【20260707】米国株式市場 投資研究レポート

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室井のマーケット視点

7月7日の米国市場では、S&P500が-0.45%、Dow30が-0.25%、NASDAQが-1.16%となり、主要3指数はそろって下落しました。特に目立ったのは、Intel、AMD、Marvell、KLA、Lam Research、Applied Materialsなど、半導体や半導体製造装置を中心とした先端技術株の大幅安です。とはいえ、私は今回の下落を、AI需要そのものが失速した動きとは見ていません。半導体、メモリー、光通信、電源設備、冷却設備などは、AIデータセンター投資の拡大を背景に短期間で急上昇してきました。PER(株価収益率)も高くなっていたため、原油高と長期金利上昇をきっかけに、いったん利益を確定する動きが広がったのではないかと考えています。

実際、S&P500のセクター別では、先端技術(Technology)が-1.95%、素材(Basic Materials)が-2.15%、工業・産業(Industrials)が-2.78%となる一方、エネルギー(Energy)は+2.84%、ヘルスケア(Healthcare)は+1.37%、不動産(Real Estate)は+1.02%となりました。市場全体から資金が引き揚げられたのではなく、上昇が続いていた分野から、原油高の恩恵を受ける企業や業績の安定した分野へ資金が移った一日でした。

この日の相場の動きを考察する上で無視できないのが、WTI原油先物の+5.15%という急騰です。ホルムズ海峡周辺の緊張やイラン産原油を巡る制裁強化への警戒が原油価格を押し上げました。原油高はエネルギー企業の利益にはプラスですが、輸送費、製造費、電力費を通じて幅広い企業のコストを増やします。消費者インフレーション期待も3.5%から3.7%へ上昇し、米10年国債利回りは4.529%まで上がりました。金利が上昇すると、将来の大きな利益を前提に評価されている高PER銘柄ほど売られやすくなります。今回、AI・半導体関連の中でも、成長期待をかなり先まで織り込んでいた銘柄の下落率が大きかったのは、この金利上昇が影響したと考えられます。

一方で、恐怖指数と呼ばれるVIX指数は16.15にとどまっています。VIXは投資家の不安心理を表す指標ですが、一般に警戒水準とされる20を下回っており、市場が全面的な恐怖状態に陥ったわけではありません。指数の下落以上に、急騰した銘柄の持ち高調整とセクターローテーション(投資資金が別の業種へ移ること)が中心だったと判断できます。

市場では、上昇が続けば「まだ上がる」と考え、下落すれば「相場が終わった」と考えがちです。しかし、長期投資では1日の下落を物語として大きく解釈するより、企業利益、設備投資、金利、物価の流れを確認することが重要です。

投資は自己責任にてお願いします。

S&P500ヒートマップ

5%以上上昇したS&P500構成銘柄

  • CTSH:Cognizant Technology Solutions Corporation(先端技術) +6.21%
    企業のAI導入や業務効率化を支援するITサービス需要への期待から、大きく上昇しました。同社はAIを軸とした事業構造への転換とコスト削減を進めており、低いPER(株価収益率)にも割安感を見いだす買いが入りました。前日に下落していた反動もあり、買い戻しが上昇幅を広げたとみられます。
  • OXY:Occidental Petroleum Corporation(エネルギー) +5.88%
    原油価格の上昇に連動して、収益が原油相場に左右されやすいOccidental Petroleumへ買いが集まりました。同社は原油価格が上昇するとキャッシュフロー(事業から得られる現金)が改善しやすく、負債削減や株主還元への期待も高まります。エネルギー株全体への資金流入も株価を押し上げました。
  • CBOE:Cboe Global Markets Inc.(金融) +5.53%
    株式やオプション取引の活発化による取引収入の拡大期待から、取引所運営大手のCboeが上昇しました。市場変動が続く局面では、投資家のリスク回避やヘッジ(価格変動への備え)のためにオプション取引が増えやすくなります。前日の下落からの反発に加え、今後の取引時間拡大による成長余地も評価されたようです。
  • GILD:Gilead Sciences, Inc.(ヘルスケア) +5.21%
    HIV治療薬と感染予防薬を中心とする安定した収益力が再評価され、株価は大幅に上昇しました。主力薬の販売拡大に加え、買収を通じたがん、自己免疫疾患、細胞治療分野の開発強化にも期待があります。成長株の一部から、利益と配当を確保しやすい大型医薬品株へ資金を移す動きも見られました。
  • DVN:Devon Energy Corporation(エネルギー) +5.08%
    原油価格の上昇を受け、米国の石油・天然ガス生産を手掛けるDevon Energyが買われました。同社は商品価格の変動が業績へ反映されやすく、原油相場の回復は利益とフリーキャッシュフロー(自由に使える現金)の改善につながります。配当利回りの高さもあり、エネルギー株への資金回帰が鮮明になりました。

5%以上下落したS&P500構成銘柄

  • INTC:Intel Corporation(先端技術) -9.66%
    半導体株全体への利益確定売りが強まり、Intelはこの日の下落率首位となりました。AI関連需要への期待から株価が急上昇していた反動に加え、巨額の設備投資に対して収益改善が追いつくかを慎重に見る動きもあります。AI需要そのものより、短期間で上昇した株価の調整という性格が強い下落です。
  • TER:Teradyne, Inc.(先端技術) -9.59%
    半導体試験装置を手掛けるTeradyneは、半導体製造装置株から資金が流出する中で急落しました。AI向け半導体の生産拡大に伴う試験需要への期待から株価が大きく上昇していただけに、利益確定売りが膨らみました。PER(株価収益率)が高く、市場の期待値が先行していたことも値動きを大きくしています。
  • GNRC:Generac Holdings Inc.(工業・産業) -8.54%
    非常用発電機や蓄電設備を手掛けるGeneracは、AIデータセンターと電力インフラへの期待から上昇してきましたが、この日は関連銘柄への売りに巻き込まれました。PERが高い水準にあり、将来の需要拡大をかなり織り込んでいたため、投資家が利益を確定する動きが株価下落を増幅しました。
  • WDC:Western Digital Corporation(先端技術) -7.86%
    データ保存装置大手のWestern Digitalは、メモリー関連株への売りが広がる中で大幅安となりました。AIデータセンターの拡大によるストレージ需要への期待から株価が急伸してきましたが、需要拡大を先取りしすぎたとの警戒も出ています。業績成長率は高いものの、短期的な過熱感を解消する動きとなりました。
  • MRVL:Marvell Technology, Inc.(先端技術) -7.45%
    AIデータセンター向け通信半導体の成長期待を集めてきたMarvellも、半導体株の一斉売却から逃れられませんでした。PERが78倍台と高く、将来のAI関連売上を相当程度織り込んだ株価になっています。AIインフラ需要が失速したというより、高い評価を受けた銘柄から利益を確定する動きと考えられます。
  • SNDK:Sandisk Corporation(先端技術) -7.26%
    フラッシュメモリーを手掛けるSandiskは、メモリー株全体の急落に連動して売られました。AIサーバーの増設によるデータ保存需要やNAND価格の上昇期待から株価が大きく上昇していただけに、過熱感への警戒が強まりました。中長期の需要見通しとは別に、短期間の急騰に対する反動が表れています。
  • KLAC:KLA Corporation(先端技術) -7.22%
    半導体製造工程の検査装置大手であるKLAは、製造装置株への利益確定売りによって下落しました。AI半導体の微細化や先端パッケージの普及には高度な検査装置が不可欠ですが、株価はこうした成長を先行して織り込んでいました。事業環境の悪化よりも、上昇速度に対する調整とみるべき動きです。
  • LRCX:Lam Research Corporation(先端技術) -6.87%
    半導体製造装置大手のLam Researchは、メモリー投資拡大への期待から上昇してきた反動で売られました。AI向けHBM(広帯域メモリー)や先端半導体の生産には同社の装置が重要ですが、強い需要予測を織り込んでPERも上昇しています。AI投資の長期見通しが崩れたというより、利益確定が優勢になった一日です。
  • AMD:Advanced Micro Devices, Inc.(先端技術) -6.51%
    AI半導体市場でNVIDIAを追うAMDは、半導体株全体の調整を受けて大幅に下落しました。希薄化後EPS成長率は高いものの、PERは169倍台まで上昇しており、相当強い将来成長を前提とした株価です。AI向けGPUへの期待は続いていますが、高評価銘柄ほど利益確定売りの影響を強く受けました。
  • GEV:GE Vernova Inc.(工業・産業) -6.51%
    発電設備や送電網を手掛けるGE Vernovaは、AIデータセンターの電力需要拡大を代表する銘柄として上昇してきましたが、この日は急反落しました。利益成長率は非常に高い一方、将来の電力設備投資を株価が先取りしている面もあります。AIインフラ関連全体の持ち高を減らす動きが同社にも及びました。
  • AMAT:Applied Materials, Inc.(先端技術) -6.46%
    世界最大級の半導体製造装置メーカーであるApplied Materialsは、同業各社とともに売られました。AI半導体、先端ロジック、HBM、先端パッケージへの投資拡大という成長材料は残っていますが、株価は最高値圏まで急上昇していました。今回は業績悪化ではなく、半導体製造装置株全体の利益確定が中心です。
  • COHR:Coherent Corp.(先端技術) -6.43%
    光通信部品を供給するCoherentは、AIデータセンター関連株への売りが広がる中で下落しました。大量のGPUを高速接続するには光通信技術が必要であり、長期的な需要拡大への期待は高い一方、PERは149倍台に達しています。高い成長期待を織り込んだ銘柄ほど、相場調整時の下落率も大きくなりやすい状況です。
  • FIX:Comfort Systems USA, Inc.(工業・産業) -6.11%
    空調・電気設備工事を手掛けるComfort Systems USAは、データセンター建設需要の拡大で注目されてきましたが、この日は利益確定売りに押されました。AI施設では大量の発熱を処理する冷却設備と安定した電源が不可欠です。同社の事業環境は堅調ですが、株価上昇の速さを考えれば、短期的な調整も不自然ではありません。
  • PANW:Palo Alto Networks, Inc.(先端技術) -5.73%
    サイバーセキュリティ大手のPalo Alto Networksは、先端技術株全体の売りに加え、買収に伴う統合費用や利益率への懸念から下落しました。AIの普及に伴ってセキュリティ需要は拡大していますが、市場は売上成長だけでなく利益への転換速度も厳しく評価しています。高いPERも株価変動を大きくする一因です。
  • MPWR:Monolithic Power Systems, Inc.(先端技術) -5.45%
    電源管理半導体を手掛けるMonolithic Power Systemsは、半導体株の一斉安に連動しました。AIサーバーやデータセンターでは安定した電力供給と高効率な電源制御が重要で、同社の成長分野は明確です。ただしPERは91倍台と高く、利益成長の鈍化が警戒される局面では、株価が大きく調整しやすくなります。
  • FDXF:FedEx Freight Holding Company(工業・産業) -5.21%
    貨物輸送事業を担うFedEx Freightは、物流需要や米国景気の先行きに対する慎重な見方から売られました。輸送株は企業の出荷量や設備投資、個人消費の変化を受けやすく、景気の体温計とも呼ばれます。取引量が比較的少ない中で売りが膨らんだため、株価の下落幅が大きくなった面もあります。
  • FLEX:Flex Ltd.(工業・産業) -5.14%
    電子機器の受託製造を手掛けるFlexは、AIサーバーやデータセンター関連株から資金が流出する中で下落しました。AIインフラ投資による生産需要への期待は続いていますが、株価は成長を先取りして上昇していました。出来高が通常より少ない状態でも売りが優勢となり、利益確定の動きが株価を押し下げました。
  • JBL:Jabil Inc.(工業・産業) -5.07%
    電子機器の設計・製造受託を行うJabilは、AI関連ハードウェア株の調整に連動して下落しました。データセンターや通信機器向け需要によって業績成長が期待されていますが、半導体や電子部品株へ売りが広がった影響を受けました。AI設備投資の長期的な成長性より、短期的な株価上昇の反動が表れた動きです。

セクター別騰落率

市場全体では、原油高を受けたエネルギー(Energy)と、ヘルスケア(Healthcare)、不動産(Real Estate)などのディフェンシブ系が上昇しました。一方、先端技術(Technology)、素材(Basic Materials)、工業・産業(Industrials)は大幅安となり、AI・半導体・データセンター関連で急上昇してきた銘柄に利益確定売りが集中しました。景気やAI需要への見方が急変したというより、上昇銘柄から出遅れ分野へ資金が移るセクターローテーション(投資資金の移動)が鮮明な一日でした。

  • エネルギー(Energy) +2.84%
    エネルギーセクターは全11セクター中で最大の上昇となりました。WTI原油先物が上昇し、Occidental PetroleumやDevon Energyなど、原油価格上昇によって利益とキャッシュフロー(事業から得られる現金)が改善しやすい企業へ買いが集まりました。先端技術株から資金を移す動きも重なり、原油相場と連動しやすい上流企業を中心に上昇幅が広がりました。
  • ヘルスケア(Healthcare) +1.37%
    ヘルスケアセクターは、Gilead Sciencesなど大型医薬品株を中心に上昇しました。半導体やAI関連株が大きく下落する中で、景気変動の影響を受けにくく、継続的な医薬品需要と配当を見込める企業へ資金が移動しました。相場全体が不安定になった場面で、利益の安定性を重視する投資家がディフェンシブ株(景気悪化時にも業績が比較的安定する銘柄)を選んだ形です。
  • 不動産(Real Estate) +1.02%
    不動産セクターは、成長株からの資金移動と金利上昇への警戒後退を受けて上昇しました。REIT(不動産投資信託)は借入金利の影響を受けやすいため、長期金利が急上昇しない局面では配当利回りの魅力が見直されやすくなります。AI・半導体株の過熱感が調整される中、安定収益と配当を持つ不動産関連へ投資資金が分散しました。
  • 先端技術(Technology) -1.95%
    先端技術セクターは、Intel、AMD、Marvell、Western Digital、半導体製造装置各社などが一斉に売られました。AI向け半導体、メモリー、光通信、電源管理への長期需要は続いていますが、株価が短期間で急上昇し、PER(株価収益率)も高水準に達していました。この日は成長期待の後退というより、利益確定と持ち高調整が重なった下落と考えられます。
  • 素材(Basic Materials) -2.15%
    素材セクターは、景気敏感株への売りと商品市況への慎重な見方から大幅に下落しました。銅や工業用金属は、データセンター、送電網、製造業の設備投資拡大で長期需要が期待されますが、短期的には世界景気や中国需要の変化に左右されます。エネルギー価格が上昇する一方、素材株には原材料費や輸送費の増加を警戒する売りも入り、セクター全体が軟調となりました。
  • 工業・産業(Industrials) -2.78%
    工業・産業セクターは全セクター中で最大の下落となりました。GE Vernova、Generac、Comfort Systems USA、Flex、Jabilなど、AIデータセンターの電力・冷却・設備投資を担う企業に売りが集中しました。これらの企業はAIインフラ需要への期待から大幅に上昇していたため、半導体株の調整と同時に利益確定が広がりました。事業環境の悪化より、過熱した株価の反動が大きかったとみています。

主要3指数とドル円の動き

  • S&P500(7,503.85、前日比-0.45%)
    S&P500は7,516.63で始まり、一時7,536.06まで上昇しましたが、終盤に売りが強まり7,503.85で取引を終えました。エネルギーやヘルスケア、不動産は上昇したものの、半導体、AIインフラ、工業・産業関連の下落を補えませんでした。指数の下落率は限定的ですが、直近まで急上昇してきた銘柄から利益を確定し、出遅れたディフェンシブ分野へ資金を移す動きが鮮明でした。
  • Dow30(52,925.15、前日比-0.25%)
    Dow30は53,104.06で始まり、一時53,289.30まで上昇しましたが、取引時間中に52,774.17まで下落し、前日比-0.25%で終了しました。エネルギー株や医薬品株の上昇が指数を支える一方、電力設備、製造業、物流など工業・産業株への売りが相殺しました。NASDAQほど下げなかった点からは、市場全体が一斉に弱気へ傾いたというより、AI関連から安定収益株へ資金が移った一日と判断できます。
  • NASDAQ(25,818.69、前日比-1.16%)
    NASDAQは主要3指数で最大の下落となりました。Intel、AMD、Marvell、Western Digital、KLA、Lam Research、Applied Materialsなど、半導体と製造装置株に売りが集中しました。AI需要やデータセンター投資の長期見通しが崩れたというより、短期間で大幅に上昇し、PER(株価収益率)が高くなった銘柄の利益確定が中心です。長期投資家としては、テーマの終わりと株価の過熱調整を分けて考える必要があります。
  • ドル円(162.0840円、前日比+0.01%)
    ドル円は161.6560円から162.1830円の範囲で動き、最終的には162.0840円とほぼ横ばいでした。米国株が下落しても大幅な円買いにはつながらず、日米金利差を背景としたドル需要が続いています。一方、162円台では日本政府・日銀による為替介入への警戒も強く、円売りを一方向に進めにくい状況です。円建てで米国株を保有する投資家には、株安の一部を円安が緩和する形となりました。

原油先物・米10年国債利回り・VIX・金先物の動き

市場全体では、中東情勢の緊迫化を受けて原油価格と米長期金利が上昇し、VIX指数も上向きました。原油高によるインフレ再燃への警戒から、半導体やAI関連など高PER(株価収益率)の銘柄に売りが広がっています。一方、安全資産とされる金も下落しており、資金が一方向へ避難したのではなく、金利上昇と利益確定が複雑に重なった一日でした。

  • WTI原油先物(72.08ドル、前日比+5.15%)
    WTI原油先物は68.58ドルで始まり、一時72.51ドルまで急上昇しました。ホルムズ海峡周辺で船舶への攻撃が報じられ、イラン産原油の流通制限も強まったことで、供給途絶への警戒が急速に高まりました。原油高はエネルギー株にはプラスですが、輸送費や製造コストを押し上げ、インフレと高金利が長引く要因にもなります。
  • 米10年国債利回り(4.529%、前日比+1.12%)
    米10年国債利回りは4.497%付近から上昇し、一時4.533%に達しました。原油価格の急騰によって物価上昇圧力が再び強まり、FRBの金融緩和が進みにくくなるとの警戒が債券売りにつながりました。長期金利の上昇は将来利益の現在価値を低下させるため、PERの高いAI・半導体株には厳しい環境となりました。
  • VIX指数(16.15、前日比+3.73%)
    VIX指数は15.87から始まり、一時16.64まで上昇しました。中東情勢、原油高、長期金利上昇に加え、AI・半導体関連株の急落によって、投資家の警戒感がやや強まりました。ただし、一般に不安心理が急激に高まったと判断される20を下回っており、全面的なリスク回避ではありません。利益確定とセクター間の資金移動が中心とみられます。
  • 金先物(4,125.60ドル、前日比-1.01%)
    金先物は4,176.40ドルで始まり、一時4,192.40ドルまで上昇したものの、その後は売りが強まりました。地政学リスクは本来、金買いにつながりやすい材料ですが、この日は米長期金利とドルの上昇が金価格を押し下げました。金は利息を生まないため、金利上昇局面では相対的な魅力が低下します。長期分散の役割と短期値動きは分けて考えたいところです。

私の米国株ポートフォリオ

私のポートフォリオは、前日比+0.06%とほぼ横ばいでした。eMAXIS Slim米国株式(S&P500)が+1.08%となり全体を押し上げた一方、MAXISナスダック100上場投信は-1.13%と下落しました。iFreeETF FANG+は+0.16%、S&P500連動型ETFは小幅な値動きにとどまっています。投資信託と上場ETFでは価格へ反映される米国市場や為替の時間帯が異なるため、同じ指数連動商品でも騰落率に差が出ます。AI・半導体株の調整を受けても、S&P500とFANG+、短期米国債へ分散していることで、全体では小幅なプラスを維持できました。

経済指標発表結果

  • 貿易収支(-776.0億ドル、予想-783.0億ドル、前回-546.0億ドル)
    5月の貿易赤字は市場予想よりわずかに小さかったものの、前月から大幅に拡大しました。輸出が3,177.0億ドルへ減少する一方、輸入は3,953.0億ドルへ増加しており、内需の強さと外需の弱さが同時に表れています。輸入増は米国消費の底堅さを示しますが、赤字拡大はGDPを押し下げる方向に働くため、株式市場には強弱が混在する内容でした。
  • 消費者インフレーション期待(3.7%、前回3.5%)
    消費者が予想する将来の物価上昇率は3.7%へ上昇しました。期待インフレ率(人々が予想する将来の物価上昇率)が高まると、賃金要求や価格設定を通じて実際のインフレも下がりにくくなる可能性があります。原油高も重なり、FRBが早期に利下げへ動きにくいとの警戒から米長期金利が上昇し、PERの高いAI・半導体株には売りが出やすくなりました。
  • アトランタ連銀GDPNow(第2四半期、年率+1.4%)
    アトランタ連銀のGDPNowは、第2四半期の実質GDP成長率を年率+1.4%と推計しました。景気後退を示すマイナス成長ではないものの、高成長とも言いにくく、米国経済が緩やかに減速している可能性を示しています。市場にとっては、景気の急失速を避けながらインフレが鈍化するソフトランディング(景気後退を伴わない物価安定)が実現するかを見極める材料です。
  • ADP雇用者数変化・週間(2.10万人、直前2.43万人、前回3.08万人)
    週間ベースのADP雇用者数変化は2.10万人となり、直前の2.43万人、前回の3.08万人から減速しました。雇用市場の勢いが徐々に鈍っている可能性を示す一方、雇用が急減している状況ではありません。FRBにとっては利下げを検討しやすくなる内容ですが、この日は原油高とインフレ期待の上昇が同時に起きたため、金利低下にはつながりませんでした。
  • レッドブック売上高(前年比+11.5%、前回+10.5%)
    米国の週間小売動向を示すレッドブック売上高は、前年比+11.5%へ伸びが加速しました。物価上昇の影響を含む名目値ではありますが、高金利下でも個人消費が底堅いことを示しています。消費の強さは小売企業や景気敏感株には安心材料となる一方、需要の強さがインフレを長引かせれば、FRBの利下げ時期が後ずれする可能性があります。
  • IBD/TIPP景気楽観指数(45.5、予想45.0、前回42.5)
    IBD/TIPP景気楽観指数は45.5となり、市場予想と前回値を上回りました。消費者や投資家の景況感は改善していますが、景気判断の分岐点となる50は下回っており、全面的な楽観には至っていません。雇用や消費への信頼が回復する一方、物価と金利への不安は残っていると考えられます。株式市場では、強すぎない景気改善として比較的受け入れやすい結果でした。

主要銘柄の決算発表結果

7/7に主要銘柄の決算発表はありませんでした。

主な経済ニュース

  • 半導体株が急落しNASDAQを圧迫
    Samsung Electronicsが第2四半期の営業利益について前年同期比で約19倍となる見通しを示したものの、市場の高い期待を十分に満たせず、世界的な半導体株売りへ発展しました。Intel、AMD、Micron、Western Digital、Marvell、KLA、Lam Researchなどが大幅安となり、NASDAQは-1.16%で終了しました。AI需要そのものが消えたというより、急騰してきた銘柄の割高感を見直す動きと考えています。(Reuters:07/07)
  • Samsungの好業績でもAI相場への懸念を払拭できず
    SamsungはAI向けメモリー需要を背景に大幅な増益見通しを示しましたが、韓国市場では同社株が急落し、KOSPI指数も大幅安となりました。好業績を発表しても株価が下がるのは、市場が現在の利益ではなく、その先の成長率と設備投資の持続性を厳しく見ているためです。AI関連企業には「予想を上回る」だけでなく、極めて高い期待をさらに超える内容が求められています。(WSJ:07/07)
  • DeepSeekの独自AI半導体開発報道が警戒を強める
    中国のAI企業DeepSeekが独自のAI半導体を開発しているとの報道を受け、米国半導体企業の将来シェアや価格競争への懸念が強まりました。中国企業がNVIDIAやHuaweiなど外部企業への依存度を下げれば、AI半導体市場の競争構造が変わる可能性があります。ただし、高性能GPU、メモリー、製造装置、通信設備を含むAIインフラ全体の需要が直ちに減少するわけではなく、中長期テーマと短期的な株価調整は分けて考える必要があります。(Reuters:07/07)
  • ホルムズ海峡周辺の船舶攻撃で原油価格が急騰
    ホルムズ海峡付近でタンカーやLNG船への攻撃が報じられ、原油供給が再び不安定になるとの警戒からWTI原油先物は72.08ドル、前日比+5.15%まで急騰しました。同海峡は世界の原油輸送にとって重要な航路であり、通航障害が起きれば供給量と輸送費の双方へ影響します。エネルギー株は上昇しましたが、原油高は企業コストと物価を押し上げるため、米国株全体には単純な好材料ではありません。(Reuters:07/07)
  • 米国がイラン産原油販売の包括許可を撤回
    米国政府は、イラン産原油の販売を認めていた包括的な許可を撤回しました。船舶への攻撃と制裁強化が重なり、原油市場では供給制約への警戒が一段と強まりました。イラン産原油の流通量が減少すれば、短期的には原油価格を押し上げる可能性があります。一方、世界市場には供給過剰予測も残っており、今後の価格は実際の輸送障害と制裁の執行状況によって大きく変わりそうです。(Reuters:07/07)
  • 原油高とインフレ期待上昇で米長期金利が上昇
    米10年国債利回りは4.529%まで上昇しました。原油価格の急騰に加え、消費者インフレーション期待が前回の3.5%から3.7%へ上昇し、FRBが早期に金融緩和へ転じにくいとの警戒が強まりました。長期金利が上昇すると、遠い将来の利益を高く評価されているグロース株ほど株価が下がりやすくなります。この日のAI・半導体株安は、企業固有の問題だけでなく、金利上昇の影響も受けています。(Investing.com:07/07)
  • FRB議事要旨を前に金融政策への警戒が続く
    投資家は翌日に公表されるFRB議事要旨を控え、今後の金利方針を慎重に見極める姿勢を強めました。原油高と期待インフレ率の上昇が重なったことで、利下げよりも高金利の長期化、さらには追加利上げの可能性を警戒する場面もあります。長期投資家にとって重要なのは、1回の政策判断より、企業利益が高金利を吸収できるかどうかです。今後の決算では売上成長だけでなく、利益率と資金調達コストも確認したいところです。(Reuters:07/07)
  • 米貿易赤字が前月から大幅に拡大
    5月の米貿易収支は-776.0億ドルとなり、市場予想の-783.0億ドルより赤字幅は小さかったものの、前月の-546.0億ドルから大幅に拡大しました。輸入が3,953.0億ドルへ増加した一方、輸出は3,177.0億ドルへ減少しています。輸入増は米国内需要の強さを示しますが、貿易赤字の拡大はGDPを押し下げる方向に働きます。消費は底堅いものの、外需には弱さが残るという複雑な内容でした。(Investing.com:07/07)
  • 米国消費の底堅さと景況感改善を確認
    週間レッドブック売上高は前年比+11.5%となり、前回の+10.5%から伸びが拡大しました。IBD/TIPP景気楽観指数も45.5と、市場予想の45.0、前回の42.5を上回っています。米国の個人消費と景況感が改善していることは企業収益にプラスですが、需要が強すぎればインフレを下げにくくします。株式市場にとっては、景気の強さと金利高止まりが表裏一体となっている状況です。(Investing.com:07/07)
  • AI関連からエネルギー・ヘルスケアへ資金が移動
    S&P500は-0.45%、NASDAQは-1.16%となりましたが、11セクターのうち多数は上昇しました。エネルギー(Energy)が+2.84%、ヘルスケア(Healthcare)が+1.37%、不動産(Real Estate)が+1.02%となる一方、工業・産業(Industrials)は-2.78%、素材(Basic Materials)は-2.15%、先端技術(Technology)は-1.95%でした。市場全体から資金が逃げたのではなく、急騰したAI・データセンター関連から安定収益分野へ移動した一日です。(Reuters:07/07)
  • NATO首脳会議で防衛支出とウクライナ情勢が焦点
    トルコのアンカラでNATO首脳会議が始まり、欧州各国の防衛支出拡大、ロシアへの対応、ウクライナ支援が主要議題となりました。トランプ大統領とゼレンスキー大統領の会談も予定され、防衛関連企業には受注拡大への期待がある一方、ロシアとの緊張が強まればエネルギー価格や欧州経済への影響も考えられます。中東と欧州の地政学リスクが同時に動いている点には、引き続き注意が必要です。(Reuters:07/07)

経済指標発表予定

以下の経済指標が発表される予定です。

主要銘柄の決算発表予定

7/8に主要銘柄の決算発表は予定されておりません。

おわりに

この日の米国株市場は、原油高、長期金利の上昇、半導体株の利益確定が重なり、NASDAQを中心に軟調となりました。ただし、エネルギーやヘルスケア、不動産には資金が移っており、市場全体が一斉に崩れたわけではありません。AI関連株の下落も、成長期待の消滅というより、急上昇後の調整とみるのが自然でしょう。

長期投資では、毎日の上げ下げよりも、企業利益と市場全体の成長が続いているかを確認することが大切です。私自身も、短期的な値動きに振り回されず、分散投資を続けていきます。

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。毎朝の情報整理が少しでもお役に立ちましたら、こちらから応援いただけると嬉しいです。

それでは、今日も一日、明るく元気に笑顔で過ごしましょう。

おことわり

投資は自己責任にてお願いします。
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図表のレファレンス

  • S&P500ヒートマップ: finviz
  • 主要3指数とドル円:  Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
  • セクター別騰落率: finviz
  • 経済指標結果/予定: investing.com日本語版
  • 決算発表結果/予定: investing.com日本語版
  • 主要指数の動き : Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
  • 自分の米ドル建ポートフォリオ:  Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ

著者プロフィール

室井一夫(Kazuo Muroi)
Muroi Universal Research on Investment LLC 代表社員
一級建築士・建築1級施工管理技士・工学修士
Facebookグループ「米国株_投資の部屋」管理人(約4.7万人)

米国株式市場と経済動向に関する情報を毎日発信しています。


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