.40%となった動きが、日本市場で取引されるETFや投資信託に反映されています。特にiFreeETF FANG+が-4.33%、MAXISナスダック100上場投信が-2.83%となり、大型ハイテク株やAI関連株の下落が大きく影響しました。一方、S&P500連動商品は-0.33%から-1.12%に収まり、分散効果が表れています。GX超短期米国債は+0.18%となり、株式とは異なる動きを見せました。

今回の下落は、AI関連銘柄の短期上昇に期待して資金を集中させる投資家が減り、利益成長や株価水準を見極める動きが強まった結果だと考えています。米国経済そのものは、雇用、個人消費、企業投資を背景に成長を続けています。私は短期的な人気の変化よりも、米国企業全体の利益成長を重視し、S&P500を中心としたETFへの分散投資を続けます。

経済指標発表結果

  • 輸入物価指数(6月、前月比+0.3%、予想-0.7%、前回+1.7%)
    輸入物価は市場予想に反して上昇しました。前年比でも+7.1%となり、前回の+6.7%から伸びています。原油や輸入品価格の上昇が国内物価へ波及すれば、FRB(米連邦準備制度)が利下げを急ぎにくくなります。株式市場では、特に高PER(株価収益率が高い)銘柄にとって金利高止まりへの警戒が強まりやすい内容でした。
  • 輸出物価指数(6月、前月比-0.6%、予想-0.4%、前回+1.2%)
    輸出物価は予想以上に低下し、前年比も+10.2%と前回の+11.2%から伸びが鈍化しました。輸入物価が上昇する一方で輸出物価は低下しており、価格動向にはばらつきがあります。市場全体としては、インフレ再加速を一方向に示す結果ではありませんが、原材料費や貿易コストの上昇が企業利益を圧迫する可能性は残っています。
  • 住宅着工件数(6月、142.7万件、予想131.0万件、前回119.9万件)
    住宅着工件数は予想を大きく上回り、前月からも増加しました。住宅ローン金利が高い状態でも建設活動が回復しており、米国経済の底堅さを示しています。住宅建設は木材、建材、住宅設備、金融など幅広い産業へ波及するため、景気後退懸念を和らげる内容です。一方、景気の強さが続けばFRBの利下げ時期が遅れる可能性もあります。
  • 建築許可件数(6月、136.7万件、予想140.0万件、前回141.0万件)
    将来の住宅着工の先行指標となる建築許可件数は、市場予想と前回を下回りました。足元の住宅着工は強かったものの、今後の供給拡大については慎重さが残っています。高い住宅ローン金利や建設費上昇が、新規計画を抑えている可能性があります。住宅市場は急減速していませんが、力強い拡大が続くとまでは判断しにくい結果です。
  • 製造業生産(6月、前月比0.0%、予想+0.1%、前回+0.1%)
    製造業生産は横ばいとなり、市場予想をわずかに下回りました。設備稼働率は76.1%と予想の76.2%を下回り、製造業全体に強い過熱感は見られません。AI関連の設備投資は続いているものの、一般製造業では高金利や原材料費上昇の影響が残っています。米国経済は成長を続けていますが、すべての産業が同じ勢いで拡大しているわけではありません。
  • ミシガン大学消費者信頼感指数(7月、54.4、予想51.0、前回49.5)
    消費者信頼感指数は予想を上回り、前回から大きく改善しました。速報値と確報値はいずれも上昇しており、消費者心理が持ち直しています。米国経済の約7割を占める個人消費が急速に悪化する可能性は後退しました。ただし、物価高や金利負担への不満は残っており、消費関連株全体が一様に強くなるというより、価格競争力のある企業が選ばれる状況です。
  • ミシガン大学期待インフレ率(7月、1年先+4.2%、5年先+3.3%)
    1年先の期待インフレ率は前回の+4.6%から低下しましたが、依然として高い水準です。5年先は+3.3%で前回と変わらず、長期的なインフレ心理は十分に落ち着いていません。期待インフレ率は、消費者が将来の物価上昇をどの程度予想しているかを示します。FRBにとっては、利下げを急ぐよりインフレ再燃を防ぐ姿勢を維持しやすい結果です。
  • アトランタ連銀GDPNow(第2四半期、+1.7%、前回+1.7%)
    GDPNowは第2四半期の実質成長率を+1.7%と推計し、前回から変わりませんでした。急成長ではありませんが、景気後退にも陥っておらず、米国経済が緩やかな成長を続けていることを示しています。今回の住宅着工や消費者心理の改善も、この見方と整合します。長期投資家としては、AI関連株の短期的な人気より、米国企業全体の利益成長が続くかを重視したいところです。

主要銘柄の決算発表結果

  • TRV:The Travelers Companies(金融)
    損害保険大手Travelersは、1株利益が10.26ドルと市場予想の5.34ドルを大幅に上回り、売上高も115.3億ドルと予想の112.6億ドルを超えました。自然災害に伴う保険金支払いが前年同期より減少し、保険引受利益と債券運用収益が改善しました。株価は通常取引で+9.22%と急伸し、時間外でも+0.22%となりました。相場全体が下落する中、利益の確実性が高い企業へ資金が向かう動きを象徴しています。
  • TFC:Truist Financial Corporation(金融)
    Truist Financialは、1株利益が1.23ドルと市場予想の1.08ドルを上回り、売上高も52.7億ドルと予想の52.4億ドルを超えました。投資銀行業務、証券取引、資産管理部門の収益が増え、資本市場の活発化が業績へ反映されています。一方、預金構成の変化などを理由に純金利収入の通期見通しを引き下げたため、株価は-1.41%となりました。時間外では+0.48%と小幅に戻しています。
  • FITB:Fifth Third Bancorp(金融)
    Fifth Third Bancorpは、1株利益が0.83ドルと市場予想の0.84ドルをわずかに下回った一方、売上高は32.6億ドルと予想の32.5億ドルを上回りました。買収効果や貸出資産から得る利息収入、資産管理・資本市場部門の手数料収入が増加しましたが、人件費やシステム関連費用も膨らみました。株価は-2.27%となり、時間外では+0.54%です。売上成長より、買収後の費用管理と利益率が厳しく評価されています。
  • RF:Regions Financial Corporation(金融)
    Regions Financialは、1株利益が0.68ドルと市場予想の0.63ドルを上回り、売上高も19.5億ドルと予想の19.4億ドルを超えました。高金利環境でも預金や貸出事業を安定的に運営し、収益は市場予想を上回りました。ただし、地域銀行には預金調達費用や貸倒れ増加への警戒が残っており、株価は-2.31%となりました。時間外でも-0.16%と軟調で、好決算より今後の信用コストが注目された結果です。

主な経済ニュース

  • 米国がイランへの攻撃を再開し原油が急騰
    米国がイランへの攻撃を再開したとの報道を受け、WTI原油先物は前日比+4.51%の81.81ドルまで上昇しました。中東からの供給が滞る可能性に加え、ホルムズ海峡を通る海上輸送への不安も再燃しています。エネルギー株は上昇しましたが、原油高は輸送費や製造コストを押し上げ、インフレと企業利益の両面で株式市場へ負担を与えます。(Bloomberg:07/17)
  • 半導体株が一斉安となりAI相場の短期期待が後退
    NVIDIAやApplied Materialsなど半導体関連株が売られ、NASDAQは-1.40%となりました。AI需要そのものが消えたわけではありませんが、短期間で株価がさらに上昇すると期待して資金を集中させる投資家は減っています。市場は将来の物語だけでなく、現在の利益、設備投資負担、現金収入、株価水準を企業ごとに見直す段階へ移っています。(Bloomberg:07/17)
  • 新たな技術革新への警戒が半導体設計ソフト株を直撃
    Cadence Design SystemsとSynopsysが大幅に下落しました。AIを使ったオープンソースの半導体設計技術が普及すれば、高額なEDA(半導体設計を自動化するソフトウェア)への依存が低下する可能性があります。現在のAIは既存企業の業績を伸ばすだけでなく、既存の事業モデルを崩す側面もあり、技術革新の恩恵を受ける企業と競争にさらされる企業の選別が進んでいます。(Bloomberg:07/17)
  • 米国株は週間でも下落し大型成長株への集中が修正
    米国株は週末にかけて下落し、S&P500はこの日-1.01%となりました。通信サービス(Communication Services)や一般消費材(Consumer Cyclical)、先端技術(Technology)から資金が流出する一方、エネルギー(Energy)は+1.46%となっています。米国経済の成長見通しが崩れたというより、限られた大型成長株へ集中していた資金が別の分野へ動き始めた相場です。(Bloomberg:07/17)
  • 米消費者信頼感が予想を上回り個人消費の底堅さを示す
    7月のミシガン大学消費者信頼感指数は54.4となり、市場予想の51.0と前回の49.5を上回りました。ガソリン価格への評価改善などが消費者心理を押し上げたとみられます。米国経済の約7割を占める個人消費が急激に落ち込む可能性は低下しました。大型ハイテク株が下落しても、米国経済全体は成長を続けているという見方と整合する結果です。(Bloomberg:07/17)
  • 輸入物価上昇でFRBの早期利下げ期待が後退
    6月の輸入物価指数は前月比+0.3%となり、市場予想の-0.7%に反して上昇しました。前年比も+7.1%へ加速しており、輸入コストの増加が国内物価へ波及する可能性があります。原油価格も急上昇したため、FRB(米連邦準備制度)が早期に利下げへ動く余地は広がっていません。高金利が長引けば、将来利益への期待で買われた高PER銘柄ほど影響を受けやすくなります。(Investing.com:07/17)
  • 住宅着工が予想を上回り米国景気の拡大が継続
    6月の住宅着工件数は142.7万件となり、市場予想の131.0万件を大きく上回りました。高い住宅ローン金利が続く中でも建設活動は回復しており、住宅設備、建材、金融など幅広い産業への需要が続いています。一方、建築許可件数は136.7万件と予想を下回ったため、今後も同じ勢いで住宅供給が増えるとは限りません。足元の米国景気は減速より成長継続に近い状態です。(Investing.com:07/17)
  • 米国債が週間上昇しインフレへの過度な悲観が後退
    米国債には買いが入り、米10年国債利回りは4.541%へ低下しました。消費者の1年先期待インフレ率が前回の4.6%から4.2%へ下がったことで、インフレが一段と加速するとの不安はやや和らぎました。ただし5年先期待インフレ率は3.3%で変わらず、FRBが目標とする2%を上回っています。金利低下は株式に有利ですが、この日は地政学リスクによる安全資産需要の影響も大きい動きでした。(Bloomberg:07/17)
  • ヘッジファンドが原油への強気姿勢を急速に強める
    ヘッジファンドは原油価格の上昇を見込む買い持ちを約10年ぶりの速さで増やしたと報じられました。中東情勢の緊迫化に加え、米国の石油掘削設備数が長期間減少していないことから、需要と供給の両面を見極める動きが続いています。投機資金の流入は原油上昇を加速させる可能性がありますが、反対のニュースが出た場合には急速な巻き戻しも起こり得ます。(Bloomberg:07/17)
  • AI関連のレバレッジ商品で個人投資家の損失が拡大
    AI関連株の上昇を前提に、値動きを数倍に拡大するレバレッジ型商品へ資金を投じた個人投資家が、相場反落によって大きな損失を抱えたと報じられました。AIという長期成長テーマが正しくても、短期間の株価上昇を前提に借入効果を使う投資は別問題です。私は個別株の急騰を追うより、S&P500などのETFを通じて米国企業全体の利益成長へ投資する方が再現性は高いと考えています。(Bloomberg:07/17)
  • Travelersの好決算が金融株の企業選別を鮮明にする
    損害保険大手Travelersは、1株利益が10.26ドルと市場予想の5.34ドルを大幅に上回り、株価は+9.22%となりました。自然災害による保険金支払いの減少と運用収益の増加が利益を押し上げています。一方、好決算だった地域銀行株の一部は下落しました。市場全体が弱い日でも、実際の利益と現金収入を伸ばした企業には資金が向かっており、決算による選別が強まっています。(Reuters:07/17)

今週の動き

  • 今週の個別銘柄ヒートマップ総括
    今週は半導体株とAI関連株の下落が目立ち、NVIDIAは-3.86%、Broadcomは-7.29%、Micron Technologyは-13.31%、Applied Materialsは-12.09%となりました。AI需要の長期的な拡大が否定されたわけではなく、短期的な株価上昇を期待して資金を集中させる投資家が減り、現在の利益や株価水準を見直す動きが強まったと見ています。一方、Appleは+5.84%、Microsoftは+2.26%となり、既存事業から安定した利益と現金収入を生み出せる企業には資金が残りました。エネルギー株や金融株も上昇し、市場のお金がAI・半導体一辺倒から複数の分野へ移動した1週間です。
  • 今週のセクター別騰落率総括
    セクター別ではエネルギー(Energy)が+4.28%で最大の上昇となり、不動産(Real Estate)が+2.69%、生活必需品(Consumer Defensive)が+1.12%と続きました。中東情勢を受けた原油高によってエネルギー株が買われる一方、株価変動を抑えたい資金は不動産や生活必需品へ向かっています。反対に先端技術(Technology)は-4.41%、工業・産業(Industrials)は-3.11%、通信サービス(Communication Services)は-2.43%となりました。米国経済そのものは成長を続けていますが、短期的な値上がり期待より、利益の確実性や配当、株価水準を重視する相場へ変化したと考えています。

経済指標発表予定

以下の経済指標が発表される予定です。

主要銘柄の決算発表予定

以下の主要銘柄の決算発表がなされる予定です。

おわりに

今週の米国株式市場は、AI・半導体株の下落が目立つ一方、エネルギー、不動産、生活必需品へ資金が移る展開となりました。短期的な値上がり期待は弱まりましたが、米国経済は住宅、雇用、個人消費を背景に、なお成長を続けています。

長期投資では、人気の移り変わりを追いかけるより、米国企業全体の利益成長を見て、市場に居続けることが大切だと思っています。毎朝このブログを続けられるのも、読んでくださる皆さまのおかげです。

それでは、今日も一日、明るく元気に笑顔で過ごしましょう。

ご参考になりましたらこちらから応援いただけると嬉しいです。

おことわり

投資は自己責任にてお願いします。
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図表のレファレンス

  • S&P500ヒートマップ: finviz
  • 主要3指数とドル円:  Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
  • セクター別騰落率: finviz
  • 経済指標結果/予定: investing.com日本語版
  • 決算発表結果/予定: investing.com日本語版
  • 主要指数の動き : Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
  • 自分の米ドル建ポートフォリオ:  Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ

著者プロフィール

室井一夫(Kazuo Muroi)
Muroi Universal Research on Investment LLC 代表社員
一級建築士・建築1級施工管理技士・工学修士
Facebookグループ「米国株_投資の部屋」管理人(約4.7万人)

米国株式市場と経済動向に関する情報を毎日発信しています。


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