室井のマーケット視点
7月21日の米国株式市場は、S&P500が+0.89%、Dow30が+0.74%、NASDAQが+1.29%となりました。先端技術(Technology)は+2.90%、素材(Basic Materials)は+2.24%となり、前日まで売られていたAI・半導体関連株を中心に大きく反発しました。
この日の特徴は、NVIDIAのようなGPU企業だけではなく、Micronのメモリー、SanDiskやWestern Digitalのデータ保存装置、CoherentやLumentumの光通信、Applied Materialsの半導体製造装置まで、一斉に買われたことです。私は、これは単なる半導体株の買い戻しだけではないと見ています。企業のIT予算が、従来型ソフトウェアからAIサーバー、メモリー、ストレージ、高速通信網へ移る構造が、株価に改めて表れました。AIはGPUだけでは動きません。大量のデータを保存する設備、サーバー間を結ぶ高速通信網、安定した電源、空調、水冷設備が必要です。さらに、データセンターや送電網の建設には大量の銅が使われます。Freeport-McMoRanが+6.41%となり、素材セクターが大きく上昇したことも、AI投資の恩恵が基礎素材まで広がっている証拠だと思います。
一方、WTI原油先物は84.51ドルへ+2.46%、米10年国債利回りは4.628%へ上昇しました。中東情勢の緊迫化による原油高は、インフレを再び押し上げ、FRBの高金利政策を長引かせる可能性があります。本来であれば高PER(株価収益率が高い)銘柄には厳しい環境ですが、この日はAI関連企業の利益成長への期待が金利上昇を上回りました。とはいえ、何でも買われたわけではありません。DanaherとMSCIはEPSと売上高が市場予想を上回ったにもかかわらず、株価は10%を超えて下落しました。市場は過去3か月の実績より、次の3か月、半年の成長率や利益率を見ています。好決算というだけでは足りず、既に株価へ織り込まれた期待をさらに上回る必要があります。
3MやHasbroは、利益率改善や事業の収益性が評価されて大きく上昇しました。AI関連以外でも、実際の利益を増やせる企業には資金が向かっています。現在の相場は、将来の物語だけではなく、現在の利益、現金収入、設備投資負担、株価水準によって企業を選ぶ段階です。
恐怖指数と呼ばれるVIX指数は17.05まで低下し、20を下回っています。したがって、市場全体が全面的な恐怖状態にあるわけではありません。ただし、金先物は+1.77%、原油も上昇しており、投資家は株式を買いながら、地政学リスクとインフレにも備えています。
ドル円は163.23円まで上昇しました。米金利の上昇に加え、原油輸入国である日本では、原油高が貿易収支を悪化させやすいため、円安圧力が強まりました。円安は米国資産の円換算額を押し上げますが、輸入物価の上昇と為替介入への警戒も必要です。
私の米国株ポートフォリオは+0.50%となりました。FANG+やNASDAQ100連動ETFが上昇し、AI・半導体関連株の反発が反映されました。ただ、1日の上昇だけで相場の先行きを断定することはできません。
私は、AI需要そのものが弱まったとは考えていません。むしろAI投資の対象が、GPUからメモリー、ストレージ、通信、電力、冷却、素材へ広がっています。ただし、すべての関連企業が同じように利益を得るわけではありません。今後は、AI投資を実際の利益と現金収入へ変えられる企業が選ばれるでしょう。
長期投資家としては、こうした個別銘柄の急騰を追いかけるより、S&P500やNASDAQ100などのETFを通じて、成長企業の入れ替わりを市場に任せる方が現実的だと思っています。
投資は自己責任にてお願いします。
S&P500ヒートマップ
5%以上上昇したS&P500構成銘柄
- SNDK:SanDisk Corporation +14.27%
半導体株の反発とAI向け記憶装置需要への期待から、この日のS&P500構成銘柄で最大の上昇となりました。生成AIでは計算処理だけでなく、大量のデータを保存するNAND型フラッシュメモリーも不可欠です。直近の急落後ということもあり、押し目買いが一気に入りました。 - WDC:Western Digital Corporation +12.51%
AIデータセンター向け大容量ストレージ需要への期待から急伸しました。生成AIの学習や推論(学習済みAIが回答を作る処理)では膨大なデータを保存する必要があり、ハードディスクの需要拡大が続くと評価されました。記憶装置株全体への買い戻しも株価を押し上げています。 - MU:Micron Technology +12.17%
AI向け半導体株の反発を代表する上昇となりました。高性能GPUにはHBM(大量のデータを高速処理する積層型メモリー)が欠かせず、Micronはその需要拡大の恩恵を受けます。AI設備投資の長期的な成長性を再評価する買いが入り、直近の下落分を大きく取り戻しました。 - TER:Teradyne +12.07%
半導体検査装置への需要拡大期待から大幅高となりました。AI向け半導体は構造が複雑で高価格なため、製造後の性能確認や不良品の選別が一段と重要になります。半導体メーカーだけでなく、製造工程を支える装置企業にも資金が戻ったことを示す上昇です。 - COHR:Coherent +11.15%
AIデータセンター向け光通信部品への需要拡大期待から買われました。多数のGPUを高速で接続するには、電気信号より大量のデータを送れる光通信技術が必要です。AI投資の対象が半導体本体から通信部品やネットワーク設備へ広がる流れが再び強まりました。 - STX:Seagate Technology +11.14%
AIデータセンターで使用される大容量ハードディスク需要への期待から急伸しました。生成AIの普及に伴って保存すべきデータ量が増え続けており、低コストで大量保存できるハードディスクの役割は残ります。記憶装置関連株が一斉に買い戻される中、同社にも資金が集中しました。 - COIN:Coinbase Global +9.61%
暗号資産市場の持ち直しと、米国における規制整備の進展期待から上昇しました。取引価格や売買量が増えると、暗号資産交換所であるCoinbaseの手数料収入も増えやすくなります。株式市場全体の投資家心理が改善したことも、高ボラティリティ銘柄への買いにつながりました。 - LITE:Lumentum Holdings +9.41%
AIデータセンター向け光通信機器への需要拡大を見込む買いが入りました。生成AIでは、サーバー間で大量のデータを短時間に転送する必要があり、光トランシーバー(電気信号と光信号を変換する部品)の性能向上が欠かせません。半導体株の反発が光通信関連にも波及しました。 - HAS:Hasbro +8.81%
玩具・ゲーム事業の業績改善や収益性向上への期待から買われました。物価上昇によって消費者の選別姿勢は続いていますが、知名度の高いブランドやデジタルゲーム事業を持つ企業には安定した需要があります。AI・半導体株だけでなく、消費関連の一部にも資金が向かいました。 - INTC:Intel Corporation +8.64%
半導体株全体の反発に加え、製造技術の再建やAI向け製品への期待から上昇しました。Intelは先端半導体の受託製造とデータセンター向けCPUの立て直しを進めています。業績改善には時間が必要ですが、株価下落後の水準から回復を見込む買い戻しが入りました。 - AMD:Advanced Micro Devices +8.11%
AI向け半導体需要が長期的に拡大するとの期待から大幅高となりました。AMDはGPU市場でNVIDIAを追う立場ですが、クラウド事業者が調達先を分散させる動きは同社に有利です。直近の半導体株下落で株価が調整していたため、割安感を見込んだ買いも入りました。 - CIEN:Ciena Corporation +7.91%
AI処理の増加に伴う通信量拡大を背景に、光ネットワーク設備への投資継続を見込む買いが入りました。データセンター同士を高速で結ぶには大容量の通信網が不可欠です。AIの恩恵がGPUやメモリーだけでなく、通信インフラ企業にも広がっていることを示しています。 - AMAT:Applied Materials +7.39%
AI向け半導体の増産に必要な製造装置需要への期待から上昇しました。高性能半導体や先端メモリーは製造工程が複雑であり、成膜装置や加工装置への投資額も増えます。半導体メーカーの設備投資が長期的には続くとの評価から、製造装置株にも買いが戻りました。 - MMM:3M Company +7.37%
決算内容や事業再編による利益率改善が評価され、大幅高となりました。3Mは幅広い産業向け製品を持つため、米国の製造業や企業活動の底堅さを映しやすい企業です。コスト削減と収益性改善が数字に表れ始めたことで、業績回復を見込む資金が入りました。 - HOOD:Robinhood Markets +7.13%
株式や暗号資産の取引活発化を見込む買いが入りました。市場の値動きが大きくなり、個人投資家の売買が増えると、同社の取引関連収入も伸びやすくなります。暗号資産関連株が上昇したことに加え、投資家のリスク許容度が回復したことも影響しました。 - SMCI:Super Micro Computer +7.01%
AIサーバー需要の拡大期待から反発しました。同社はGPUを搭載する高性能サーバーや水冷対応製品を手掛けており、データセンター投資との関係が深い企業です。株価変動は非常に大きいものの、AI設備投資の継続を見込む資金が再び流入しました。 - MRVL:Marvell Technology +6.68%
AIデータセンター向け通信半導体や独自設計半導体への期待から上昇しました。大手クラウド企業は用途に合わせた専用半導体の開発を進めており、Marvellはその設計支援を担っています。AI投資の対象がGPUから通信・専用半導体へ広がる流れに沿った買いです。 - FCX:Freeport-McMoRan +6.41%
銅価格の上昇と長期的な銅需要拡大への期待から買われました。AIデータセンター、送電網、電気自動車、再生可能エネルギー設備には大量の銅が必要です。原油高を含む資源価格の上昇も加わり、世界有数の銅生産企業である同社の収益改善が期待されました。 - FLEX:Flex Ltd. +6.24%
AIサーバーやデータセンター設備向けの電子機器製造需要を見込む買いが入りました。同社は機器メーカーから製造を受託し、電源装置や通信機器など幅広い製品を供給しています。AI設備投資の規模拡大に伴い、部品調達と量産を担う企業にも恩恵が及ぶとの評価です。 - GLW:Corning +6.08%
AIデータセンター向け光ファイバー需要の拡大期待から上昇しました。大量のサーバーを接続するには高速で安定した通信網が必要であり、光ファイバーの使用量も増加します。AI関連投資が半導体から通信ケーブルやネットワーク部材へ広がる流れが続いています。 - DELL:Dell Technologies +5.83%
AIサーバー受注の増加や企業向け設備投資への期待から買われました。DellはGPUを搭載したサーバーを企業やデータセンターへ供給しており、生成AI導入の拡大と直接関係します。利益率への警戒は残りますが、AIサーバー需要そのものは強いとの評価が上回りました。 - ON:ON Semiconductor +5.03%
半導体株全体の買い戻しに加え、自動車や産業機器向け半導体需要の回復期待から上昇しました。同社は電力を効率よく制御するパワー半導体を主力としており、電気自動車や工場設備の省エネルギー化と関係します。AI銘柄以外の半導体株にも資金が広がりました。
5%以上下落したS&P500構成銘柄
- DHR:Danaher Corporation -10.99%
ライフサイエンス・医療機器大手のDanaherは、決算で利益と売上高が市場予想を上回ったものの、主力のバイオプロセス事業が想定ほど伸びず、通期の既存事業売上高見通しを従来より狭い範囲へ修正しました。市場の期待値が高かっただけに、足元の成長速度に失望した売りが集中しました。 - MSCI:MSCI Inc. -10.14%
株価指数や投資分析サービスを提供するMSCIは、売上高が市場予想を上回った一方、買収関連費用、人件費、事業投資の増加を受けて通期の営業費用見通しを引き上げました。指数連動資産の増加による収入拡大は続いていますが、費用増加によって利益率が低下する可能性を警戒した売りが優勢となりました。 - TYL:Tyler Technologies -5.73%
地方自治体向け業務ソフトウェアを手掛けるTyler Technologiesは、直近4週間で株価が大きく上昇していた反動から利益確定売りに押されました。政府機関向けクラウド移行という長期的な成長分野を持つ一方、PER(株価収益率)は高く、半導体やAIインフラ株へ資金が集中する中で、高評価のソフトウェア株が売られました。 - HAL:Halliburton Company -5.47%
油田サービス大手のHalliburtonは、四半期決算で利益と売上高が市場予想を上回ったものの、第3四半期の慎重な売上高見通しが嫌われました。中東の紛争によってクウェート、イラク、カタールなどで事業活動が低下し、回復時期も地政学情勢に左右されます。原油価格が上昇した日でも、今後の事業環境への不透明感から売られました。
セクター別騰落率
市場全体では、先端技術、素材、エネルギー、工業・産業がそろって上昇し、AI・半導体関連から資源、設備投資関連まで買いが広がった。特にメモリー、ストレージ、光通信、半導体製造装置が大きく上昇し、AI投資の恩恵が幅広い企業へ波及した。一方、通信サービスと生活必需品は下落し、成長分野へ資金が移る一日であった。
- 先端技術(Technology) +2.90%
メモリー、データ保存装置、半導体製造装置、光通信関連が大きく上昇し、全セクター中で最大の上昇率となった。Micron、Western Digital、SanDisk、Applied Materialsなどが買われ、企業のIT予算が従来型ソフトウェアからAIサーバー、メモリー、ストレージ、高速通信網へ移る流れが鮮明になった。 - 素材(Basic Materials) +2.24%
銅を中心とした工業用金属関連株が上昇し、素材セクターは先端技術に次ぐ上昇となった。AIデータセンター、送電網、電気自動車には大量の銅が必要であり、Freeport-McMoRanなどに買いが入った。AI設備投資が半導体だけでなく、電力網を構成する基礎素材へ広がっていることを示す動きである。 - エネルギー(Energy) +1.31%
原油価格の上昇を受けて石油・ガス関連株が買われ、エネルギーセクターは堅調に推移した。中東情勢による供給不安に加え、夏場の需要増加も原油価格を押し上げた。ただし、油田サービス企業のHalliburtonは先行き見通しへの不安から下落しており、原油高でも企業ごとの業績差が明確に表れた。 - 工業・産業(Industrials) +1.05%
AIデータセンターの建設、電源設備、冷却機器、電子機器の受託製造などに関係する企業が買われた。Flexや3Mの上昇もセクター全体を押し上げている。AIは半導体だけでは稼働できず、建物、電力、通信、空調、水冷設備まで必要となるため、設備投資の拡大が工業・産業分野の業績へ波及している。
主要3指数とドル円の動き
- S&P500(7,509.20、前日比+0.89%)
S&P500は寄り付き後に一時7,467.86まで下落しましたが、その後は買いが優勢となり、ほぼ高値圏で取引を終えました。メモリー、データ保存装置、半導体製造装置、光通信などAIインフラ関連株が大幅に反発し、素材やエネルギーにも資金が広がりました。市場全体が上昇しており、前日の売りがAI需要の失速ではなく、短期的な利益確定だったことを示す動きです。 - Dow30(52,224.64、前日比+0.74%)
Dow30は385.38ドル上昇しました。半導体関連だけでなく、3Mなどの工業株、素材株、エネルギー株も買われ、NASDAQに偏らない上昇となりました。一方、DanaherやHalliburtonのように決算や業績見通しを理由に大きく売られた銘柄もあり、全面的な楽観相場ではありません。指数は上昇しましたが、企業の利益成長や先行き見通しによる選別は続いています。 - NASDAQ(25,837.21、前日比+1.29%)
NASDAQは主要3指数で最大の上昇率となりました。Micron、AMD、Intel、Applied Materialsなどの半導体株に加え、Western Digital、SanDisk、Seagateといった記憶装置株、CoherentやLumentumなどの光通信株が急伸しました。企業のIT予算がAIサーバー、メモリー、ストレージ、高速通信網へ移る流れが改めて評価され、AI投資の対象がGPU以外へ広がっています。 - ドル円(163.23円、前日比+0.47%)
ドル円は162.45円で始まり、一時162.41円まで円高に振れた後、163.23円まで上昇しました。米国株の上昇と投資家心理の改善によってドルが買われたほか、米国の金利が高い状態を維持するとの見方も円安につながりました。日本人投資家にとって円安は米国資産の円換算額を押し上げますが、輸入物価の上昇や為替介入への警戒も必要な水準です。
原油先物・米10年国債利回り・VIX・金先物の動き
- WTI原油先物(84.51ドル、前日比+2.46%)
WTI原油先物は一時85.03ドルまで上昇しました。中東情勢の緊張が続き、原油供給が不安定になる可能性を織り込む買いが優勢でした。原油高はエネルギー株には有利ですが、輸送費や製造コストを押し上げ、インフレの再加速を通じて米国企業全体の利益を圧迫する可能性があります。 - 米10年国債利回り(4.628%、前日比+0.65%)
米10年国債利回りは4.628%へ上昇しました。原油高によるインフレ再燃への警戒に加え、FRBが高金利政策を長く維持する可能性が債券売りにつながりました。本来は高PER(株価収益率が高い)銘柄に厳しい水準ですが、この日は半導体株の買い戻しが金利上昇の影響を上回りました。 - VIX指数(17.05、前日比-8.58%)
恐怖指数と呼ばれるVIX指数は17.05まで大幅に低下しました。S&P500とNASDAQが上昇し、前日まで売られていたAI・半導体株が反発したことで、短期的な株価急落に備える取引が減少しました。20を下回っており、全面的な恐怖状態ではありませんが、中東情勢と原油高への警戒は残っています。 - 金先物(4,087.00ドル、前日比+1.77%)
金先物は71.10ドル上昇し、一時4,092.50ドルまで買われました。米10年国債利回りが上昇する中でも金価格が上がったことから、地政学リスクや原油高によるインフレへの備えが優先されたと考えられます。株式と金が同時に上昇しており、投資家は成長株を買いながら安全資産も保有する姿勢を取っています。
私の米国株ポートフォリオ
私の米国株ポートフォリオは前日比+0.50%となりました。iFreeETF FANG+が+1.60%、MAXISナスダック100上場投信が+1.11%と上昇し、AI・半導体を含む大型成長株への買いが全体を押し上げました。一方、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)は基準価額の算定時間の違いもあり-1.18%となり、同じS&P500連動商品でも値動きに差が出ています。
昨夜の米国市場ではNASDAQが+1.29%となり、メモリー、ストレージ、光通信、半導体製造装置まで買いが広がりました。AI需要が弱まったというより、企業のIT投資先がAIサーバーや周辺インフラへ移っている流れだと感じています。短期の上下より、ETFを通じて市場全体の利益成長を取り込む姿勢を続けます。
経済指標発表結果
- ADP雇用者数変化・週間(1.65万人、前回1.925万人)
ADPが公表する週間の雇用者数は1.65万人増となり、前回の1.925万人増から伸びが鈍化しました。労働市場が急激に悪化した水準ではありませんが、企業の採用姿勢が少し慎重になっている可能性があります。雇用の減速はFRBによる利下げ観測を強めやすく、長期金利の低下を通じて成長株にはプラスに働きます。ただし、単週の数値だけで雇用全体の方向を判断するのは早いでしょう。 - レッドブック売上高(前年比+7.8%、前回+8.2%)
米国の主要小売店における売上高は前年比+7.8%となり、前回の+8.2%からやや低下しました。それでも高い伸びを維持しており、物価上昇の影響を含むとはいえ、米国の個人消費は底堅い状態です。消費の強さは企業業績にとって好材料ですが、需要が強すぎるとインフレが下がりにくくなります。株式市場にとっては、景気の強さと金利高止まりが同時に存在する内容でした。 - 米国石油協会・週間原油在庫(予想-150万バレル、前回-5.6万バレル)
米国石油協会の週間原油在庫は米国市場終了後の発表予定で、市場予想は150万バレルの減少です。在庫が予想以上に減れば原油価格は上昇しやすく、エネルギー株にはプラスとなる一方、インフレ再燃への警戒が強まります。反対に在庫が増加すれば、原油価格の上昇は一服しやすくなります。この日はWTI原油先物が84ドル台へ上昇しており、発表結果への関心も高まっていました。
主要銘柄の決算発表結果
- SCHW:The Charles Schwab Corporation(金融)
Charles SchwabはEPSが1.62ドルとなり、市場予想の1.54ドルを上回りました。売上高も71億ドルと予想の68.5億ドルを上回り、金利収入や顧客資産から得る手数料収入の底堅さが確認されました。ただし株価は-2.52%となり、好決算を事前に織り込んでいた投資家による利益確定売りが優勢でした。 - CB:Chubb Limited(金融)
損害保険大手のChubbはEPSが7.26ドルとなり、市場予想の6.78ドルを上回りました。売上高も179.5億ドルと予想の150.7億ドルを大幅に上回り、保険料収入と運用収益の拡大が確認されました。通常取引では+0.64%でしたが、時間外では-0.65%となり、好業績でも株価の反応は限定的でした。 - COF:Capital One Financial Corporation(金融)
Capital OneはEPSが5.81ドルとなり、市場予想の4.68ドルを大きく上回りました。売上高も159億ドルと予想の157.6億ドルを上回り、クレジットカード利用と融資事業の収益力を示しました。通常取引では-0.27%でしたが、時間外では+1.23%となり、予想を上回る利益が改めて評価されています。 - DHR:Danaher Corporation(ヘルスケア)
DanaherはEPSが1.94ドルとなり、市場予想の1.83ドルを上回り、売上高も63億ドルと予想の61億ドルを上回りました。それでも株価は-10.99%と急落しました。市場は決算数値そのものより、バイオ医薬品関連需要の回復速度や今後の売上成長を厳しく評価しており、期待値の高さが株価下落につながりました。 - MMM:3M Company(工業・産業)
3MはEPSが2.40ドルとなり、市場予想の2.24ドルを上回りました。売上高も65億ドルと予想の64億ドルを上回り、事業再編やコスト削減による利益率改善が数字に表れました。株価は+7.32%と大幅高となりましたが、時間外では-0.15%と小幅に下落しており、通常取引中に好決算をほぼ織り込んだとみられます。 - MRSH:Marsh McLennan Companies(金融)
保険仲介大手のMarsh McLennanはEPSが2.96ドルとなり、市場予想の2.90ドルを上回りました。売上高も74億ドルと予想の72.8億ドルを上回り、企業のリスク管理や保険仲介に対する安定した需要が続いています。一方、株価は-0.28%、時間外でも-0.60%となり、堅調な決算だけでは株価を押し上げられませんでした。 - NOC:Northrop Grumman Corporation(工業・産業)
防衛大手のNorthrop GrummanはEPSが7.68ドルとなり、市場予想の6.82ドルを大幅に上回りました。売上高も109億ドルと予想の108億ドルを上回り、防衛装備や宇宙関連事業の受注が業績に反映されました。それでも株価は-2.50%となり、将来の事業費用や利益率に対する慎重な見方が残りました。 - GM:General Motors Company(一般消費材)
General MotorsはEPSが3.57ドルとなり、市場予想の3.18ドルを上回りました。売上高も480億ドルと予想の469.9億ドルを上回り、高金利環境でも自動車販売と価格戦略が機能しています。株価は+4.91%となり、市場は足元の利益成長を評価しました。電気自動車投資と既存車種からの利益を両立できるかが今後の焦点です。 - DHI:D.R. Horton, Inc.(一般消費材)
米住宅建設大手のD.R. HortonはEPSが3.20ドルとなり、市場予想の2.97ドルを上回りました。売上高も92億ドルと予想の91.4億ドルを上回っています。住宅ローン金利が高い中でも購入支援策や値引きによって販売を維持しましたが、株価は-0.88%となり、金利上昇による今後の採算悪化への警戒が残りました。 - MSCI:MSCI Inc.(金融)
MSCIはEPSが4.94ドルとなり、市場予想の4.90ドルをわずかに上回りました。売上高も8.67億ドルと予想の8.64億ドルを上回りましたが、株価は-10.35%と急落しました。指数連動商品や投資分析サービスの需要は安定しているものの、費用増加や今後の利益率に対する市場の期待を満たせなかったことが大きな売りにつながりました。 - HAL:Halliburton Company(エネルギー)
HalliburtonはEPSが0.55ドルとなり、市場予想の0.54ドルを上回り、売上高も57億ドルと予想の55億ドルを上回りました。それでも株価は-5.44%となりました。原油価格は上昇しましたが、北米での掘削活動や中東事業の先行きに不透明感があり、市場は過去の実績より今後の売上見通しを厳しく評価しました。 - HAS:Hasbro, Inc.(一般消費材)
玩具大手のHasbroはEPSが1.28ドルとなり、市場予想の1.13ドルを上回りました。売上高も11.4億ドルと予想の10.6億ドルを上回り、デジタルゲームや知的財産を活用した事業が収益改善に貢献しました。株価は+8.81%と急伸しており、物価上昇下でもブランド力のある商品には需要が残ることを示す決算でした。
主な経済ニュース
- 半導体株が急反発しNASDAQを牽引
前週まで大きく売られていた半導体株に買い戻しが入り、フィラデルフィア半導体株指数は5%を超えて上昇しました。Micron、AMD、SanDisk、Western Digital、Seagateなどが大幅高となり、AI向けメモリー、ストレージ、光通信への需要が改めて評価されています。AI需要の失速というより、急落後の株価水準と長期的な利益成長を見直す動きです。(Reuters:07/21) - 中東情勢の緊迫化で原油が5週間ぶりの高値
WTI原油先物は84ドル台、北海ブレント原油は91ドル前後まで上昇しました。イエメンのフーシ派がサウジアラビアに対する海上封鎖を警告し、一部の原油タンカーが航路を引き返したと報じられています。供給が実際に減らなくても、船舶の運航や保険料に支障が出れば原油価格は上がります。エネルギー株には買いが入りましたが、企業の輸送費や製造費を増やす要因でもあります。(Reuters:07/21、WSJ:07/21) - トランプ大統領がイランへの強硬姿勢を継続
トランプ大統領は、イランが「意味のある協議」に応じる用意を整えるまでは交渉を再開しない考えを示しました。米国とイランによる軍事行動が続く中、早期停戦への期待は後退しています。株式市場は半導体株の上昇を優先しましたが、ホルムズ海峡や紅海の物流が一段と悪化すれば、原油高、インフレ、長期金利上昇を通じて企業利益へ影響が及びます。(Bloomberg:07/21、WSJ:07/21) - 米国がカナダ製品へ50%の追加関税
トランプ政権は、カナダが米国製の自動車、乳製品、酒類を不当に扱っているとして、ワイン、セメント、アイスホッケー用品など幅広い輸入品へ50%の追加関税を発表しました。1930年関税法のほとんど使われてこなかった条項を根拠としており、米国とカナダの貿易摩擦は新しい段階に入りました。関税は米国内の販売価格や建設費を押し上げる可能性があります。(Reuters:07/21) - 原油高で米10年国債利回りが4.6%台へ上昇
米10年国債利回りは4.628%まで上昇しました。原油価格の上昇が物価を再び押し上げ、FRBが高金利を長く維持する可能性を債券市場が織り込みました。通常、この水準の金利は高PER(株価収益率が高い)銘柄には厳しくなります。それでも半導体株が大幅高となった点から、市場は金利よりAI関連企業の利益成長を優先したと考えられます。(Reuters:07/21、WSJ:07/21) - 3MとHasbroが業績見通しを引き上げ
3MとHasbroは市場予想を上回る決算と業績見通しを発表し、株価が大幅に上昇しました。3Mでは事業再編とコスト削減による利益率改善、Hasbroではデジタルゲームや知的財産を活用した事業の成長が評価されています。半導体株だけでなく、工業株や消費関連株にも買いが広がり、米国企業の利益成長が特定の巨大IT企業だけに限られていないことを示しました。(Reuters:07/21) - DanaherとMSCIは好決算でも2桁下落
DanaherとMSCIはEPSと売上高が市場予想を上回りましたが、株価はともに10%を超えて下落しました。Danaherはバイオ医薬品関連需要の回復速度、MSCIは費用増加と利益率低下が問題となりました。決算数値が予想を上回るだけでは不十分で、今後の売上成長や利益率が市場の高い期待を超えなければ売られる相場です。(Reuters:07/21) - AlphabetやIntelの決算を前にAI期待が再燃
今週はAlphabet、Intel、Texas Instrumentsなど、AI・半導体市場の方向を左右する企業の決算が続きます。株価が急反発した背景には、決算前に保有比率を戻す買いと、上昇に乗り遅れることへの不安もあります。現在の株価には相当な成長が織り込まれているため、売上高だけでなく、AI投資による利益、設備投資額、利益率が重要になります。(Reuters:07/21) - 中国AI「Kimi K3」が米国企業との競争を加速
中国のMoonshot AIが公開した大規模言語モデル「Kimi K3」は、低い利用コストで米国の最先端モデルに迫る性能を持つと報じられました。中国AIの進歩は米国企業には競争圧力ですが、高性能なAIを安価に利用できれば、メモリー、ストレージ、通信設備の使用量は増えます。実際に市場では、中国AIの進歩が半導体需要を減らすのではなく、AI利用を広げるとの評価も出ています。(Bloomberg:07/21) - ドル円が163円台へ上昇
ドル円は163円台へ上昇しました。原油高による米国のインフレ懸念から米10年国債利回りが4.6%台へ上がり、日米金利差を背景としたドル買い・円売りが進みました。原油輸入国である日本は、原油高によって貿易収支が悪化しやすいことも円安要因になります。米国株を保有する日本人には円換算額を押し上げますが、政府・日銀による為替介入への警戒が強まる水準です。(Bloomberg:07/21、WSJ:07/21)
経済指標発表予定
以下の経済指標が発表される予定です。
主要銘柄の決算発表予定
以下の主要銘柄の決算発表がなされる予定です。
おわりに
7月21日の米国株式市場は、AI・半導体関連株が大きく反発し、NASDAQを中心に主要3指数が上昇しました。一方で、原油価格と米10年国債利回りも上昇しており、中東情勢とインフレへの警戒が消えたわけではありません。
決算では、予想を上回っても株価が下落する企業がある一方、利益率や今後の成長が評価された企業には買いが集まりました。今の相場は、AI関連というだけではなく、実際の利益、設備投資負担、株価水準まで細かく選別する段階に入っています。
長期投資では、毎日の上昇や下落に振り回されず、市場全体の利益成長をETFで取り込む姿勢を続けることが大切だと考えています。
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図表のレファレンス
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著者プロフィール
室井一夫(Kazuo Muroi)
Muroi Universal Research on Investment LLC 代表社員
一級建築士・建築1級施工管理技士・工学修士
Facebookグループ「米国株_投資の部屋」管理人(約4.7万人)
米国株式市場と経済動向に関する情報を毎日発信しています。
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