室井のマーケット視点
7月20日の米国株式市場は、S&P500が-0.19%、Dow30が-0.59%、NASDAQが-0.05%となりました。原油先物は+0.79%、米10年国債利回りは4.598%まで上昇しましたが、恐怖指数と呼ばれるVIX指数は18.56に低下しています。全面的な恐怖相場ではなく、重要決算を前に積極的な売買を控えた一日だったと見ています。
今週はAlphabet、Tesla、IBM、Intel、Texas Instruments、General Motors、AT&Tなど、米国経済とAI投資の方向を左右する企業の決算が相次ぎます。投資家は良い決算かどうかだけでなく、AI向け設備投資が売上高、利益率、現金収入へどこまで結び付いているかを確認しようとしています。今回は巨大企業の決算待ちとイラン情勢の不透明感が重なり、投資家が売買を控えた影響の方が大きかったと考えています。
イラン問題は米兵の死亡によって、米国が簡単には矛を収めにくい局面へ入りました。さらにフーシ派がバブ・エル・マンデブ海峡の封鎖に動けば、ホルムズ海峡に加えて紅海側の原油・物流航路まで細ります。原油価格、海上運賃、保険料が上昇すれば、米国のインフレと企業収益の両方に影響が及びます。一方、NASDAQがほぼ横ばいにとどまり、通信サービス(Communication Services)が+0.94%、先端技術(Technology)も小幅高となった点を見ると、AI需要そのものが失速したわけではありません。市場は、期待だけで上昇してきた企業から、実際の利益や現金収入を示せる企業へ選別を進めています。
今週は決算1社ごとの値動きが指数全体へ波及しやすくなります。私は短期的な上げ下げを予測するより、巨大IT企業のAI投資が半導体、サーバー、メモリー、高速通信網、電力、冷却設備へどこまで広がるかを確認したいと思います。指数が小動きだから平穏なのではなく、大きな材料を前に市場が息を整えている局面です。
投資は自己責任にてお願いします。
S&P500ヒートマップ
5%以上上昇したS&P500構成銘柄
- GPN:Global Payments Inc. +5.85%
決済サービス大手のGlobal Paymentsは、Morgan Stanleyが投資判断を「Overweight(市場平均を上回る上昇を予想)」へ引き上げ、目標株価を100ドルとしたことから買われました。Worldpay買収後の事業統合には不安も残りますが、株価下落によって企業価値評価が割安になったとの判断です。決済業界ではPayPalへの買収提案も報じられており、業界再編への期待も金融関連株への関心を高めました。
5%以上下落したS&P500構成銘柄
該当銘柄はありませんでした、
セクター別騰落率
市場全体では、通信サービス(Communication Services)が+0.94%と大きく上昇した一方、工業・産業(Industrials)とヘルスケア(Healthcare)は1%を超えて下落した。原油と米10年国債利回りが上昇する中、金利や企業コストの影響を受けやすい分野に売りが出た。一方、先端技術(Technology)は小幅高にとどまり、全面的な株安ではなく、セクターごとの選別と資金移動が進んだ一日である。
- 工業・産業(Industrials) -1.15%
工業・産業は、米10年国債利回りの上昇や景気の先行きへの警戒から売られた。設備投資、物流、建設、航空などの企業は金利や原材料費の影響を受けやすく、原油上昇による輸送コスト増加も収益への懸念につながった。AI向け設備投資という長期テーマは続くが、この日は景気敏感株への利益確定売りが優勢となった。 - ヘルスケア(Healthcare) -1.42%
ヘルスケアは全セクターで最大の下落となった。医薬品、医療保険、医療機器など幅広い銘柄に売りが広がり、政策や薬価を巡る不透明感に加え、大型株への利益確定が重なった。通常は景気変動に強いディフェンシブ分野だが、この日は通信サービスや一部の成長株へ資金が移動し、相対的に弱い値動きとなった。
主要3指数とドル円の動き
市場全体では、主要3指数がそろって下落しました。S&P500とNASDAQは小幅安にとどまりましたが、Dow30は-0.59%と下げが大きく、景気敏感株や大型株への売りが目立ちました。ドル円は162円台半ばまで上昇しており、米国株の下落と円安が同時に進む一日でした。
- S&P500(7,443.28、前日比-0.19%)
S&P500は7,489.18で始まり、一時7,513.23まで上昇しましたが、その後は売りに押され、安値に近い7,443.28で取引を終えました。指数全体の下落率は小幅でしたが、取引時間中に上昇分を失った点から、積極的に株価を追いかける投資家が少なかったことが分かります。長期投資家としては、指数の下落率だけでなく、終値が安値圏だった点にも注意したい一日です。 - Dow30(51,839.26、前日比-0.59%)
Dow30は主要3指数の中で最も大きく下落しました。始値52,154.57から一時52,411.90まで上昇しましたが、その後は急速に値を崩し、307.16ドル安で終了しました。工業・産業、金融、消費関連など、実体経済との結びつきが強い大型株に売りが出たと考えられます。NASDAQより下落率が大きかったことから、この日は成長株よりも景気敏感株への警戒が強かった相場です。 - NASDAQ(25,508.07、前日比-0.05%)
NASDAQは12.17ポイント安と、ほぼ横ばいで取引を終えました。高値25,815.60からは300ポイント以上下落しましたが、S&P500やDow30と比べると下落率は小さく、AI・半導体など一部の成長株には買いが残りました。ただし終値は安値25,501.10に近く、引けにかけて売りが増えています。AI需要が弱まったというより、株価上昇後の利益確定や企業ごとの選別が続いていると見ています。 - ドル円(162.52円、前日比+0.10%)
ドル円は162.38円で始まり、162.60円まで上昇した後、162.52円で取引を終えました。米国株が下落する一方でドル高・円安が進んだため、株式市場のリスク回避だけでは説明できない動きです。日米の金利差や、日本の追加利上げに対する慎重な見方が円売りにつながったと考えられます。米国株へ円建てで投資する人には評価額を押し上げる一方、急速な円安は将来の反動も大きくなりやすいため注意が必要です。
原油先物・米10年国債利回り・VIX・金先物の動き
市場全体では、原油と米10年国債利回りが上昇する一方、VIX指数と金先物は下落しました。原油高によるインフレ圧力と長期金利上昇への警戒が株価を抑えましたが、恐怖指数と呼ばれるVIX指数は20を下回っており、投資家が全面的なリスク回避へ動いた状況ではありません。
- WTI原油先物(82.43ドル、前日比+0.79%)
WTI原油先物は一時79.58ドルまで下落した後に切り返し、82.43ドルで取引を終えました。中東情勢を巡る供給不安に加え、安値圏では買い戻しが入りました。原油高はエネルギー企業の収益にはプラスですが、輸送費や製造コストを押し上げ、インフレの長期化を通じて米国株全体には負担となります。 - 米10年国債利回り(4.598%、前日比+1.26%)
米10年国債利回りは4.598%まで上昇し、一時4.608%を付けました。原油価格の上昇によるインフレ再加速への警戒や、FRBの利下げが急がれないとの見方から国債が売られました。長期金利の上昇は、将来の利益への期待で買われるAI・半導体など高PER(株価収益率が高い)銘柄の企業価値評価を押し下げやすくなります。 - VIX指数(18.56、前日比-1.12%)
恐怖指数と呼ばれるVIX指数は18.56へ低下しました。米国株は下落しましたが、VIX指数が20を下回っているため、市場全体が深刻な不安状態に陥ったとは言えません。主要指数の下落は、景気後退への恐怖よりも、原油高や長期金利上昇を受けた利益確定と銘柄選別による面が大きかったと考えられます。 - 金先物(4,010.20ドル、前日比-0.21%)
金先物は一時4,046.00ドルまで上昇しましたが、その後は売りに押されて4,010.20ドルで終了しました。米10年国債利回りの上昇により、利息を生まない金の相対的な魅力が低下しました。ただし4,000ドル台を維持しており、中東情勢やインフレへの備えとしての需要は残っています。長期資産では分散目的で一部を保有する考え方が有効です。
私の米国株ポートフォリオ
昨日は、日本市場が休場でした。
経済指標発表結果
- 米国景気先行指数(前月比-0.2%、予想-0.1%、前回+0.1%)
6月の米国景気先行指数は前月比-0.2%となり、市場予想の-0.1%を下回りました。前回の+0.1%からマイナスへ転じており、今後の景気がやや減速する可能性を示しています。ただし、下落幅は小さく、直ちに景気後退を示す内容ではありません。株式市場では景気敏感株に慎重な売りが出やすい一方、FRBの利下げ余地が広がるとの見方は、金利上昇に弱い成長株には一定の安心感を与えます。 - 3カ月物米国債入札(落札利回り3.730%、前回3.760%)
3カ月物米国債の落札利回りは3.730%となり、前回の3.760%から低下しました。短期国債利回りの低下は、市場が今後の政策金利引き下げを少しずつ織り込んでいる可能性を示します。ただし、同日の米10年国債利回りは上昇しており、短期金利と長期金利の動きには差が見られました。長期投資家としては、短期の利下げ期待だけでなく、インフレや原油価格によって長期金利が高止まりするリスクも併せて見ておきたいところです。 - 6カ月物米国債入札(落札利回り3.835%、前回3.860%)
6カ月物米国債の落札利回りは3.835%となり、前回の3.860%を下回りました。短期債への需要が一定程度確認され、投資家が安全性の高い資産を確保しながら、将来の利下げを待つ姿勢がうかがえます。一方、株式市場ではDow30や工業・産業、ヘルスケアが弱く、景気への慎重な見方も残りました。今回の入札結果だけで相場の方向は決まりませんが、短期金利には低下圧力が続いていることが分かります。
主要銘柄の決算発表結果
- STLD:Steel Dynamics Inc.(素材(Basic Materials))
Steel DynamicsはEPSが3.69ドルとなり、市場予想の3.76ドルを下回りました。一方、売上高は61億ドルと予想の55.7億ドルを上回っています。売上規模は拡大したものの、利益面では市場の期待に届かず、通常取引で-2.08%、決算発表後の時間外取引でも-0.81%となりました。鉄鋼価格や原材料費、製造業の需要動向が今後の焦点です。 - WRB:W. R. Berkley Corporation(金融(Financial))
損害保険大手のW. R. Berkleyは、EPSが1.15ドルと市場予想の1.09ドルを上回り、売上高も37.2億ドルと予想の32.8億ドルを上回りました。保険料収入と運用収益が堅調だったとみられ、通常取引では+1.56%となりました。ただし、時間外取引は+0.03%にとどまり、好決算は通常取引中にある程度織り込まれていたようです。 - DPZ:Domino’s Pizza Inc.(一般消費材(Consumer Cyclical))
Domino’s PizzaはEPSが4.07ドルとなり、市場予想の4.19ドルを下回りました。一方、売上高は11.9億ドルと予想の11.8億ドルをわずかに上回っています。利益面には物価上昇や人件費の負担が残るものの、売上の底堅さが確認され、通常取引で+2.24%、時間外取引でも+0.31%となりました。今後は既存店売上と利益率の改善が重要です。
主な経済ニュース
- 米国株は小幅安、半導体株の反発と景気敏感株の下落が交錯
S&P500は-0.19%、Dow30は-0.59%、NASDAQは-0.05%となりました。前週に大きく売られた半導体株には買い戻しが入りましたが、原油高と米10年国債利回りの上昇から、工業・産業や金融、ヘルスケアは軟調でした。指数の下落は小幅でも、値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を上回っており、市場内部には慎重さが残っています。(Reuters:07/20) - フーシ派がサウジアラビアへの海上封鎖を宣言
イランの支援を受けるイエメンのフーシ派は、サウジアラビアに対する海上封鎖を直ちに始めると発表しました。紅海とアデン湾を結ぶバブ・エル・マンデブ海峡は、原油やコンテナ船の重要航路です。実際の船舶攻撃へ進めば、ホルムズ海峡に加えて紅海側の輸送も細り、原油価格、海運運賃、保険料をさらに押し上げる危険があります。(Reuters:07/20) - 米国とイランの停戦案を巡り原油価格が乱高下
米国とイランの攻撃が続く中、仲介国が10日間の停戦案をイランへ提示したと報じられました。原油価格は供給不安から一時急伸しましたが、外交交渉への期待が出ると上昇幅を縮小しています。WTI原油先物は82ドル台で終了しました。市場は戦闘激化と停戦期待を同時に織り込んでおり、ニュースによって原油と株価が急変しやすい状態です。(Reuters:07/20) - 原油が急騰しない背景に中国需要の鈍化と米国の増産
米国とイランの戦闘が約5カ月続いているにもかかわらず、原油価格は一部で想定された150~200ドルには達していません。中国の原油需要減少、米国の過去最高水準の生産、戦略石油備蓄の放出、投機資金の慎重姿勢が価格上昇を抑えています。ただし、ホルムズ海峡と紅海の両方で輸送障害が起きれば、この均衡が崩れる可能性があります。(Reuters:07/20) - 米国のガソリン平均価格が再び1ガロン4ドルを突破
米国のガソリン平均価格は4.003ドルとなり、中東で戦闘が始まった2月末から30%以上上昇しました。燃料高は家計の可処分所得(税金や社会保険料を除いて自由に使えるお金)を減らし、小売り、外食、旅行、自動車などの消費関連企業へ影響します。原油高が長引けば、インフレ鈍化を前提とするFRBの金融政策にも修正を迫る可能性があります。(Reuters:07/20) - 米戦略石油備蓄が1983年以来の低水準
米国の戦略石油備蓄は前週から約510万バレル減少し、3億1,140万バレルとなりました。これは1983年以来の低水準です。備蓄放出は中東情勢による供給不足と燃料価格上昇を和らげていますが、残量が減れば追加放出の余力も小さくなります。原油供給が再び大きく途絶えた場合、政府が価格上昇を抑える手段は以前より限られます。(Reuters:07/20) - 米10年国債利回りが4.6%近くまで上昇
原油高によるインフレ再加速への懸念から、米10年国債利回りは一時4.608%まで上昇しました。長期金利の上昇は企業の借入費用を増やし、将来利益への期待が株価に多く織り込まれた高PER銘柄の評価を下げやすくします。この日は半導体株が反発した一方、工業・産業や金融など幅広い分野に売りが出ており、金利上昇への警戒は消えていません。(Reuters:07/20) - Alphabet、Tesla、IBM、Intelの決算がAI相場を試す
今週はAlphabet、Tesla、IBM、Intelなど主要企業の決算発表が続きます。半導体指数は6月末の高値から20%を超えて下落しており、AI関連株は将来期待だけでは買われにくくなっています。市場はAI向け設備投資の規模だけでなく、売上高、利益率、現金収入へどの程度結び付いているかを確認します。AI需要の失速ではなく、企業ごとの収益力を選別する局面です。(Reuters:07/20) - GoogleがGeminiを組み込んだサーバー向け半導体を開発
Alphabet傘下のGoogleが、生成AIのGeminiを組み込んだサーバー向け半導体を開発していると報じられ、Alphabet株は上昇しました。狙いはAI処理の効率向上と計算能力不足の緩和です。巨大IT企業が自社半導体を強化すれば、特定のGPU企業への依存を減らせます。一方、AIサーバー、メモリー、高速通信網、冷却、電力設備への投資は引き続き拡大すると考えられます。(Reuters:07/20) - ParamountによるWarner Bros.買収を連邦裁判所が一時停止
米連邦裁判所は、Paramount SkydanceによるWarner Bros. Discovery買収を少なくとも2週間停止するよう命じました。複数州は、映画、テレビ、動画配信、ニュース事業の統合によって競争が弱まり、価格上昇や制作本数の減少につながると主張しています。大型M&A(企業の合併・買収)では、業績だけでなく独占禁止法による規制リスクも株価を左右します。(Bloomberg:07/20) - ドル円は162円台へ上昇
ドル円は162.52円まで上昇しました。中東情勢への警戒から安全資産としてドルが買われたほか、米10年国債利回りが4.6%近くまで上昇し、日米金利差が再び注目されています。円安は日本人投資家が保有する米国株の円換算額を押し上げますが、輸入物価と国内インフレを高めるため、円安が進み続けることが日本経済全体に有利とは言えません。(WSJ:07/20)
経済指標発表予定
以下の経済指標が発表される予定です。
主要銘柄の決算発表予定
以下の主要銘柄の決算発表がなされる予定です。
おわりに
この日の米国株式市場は、原油高、米10年国債利回りの上昇、中東情勢への警戒が重なり、主要3指数はそろって下落しました。ただ、恐怖指数と呼ばれるVIX指数は20を下回っており、市場全体が強い不安に包まれた状況ではありません。長期投資では、毎日の上昇や下落より、企業利益と米国経済の変化を落ち着いて見続けることが大切です。今後も市場の表面だけでなく、資金がどの分野へ動いているのかを丁寧に確認していきます。
毎朝の更新が、皆さまの市場理解に少しでも役立てば嬉しいです。
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投資は自己責任にてお願いします。
おことわり
投資は自己責任にてお願いします。
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図表のレファレンス
- S&P500ヒートマップ: finviz
- 主要3指数とドル円: Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
- セクター別騰落率: finviz
- 経済指標結果/予定: investing.com日本語版
- 決算発表結果/予定: investing.com日本語版
- 主要指数の動き : Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
- 自分の米ドル建ポートフォリオ: Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
著者プロフィール
室井一夫(Kazuo Muroi)
Muroi Universal Research on Investment LLC 代表社員
一級建築士・建築1級施工管理技士・工学修士
Facebookグループ「米国株_投資の部屋」管理人(約4.7万人)
米国株式市場と経済動向に関する情報を毎日発信しています。
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