20260908_U.S. Stock Market Report

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室井のマーケット視点

9月8日の米国市場は、S&P500が-0.58%、Dow30が-1.18%、NASDAQが-0.32%と、主要3指数がそろって下落しました。ただ、私はこの日の相場を単純な「全面安」とは見ていません。指数の内側では、AI関連の中でも明確な選別が進んでいました。

最も興味深かったのは、NVIDIAやApple、Microsoftが下落する一方、AMDが+5.90%、Intelが+9.05%、Broadcomが+2.98%と上昇し、さらにLumentum、Corning、Cienaなど光通信関連にも大きな買いが入ったことです。AI投資のお金が、特定の巨大IT企業だけではなく、CPU、ネットワーク、光ファイバー、ストレージへ広がっています。大量のデータを高速で運ぶ通信設備、膨大な電力、無停電化のための複数電源系統、空調や水冷設備まで必要になります。今回、AIインフラ関連が指数下落の中でも強かったことは、この構造を市場が改めて評価しているように感じます。

一方で、気になるのは原油と金利です。WTI原油先物は93.94ドルまで上昇し、米10年国債利回りも4.806%まで上がりました。中東情勢が原油供給への不安を高めるなか、原油高が続けば物価を再び押し上げる可能性があります。そこへ長期金利4.8%台が重なると、株式市場にはかなり厳しい組み合わせです。実際、消費者インフレ期待は3.6%から低下せず、7月の消費者信用残高は予想を大きく上回りました。米国経済はまだ消費の力を残している一方、借り入れを増やして消費を維持している面もあります。「景気が強いから安心」とだけ考えるのではなく、高金利が家計や企業へどこまで蓄積的な負担を与えるのかを見ておく必要があります。

セクターを見ると、エネルギー(Energy)が+1.18%だった一方、ヘルスケア(Healthcare)は-2.54%、金融(Financial)は-1.22%でした。VIX指数も15.66にとどまっていますので、市場参加者がパニックになっているわけではありません。むしろ、原油高、金利高、AIによる産業構造の変化を見ながら、資金を移動させている相場だと私は見ています。

私の米国株ポートフォリオも前日比-1.70%となりました。米国株安に加えてドル円が153円台まで円高方向へ動いたため、日本で保有する米国株ETFには株価と為替の両方が効きました。それでも、この程度の下落で投資方針を変えるつもりはありません。コロナショックでは何日も大きな下落が続きましたが、私は積立だけは止めませんでした。

9月8日の市場から私が最も強く感じたのは、「AI相場が終わった」のではなく、「AI相場の中身が変わっている」ということです。大型IT企業だけを見るのではなく、その裏側にある通信、電力、冷却、ストレージまで見ると、資金の流れがよく分かります。ただし、原油が100ドルへ近づき、米10年国債利回りが5%へ接近するようなら話は別です。AI企業の成長力が強くても、インフレと金利の上昇は市場全体の企業価値を押し下げます。今はAIインフラの成長と、原油・金利という2つの力が綱引きをしている局面だと考えています。

私は短期の指数予想よりも、この綱引きのどちらが強くなるのかを見ていきます。長期投資では、毎日の上げ下げを当てることより、市場のお金がどこからどこへ移っているのかを理解する方が重要だと思っています。

投資は自己責任にてお願いします。

S&P500ヒートマップ

5%以上上昇したS&P500構成銘柄

  • LITE:Lumentum Holdings, Inc.(先端技術) +11.04%
    Lumentumは光通信関連株への買いが広がり、大幅高となりました。CorningとVerizonがAIインフラを含む高速通信網向けに大規模な光ファイバー供給契約を発表したことで、データセンター向け光通信需要の拡大が改めて注目されました。AI投資がGPUからネットワーク設備へ広がっていることを象徴する値動きです。
  • INTC:Intel Corporation(先端技術) +9.05%
    IntelはPC向けCPU価格を10月に約10%引き上げる可能性が報じられ、大きく上昇しました。販売数量を追う従来戦略から利益率改善へ軸足を移す動きとして評価されています。AIデータセンター向けサーバーCPU需要も強く、価格決定力と収益性改善への期待が同時に高まりました。
  • HPE:Hewlett Packard Enterprise Co.(先端技術) +7.75%
    HPEは直近決算で示したAIサーバーとネットワーク事業の強い成長を再評価する買いが続きました。AI向け受注残が拡大し、企業や政府向け需要も強いため、単なるサーバー販売からAIデータセンター全体を支える企業へ評価が変化しています。Juniper Networks統合による通信分野の拡大も成長期待につながっています。
  • GLW:Corning Inc.(先端技術) +7.56%
    CorningはVerizonと2027~2032年にわたる数十億ドル規模の契約を発表し、急伸しました。80百万マイルを超える高密度光ファイバーなどを供給し、一般向け通信だけでなくAI向け長距離ネットワークの構築にも利用されます。AIデータセンター増設には高速通信網が不可欠であり、同社の事業領域が成長市場へ直結しています。
  • COHR:Coherent Corp.(先端技術) +7.10%
    CoherentはCorningとVerizonの大型契約をきっかけに、光通信関連銘柄全体へ資金が広がったことで上昇しました。生成AIではGPU間やデータセンター間を高速接続する光通信技術の重要性が急速に高まっています。半導体の計算能力だけでなく、大量のデータを移動させる通信能力もAI投資の重要部分になっています。
  • STX:Seagate Technology Holdings PLC(先端技術) +6.49%
    SeagateはAI向けデータ処理量の増加を背景としたストレージ需要拡大への期待から上昇しました。最新AIモデルの登場を受け、半導体だけでなくメモリーやデータ保存関連にも資金が向かっています。生成AIでは学習データや生成データが急増するため、大容量ストレージ需要もAI設備投資とともに拡大する構造です。
  • CIEN:Ciena Corporation(先端技術) +6.32%
    Cienaは光通信・ネットワーク関連株への資金流入によって大きく上昇しました。Verizonによる大規模光ファイバー網の整備計画は、AIデータセンター間を接続する高速ネットワーク投資が長期化する可能性を示しています。AI処理能力が高まるほど通信量も増えるため、ネットワーク機器への投資も並行して拡大すると考えられます。
  • AMD:Advanced Micro Devices, Inc.(先端技術) +5.90%
    AMDはCFOがAIを中心とした将来市場の大幅な拡大見通しを示したことで上昇しました。GPUだけでなくCPU需要も強く、2026年後半のCPU事業は前年同期比で大幅な成長が見込まれています。AI設備投資がまだ初期段階にあるとの経営陣の認識も示され、半導体需要の長期成長を期待する買いにつながりました。
  • TPL:Texas Pacific Land Corporation(エネルギー) +5.37%
    Texas Pacific Landは中東情勢の緊迫化による原油価格上昇を背景に買われました。同社はパーミアン盆地で広大な土地と石油・天然ガスのロイヤルティ権益を持ち、原油価格上昇が収益期待へ結び付きやすい企業です。WTI原油が93ドル台まで上昇する中、エネルギー関連資産を持つ企業へ資金が向かいました。
  • FCX:Freeport-McMoRan, Inc.(素材) +5.35%
    Freeport-McMoRanは銅価格が最高値圏まで上昇したことを受けて買われました。世界的な供給不足に加え、AIデータセンター、送電網、電気自動車向け需要が拡大しています。AI設備では大量の電力を扱うため銅の使用量も増えます。AI投資が半導体から電力インフラ、さらに素材へ波及していることが分かる動きです。
  • TKO:TKO Group Holdings, Inc.(通信サービス) +5.01%
    TKO Groupは投資家向け会議で、UFCやWWEを核としたスポーツ・エンターテインメント事業の利益率改善やキャッシュフロー拡大を説明し、株価が上昇しました。メディア放映権、ライブイベント、スポンサー収入など複数の収益源を持ち、AIによる変化が大きいメディア市場でもライブスポーツの希少価値が高い点が評価されています。

5%以上下落したS&P500構成銘柄

  • HWM:Howmet Aerospace Inc.(工業・産業) -10.70%
    航空宇宙関連株全体に売りが広がる中で大幅安となりました。GE Aerospaceが航空機エンジン向け精密鋳造メーカーCPPを117.5億ドルで買収すると発表し、主要部品の内製化を強化します。Howmetが手掛ける航空機部品分野との競争環境が変化する可能性が警戒され、利益確定売りも重なりました。
  • AMGN:Amgen Inc.(ヘルスケア) -10.08%
    医薬品株への売りが強まり、Amgenは約10%下落しました。心血管領域の新薬開発を巡って臨床試験結果への失望が広がり、同分野の成長期待が後退しました。一方、AstraZenecaとの肺がん治療薬併用試験では良好な結果も発表されており、会社全体の開発力が崩れたというより、新薬候補ごとの評価が大きく分かれた一日です。
  • SYK:Stryker Corporation(ヘルスケア) -8.81%
    医療機器株全体への売りが強まりました。同業のBoston Scientificがサイバー攻撃による生産・出荷障害を理由に2026年業績見通しの達成が難しいと発表し、医療機器企業のITシステム障害や供給網リスクへの警戒が強まりました。Stryker固有の大きな悪材料というより、ヘルスケアセクター全体のリスク回避の影響が大きかったとみられます。
  • GDDY:GoDaddy Inc.(先端技術) -8.32%
    ソフトウェア・ITサービス株への売りが広がりました。最新の生成AIモデルの登場を受け、ウェブ制作や業務支援サービスの一部がAIによって代替される可能性が改めて警戒されています。GoDaddyは中小企業向けウェブ制作やオンラインサービスを主力としており、AIによるサービス価格低下や競争激化を懸念した売りが強まりました。
  • EXPE:Expedia Group, Inc.(一般消費材) -7.88%
    Expediaは旅行関連株への利益確定売りが強まりました。株価は8月下旬まで上昇していたため、高値圏からの調整が続いています。この日は原油価格上昇による航空運賃や旅行コストへの影響、米長期金利上昇による個人消費への警戒も加わりました。Booking Holdingsも同時に下落しており、オンライン旅行業界全体への売りという側面があります。
  • IT:Gartner, Inc.(先端技術) -7.42%
    企業向けIT調査・コンサルティングを提供するGartnerは、生成AIの急速な進化による事業モデルへの影響を警戒されました。AIが企業の情報検索や分析業務を直接支援できるようになることで、従来型の調査・助言サービスへの需要が変化する可能性があります。ソフトウェアやITサービス株全体が売られた流れに巻き込まれた面も大きいと考えられます。
  • BKNG:Booking Holdings Inc.(一般消費材) -6.72%
    Booking HoldingsはExpediaとともに大きく下落しました。中東情勢悪化による原油高で航空会社の燃料コストや旅行費用上昇への懸念が強まり、旅行需要の先行きに慎重な見方が出ています。株価はこれまで比較的堅調だったため、景気や消費への不透明感が高まった局面で利益確定売りが出やすくなりました。
  • BSX:Boston Scientific Corporation(ヘルスケア) -5.90%
    8月25日に確認されたサイバー攻撃によって製造、受注処理、出荷などが一時的に停止した影響から、会社は第3四半期と2026年通期の売上高・調整後利益見通しを達成できない可能性が高いと発表しました。主要施設は復旧しつつありますが、業績への影響額が確定していないため、先行きの不透明感を嫌った売りが続きました。
  • FIS:Fidelity National Information Services, Inc.(金融) -5.90%
    金融ITサービスを提供するFISは、ソフトウェア・ITサービス株全体への売りに押されました。生成AIが企業向けソフトウェアや業務処理サービスの競争環境を変えるとの懸念が強まり、高PERのITサービス企業から資金が流出しています。この日は長期金利も上昇しており、成長株のバリュエーション(株価評価)が圧縮されやすい環境でした。
  • STZ:Constellation Brands, Inc.(生活必需品) -5.62%
    経営陣が投資家向け会議で、設備拡張中心の戦略から収益性や利益率を重視する運営へ移行すると説明しました。しかし、市場が期待していた消費需要の改善について積極的な見通しが示されなかったため、成長鈍化への警戒が強まりました。株価は52週安値圏まで下落し、米国消費の弱さを映す銘柄の一つとなっています。
  • DLTR:Dollar Tree, Inc.(生活必需品) -5.62%
    Dollar Treeは小売株への売りが強まりました。原油価格上昇によるガソリン代や生活コストの増加は、低所得層を中心に可処分所得(自由に使える所得)を圧迫する可能性があります。ディスカウント小売は節約志向の恩恵も受けますが、この日は米国消費の先行きとインフレ再加速への警戒が優勢となり、株価は大きく下落しました。
  • VRSK:Verisk Analytics, Inc.(工業・産業) -5.54%
    保険業界向けデータ分析サービスを提供するVeriskは、データ分析・ソフトウェア関連株への売りに巻き込まれました。生成AIの高度化によって、企業向けデータ分析サービスの競争構造が変わる可能性が警戒されています。業績の急変を示す固有の悪材料は目立たず、AIによる既存ソフトウェア事業への影響を再評価する市場全体の動きが中心とみられます。
  • PTC:PTC Inc.(先端技術) -5.51%
    製造業向け設計・製品管理ソフトウェアを手掛けるPTCも、ソフトウェア株全体の調整に巻き込まれました。生成AIが設計支援や製品開発など専門ソフトウェア領域へ入り込む可能性が高まっており、既存サービスの価格や競争力への影響が警戒されています。業績そのものより、AI時代の事業価値を市場が再評価する動きが強く出ました。
  • DASH:DoorDash, Inc.(一般消費材) -5.33%
    DoorDashは消費関連の成長株として売られました。原油価格上昇は配達ドライバーの燃料費を押し上げ、配送事業のコスト増につながる可能性があります。また、米長期金利上昇によって高PER銘柄への売りも強まりました。売上成長は続いているものの、市場評価が高い銘柄だけに、金利や消費環境の変化には株価が敏感に反応しやすくなっています。
  • CDW:CDW Corporation(先端技術) -5.18%
    企業向けIT機器・サービス販売のCDWは、ITサービス株全体への売りと企業IT投資への慎重姿勢から下落しました。AI投資はデータセンターや半導体へ集中する一方、従来型のPCや企業IT機器では投資優先順位が低下する可能性があります。生成AIによるIT調達構造の変化もあり、短期的な成長期待がやや後退しました。

セクター別騰落率

市場全体では、エネルギー(Energy)と公益事業(Utilities)が上昇する一方、ヘルスケア(Healthcare)と金融(Financial)が大きく下落し、セクター間の明暗がはっきり分かれました。AI・半導体関連ではAMD、Intel、Broadcomなどに強い買いが入ったものの、Apple、Microsoft、NVIDIAは下落しており、先端技術(Technology)全体では小幅高にとどまっています。原油高と長期金利上昇を背景に、資金がエネルギーや公益事業へ向かう一方、医薬品や金融株には売りが広がる選別色の強い一日でした。

  • エネルギー(Energy) +1.18%
    原油価格の上昇を受け、Exxon MobilやChevronなど大手石油株が堅調に推移しました。WTI原油先物が93ドル台後半まで上昇しており、エネルギー企業の収益改善期待が高まっています。中東情勢による供給不安も続いており、原油価格が高止まりする局面ではエネルギー株へ資金が入りやすくなります。ただし、原油高はインフレを再加速させる可能性もあるため、株式市場全体には単純なプラスとは言えません。
  • 金融(Financial) -1.22%
    金融セクターは大きく下落しました。JPMorgan、Visa、Mastercard、Wells Fargoなど幅広い大型株が売られています。米10年国債利回りは4.8%台へ上昇しましたが、通常の「金利上昇=銀行株高」という反応にはならず、株式市場全体のリスク回避と利益確定売りが優勢でした。高金利が長期化すると企業融資や個人向けローンの需要鈍化、信用コスト増加につながるため、金融株にとっては金利上昇の恩恵だけでは評価しにくい局面です。
  • ヘルスケア(Healthcare) -2.54%
    ヘルスケアは全11セクターで最大の下落となりました。Amgenが-10%を超える急落となったほか、Eli Lilly、Johnson & Johnson、AbbVie、Strykerなど大型株に売りが広がっています。医薬品や医療機器企業固有の悪材料に加え、成長期待の高いAI・半導体株へ資金が移動した影響もあります。通常は相場下落時に比較的強いディフェンシブセクターですが、この日はその特徴が機能せず、個別企業のニュースがセクター全体を大きく押し下げました。

主要3指数とドル円の動き

  • S&P500(7,673.52、前日比-0.58%)
    S&P500は反落しました。AI・半導体関連の一角には買いが入ったものの、市場全体では利益確定売りが優勢でした。特にヘルスケアや工業・産業など幅広い銘柄が下落し、指数を押し下げています。一方でLumentum、Intel、AMDなどAIインフラ関連は大きく上昇しており、全面的なリスク回避というより資金の選別色が強い一日でした。長期投資家としては、指数の下落率以上に「どこへ資金が移っているか」を見ておきたい相場です。
  • Dow30(52,786.07、前日比-1.18%)
    Dow30は主要3指数で最も大きく下落しました。大型の景気敏感株やヘルスケア株への売りが強く、NASDAQよりも伝統的大企業を中心とするDow30の弱さが目立っています。市場ではAI関連株への資金集中が続く一方、それ以外の大型株から資金が抜ける動きもありました。Dow30がNASDAQを大きく下回った点を見ると、この日は米国株全体が弱かったというより、企業や業種による選別が一段と進んだ相場だったと感じます。
  • NASDAQ(26,421.41、前日比-0.32%)
    NASDAQは小幅安にとどまり、主要3指数では最も下落率が小さくなりました。Lumentum、Intel、AMD、CorningなどAI、半導体、光通信関連への買いが続き、指数の下落を抑えています。特にAI投資がGPUだけではなく、サーバー、光通信、ストレージへ広がっている点が特徴です。一方、高PER(株価収益率が高い)銘柄には利益確定売りも見られました。私は、AI相場が終わったのではなく、投資対象がインフラ全体へ広がる段階に入っていると見ています。
  • ドル円(153.984円、前日比-0.23%)
    ドル円は153円台後半まで円高・ドル安となりました。取引時間中には154.423円まで上昇した一方、152.881円まで円高になる場面もあり、1日の値幅は約1.54円と大きくなりました。米国株の下落でリスク回避の円買いが入りやすかったことに加え、米金利の先行きを巡る思惑もドル円を振らせたと考えられます。米国株を円建てで保有する日本人投資家には、株価下落と円高が重なると評価額には二重のマイナスとなるため、為替も無視できない一日でした。

原油先物・米10年国債利回り・VIX・金先物の動き

  • WTI原油先物(93.94ドル、前日比+2.69%)
    WTI原油先物は93ドル台後半まで上昇し、一時94.73ドルを付けました。中東情勢を巡る供給不安が続くなか、原油市場では地政学リスクを織り込む動きが強まっています。90ドル台後半へ近づく原油高はエネルギー株にはプラスですが、輸送費や製造コストを通じてインフレを再加速させる可能性があります。米国株全体には、企業利益とFRBの金融政策の両面から注意が必要な水準です。
  • 米10年国債利回り(4.806%、前日比+0.46%)
    米10年国債利回りは4.806%まで上昇し、一時4.812%を付けました。原油高によるインフレ再加速への警戒に加え、米国経済が簡単には減速しないとの見方が、長期金利を押し上げたと考えられます。4.8%台は株式市場にとって無視できない水準で、高PER(株価収益率が高い)銘柄には評価面で負担になります。それでもNASDAQの下落が比較的小さかった点から、AI関連への資金需要は依然として強いと感じます。
  • VIX指数(15.66、前日比+2.35%)
    VIX指数は15.66へ上昇しました。主要3指数がそろって下落し、原油と米長期金利が同時に上昇したことで、投資家の警戒感がやや強まっています。ただし、一般に不安心理が強まる目安とされる20を依然として大きく下回っており、全面的なリスク回避相場という状況ではありません。私は、指数下落の割にVIXが低いことから、現在は恐怖よりも業種・銘柄選別による調整という色合いが強いと見ています。
  • 金先物(4,405.50ドル、前日比-1.59%)
    金先物は4,405.50ドルまで下落し、一時4,401.10ドルまで売られました。地政学リスクが続いているにもかかわらず金が下落した最大の要因として、米10年国債利回りが4.8%台へ上昇したことが考えられます。金は利息を生まないため、債券利回りが上昇すると相対的な魅力が低下します。安全資産需要だけでは金利上昇の影響を吸収できなかった一日であり、原油高・金利高・金安という組み合わせが特徴的でした。

私の米国株ポートフォリオ 前日比-1.70%

私の米国株ポートフォリオは前日比-1.70%となり、久しぶりに少し大きめの下落となりました。S&P500が-0.58%、NASDAQが-0.32%だったことに加え、ドル円が円高方向へ動いたため、日本市場で保有する米国株ETFには株安と円高の両方が反映されています。

保有商品の中ではiFreeETF FANG+が-1.96%と最も大きく下落し、iシェアーズ S&P500 米国株 ETFが-1.70%、MAXIS ナスダック100上場投信が-1.63%、米国連続増配株ETFも-1.66%でした。成長株だけでなくS&P500や増配株までそろって下げており、今回はETFを分散していても逃げにくい一日でした。

それでも私は、こういう日は特に何もしません。コロナショックの時も下落が何日続いても積立だけは止めませんでした。1日で-1.70%動くことは米国株では珍しいことではなく、長期投資では日々の騰落よりも、市場から退場せず保有を続けることの方が重要だと考えています。

経済指標発表結果

  • 消費者信用残高(7月、+180.6億ドル、予想+119.0億ドル、前回+145.6億ドル)
    消費者信用残高は180.6億ドル増と市場予想を大きく上回りました。クレジットカードや自動車ローンなどを通じた家計の借り入れが拡大していることを示します。個人消費の底堅さを示す一方、高金利下で借入残高が増えている点には注意が必要です。消費が強ければ企業業績にはプラスですが、インフレ圧力が残り、FRBの利下げを急がせにくくする要因にもなります。
  • 消費者インフレーション期待(8月、3.6%、前回3.6%)
    消費者が予想する将来のインフレ率は3.6%と前月から変わりませんでした。期待インフレ率は、家計が「今後も物価上昇が続く」と考えているかを見る指標で、FRBも重視します。低下しなかったことから、インフレ心理が十分に沈静化したとは言いにくい内容です。原油価格も90ドル台に上昇しており、株式市場では利下げ期待よりもインフレ再加速への警戒を残す結果となりました。
  • 3年物米国債入札(4.474%、前回4.291%)
    3年物国債の落札利回りは4.474%となり、前回の4.291%から上昇しました。短中期の米国債でも高い利回りを求められていることが分かります。債券利回りの上昇は、株式と比較した債券の魅力を高めるため、高PER(株価収益率が高い)銘柄には負担となります。この日のNASDAQが小幅安にとどまった一方、S&P500やDow30が弱かった背景には、高金利長期化への警戒もあったと考えられます。
  • 6カ月物短期米国債入札(3.890%、前回3.885%)
    6カ月物国債の落札利回りは3.890%と、前回の3.885%から小幅に上昇しました。短期金利が依然として高水準にあることから、市場はFRBによる急速な金融緩和を織り込んでいないことがうかがえます。株式市場ではAI関連の一部に資金が残る一方、金利に敏感な銘柄では評価の見直しが続いています。長期投資家としては、金利低下を前提にし過ぎない方がよい局面です。
  • 3カ月物短期米国債入札(3.800%、前回3.770%)
    3カ月物国債の落札利回りは3.800%となり、前回の3.770%から上昇しました。ごく短期の国債でも4%近い利回りが得られる状況は、株式市場にとって競合する投資先が依然として魅力的であることを意味します。特に配当利回りが低い成長株では、将来利益を現在価値へ割り引く際の金利負担が大きくなります。AI関連株が強くても、市場全体が一方向に上昇しにくい背景の一つです。
  • NFIB中小企業楽観指数(8月、98.7、予想99.4、前回99.8)
    NFIB中小企業楽観指数は98.7となり、市場予想の99.4と前回の99.8を下回りました。米国経済の裾野を支える中小企業の景況感がやや弱まったことを示します。大型企業ではAI関連投資が活発ですが、中小企業では高金利、人件費、仕入れコストなどの負担が続いている可能性があります。大型株中心の株式市場と実体経済との間に温度差がある点は、今後の景気を見るうえで注意したいところです。
  • コンファレンスボード雇用情勢指数(8月、108.53、前回107.76)
    雇用情勢指数は108.53と前回の107.76から上昇しました。労働市場に急激な悪化が起きていないことを示す内容で、米国経済の底堅さを確認できる指標です。一方、雇用が強ければ賃金上昇圧力が残りやすく、FRBにとっては利下げを急ぐ理由が弱まります。株式市場には景気後退回避という安心感と、高金利長期化という負担が同時に存在する結果となりました。

主要銘柄の決算発表結果

9/8には主要銘柄の決算発表はありませんでした。

主な経済ニュース

  • フーシ派がサウジ石油施設を攻撃、中東戦争拡大への警戒強まる
    イランが支援するイエメンのフーシ派がサウジアラビア南部の石油関連施設などをミサイルやドローンで攻撃し、73人が負傷しました。一部施設では操業停止や火災も発生しています。これまでの米国・イラン対立にサウジアラビアがより深く巻き込まれる可能性が生じ、原油供給リスクが一段と高まりました。米国株ではエネルギー(Energy)が買われる一方、原油高によるインフレ再燃を警戒して主要3指数は下落しました。(Reuters:09/08)
  • 原油が6週間ぶり高値、100ドル接近が株式市場の新たなリスクに
    中東での軍事衝突拡大を受け、WTI原油は93ドル台、Brent原油は97ドル台まで上昇しました。ホルムズ海峡経由の原油輸送は戦争前から大きく減少しており、現物市場では供給逼迫が続いています。一方、米国、カナダ、ガイアナなど非OPEC産油国の増産や中国需要の減速が価格上昇を抑えており、まだ100ドルを明確には突破していません。長期投資家としては、100ドル超えそのものより、高値が何カ月続くかを重視しています。(Reuters:09/08)
  • 米10年国債利回り4.8%台、FRB利上げ観測が再び強まる
    米10年国債利回りは4.8%台まで上昇し、2023年以来の高水準となりました。8月雇用統計が予想以上に強かったうえ、原油高によるインフレ再加速への懸念が加わり、市場では9月15~16日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で利上げする確率を約60%まで織り込んでいます。安全資産である米国債でも高い利回りが得られるため、株式には厳しい比較対象です。特に高PER株では金利上昇への耐性が改めて問われています。(Reuters:09/08)
  • GPT-6 Astra登場でソフトウェア株にAI代替懸念
    OpenAIの新モデルGPT-6 Astraを受け、Salesforce、ServiceNow、Intuitなどソフトウェア株が下落しました。生成AIが従来の業務ソフトウェアや専門サービスの一部を直接代替できるのではないかという懸念が再燃しています。一方、半導体やデータセンター関連株には資金が向かっており、この日の市場では「AI関連なら一律上昇」ではなく、AIを提供する側とAIに代替される可能性がある側で明暗が分かりました。(Reuters:09/08)
  • QualcommとAmazonが最大600億ドル規模のAI半導体提携
    QualcommはAmazonと長期契約を結び、Amazonが最大600億ドル相当のAIデータセンター向け半導体などを購入できる枠組みを発表しました。QualcommはAI推論(学習済みAIを実際に動かす処理)向け半導体だけでなく、最大1.6Tbps級の高速光通信技術も共同開発します。私はデータセンター工事に携わった経験から、AI投資はGPUだけでは完結せず、高速通信、電力、冷却まで一体で拡大すると考えています。その構造を象徴する大型契約です。(Reuters:09/08)
  • AI資金が半導体・光通信へ移動、IntelやQualcommが上昇
    ソフトウェア株が売られる一方、Intel、Qualcomm、AMD、Lumentum、Corning、Cienaなど半導体・通信関連株には強い買いが入りました。特にIntelはCPU価格引き上げや事業採算改善への期待もあり大幅高となっています。今回の値動きからは、AI投資の中心がGPUだけではなく、CPU、光通信、ストレージ、ネットワークまで広がっていることが分かります。指数が下落してもAIインフラ関連には資金が残っている点が特徴的です。(Reuters・WSJ:09/08)
  • 米国消費者のインフレ期待3.6%、雇用と家計への不安は拡大
    ニューヨーク連銀の調査では、1年先の期待インフレ率は3.6%で前月から変わりませんでした。一方、1年後に失業率が上昇すると考える回答は2020年4月以来の高水準となり、家計や信用環境への不安も悪化しています。消費者は「インフレはまだ高いが、雇用にも自信が持てない」という難しい状態にあります。FRBにとってはインフレ抑制と景気維持の両立が一段と難しくなり、今後のCPIが非常に重要になります。(Reuters:09/08)
  • カナダが米国製品200億ドルに報復関税
    カナダは米国との通商交渉決裂を受け、米国製品約200億ドルに15~50%の報復関税を発動しました。対象には鉄鋼、家具、電子機器などが含まれ、米中関係だけではなく北米域内でも貿易摩擦が強まっています。米国企業にとっては輸出減少やコスト上昇につながる可能性があり、特に製造業や消費関連企業には利益率低下要因となります。中間選挙を控える米国では、関税政策が市場テーマとして再び存在感を増しています。(Reuters:09/08)
  • 円が上昇、日銀利上げ観測でキャリートレード巻き戻しを警戒
    日銀の追加利上げ観測が強まり、円は対ドルで上昇しました。日本の実質賃金改善やGDP上方修正も円買いにつながっています。円を低金利で借りて米国株などへ投資するキャリートレード(低金利通貨で資金調達し、高利回り資産へ投資する取引)が縮小すれば、米国株にも短期的な資金流出圧力がかかります。日本人投資家にとっては、米国株下落と円高が同時に起きると円換算資産が二重に下がる点にも注意したいところです。(Reuters:09/08)
  • Amgen急落でヘルスケアが-2.54%、市場最大の下落セクターに
    Amgenは約10%下落し、Eli Lilly、Johnson & Johnson、AbbVieなど大型医薬品株にも売りが広がりました。Novartisの心血管治療薬の臨床試験失敗をきっかけに、同種薬剤を開発する企業への期待が見直されています。さらにBoston Scientificではサイバー攻撃による生産・出荷への影響も懸念されました。通常は市場下落時に強いヘルスケア(Healthcare)が最も売られたことからも、この日は単純なリスク回避ではなく、個別材料による選別が強かったことが分かります。(WSJ:09/08)
  • Appleは新製品発表を前に下落、高級スマートフォン競争も激化
    Appleは新CEOのJohn Ternus体制で予定される新型iPhone発表を翌日に控え、株価は下落しました。市場では新製品への期待が高い一方、Huaweiが高級折りたたみスマートフォンを投入するなど、中国勢との競争も激しくなっています。AppleはS&P500やNASDAQへの影響が大きいため、単なる一企業の製品発表ではありません。成熟したスマートフォン市場でAI機能や折りたたみ端末が新たな買い替え需要を生み出せるかが焦点になります。(Reuters:09/08)

経済指標発表予定

以下の経済指標が発表される予定です。

主要銘柄の決算発表予定

以下の主要銘柄の決算発表がなされる予定です。

おわりに

米国株市場は、主要3指数がそろって下落しましたが、AI・半導体・光通信関連には強い買いが残り、全面安というより資金の選別が進んだ一日でした。原油は93ドル台、米10年国債利回りは4.8%台まで上昇しており、今後は企業業績だけでなく、インフレとFRBの金融政策をこれまで以上に丁寧に見ていく必要があります。

私自身、こうした下落局面でも基本的な投資姿勢は変えません。コロナショックの時も積立を止めませんでしたが、長期投資では日々の値動きを当てることより、市場に居続けることの方が大切だと考えています。

毎朝このブログを読んでいただき、ありがとうございます。少しでも市場を整理するお役に立てていましたら嬉しいです。

それでは、今日も一日、明るく元気に笑顔で過ごしましょう。

ご参考になりましたらこちらから応援いただけると嬉しいです。

投資は自己責任にてお願いします。

おことわり

投資は自己責任にてお願いします。
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図表のレファレンス

  • S&P500ヒートマップ: finviz
  • 主要3指数とドル円:  Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
  • セクター別騰落率: finviz
  • 経済指標結果/予定: investing.com日本語版
  • 決算発表結果/予定: investing.com日本語版
  • 主要指数の動き : Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
  • 自分の米ドル建ポートフォリオ:  Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ

著者プロフィール

室井一夫(Kazuo Muroi)
Muroi Universal Research on Investment LLC 代表社員
一級建築士・建築1級施工管理技士・工学修士
Facebookグループ「米国株_投資の部屋」管理人(約4.7万人)

米国株式市場と経済動向に関する情報を毎日発信しています。


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