AI相場は半導体から工業設備へ 6月15日~18日の米国株週間総括
6月15日から19日までは、妻と北海道ドライブ旅行を楽しませていただいたため、毎朝の米国株式市場レポートをお休みさせていただきました。日々ブログをご覧いただいている皆さまには、ご理解いただきありがとうございました。
今週は6月19日がジューンティーンスの祝日で米国株式市場が休場だったので、4営業日の取引となりました。今回は、旅行中に起きた米国株式市場の動きを、主要3指数、個別銘柄、セクター、FOMC、経済指標、企業決算、地政学リスクまでまとめて振り返ります。
室井のマーケット視点
6月15日から18日までの米国株式市場を一言で表すなら、「中東情勢への安心とFRBへの警戒が交互に相場を動かし、最後は半導体株が勝った1週間」でした。
週明け15日は、米国とイランが戦争終結へ向けた暫定合意に達し、ホルムズ海峡の通航再開が見込まれたことで原油価格が急落しました。原油高によるインフレ再加速への不安が弱まり、S&P500は+1.65%、NASDAQは+3.07%上昇しました。
ところが17日のFOMC(米国の金融政策を決める会合)では、政策金利を据え置いたにもかかわらず、年内の利上げを予想する委員が増えました。新議長のケビン・ウォーシュ氏が物価安定を強く重視する姿勢を示したため、主要3指数はそろって約1%下落しました。
それでも翌18日には、AppleとIntelによる米国内での半導体設計・製造協力が伝わり、半導体指数は+6.4%上昇しました。Intelだけでなく、メモリー、記憶装置、半導体製造装置へ買いが広がり、NASDAQは週間で+2.43%となりました。
添付した週間セクター騰落率を見ると、首位は先端技術(Technology)ではなく、工業・産業(Industrials)の+4.59%です。これは、AI投資がGPU(画像処理に優れた半導体)だけで終わらず、データセンターの建設、電力、冷却、通信、非常用電源、産業機械へ広がっていることを示しています。
私はデータセンター工事に携わった経験がありますが、AIは半導体だけでは動きません。安定した電源を確保する独立2系統・3系統の受電設備、停電時のバックアップ電源、大量の熱を処理する空調や水冷設備、高速通信網が必要です。今週の工業・産業株や素材株の上昇は、こうした現実の設備投資を市場が評価し始めた結果だと考えています。
旅行中は日々の相場から少し距離を置きましたが、ETFを中心とする長期投資では、毎日画面に張り付く必要はありません。個別株の急騰を当てるより、成長する市場全体へ投資し続ける方が、再現性の高い方法だと改めて感じた1週間でした。
主要3指数の週間推移
※ 本日のチャート図では、赤と緑が逆転しておりますのでご注意ください。
- S&P500(7,500.58、週間-0.50%)
週初に7,540台から上昇し、一時7,570台まで値を伸ばしました。しかし、その後は緩やかな下落が続き、6月18日には一時7,410付近まで急落しました。安値からは約90ポイント買い戻されたものの、終値は7,500.58となり、週間では-0.50%でした。半導体や工業株が上昇する一方、エネルギー、ヘルスケア、生活必需品が下落しており、市場全体へ分散する指数でもマイナスとなりました。長期投資家としては、週中の急落後に一定の買いが入った点を確認しておきたいところです。
- Dow30(51,564.70、週間-0.53%)
Dow30は週初の51,700台から上昇し、6月17日には一時52,200台まで値を伸ばしました。ところが、その後は急速に売られ、18日には51,500を下回る場面もありました。週後半は下げ止まりましたが、終値は51,564.70となり、週間では-0.53%でした。工業・産業(Industrials)や金融(Financial)は堅調でしたが、エネルギーやヘルスケアなどDow30への影響が大きい大型株の下落を補えませんでした。週前半の上昇分を短時間で失った値動きから、市場心理の変化が速い1週間だったことが分かります。
- NASDAQ(26,517.93、週間+0.16%)
NASDAQは週初の26,500付近から上昇し、一時26,700台後半まで値を伸ばしました。その後は下落基調となり、6月18日には一時26,000を下回る急落となりましたが、安値から約500ポイント反発し、終値は26,517.93となりました。週間では+0.16%と、主要3指数で唯一プラスを確保しています。WDC、STX、MU、INTC、AMDなど半導体・記憶装置関連株の上昇が、ソフトウェア株の下落を補いました。ただし週間上昇率は小さく、AI関連株全体が一様に強かったわけではありません。
S&P500週間ヒートマップ
半導体から記憶装置、製造装置、産業設備へ上昇が拡大
今週はAI関連への資金流入が再び強まりましたが、上昇の中心はエヌビディアだけではありませんでした。WDCが+40.99%、STXが+23.29%、SNDKが+16.12%、INTCが+14.56%、MUが+13.87%となり、メモリーやデータ保存、半導体製造装置まで買いが広がっています。工業分野でもCAT、CMI、GE、ETNが上昇し、AI投資がデータセンター建設、電力設備、産業機械へ波及している様子が読み取れます。
週間で大きく上昇した主要銘柄
- WDC:Western Digital +40.99%
AIデータセンターで処理される情報量の増加を受け、データ保存需要の拡大が注目されました。生成AIでは計算用半導体だけでなく、学習データや生成データを蓄積する大容量ストレージが必要です。AI投資の恩恵が記憶装置メーカーまで広がったことを象徴する上昇でした。 - STX:Seagate Technology +23.29%
大容量ハードディスク需要への期待から大幅に上昇しました。クラウド事業者やデータセンターでは、処理性能の向上と同時に保存容量の拡張も欠かせません。短期間で株価が大きく上昇しているため過熱感には注意が必要ですが、AIインフラ投資の裾野が広いことを示しています。 - SNDK:SanDisk +16.12%
フラッシュメモリーやデータ保存需要への期待から買われました。AI関連では高速な読み書きが可能な記憶装置の重要性が増しており、半導体計算能力の向上だけでなく、データを効率よく保存・移動する技術も成長分野になっています。 - INTC:Intel +14.56%
トランプ大統領が、AppleとIntelが米国内で半導体の設計・製造に協力すると表明したことで急伸しました。Intelの受託製造事業にとって大手顧客を確保できる可能性が高まり、米国内の半導体供給網を強化する政策とも方向性が一致しています。 - MU:Micron Technology +13.87%
AIサーバー向けの高性能メモリー需要への期待が続きました。AIの処理速度を高めるには、GPUへ大量の情報を高速で供給するメモリーが必要です。来週には決算発表が予定されており、データセンター需要と供給能力についての会社側の説明が注目されます。 - AMAT:Applied Materials +11.67%
AI向け半導体やメモリーの増産には、半導体製造装置への投資が不可欠です。AI需要が一時的な期待ではなく、実際の設備投資へ結び付いているとの評価から、製造装置関連にも買いが広がりました。半導体メーカーより景気変動の影響を早く受けやすい点には注意が必要です。 - QCOM:Qualcomm +11.41%
スマートフォン向け半導体に加え、パソコン、自動車、エッジAI(端末側でAI処理を行う技術)への事業拡大が評価されました。データセンターだけでなく、身近な端末にもAI処理が組み込まれるため、AI需要の広がりを考える上で重要な企業です。 - AMD:Advanced Micro Devices +10.02%
AI向け半導体市場でエヌビディアを追う企業として買われました。市場では、AI計算需要が急増する中で供給先が1社だけでは足りないとの見方があります。競争は厳しいものの、データセンター向け半導体市場全体の成長が続く限り、同社にも機会があります。 - CAT:Caterpillar +9.82%
データセンターや電力設備、インフラ整備に関係する建設機械需要への期待から上昇しました。AIはソフトウェアだけでなく、大規模な建物と電力網を必要とします。工業・産業(Industrials)が週間首位となった背景を代表する銘柄です。 - CMI:Cummins +9.33%
発電設備や非常用電源を提供する同社は、データセンター増設の恩恵を受ける企業として買われました。データセンターでは商用電源が停止しても運転を継続する必要があり、大容量の非常用発電設備が必要です。AI投資と電源冗長化(複数の電源を用意すること)の関係が注目されています。
週間で大きく下落した主要銘柄
- ADBE:Adobe -10.80%
企業向けソフトウェア株から資金が流出し、大幅安となりました。生成AIによる既存ソフトウェアの競争環境変化や、AI機能をどこまで有料サービスへ結び付けられるかについて、市場の評価が厳しくなっています。 - IBM:International Business Machines -9.37%
Accentureの業績見通し引き下げをきっかけに、企業向けITサービス全体へ売りが広がりました。企業のAI投資は増えているものの、従来型のシステム開発やコンサルティング需要が同じ速度で増えるとは限らず、事業構造の違いが厳しく評価されています。 - CRM:Salesforce -8.81%
企業向けクラウドソフトウェア株への売りが続きました。AI機能の導入による将来性はありますが、企業がIT支出を選別する中で、高い企業価値評価に見合う成長を維持できるかが問われています。 - NOW:ServiceNow -7.80%
業務効率化ソフトウェアの成長期待は残っているものの、企業向けITサービス全体の見通しが慎重に見直されました。半導体やハードウェアへ資金が向かる中、ソフトウェア株から一部の資金が移動した形です。 - WMT:Walmart -7.75%
生活必需品株から景気敏感株や先端技術株へ資金が移りました。Krogerが生活費上昇によって消費者の買い方が慎重になっていると説明したことも、小売株全体の警戒につながりました。米国消費は強いものの、家計ごとの差が拡大しています。 - LMT:Lockheed Martin -6.88%
米国とイランの暫定合意やイスラエルとヒズボラの停戦を受け、地政学的緊張を前提に買われていた防衛関連株に利益確定売りが出ました。ただし、合意は暫定的であり、防衛需要の長期的な方向が変わったと判断する段階ではありません。 - COP:ConocoPhillips -6.61%
ホルムズ海峡の通航再開とイラン産原油の供給増加観測を受け、原油価格が大幅に下落しました。原油価格の低下は同社の売上や利益を圧迫しやすいため、エネルギー株全体に売りが広がっています。 - CVX:Chevron -6.56%
原油価格急落の影響を受けました。大手石油会社は精製や化学など複数事業を持つため、原油価格だけで業績が決まるわけではありませんが、短期間の原油安では上流部門の収益悪化が警戒されやすくなります。 - XOM:Exxon Mobil -6.00%
中東情勢の緊張緩和によって原油の供給不安が後退し、株価は週間で下落しました。エネルギー株は今年のインフレ局面で買われてきたため、原油価格の反落とともに資金が半導体や工業株へ移動しました。
セクター別週間騰落率
今週は工業・産業(Industrials)と先端技術(Technology)が市場を牽引し、金融(Financial)や素材(Basic Materials)にも上昇が広がりました。一方、原油価格の急落によってエネルギー(Energy)は大幅安となり、生活必需品、ヘルスケア、不動産も下落しました。単なる大型ハイテク株相場ではなく、設備投資に関係する企業へ資金が向かった点が今週の特徴です。
- 工業・産業(Industrials) +4.59%
全11セクターで最大の上昇となりました。CAT、CMI、GE、ETNなど、建設機械、発電設備、航空宇宙、電力機器に関係する企業が買われています。AIデータセンターの増設には、建物、受変電設備、非常用発電機、冷却設備などが必要です。AI投資の資金が半導体から実物設備へ広がっていることを示す動きでした。 - 先端技術(Technology) +3.95%
半導体、メモリー、データ保存、製造装置関連が上昇しました。WDC、STX、SNDK、INTC、MUなどが大きく買われた一方、Microsoftや企業向けソフトウェア株は下落しています。先端技術セクター内でも、AIの設備需要を直接受ける企業と、将来の収益化を待つ企業の差が広がりました。 - 金融(Financial) +2.24%
景気の底堅さと金利の高止まりを背景に銀行やカード会社が上昇しました。JPMorgan、Bank of America、Visa、American Expressなどが堅調でした。長短金利差や貸倒費用への注意は必要ですが、米国経済が急激な景気後退へ向かっていないとの判断が金融株の買いにつながっています。 - 素材(Basic Materials) +1.77%
データセンター、送電網、発電設備の建設に必要な銅、鉄鋼、化学素材への需要が評価されました。AI投資は半導体だけでなく、大量の電線、配管、構造材、冷却関連素材を必要とします。設備投資が続く限り、素材企業にも受注機会が広がります。 - 公益事業(Utilities) +1.08%
AIデータセンターの電力消費増加を背景に、発電・送電企業への関心が続きました。公益事業は従来、景気変動に強い安定配当分野と考えられてきましたが、現在はAI時代の電力インフラを担う成長分野という面もあります。ただし、金利上昇時には借入負担が増える点に注意が必要です。 - エネルギー(Energy) -5.96%
米国・イランの暫定合意とホルムズ海峡の通航再開を受け、原油価格が大幅に下落しました。XOM、CVX、COPなどの大型石油株がそろって売られています。原油安はエネルギー企業には厳しい一方、輸送費や企業コストを抑え、米国全体のインフレを和らげる効果があります。 - ヘルスケア(Healthcare) -2.28%
LLY、MRK、BMY、AMGN、JNJなど大型医薬品株が下落しました。工業株や半導体株へ資金が移る中で、安定性を重視するヘルスケア株が売られました。人口高齢化や医薬品需要という長期的な成長要因は変わりませんが、今週は市場の資金が景気敏感分野へ向かいました。 - 不動産(Real Estate) -2.23%
FOMC後に年内利上げの可能性が高まり、金利の影響を受けやすいREIT(不動産投資信託)が下落しました。不動産企業は借入金額が大きいため、金利上昇は利払い負担の増加につながります。住宅着工件数の急減も、不動産市場の強弱が分かれていることを示しました。 - 生活必需品(Consumer Defensive) -2.21%
WalmartやKrogerなど小売株が下落しました。消費者は生活費上昇に対応するため、値引き商品を選び、買い物回数や購入量を調整しています。景気後退時に強いセクターですが、今週は半導体や工業株へ資金が移り、相対的に売りが増えました。
ドル円・原油先物・米10年国債利回り・VIX・金先物の週間動向
- ドル円(週末161円台前半、一時161.81円)
ドル円はFOMC後にドル高・円安が進み、一時161.81円まで上昇しました。FRB内で年内利上げを予想する委員が増えた一方、日銀が利上げしても日米の政策金利差は依然として大きく、円を売ってドルを買う動きが続きました。日本政府は過度な変動をけん制しており、為替介入の可能性にも注意が必要です。円建てで米国株を保有する投資家には評価額を押し上げる方向ですが、円安が永遠に続く前提では考えない方がよいでしょう。 - WTI原油先物(77.54ドル、週間では大幅安)
WTI原油先物は週初から大きく下落しました。米国とイランの暫定合意、ホルムズ海峡の通航再開、イラン産原油の供給増加観測が背景です。原油安はエネルギー株の下落につながりましたが、ガソリン代や輸送費、原材料費を抑えるため、米国経済全体にはインフレを和らげる効果があります。ただし、合意の最終交渉は延期されており、価格が再び急変する可能性は残ります。 - 米10年国債利回り(4.46%、前週末とほぼ同水準)
米10年国債利回りは、週前半に原油安を受けて低下した後、FOMCの利上げ警戒で上昇し、週末時点では4.46%となりました。週間の変化は小さく見えますが、途中の値動きは大きく、株式市場の変動要因となりました。4%台半ばの金利でも利益を伸ばせる企業へ資金が集まっており、銘柄選別が厳しくなっています。 - VIX指数(16.40、週間-7.24%)
VIX指数は前週末の17.68から16.40へ低下しました。水曜日のFOMC後には18.44まで上昇しましたが、木曜日の株価反発で再び低下しています。20を下回るため市場心理は比較的落ち着いていますが、中東情勢や金融政策に関する一つのニュースで急変する相場です。低いVIXだけを根拠に安心し過ぎない方がよいと考えます。 - 金先物(4,186.50ドル、3週連続安)
金先物はFRBの利上げ警戒とドル高によって下落しました。金には利息が付かないため、国債利回りが上昇すると相対的な魅力が低下します。中東情勢への不安が一時的に和らいだことも、安全資産としての需要を弱めました。私は純金を資産全体の5%程度保有する考え方は、長期的なインフレや地政学リスクへの備えとして有効だと考えています。
今週発表された重要な米国経済指標
- 小売売上高(前月比+0.9%、前年比+6.9%)
5月の小売売上高は前月比+0.9%となり、米国の個人消費が依然として強いことを示しました。米国経済は個人消費が大きな割合を占めるため、景気後退への不安を弱める内容です。ただし、物価上昇分も売上高へ含まれるため、数量ベースでも同じだけ消費が増えたとは限りません。強い消費は企業業績にはプラスですが、FRBが急いで金利を下げる理由も小さくなります。 - 住宅着工件数(年率117.7万戸、前月比-15.4%)
住宅着工件数は前月比-15.4%と急減し、約6年ぶりの低水準となりました。住宅ローン金利や建設費の上昇が、新規住宅建設を難しくしています。特に集合住宅の減少が大きく、住宅関連企業には厳しい結果です。高金利の影響が最も分かりやすく表れている分野であり、米国経済が一様に強いわけではありません。 - 鉱工業生産(前月比+0.1%)
5月の鉱工業生産は前月比+0.1%にとどまり、製造業の生産は横ばいでした。設備稼働率は76.2%で、長期平均を下回っています。AI関連の設備投資や鉱業は伸びていますが、製造業全体が急拡大している状況ではありません。株価が強い工業・産業株についても、将来の需要期待が先行している部分を冷静に見る必要があります。 - 新規失業保険申請件数(22.6万件、予想22.5万件)
新規失業保険申請件数は22.6万件となり、前週から4,000件減少しました。大規模な解雇が広がっている様子はなく、雇用市場は安定しています。一方、継続受給者数は181万人へ増えており、一度失業すると次の仕事を見つけるまでに時間がかかる傾向も見られます。急激な悪化ではありませんが、雇用の内部には強弱があります。 - フィラデルフィア連銀製造業景況指数(10.3、前月-0.4)
製造業景況指数は前月の-0.4から10.3へ改善し、企業活動の回復を示しました。新規受注も増えています。ただし、仕入価格や将来の販売価格に関する指数は高く、製造業の価格上昇圧力が残っています。景気には良い結果ですが、インフレを重視するFRBには慎重な判断を促す内容でした。 - 中古住宅販売成約指数(前月比+3.8%)
中古住宅の契約件数は前月比+3.8%となり、6か月ぶりの高水準へ上昇しました。住宅着工が急減する一方で中古住宅の需要は回復しており、住宅市場の中でも動きが異なります。供給不足と高金利は続いているため、本格回復と判断するには今後の住宅ローン金利を確認する必要があります。
FOMCと金融政策
- 政策金利を3.50%~3.75%で据え置き
FRBは6月16日から17日に開催したFOMCで、政策金利を3.50%~3.75%に据え置きました。決定は全会一致でした。原油価格は下落しましたが、物価上昇率は依然として2%目標を上回っており、雇用と個人消費も大きく崩れていません。利下げを急ぐ状況ではないとの判断です。 - 19人中9人が年内の利上げを予想
新しい金利見通しでは、19人の政策担当者のうち9人が年末までに少なくとも1回の利上げを予想しました。市場は事前に金利据え置きの継続を想定していたため、利上げの可能性が示されたことに驚き、株式と債券がともに売られました。特に金利の影響を受けやすいグロース株や不動産株が下落しました。 - ウォーシュ新議長が情報発信を簡素化
ケビン・ウォーシュ新議長は、将来の政策を事前に細かく示すフォワードガイダンス(将来の金融政策を市場へ伝える手法)を減らす方針を示しました。今後は経済指標が発表されるたびに市場の金利予想が変化しやすくなります。投資家にとっては、FRBの発言より実際の物価・雇用・消費データを丁寧に確認する必要が高まります。
主要銘柄の決算発表結果
- ACN:Accenture plc(先端技術)
売上高は187億ドルで前年比6%増、EPSは3.80ドルで9%増となりました。一方、新規受注は193億ドルと前年を下回り、通期の現地通貨ベース売上高成長率を従来の3%~5%から3%~4%へ引き下げました。企業のAI投資は続いていますが、従来型コンサルティング需要の弱さが警戒され、株価は18%下落しました。同業のIBMやCognizantにも売りが広がっています。 - KR:Kroger Co.(生活必需品)
売上高は461.2億ドルと市場予想の454.7億ドルを上回りましたが、調整後EPSは1.58ドルで予想の1.59ドルをわずかに下回りました。会社側は通期見通しを維持したものの、生活費上昇によって消費者が値引き商品を選び、買い物に慎重になっていると説明しました。粗利益率も低下し、株価は8.4%下落しました。 - JBL:Jabil Inc.(先端技術)
売上高は88億ドル、調整後EPSは3.16ドルとなり、通期売上高見通しを従来の340億ドルから350億ドルへ引き上げました。AIデータセンター、クラウド、通信機器向けの需要が業績を押し上げています。半導体そのものではなく、電子機器の設計・製造を担う企業にもAI投資の恩恵が及んでいることを確認できる決算でした。 - KMX:CarMax Inc.(一般消費材)
売上高は前年同期比6.2%増の80億ドル、EPSは1.31ドルとなりました。ただし、1台当たりの中古車粗利益が低下し、経営陣も高コストと業務効率の問題を認めました。中古車価格の上昇で売上は増えても、消費者の購入負担や利益率の改善には課題が残り、決算発表後の株価は一時7%を超えて下落しました。
今週の主な経済ニュース
- 米国とイランが戦争終結へ向けた暫定合意
米国とイランは停戦を60日間延長し、最終合意へ向けて協議する枠組みをまとめました。ホルムズ海峡では船舶の通航が再開し、原油供給が正常化するとの期待から原油価格が急落しました。株式市場ではインフレ再加速への不安が弱まり、週明けにS&P500とNASDAQが大幅に上昇しました。(Reuters:06/15、06/18) - FRBが年内利上げの可能性を示す
FOMCは政策金利を据え置きましたが、19人中9人が年内の利上げを予想しました。新議長のウォーシュ氏は、物価を2%目標へ戻す姿勢を強調しています。市場は金利据え置き継続を想定していたため、17日の主要3指数はそろって下落しました。(FRB、Reuters:06/17) - AppleとIntelが米国内の半導体で協力
トランプ大統領は、AppleがIntelと米国内で半導体を設計・製造する取り組みに合意したと表明しました。Intel株は18日に10.6%上昇し、半導体指数も+6.4%となりました。米国が半導体供給網を国内へ戻す政策を進める中、Intel再建にとって重要な案件となる可能性があります。(Reuters:06/18) - AI投資の対象が記憶装置と製造装置へ拡大
WDC、STX、SNDK、MU、AMATなどが大きく上昇しました。生成AIでは計算用半導体だけでなく、情報を保存するメモリーやストレージ、半導体を増産する製造装置が必要です。AI投資の資金がエヌビディア一社から、より広い供給網へ移っています。(Reuters、週間ヒートマップ:06/15~06/18) - 工業・産業が週間セクター首位
工業・産業(Industrials)は週間+4.59%となり、先端技術(Technology)を上回りました。CAT、CMI、GE、ETNなどが上昇しています。AIデータセンターの建設には発電設備、非常用電源、冷却、受変電設備、建設機械が必要であり、AI投資が現実の設備需要へつながっています。(週間セクター別騰落率:06/15~06/18) - 原油価格急落でインフレ不安が後退
WTI原油先物は77ドル台へ下落しました。原油安は石油会社の株価を押し下げましたが、航空、クルーズ、運輸、一般消費材にはコスト低下という利点があります。ガソリン価格が下がれば消費者が他の商品へ使える資金も増えるため、米国経済全体にはプラスとマイナスの両面があります。(Reuters:06/16、06/19) - Accenture急落がITサービス株へ波及
Accentureは通期売上高見通しの上限を引き下げ、株価が18%下落しました。企業はAIへ多額の投資を行っていますが、従来型のコンサルティングやシステム開発が同時に伸びるとは限りません。IBM、Cognizantなどにも売りが広がり、ソフトウェアとハードウェアの明暗が分かれました。(Reuters:06/18) - 強い小売売上高と弱い住宅着工が同時に発表
小売売上高は前月比+0.9%と強い一方、住宅着工件数は-15.4%となりました。米国経済は全体として底堅いものの、高金利の影響を強く受ける住宅分野では厳しさが続いています。経済指標を一つだけ見て景気を判断できない状況です。(米国勢調査局:06/16、06/17) - ドル円が一時161.81円まで上昇
FRBの利上げ観測によってドルが買われ、ドル円は2024年の安値圏へ接近しました。日銀が政策金利を1%まで引き上げても、米国との金利差は依然として大きい状況です。日本政府は急激な円安をけん制しており、流動性の低い時間帯に為替介入が行われる可能性も警戒されています。(Reuters:06/19) - 米国株ファンドへ383.7億ドルが流入
6月17日までの1週間に米国株式ファンドへ383.7億ドルが流入し、世界の株式ファンドへの資金流入は19か月ぶりの高水準となりました。先端技術関連ファンドには記録的な資金が入りました。市場心理は改善していますが、短期間に資金が集中する局面では反動にも備える必要があります。(Reuters:06/19)
新たに発生・変化した地政学的リスク
米国とイランの暫定合意によって、中東情勢は最悪期から一歩後退しました。しかし、合意は60日間の暫定措置であり、核開発、制裁解除、イスラエルとの関係、ホルムズ海峡の管理方法など、難しい問題が残っています。
6月19日に予定されていた追加協議は直前に中止されました。イランはホルムズ海峡を通過する船舶に許可や調整を求める方針も示しており、米国が主張する「恒久的な無料通航」と一致していません。
イスラエルとヒズボラは停戦に合意しましたが、イスラエルによる攻撃が再開されれば、米国・イラン合意にも影響する可能性があります。今週の原油安を恒久的な変化と判断せず、合意が実際に守られるかを確認する必要があります。
来週の米国市場で注目したい点
- Micron Technologyの決算
AIサーバー向け高性能メモリーの需要、供給能力、販売価格、データセンター向け売上高が注目されます。今週株価が大きく上昇しているため、良い決算であっても市場の高い期待を上回れるかが重要です。 - PCE物価指数
PCE物価指数はFRBが重視するインフレ指標です。FOMCが年内利上げの可能性を示した直後であるため、予想を上回れば金利とドルが上昇し、グロース株には売りが出やすくなります。原油安が物価へ反映されるまでには時間差があります。 - 米国第1四半期GDP確定値
個人消費と設備投資の内容を確認します。AI関連の設備投資が経済成長へどの程度貢献しているか、個人消費の強さが維持されているかが重要です。見出しの成長率だけでなく、内訳を見る必要があります。 - FRBの利上げ確率
市場は9月または10月の利上げを織り込み始めています。ただし、今後の物価や雇用次第で予想は大きく変わります。新体制のFRBは将来の政策を細かく説明しない方針であるため、経済指標発表後の値動きが以前より大きくなる可能性があります。 - 米国・イラン合意と原油価格
追加協議が再開されるか、ホルムズ海峡を船舶が安定して通過できるかを確認します。交渉が再び行き詰まれば原油価格が反発し、エネルギー株、物価、金利、株式市場全体へ影響が広がります。 - ドル円と日本政府の為替介入
ドル円は2024年の安値圏へ接近しています。日本政府による口先介入だけでなく、実際のドル売り・円買い介入が行われれば、円建ての米国株評価額も短期間で変動します。株価と為替を分けずに確認したいところです。
おわりに
今週は妻と北海道をドライブし、美しい景色や食事を楽しみながら、市場から少し距離を置いて過ごしました。毎朝の値動きを見なくても企業は事業を続け、市場も動いています。長期投資では、毎日売買することより、無理のない資金で市場に居続けることの方が大切だと改めて感じました。
今週の相場は、米国・イラン合意で上昇し、FOMCで下落し、最後は半導体株の上昇で持ち直しました。毎日のニュースだけを追えば、強気と弱気が何度も入れ替わります。しかし、週間で見ると、AI投資が半導体から記憶装置、電力、工業設備へ広がっている流れが見えてきます。
個別の急騰銘柄を追いかけるより、成長企業が順次組み入れられるS&P500やNASDAQのETFを保有する方が、私には合っています。旅行中も安心して過ごせる投資方法でなければ、長く続けることは難しいと思います。
毎朝の個人運営ブログを継続するため、記事が市場理解のお役に立ちましたら、こちらから応援いただけると嬉しいです。
それでは、今日も一日、明るく元気に笑顔で過ごしましょう。
おことわり
本記事は公開情報を基にした個人の市場分析であり、特定の金融商品の購入や売却を推奨するものではありません。
投資は自己責任にてお願いします。
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