室井のマーケット視点
8月3日の米国株式市場は、S&P500が+1.48%、Dow30が+1.32%、NASDAQが+2.13%となり、主要3指数がそろって大きく上昇しました。WTI原油先物が-5.27%と急落し、米10年国債利回りも4.686%へ低下したことで、原油高からインフレと金利が再び上昇するシナリオがいったん後退しました。とはいえ、指数が全面高になったというだけでは、この日の市場内部で起きた変化を十分に説明できません。通信サービス(Communication Services)が+3.83%、工業・産業(Industrials)が+2.44%、一般消費材(Consumer Cyclical)が+2.35%、先端技術(Technology)が+1.57%となり、資金はAI関連だけでなく、航空、建設資材、電力設備、金融へ広がりました。一方、エネルギー(Energy)は原油急落を受けて-1.26%となっています。
AI関連では、MetaやOracleだけでなく、Coherent、Lumentum、Corning、Dell、Vertiv、Eatonなどが大きく上昇しました。私はデータセンターの建設や改修に携わった経験がありますが、AIはGPUだけでは動きません。高速光通信、大容量の記憶装置、受変電設備、非常用電源、空冷や水冷による冷却設備がそろって、はじめて安定した運用が可能になります。今回の上昇は、AI投資の恩恵が半導体からデータセンター全体へ広がっていることを示しています。
決算ではPalantirの1株当たり利益と売上高が市場予想を上回り、時間外取引で+10.27%となりました。AIソフトウェアが政府向けだけでなく民間企業にも広がり、投資が実際の売上高へ結びついている点は重要です。ただし、AI関連株は将来の高成長を先回りして株価へ織り込んでいる銘柄も少なくありません。AI需要が強いことと、現在の株価が割安であることは別に考える必要があります。
米国経済も予想以上の強さを示しました。7月のISM製造業景気指数は55.6、製造業雇用指数は52.8となり、いずれも景気拡大を示す50を上回りました。アトランタ連銀のGDPNowは7-9月期の成長率を年率+6.2%と試算しています。企業利益には好ましい内容ですが、ISM製造業価格指数は71.1と依然高く、景気が強すぎればFRBが利下げを急がない可能性もあります。株価にとっては、利益成長と高金利が同時に存在する相場が続きそうです。
ドル円では日米協調による円買い・ドル売り介入を受け、一時155円台まで円高が進みました。その後は157円台へ戻しており、介入によって円安の流れが完全に変わったとは言い切れません。私の米国株ポートフォリオも前日比-1.56%となりましたが、日本市場で保有する米国株ETFや投資信託には、米国株の前日の下落や円高が時間差で反映されます。米国株が当日に上昇していても、円建ての保有資産が同じ日に上昇するとは限らないところが、日本から米国株へ投資する難しさです。
中東情勢についても、追加攻撃の延期や外交交渉への期待だけで、地政学リスクが消えたわけではありません。ホルムズ海峡を巡る情勢が再び悪化すれば、原油、インフレ、米金利、株価の流れは短期間で反転する可能性があります。恐怖指数と呼ばれるVIX指数は15.86まで低下しましたが、私はこの低さを安心の保証とは考えていません。
長期投資では、1日の上昇や下落を予測するより、市場の中で資金がどこへ動いているかを確認する方が大切だと思っています。この日は、原油高と戦争への警戒から逃げていた資金が、AIインフラ、航空、工業・産業、一般消費材へ戻りました。私はETF中心の分散投資を続けていますが、短期的な為替介入や相場の急反発で方針を変えるつもりはありません。企業利益の成長とAI投資の広がりを確認しながら、市場に居続ける姿勢を大切にします。
投資は自己責任にてお願いします。
S&P500ヒートマップ

5%以上上昇したS&P500構成銘柄
- FSLR:First Solar, Inc.(先端技術) +10.28%
好調だった四半期決算の再評価に加え、米通商法232条に基づく太陽光関連製品の輸入規制が、米国内で生産する同社に有利な内容になるとの期待から買われました。政策による保護と生産能力拡大が利益成長につながるとの見方です。 - COHR:Coherent Corp.(先端技術) +9.60%
大手クラウド企業の好決算を受け、AIデータセンター投資の拡大期待が再び強まりました。同社が手掛ける光通信部品は、GPU間で大量のデータを高速伝送するために不可欠であり、AIインフラ関連への買い戻しが入りました。 - LITE:Lumentum Holdings Inc.(先端技術) +9.24%
AIサーバーを結ぶ高速光通信設備への需要拡大を期待した買いが入りました。生成AIの処理能力を高めるには半導体だけでなく、データセンター内外を結ぶ光部品も必要です。CoherentやCorningとともに、AI光通信関連株がそろって上昇しました。 - ORCL:Oracle Corporation(先端技術) +9.22%
AmazonやMicrosoftなどのクラウド事業が好調だったことから、Oracleのクラウド基盤にも買いが波及しました。同社はAI向け計算設備を急速に拡張しており、受注残が将来の売上高へ転換するとの期待から、下落後の買い戻しが加速しました。 - AXON:Axon Enterprise, Inc.(工業・産業) +9.12%
決算発表を前に、公共安全向けクラウドサービスやAI映像解析の成長を期待した買いが入りました。警察向け装着カメラだけでなく、証拠管理ソフトウェアから継続収入を得る事業構造が評価され、成長株への資金回帰も上昇を増幅しました。 - VRT:Vertiv Holdings Co.(工業・産業) +8.89%
AIデータセンター投資の拡大を受け、電源設備や冷却システムを供給する同社へ資金が流入しました。GPUの高性能化に伴って発熱量と消費電力が増えるため、空冷、水冷、無停電電源などへの投資も増えます。AIインフラの中心銘柄として買い戻されました。 - ARES:Ares Management Corporation(金融) +8.18%
中東情勢の緩和期待と原油価格の急落を受けて市場全体の不安が後退し、オルタナティブ資産運用会社にも買いが入りました。株式や企業融資の環境改善は、運用資産と手数料収入の増加につながるため、リスク回避局面で売られた反動も表れました。 - BA:The Boeing Company(工業・産業) +8.03%
米連邦航空局が長期間遅れていた737 MAX 7を正式認証したことが最大の上昇要因です。納入開始と受注残の売上計上が可能になるほか、737 MAX 10の認証前進も期待されました。証券会社による投資判断の引き上げも買いを強めました。 - BAX:Baxter International Inc.(ヘルスケア) +7.42%
これまで低迷していた医療機器株への買い戻しが進みました。事業再編による収益力改善への期待に加え、株価水準が相対的に低かったことから、市場全体が上昇する中で割安株を選好する資金が入りました。 - GDDY:GoDaddy Inc.(先端技術) +6.90%
AI関連を含むソフトウェア株への資金回帰により上昇しました。ウェブサイト制作や企業向けサービスでは、AI機能による利用単価の上昇と業務効率化が期待されています。PER(株価収益率)が他の成長株より低く、割安感のある技術株として買われました。 - ISRG:Intuitive Surgical, Inc.(ヘルスケア) +6.25%
手術支援ロボットの普及拡大と、消耗品や保守サービスによる継続収入への評価から買われました。中東情勢の緩和によって市場全体が上昇する中、景気変動の影響を比較的受けにくく、利益成長も期待できる大型ヘルスケア株へ資金が入りました。 - CRWD:CrowdStrike Holdings, Inc.(先端技術) +6.12%
クラウドとAI関連株の反発に伴い、サイバーセキュリティ株にも買い戻しが入りました。企業がAIやクラウドの利用を増やすほど、情報漏洩や不正アクセスへの対策費用も拡大します。高成長を維持できる企業として、投資家のリスク許容度回復が株価に表れました。 - GLW:Corning Incorporated(先端技術) +6.07%
AIデータセンター向け光ファイバー需要の拡大期待から上昇しました。サーバー間のデータ量が急増する中、通信回線の高速化には大量の光ファイバーが必要です。AI投資の恩恵が半導体から通信設備や部材へ広がる流れが改めて確認されました。 - CVNA:Carvana Co.(一般消費材) +6.05%
原油価格と米長期金利の低下を受け、自動車関連の消費株に買いが入りました。金利低下は自動車ローン負担を軽くする方向に働きます。同社は値動きが大きく、相場全体のリスク選好回復に伴う空売りの買い戻しも上昇を拡大させたとみられます。 - SNDK:SanDisk Corporation(先端技術) +6.03%
決算発表を控え、AIサーバーやデータセンター向け記憶装置の需要拡大を期待した先回り買いが入りました。生成AIでは計算処理だけでなく、大量のデータを保存するNAND型フラッシュメモリーも必要です。直前までの調整に対する買い戻しも加わりました。 - META:Meta Platforms, Inc.(通信サービス) +6.02%
決算直後の下落から大きく反発しました。広告収入が高い伸びを維持し、AIによる広告表示の最適化が本業の収益拡大につながっている点が再評価されました。巨額の設備投資には警戒が残るものの、AI投資を利益へ変える力が買われています。 - DELL:Dell Technologies Inc.(先端技術) +5.83%
AIサーバー需要の拡大期待から買われました。大手クラウド企業が設備投資を増額しているため、サーバー本体、記憶装置、ネットワーク機器を供給する企業にも需要が波及します。利益率への懸念は残りますが、AIインフラ関連株の反発に連動しました。 - UAL:United Airlines Holdings, Inc.(工業・産業) +5.82%
中東情勢の緩和期待から原油価格が急落し、航空燃料費の低下が収益改善につながるとの期待で上昇しました。航空会社は燃料費の影響を大きく受けるため、原油安への反応が鮮明です。Boeing 737 MAX 7の認証も航空業界には前向きなニュースでした。 - VMC:Vulcan Materials Company(素材) +5.59%
市場全体の上昇を受け、道路や建設工事向け骨材を供給する景気敏感株にも買いが広がりました。米国のインフラ投資による中長期的な需要に加え、原油安は採掘、輸送、製造にかかる燃料費を抑えるため、利益率改善への期待につながりました。 - ETN:Eaton Corporation plc(工業・産業) +5.55%
AIデータセンター向けの配電設備、変圧器、電力管理機器への需要拡大を期待した買いが入りました。データセンター建設では半導体より前に、受変電設備や非常用電源の整備が必要です。AI関連投資が電力インフラ企業へ波及する流れが続いています。 - BX:Blackstone Inc.(金融) +5.42%
原油安と地政学リスクの後退によって投資家心理が改善し、未公開株、不動産、企業融資を扱う資産運用会社が買われました。市場環境が安定すれば、保有資産の売却や新規ファンドへの資金流入が進みやすくなり、成果報酬の回復も期待できます。 - IR:Ingersoll Rand Inc.(工業・産業) +5.28%
工場やデータセンターで使用される圧縮機、ポンプ、空調関連機器への需要拡大期待から上昇しました。AIデータセンターでは冷却設備や空気・液体の搬送機器が不可欠です。設備投資関連株へ買いが広がる中で、同社にも資金が向かいました。 - VST:Vistra Corp.(公益事業) +5.23%
AIデータセンターの電力消費増加を背景に、発電能力を持つ電力会社への買いが続きました。特に原子力発電は安定的に大量の電力を供給できるため、AIインフラ投資の長期的な受益企業として注目されています。成長株反発の流れも株価を押し上げました。 - KKR:KKR & Co. Inc.(金融) +5.06%
株式市場の上昇と投資家心理の改善を受け、オルタナティブ資産運用大手にも買いが入りました。未公開株やインフラ資産の評価回復は、運用成績と成果報酬の増加につながります。中東情勢への不安が和らいだことで、金融株全体への資金流入が進みました。
5%以上下落したS&P500構成銘柄
- MAR:Marriott International, Inc.(一般消費材) -6.97%
Marriott Internationalは、S&P500が上昇する中で大幅安となりました。旅行需要は底堅いものの、客室単価や稼働率の伸びが鈍化する可能性に加え、人件費などの運営コスト上昇が警戒されたと考えられます。景気減速時には出張や高価格帯ホテルの利用が減りやすく、好調な旅行需要を前提とした株価水準から利益確定売りが膨らみました。 - FICO:Fair Isaac Corporation(先端技術) -6.90%
信用スコアサービスを手掛けるFair Isaacは大きく下落しました。売上高と利益の成長期待は高いものの、株価には将来の成長が相当程度織り込まれており、高PER(株価収益率が高い状態)への警戒から売りが出たとみられます。住宅ローンや自動車ローン市場の動向、金融機関による信用評価サービスへの支出も業績を左右するため、割高感のある銘柄から資金を移す動きが強まりました。 - EBAY:eBay Inc.(一般消費材) -6.03%
eBayは、米国株式市場全体が上昇する中で逆行安となりました。電子商取引市場ではAmazonや専門販売サイトとの競争が激しく、取扱高や利用者数の伸びに対する慎重な見方が残っています。米国消費は全体として底堅いものの、家計が支出先を選別する傾向も強まっています。安定した現金収入を確保している一方、成長率の低さを嫌った売りが優勢となりました。 - MPWR:Monolithic Power Systems, Inc.(先端技術) -5.73%
電源管理用半導体を手掛けるMonolithic Power Systemsは下落しました。AIサーバーやデータセンター向け需要への期待は続いていますが、PERが高く、AI関連株の中でも将来の利益成長を厳しく確認される局面に入っています。光通信、サーバー、冷却設備など他のAIインフラ銘柄が上昇する一方、半導体の一部には利益確定売りが入り、企業ごとの選別が鮮明になりました。 - CF:CF Industries Holdings, Inc.(素材) -5.50%
窒素肥料大手のCF Industriesは大幅に下落しました。肥料価格は農産物価格、天然ガス価格、作付け需要、世界的な供給量によって大きく変動します。原油を含むエネルギー価格が急落したことで、肥料価格も低下するとの見方が強まった可能性があります。PERは低いものの、商品市況によって利益が変動しやすく、景気敏感な素材株の中でも売りが集中しました。
セクター別騰落率
市場全体では、通信サービス(Communication Services)、工業・産業(Industrials)、一般消費材(Consumer Cyclical)を中心に幅広い買いが入りました。AI関連への資金回帰に加え、原油価格の急落による企業コスト低下への期待が、航空、旅行、消費関連株の上昇につながっています。一方、エネルギー(Energy)は原油安の影響を直接受け、市場全体の上昇から取り残されました。
- 通信サービス(Communication Services) +3.83%
通信サービスは全セクター中で最大の上昇となりました。Metaなど大型インターネット企業への買い戻しが進み、AIを活用した広告配信の効率化や、広告収入の成長が改めて評価されています。巨額のAI設備投資には警戒が残るものの、既存の広告事業とAIを組み合わせて利益を増やせる企業へ資金が集中しました。 - 工業・産業(Industrials) +2.44%
Boeing、Vertiv、Eatonなどが上昇し、セクター全体を押し上げました。航空機関連では認証進展への期待が高まり、データセンター関連では電源、冷却、配電設備への需要拡大が評価されています。AI投資の恩恵が半導体だけでなく、建物、電力設備、空調機器へ広がっていることが確認できる値動きでした。 - 一般消費材(Consumer Cyclical) +2.35%
原油価格の大幅下落によって、航空、旅行、自動車など燃料費や輸送費の影響を受けやすい企業が買われました。金利低下も自動車ローンや消費者負担を軽くする方向に働きます。景気減速への警戒が和らぐ中、これまで慎重に見られていた消費関連株へ資金が戻り、市場の上昇が大型技術株以外にも広がりました。 - 先端技術(Technology) +1.57%
Oracle、Coherent、Lumentum、Dellなど、AIデータセンター関連株が大きく上昇しました。買いはGPUだけでなく、クラウド、光通信、サーバー、記憶装置まで広がっています。一方、一部の高PER(株価収益率が高い状態)銘柄には売りもあり、AI関連であれば一律に上昇する相場ではなく、利益成長を確認できる企業が選ばれています。 - 素材(Basic Materials) +1.13%
建設用骨材やインフラ関連企業を中心に買いが入りました。米国内のインフラ整備やデータセンター建設では、鉄鋼、銅、セメント、骨材など大量の資材が必要になります。原油安は採掘、製造、輸送コストの低下にもつながるため、景気敏感株への資金回帰とコスト改善期待が重なった上昇と考えられます。 - エネルギー(Energy) -1.26%
WTI原油先物が大幅に下落し、石油・ガス企業の収益悪化を警戒した売りが広がりました。中東情勢の緊張緩和によって供給途絶への不安が後退し、原油価格に上乗せされていた地政学的な割増分が縮小しています。原油安は市場全体にはインフレ抑制要因ですが、エネルギー企業には販売価格低下として直接影響するため、唯一大きく下落しました。

主要3指数とドル円の動き
- S&P500(7,600.50、前日比+1.48%)
S&P500は大幅に反発し、過去最高値に近い水準まで戻しました。米国とイランの緊張緩和への期待から原油価格と米長期金利が低下し、企業のコスト増加やインフレ再加速への警戒が和らぎました。通信サービス、工業・産業、一般消費材、先端技術など幅広いセクターが上昇しており、一部の大型AI株だけに依存した相場ではありません。長期投資家としては、指数の上昇率以上に、市場全体へ買いが広がった点を前向きに見ています。 - Dow30(53,178.41、前日比+1.32%)
Dow30は693.38ドル上昇し、最高値を更新しました。原油価格の急落によって、航空、輸送、製造業など燃料費の影響を受けやすい企業の収益改善が期待され、工業・産業株を中心に買いが広がりました。Boeingの大幅上昇も指数を押し上げています。AI関連株だけでなく、景気敏感株や大型の伝統企業にも資金が戻っており、NASDAQだけが先行する相場よりも、市場の内部は安定しているように感じます。 - NASDAQ(25,913.90、前日比+2.13%)
NASDAQは主要3指数の中で最大の上昇となりました。Meta、Oracle、Coherent、Lumentum、Dellなどが上昇し、買いは広告、クラウド、光通信、サーバー、記憶装置まで広がりました。米長期金利の低下も、将来の利益を重視して評価されるグロース株(高い成長が期待される企業)には有利に働きました。ただし、一部の高PER銘柄は下落しており、AI関連であれば一律に買われるのではなく、収益化や株価水準による企業選別は続いています。 - ドル円(157.082円、前日比-0.20%)
ドル円は157.400円で始まり、一時155.215円まで円高が進んだ後、157円台へ戻して取引を終えました。日本と米国による円買い介入が確認され、追加介入への警戒から円を買い戻す動きが強まりました。一方、その後はドルの買い戻しも入り、円高の大部分を縮小しています。米国株へ投資する日本人にとって円高は円建て評価額を押し下げますが、1日の為替変動より、米国企業の利益成長と長期的な株価上昇を重視したいところです。

原油先物・米10年国債利回り・VIX・金先物の動き
- WTI原油先物(80.21ドル、前日比-5.27%)
WTI原油先物は急落しました。米国がイランへの追加攻撃を見送り、核問題を外交交渉で解決できるとの期待が高まったことで、原油価格に上乗せされていた地政学リスク分が縮小しました。OPECプラスによる増産方針も供給不安を和らげています。原油安はエネルギー株にはマイナスですが、輸送費や製造コストの低下を通じて、航空、消費、工業・産業株には好影響となりました。 - 米10年国債利回り(4.686%、前日比-1.24%)
米10年国債利回りは前日から0.059ポイント低下し、4.686%となりました。原油価格の急落によって将来のインフレ再加速への警戒が弱まり、国債を買う動きが強まったためです。長期金利の低下は、将来の利益を現在価値へ換算する際の負担を軽くするため、AI、クラウド、半導体などの成長株に有利です。NASDAQが主要3指数で最も大きく上昇した背景の一つと考えられます。 - VIX指数(15.86、前日比-0.81%)
恐怖指数と呼ばれるVIX指数は15.86まで低下しました。米国とイランの衝突がさらに拡大する可能性が後退し、原油価格と長期金利も低下したことで、投資家の不安心理がやや和らいでいます。20を下回る現在の水準は、株式市場が全面的な恐怖状態にはないことを示します。ただし、中東情勢は交渉内容次第で急変するため、低いVIXだけを根拠に楽観しすぎる局面でもありません。 - 金先物(4,108.20ドル、前日比+0.03%)
金先物はほぼ横ばいでした。米長期金利の低下は、利息を生まない金の相対的な魅力を高める一方、中東情勢の緊張緩和と株式市場の上昇によって、安全資産を急いで買う動きは弱まりました。両方の要因が打ち消し合い、小幅高にとどまっています。長期投資家としては、日々の値動きを追うより、インフレや地政学リスクへの備えとして資産の一部を金に配分する考え方が適しています。

私の米国株ポートフォリオ
私の米国株ポートフォリオは、前日比-1.56%となりました。8月3日の日本市場では、米国株に連動するETFや投資信託がそろって下落しています。eMAXIS Slim米国株式(S&P500)が-2.38%、GX超短期米国債が-2.21%、MAXISナスダック100上場投信が-2.02%となり、全体を押し下げました。
iシェアーズ S&P500 米国株ETFは-1.48%、iFreeETF FANG+も-1.10%でした。米国株の値動きに加えて、円高が進むと、ドル建て資産を円に換算した評価額は下がりやすくなります。今回は株価と為替の両方が影響したと感じています。
保有資産が全面的に下がる日は気持ちのよいものではありませんが、ETF中心の長期投資では、この程度の変動は繰り返し起こります。コロナショックの際も積立を止めませんでした。今回も短期的な評価額より、米国企業全体の利益成長を見ながら、落ち着いて保有を続けます。

経済指標発表結果
- ISM製造業購買担当者景気指数(55.6、予想54.0、前回53.3)
7月のISM製造業景気指数は市場予想を上回り、好不況の分岐点である50を7カ月連続で上回りました。米国の製造業が想定以上の速さで拡大していることを示し、景気後退への不安を和らげました。企業利益には前向きな内容ですが、景気の強さが続けばFRBの利下げを急ぐ必要性は低下します。株式市場では景気敏感株が買われる一方、金利の高止まりには注意が必要です。 - ISM製造業雇用指数(52.8、予想50.0、前回49.7)
製造業雇用指数は52.8へ上昇し、前月の縮小圏から拡大圏へ転じました。企業が人員削減から採用へ動き始めた可能性を示しており、米国の労働市場が急速に悪化していないことを確認できる内容です。雇用の安定は個人消費を維持しやすくしますが、賃金上昇が続けばサービス価格の低下を遅らせます。FRBにとっては景気とインフレの両面を慎重に見極める必要がある結果です。 - ISM製造業価格指数(71.1、予想70.0、前回73.0)
仕入れ価格を示す価格指数は前月の73.0から71.1へ低下しましたが、市場予想の70.0を上回り、依然として高い水準です。価格上昇の勢いはやや鈍化したものの、製造業の原材料費や輸送費には強い上昇圧力が残っています。原油価格の急落は今後の物価低下に役立ちますが、今回の結果だけではインフレ再燃への警戒を解くには不十分です。長期金利の低下余地を限定する要因になります。 - アトランタ連銀GDPNow(2026年7-9月期、年率+6.2%、前回+5.0%)
アトランタ連銀のGDPNowは、7-9月期の実質GDP成長率を年率+6.2%と推計し、前回の+5.0%から大きく上方修正しました。GDPNowは公式予測ではなく、発表済みの経済統計を用いた機械的な試算ですが、米国経済の勢いが強いことを示しています。企業業績には前向きである一方、景気が強すぎればFRBの利下げが遅れる可能性もあり、株価には利益成長と高金利の両方が影響します。 - 製造業購買管理者指数(53.9、予想53.8、前回53.9)
民間調査による製造業PMIは53.9となり、市場予想をわずかに上回りました。前月と同じ水準を維持し、米国製造業の生産活動が安定して拡大していることを示しています。ISM指数の大幅上昇とも方向性が一致しており、製造業の回復が一時的ではない可能性が高まりました。工業・産業や素材にはプラスですが、製造コスト上昇が企業の利益率を圧迫していないかも確認する必要があります。 - 建設支出(前月比-0.1%、予想+0.2%、前回0.0%)
6月の建設支出は前月比-0.1%となり、市場予想を下回りました。高い借入金利や建設費の上昇が、住宅や一部の民間建設を抑えている可能性があります。ただし、データセンター、工場、電力設備などの大型投資需要は別の流れで拡大しており、建設市場全体が弱いとは言い切れません。長期投資家としては、住宅建設の鈍化とAI関連設備投資の強さを分けて見る必要があります。
主要銘柄の決算発表結果
- BRK.B:Berkshire Hathaway Inc.(金融)
ブログ執筆時点で未発表なので、、決算内容を評価できません。 - PLTR:Palantir Technologies Inc.(先端技術)
1株当たり利益は0.41ドルとなり、市場予想の0.34ドルを大きく上回りました。売上高も19.4億ドルと予想の18.1億ドルを上回り、通常取引で+2.10%、時間外取引では+10.27%まで上昇しています。AIソフトウェアへの需要が、政府向けだけでなく民間企業にも広がっていると受け止められました。成長率は非常に高い一方、株価の期待値も高いため、今後は利益成長が現在の評価に追いつくかが重要です。 - VRTX:Vertex Pharmaceuticals Incorporated(ヘルスケア)
1株当たり利益は4.73ドルと市場予想の4.72ドルをわずかに上回り、売上高も33.3億ドルと予想の32.2億ドルを上回りました。ただし通常取引で-1.34%、時間外でも-0.43%となり、決算数値を上回る材料までは不足していたようです。医薬品株では現在の売上高だけでなく、新薬候補の承認時期や研究開発の進捗が株価を左右します。安定した既存事業と将来の新薬収入を分けて見る必要があります。 - MAR:Marriott International, Inc.(一般消費材)
1株当たり利益は3.19ドルと市場予想の3.05ドルを上回りましたが、売上高は70.7億ドルと予想の71.7億ドルを下回りました。通常取引では-7.05%と大幅安となり、時間外取引は+0.05%にとどまっています。利益は予想を超えたものの、投資家はホテル需要や売上高の伸びをより重く見たと考えられます。旅行需要が底堅くても、客室単価や海外需要の伸びが鈍れば、今後の成長率には慎重な評価が必要です。 - WMB:The Williams Companies, Inc.(エネルギー)
1株当たり利益は0.50ドルで市場予想と一致し、売上高は30.5億ドルと予想の28.3億ドルを上回りました。通常取引では原油・エネルギー価格の急落を受けて-1.51%となりましたが、時間外取引では+1.87%へ反発しています。天然ガス輸送を中心とする同社は、原油価格だけでなく、発電所やデータセンターによる天然ガス需要の影響も受けます。売上高の上振れが事業の安定性を示した形です。 - FANG:Diamondback Energy, Inc.(エネルギー)
1株当たり利益は6.48ドルと市場予想の6.20ドルを上回り、売上高も55.6億ドルと予想の50.5億ドルを上回りました。それでも通常取引では-2.07%、時間外でも-0.39%となっています。決算自体は予想を超えましたが、この日はWTI原油先物が急落したため、将来の販売価格低下への警戒が決算評価を上回りました。資源株では生産量だけでなく、原油価格と採掘コストの差が利益を大きく左右します。 - ON:ON Semiconductor Corporation(先端技術)
1株当たり利益は0.74ドルと市場予想の0.71ドルを上回り、売上高も16億ドルと予想の15.9億ドルをわずかに上回りました。通常取引では-1.48%でしたが、時間外取引では+3.36%へ上昇しています。自動車や産業機器向け半導体の需要には不透明感が残るものの、利益と売上高の両方が予想を超えたことで安心感が広がりました。今後は電気自動車需要と在庫調整の進捗が焦点になります。 - OKE:ONEOK, Inc.(エネルギー)
ブログ執筆時点で未発表なので、、決算内容を評価できません。 - LOW:Lowe’s Companies, Inc.(一般消費材)
ブログ執筆時点で未発表なので、、決算内容を評価できません。 - TSN:Tyson Foods, Inc.(生活必需品)
1株当たり利益は0.99ドルと市場予想の1.05ドルを下回り、売上高も138.7億ドルと予想の141.5億ドルに届きませんでした。それでも通常取引では+2.85%となり、時間外取引では-0.10%でした。市場予想未達にもかかわらず株価が上昇したことから、事前に慎重な見方が織り込まれていた可能性があります。食肉価格、飼料費、消費者の節約志向によって利益率が変わるため、売上高より採算改善が重要です。 - SBAC:SBA Communications Corporation(不動産)
1株当たり利益は1.87ドルと市場予想の1.84ドルを上回り、売上高も7億1,527万ドルと予想の7億565万ドルを上回りました。しかし通常取引では-0.80%、時間外でも-0.30%となっています。通信塔事業は長期契約による安定収入を得やすい反面、多額の借入金を使うため金利の影響を受けます。決算は予想を上回ったものの、米長期金利が依然として高い水準にあることが評価を抑えたと考えられます。 - CLX:The Clorox Company(生活必需品)
1株当たり利益は1.66ドルと市場予想の1.65ドルをわずかに上回り、売上高は19.5億ドルと予想の19.1億ドルを上回りました。通常取引では+2.86%、時間外取引でも+1.06%となっています。景気変動の影響を受けにくい日用品需要に加え、売上高が予想を超えたことで堅調な事業運営が評価されました。長期的には原材料費や物流費を販売価格へ転嫁しながら、販売数量を維持できるかが重要です。 - ARE:Alexandria Real Estate Equities, Inc.(不動産)
1株当たり損失は0.43ドルとなり、市場予想の0.14ドルの利益を大きく下回りました。一方、売上高は6億6,278万ドルと予想の6億6,090万ドルをわずかに上回っています。通常取引では+3.07%となりましたが、時間外取引では-0.06%でした。研究施設に特化した不動産会社であり、一般的なオフィス市場とは需要構造が異なります。利益の悪化要因が一時的な評価損なのか、本業の弱さなのかを確認する必要があります。
主な経済ニュース
- 米国がイランへの追加攻撃を見送り、外交交渉を優先
トランプ大統領がイランへの追加攻撃を延期し、外交交渉にもう一度機会を与える方針を示しました。ホルムズ海峡の通航正常化に向けた協議への期待も高まり、戦争拡大と原油供給途絶を織り込んでいた市場は大きく反応しました。ただし、イラン側は米国との直接交渉を否定しており、停戦や海峡再開が確定したわけではありません。(Reuters:08/03) - 原油急落で米国株式市場が全面高
WTI原油先物は80ドル台まで急落し、S&P500は+1.48%、Dow30は+1.32%、NASDAQは+2.13%となりました。原油安はインフレ圧力を和らげ、航空、輸送、一般消費材、工業・産業の燃料費や物流費を抑える方向に働きます。一方、エネルギー株は販売価格低下を警戒して下落し、原油安の恩恵を受ける業種と不利益を受ける業種が明確に分かれました。(Reuters、WSJ:08/03) - 日米協調介入でドル円が一時155円台へ急落
米国と日本は、急速な円安を抑えるため協調して円買い・ドル売り介入を実施しました。日米の協調介入は2011年以来とされ、日本側に加えて米国側も資金を投入しました。ドル円は157円台から一時155円台まで急落しましたが、その後は157円台へ戻しています。介入は短期的な円安抑制には効きましたが、日米金利差が残る限り、効果が長続きするかはまだ不透明です。(Reuters、WSJ、Bloomberg:08/03) - 米長期金利が低下し、AI・成長株が大幅反発
米10年国債利回りは4.686%へ低下しました。原油急落によってインフレ再加速への不安が和らぎ、米国債を買う動きが強まったためです。金利低下は、将来の利益をもとに株価が評価されるAI、クラウド、ソフトウェアなどの成長株に有利です。NASDAQが主要3指数で最大の上昇となり、Oracle、Meta、光通信、サーバー関連企業まで買いが広がりました。(Reuters、WSJ:08/03) - Palantirが好決算を発表し、時間外で10%超上昇
Palantirは1株当たり利益が0.41ドルと予想の0.34ドルを上回り、売上高も19.4億ドルと予想の18.1億ドルを上回りました。時間外取引では+10.27%となっています。政府向けだけでなく民間企業でもAIソフトウェアの導入が拡大し、AI投資が実際の売上高へ結びついている点が評価されました。ただし、株価には高い成長期待が織り込まれており、今後も高成長を続けられるかが重要です。(Bloomberg、Yahoo! Finance:08/03) - Amazonの時価総額が3兆ドルを突破
AmazonはAWS(クラウドサービス)とAI関連需要への期待から上昇し、時価総額が3兆ドルを超えました。生成AIの普及によって、クラウド上で大量の計算処理を行う需要が増えています。AI投資はGPUだけでなく、サーバー、光通信、記憶装置、電源、冷却設備まで必要になるため、Amazonの設備投資拡大は幅広いAIインフラ企業の受注増加につながります。(Reuters、WSJ:08/03) - Boeingの737 MAX 7を米連邦航空局が認証
米連邦航空局は、長期間審査が続いていたBoeingの737 MAX 7を正式に認証しました。これにより、完成済み機体の納入と売上計上が可能になります。飛行制御ソフトウェア、警報装置、エンジン防氷装置などの改修を経て認証されたもので、Boeingの生産正常化に向けた大きな一歩です。株価は+8.03%となり、Dow30の上昇にも大きく寄与しました。(Reuters:08/03) - 米製造業が予想以上に拡大
7月のISM製造業景気指数は55.6となり、市場予想の54.0と前月の53.3を上回りました。雇用指数も52.8へ上昇し、米国の製造業と雇用が想定以上に強いことを示しています。さらに、アトランタ連銀のGDPNowは7-9月期の成長率を年率+6.2%と試算しました。企業業績には前向きですが、景気が強すぎればFRBの利下げが遅れる可能性もあります。(Investing.com、Bloomberg:08/03) - AI投資の対象が半導体からインフラ全体へ拡大
Coherent、Lumentum、Corning、Dell、Vertiv、Eatonなど、AIデータセンターを支える企業がそろって上昇しました。生成AIは半導体だけでは動かず、高速通信網、記憶装置、配電設備、無停電電源、空冷・水冷設備が必要です。私がデータセンター工事に携わった経験から見ても、AI投資は建物と設備を含む巨大なインフラ投資です。資金がGPU以外へ広がった点は重要な変化です。(Reuters、Bloomberg:08/03) - 原油安で航空・旅行・消費関連株へ資金が移動
原油価格の急落を受け、United Airlinesなど航空株や、輸送費の影響を受ける一般消費材が買われました。航空会社は燃料費が大きな費用項目となるため、原油安は利益率を改善しやすくします。消費者にとってもガソリン価格の低下は可処分所得(税金などを除いて自由に使えるお金)の増加につながります。資金はエネルギー株から航空、工業・産業、消費関連へ移りました。(Reuters、WSJ:08/03) - VIXは15台に低下したが、中東リスクは消えていない
恐怖指数と呼ばれるVIX指数は15.86へ低下し、投資家の不安心理は大きく後退しました。米国株式市場は全面高となりましたが、イラン側は米国との直接交渉を否定しており、ホルムズ海峡の完全再開も確定していません。交渉が決裂すれば、原油価格、インフレ、米長期金利が再び上昇する可能性があります。VIXの低下だけで地政学リスクが解消したと判断するのは早いと考えます。(Reuters、WSJ:08/03)
経済指標発表予定
以下の経済指標が発表される予定です。
主要銘柄の決算発表予定
以下の主要銘柄の決算発表がなされる予定です。
おわりに
8月3日の米国株式市場は、原油価格の急落、米長期金利の低下、中東情勢の緊張緩和期待を背景に、主要3指数がそろって大きく上昇しました。AI関連では、半導体だけでなく、光通信、クラウド、サーバー、電力、冷却設備まで買いが広がっています。
一方、ドル円では日米協調介入が行われ、一時155円台まで円高が進みました。地政学リスクも完全に消えたわけではありません。長期投資では、1日の値動きに振り回されず、企業利益と市場全体の資金の流れを落ち着いて確認していくことが大切だと思います。
毎朝このブログをご覧いただき、ありがとうございます。今後も個人投資家の立場から、市場の動きを分かりやすく整理してまいります。
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おことわり
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図表のレファレンス
- S&P500ヒートマップ: finviz
- 主要3指数とドル円: Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
- セクター別騰落率: finviz
- 経済指標結果/予定: investing.com日本語版
- 決算発表結果/予定: investing.com日本語版
- 主要指数の動き : Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
- 自分の米ドル建ポートフォリオ: Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
著者プロフィール
室井一夫(Kazuo Muroi)
Muroi Universal Research on Investment LLC 代表社員
一級建築士・建築1級施工管理技士・工学修士
Facebookグループ「米国株_投資の部屋」管理人(約4.7万人)
米国株式市場と経済動向に関する情報を毎日発信しています。
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