室井のマーケット視点
7月31日の米国株式市場は、S&P500が+0.70%、Dow30が+0.53%、NASDAQが+1.00%となりました。Amazonの好決算をきっかけに、クラウド、広告、AI、データセンター関連へ買いが広がりました。一方、米10年国債利回りは4.745%、WTI原油先物は84.78ドルまで上昇しており、株価だけを見れば強い相場ですが、金利とインフレの環境は楽観できません。
この日の特徴は、指数上昇以上に銘柄とセクターの差が大きかったことです。一般消費材(Consumer Cyclical)は+4.42%、通信サービス(Communication Services)は+3.60%となり、AmazonとAlphabetが相場を引っ張りました。反対に、素材(Basic Materials)は-2.11%、ヘルスケア(Healthcare)は-1.02%でした。Apple、Micron、NXP Semiconductorsなども大きく下落しており、大型株やAI関連株が一様に買われたわけではありません。
Amazonの上昇で重要なのは、単にAIという言葉が好まれたのではなく、AWS(クラウド事業)の成長として投資成果が数字に表れたことです。MicrosoftやAlphabetにも共通しますが、検索、広告、クラウド、電子商取引など、もともと利益を生む事業を持つ企業は、AIを既存事業へ組み込んで収益化できます。市場は、巨額の設備投資そのものではなく、それが売上高、利益率、現金収入へ変わっているかを厳しく確認する段階へ進んでいると見ています。
買いは巨大IT企業だけにとどまりませんでした。Eaton、Vertiv、Coherent、Arista Networks、Monolithic Power Systemsなど、電源、冷却、光通信、ネットワーク関連も上昇しています。私はデータセンターの建設工事に携わった経験がありますが、AIはGPUだけではなく、大容量の受電設備、停電に備えた複数系統の電源、高速通信網、空冷や水冷を組み合わせた冷却設備が必要なのです。AI投資の恩恵が建物設備やインフラへ広がる構造は、今後も数年単位で続く可能性があると見ています。とはいえ、今週の動きを見ると、AIインフラ関連なら何でも上昇したわけではありません。Microsoftは+21.75%、Amazonは+17.00%、Alphabetは+11.38%でしたが、Micronは-10.63%、AMDは-8.78%、Appleは-7.24%となりました。企業のIT予算が半導体だけでなく、クラウド、ソフトウェア、広告、通信サービスへ広がる一方、急騰してきた半導体やメモリーには利益確定売りも出ています。これはAI需要の失速ではなく、利益成長と株価水準による企業選別だと見ています。
7月全体を振り返ると、相場の主役は何度も入れ替わりました。月前半はCPIやPPIの鈍化と米長期金利の低下を受けて、大型成長株や半導体株が反発しました。その後は中東情勢の緊迫化、原油価格の急騰、米10年国債利回りの上昇によって、AI・半導体株からエネルギー、生活必需品、ヘルスケア、不動産などへ資金が移る場面がありました。月末には巨大IT企業の決算によって再び成長株が買われましたが、戻った資金は業績を証明した企業へ集中しています。
7月は、指数だけを追っていると見えにくい資金移動が続いた月でした。半導体からソフトウェア、広告、クラウドへ移った日もあれば、原油高を受けてエネルギーや防衛関連へ向かった日もありました。さらに、金利上昇時には生活必需品やヘルスケアへ逃げる動きも見られました。市場全体から資金が消えたというより、金利、原油、決算内容に応じて、資金の置き場所が細かく変化していたと考えています。
経済指標では、雇用コスト指数が前期比+0.9%と予想を上回り、シカゴ購買部協会景気指数も57.6と強い結果でした。ミシガン大学消費者信頼感指数も改善しています。米国経済が底堅いことは企業業績にはプラスですが、賃金と需要の強さが残れば、FRBは利下げを急げません。株価上昇と米10年国債利回り4.7%台が同時に成立している現在の相場は、金融緩和期待ではなく、企業の利益成長によって持ちこたえている面が強いと感じます。
恐怖指数と呼ばれるVIX指数は15.90まで低下しており、市場は全面的な恐怖状態ではありません。ただし、VIXが低い中でも、決算後に10%前後動く銘柄が相次いでいます。指数の安定と個別銘柄の安全性は別問題です。私は個別株を当てにいくより、ETFを中心に市場全体へ分散し、短期的な企業選別の影響を抑える方が、長期投資には向いていると考えています。
ドル円は一時160円台後半まで上昇した後、158円台へ急落しました。米国株が上昇しても、円高になれば円建て評価額では株価上昇の一部が相殺されます。私の米国株ポートフォリオも前日比+0.43%にとどまり、FANG+やNASDAQ100の上昇を、S&P500連動資産や為替の影響が一部打ち消しました。為替を短期予測するのは難しいため、私は株価と同じく、長期的な資産配分の中で受け入れるようにしています。
7月を通じて改めて感じたのは、AIという大きな成長テーマが続いていても、毎日同じ企業や同じセクターが上昇するわけではないということです。市場は、将来への期待だけでなく、利益率、設備投資負担、資金調達費用、現金収入まで見るようになりました。長期投資家としては、日々の勝ち組を追いかけるより、米国企業全体の利益成長をETFで取り込み、市場に居続けることが重要だと思っています。
投資は自己責任にてお願いします。
S&P500ヒートマップ
5%以上上昇したS&P500構成銘柄
- AMZN:Amazon.com +15.32%
第2四半期決算で売上高が前年同期比20%増となり、AWS(クラウド事業)の売上高も37%増と18四半期ぶりの高い成長率を記録しました。AI関連投資がクラウド需要と広告収入の拡大につながり始めたことで、巨額の設備投資を利益へ変える力が評価されました。 - DXCM:DexCom +11.95%
持続血糖測定器を手掛けるDexComは、決算を受けて大幅に上昇しました。糖尿病患者の増加を背景に機器の利用者が拡大し、売上高と利益が市場予想を上回ったと受け止められています。医療機器株の中でも、継続課金型に近い収益構造を持つ点が改めて評価されました。 - MPWR:Monolithic Power Systems +8.35%
高性能な電源管理半導体を手掛けるMonolithic Power Systemsは、AIサーバーやデータセンター向け需要への期待から上昇しました。GPUの高性能化に伴って消費電力が増えるため、電圧を安定させて効率よく電力を供給する半導体の重要性も高まっています。 - ETN:Eaton +7.32%
電力管理機器大手のEatonは、AIデータセンター建設に伴う受配電設備の需要拡大を評価する買いが入りました。AI設備では計算装置だけでなく、大容量の電力を安全かつ安定的に供給する設備が欠かせません。データセンター投資の恩恵が電力インフラ企業へ広がっています。 - GOOG:Alphabet Class C +6.88%
AlphabetはAmazonのAWSが高い成長率を示したことで、クラウドと生成AI市場全体の拡大を見直す買いが入りました。Google Cloudの成長、広告事業の収益力、Geminiを中心とするAIサービスへの期待も続いています。前日までの下落に対する買い戻しも上昇幅を広げました。 - WY:Weyerhaeuser +6.51%
森林資源と木材製品を手掛けるWeyerhaeuserは、住宅・木材関連株への買い戻しから上昇しました。高い住宅ローン金利は住宅需要の負担ですが、米国では住宅供給不足が続いています。木材価格や住宅着工の回復が業績改善につながるとの期待が株価に反映されました。 - VRT:Vertiv Holdings +6.18%
データセンター向け電源・冷却設備を提供するVertivは、Amazonの好決算とAI設備投資の継続を受けて上昇しました。高性能GPUを大量に設置する施設では、従来型空調だけでなく液体冷却の導入も必要になります。AI投資が建物設備まで波及する構造を示す値動きです。 - COHR:Coherent +5.55%
光通信部品を手掛けるCoherentは、AIデータセンター向け高速通信需要への期待から上昇しました。大規模なAI処理では、GPU間で膨大なデータを短時間に移動させる必要があり、光トランシーバー(電気信号と光信号を変換する装置)の需要が急増しています。 - ANET:Arista Networks +5.46%
高速ネットワーク機器大手のArista Networksは、クラウド各社のAI設備投資拡大と決算発表への期待から買われました。AIサーバーを数千台規模で接続するには、大容量で遅延の少ないネットワークが不可欠です。AI投資の重点がGPUから通信網へも広がっていることが確認できます。
5%以上下落したS&P500構成銘柄
- GDDY:GoDaddy -16.70%
ウェブサイト作成やドメイン管理サービスを提供するGoDaddyは急落しました。業績の成長力や今後の見通しが、市場の高い期待に届かなかったと受け止められた可能性があります。継続課金型の安定した事業ですが、成長率の鈍化には厳しい評価が下されました。 - CTVA:Corteva -11.90%
種子や農薬を手掛けるCortevaは大幅に下落しました。農産物価格、原材料費、為替、作付面積などに業績が左右されやすく、今後の収益見通しに慎重な反応が出たと考えられます。景気や天候の影響を受ける素材企業として、先行きへの警戒が強まりました。 - COIN:Coinbase Global -10.59%
暗号資産交換業者のCoinbaseは、暗号資産価格や取引量への懸念から大きく売られました。同社の収益は売買手数料への依存度が高く、相場が落ち着いて取引が減ると利益も伸びにくくなります。値動きの大きさから、株価も市場心理に敏感な状態が続いています。 - AAPL:Apple -7.35%
Appleは決算を受けて大幅に下落しました。売上や利益が堅調でも、株価には新製品、サービス、AI戦略への高い期待が織り込まれており、将来見通しへの物足りなさが売りにつながった可能性があります。大型株だけに、NASDAQやS&P500にも影響を与えました。 - EIX:Edison International -6.81%
カリフォルニア州を中心に電力事業を展開するEdison Internationalは下落しました。公益事業は安定収益が特徴ですが、金利、設備投資負担、山火事に伴う損害賠償リスクなどが株価を左右します。配当利回りの高さだけでは評価されにくい状況となりました。 - NXPI:NXP Semiconductors -6.53%
車載・産業機器向け半導体大手のNXP Semiconductorsは大きく下落しました。AI向け半導体が好調な一方、自動車や産業機器向けでは在庫調整や需要回復の遅れが懸念されています。半導体業界でも用途ごとの差が拡大していることを示す値動きです。 - SYK:Stryker -6.42%
医療機器大手のStrykerは売られました。整形外科手術や医療設備への需要は比較的安定していますが、これまでの株価上昇によって企業価値評価が高まっていました。決算内容が堅調でも、市場の期待を大幅に上回らなければ利益確定売りが出やすい局面です。 - TROW:T. Rowe Price Group -6.31%
資産運用会社のT. Rowe Priceは下落しました。同社の収益は運用資産残高や投資信託への資金流入に左右されます。低コストETFやインデックス運用への資金移動が続く中、従来型のアクティブ運用会社には手数料引き下げや資金流出への警戒が残っています。 - LIN:Linde -5.95%
産業ガス大手のLindeは下落しました。半導体、化学、製造業向けに幅広くガスを供給する安定企業ですが、株価には高い収益力がすでに反映されています。決算や見通しが市場予想の範囲内にとどまったことで、短期的な利益確定売りが強まったとみられます。 - MU:Micron Technology -5.90%
メモリー半導体大手のMicron Technologyは反落しました。AIサーバー向けHBM(広帯域メモリー)の需要は強いものの、前日までの上昇に対する利益確定売りが出た可能性があります。AI需要の失速というより、急速な株価上昇後の調整として見る必要があります。 - IP:International Paper -5.38%
包装材や紙製品を手掛けるInternational Paperは下落しました。企業業績は段ボール需要、製造業の出荷量、原材料費、エネルギー価格に左右されます。景気の先行きや統合に伴う費用負担への警戒もあり、素材株の中で売りが優勢となりました。 - MRNA:Moderna -5.35%
ワクチン開発企業のModernaは下落しました。新型コロナワクチン需要が縮小する中、RSウイルスやがん治療ワクチンなど次の収益源を育てる段階にあります。研究開発費が先行する一方で収益化には時間がかかるため、投資家は新薬開発の進捗を慎重に見ています。 - LYV:Live Nation Entertainment -5.14%
コンサート運営大手のLive Nation Entertainmentは下落しました。ライブ需要は底堅いものの、消費者の支出余力、イベント運営費、規制当局の動向などが業績の不確定要因となります。景気減速時には娯楽支出が抑えられやすく、慎重な売りが出ました。 - SNDK:Sandisk -5.09%
フラッシュメモリーを手掛けるSandiskは下落しました。データセンターやAI向けストレージ需要への期待は続いていますが、半導体株全体の上昇後に利益確定売りが広がりました。メモリー価格の循環変動も大きいため、将来の供給増加を警戒する動きもあります。
セクター別騰落率
市場全体では、AmazonやAlphabetなど大型株の上昇を受け、一般消費材(Consumer Cyclical)と通信サービス(Communication Services)が大きく上昇した。一方、Appleや一部半導体株の下落に加え、素材やヘルスケアには売りが広がった。指数は上昇したものの、決算内容や成長期待によってセクター間の差が大きく開く一日であった。
- 一般消費材(Consumer Cyclical) +4.42%
Amazonが好決算を受けて15%を超えて急騰し、セクター全体を大きく押し上げた。AWS(クラウド事業)の成長加速に加え、広告や電子商取引の収益力も評価された。消費関連全体が買われたというより、AI投資を利益へ結び付けられるAmazonへの資金集中が上昇の中心である。 - 通信サービス(Communication Services) +3.60%
Alphabetが6%を超えて上昇し、通信サービスセクターを牽引した。Amazonのクラウド事業が高成長を示したことで、Google Cloudや生成AI市場全体の拡大期待も高まった。検索広告、動画配信、クラウド、AIを組み合わせて収益化できる大型企業へ資金が集まった形である。 - ヘルスケア(Healthcare) -1.02%
StrykerやModernaなどが大きく下落し、ヘルスケアは軟調となった。成長株へ資金が向かう中、比較的安定した医療関連株から利益確定売りが出たほか、医療機器や新薬開発企業では高い株価評価や研究開発費への警戒も続いた。市場全体の上昇とは逆方向の動きであった。 - 素材(Basic Materials) -2.11%
Corteva、Linde、International Paperなどの下落が響き、全セクターで最大の下落となった。農業資材、産業ガス、包装材は景気や原材料価格、企業の生産活動に左右されやすい。AIやクラウド関連へ資金が集中したことで、素材株には決算や先行きへの慎重な見方から売りが優勢となった。
主要3指数とドル円の動き
- S&P500(7,489.72、前日比+0.70%)
S&P500は上昇し、一時7,512.04まで買われました。Amazonの急伸が指数を押し上げたほか、AlphabetやAIデータセンター関連にも資金が入りました。一方、Appleは大幅に下落しており、大型株が一様に買われたわけではありません。指数全体は強いものの、決算内容による企業選別が続く相場です。 - Dow30(52,485.03、前日比+0.53%)
Dow30は276.97ドル上昇しました。取引時間中には52,623.14まで上昇し、景気敏感株や工業・産業関連にも買いが広がりました。NASDAQほどAI関連株の比重は高くありませんが、Eatonなどデータセンター向け電力設備企業への資金流入が指数を押し上げています。市場の上昇が大型ハイテク株だけに偏らなかった点は前向きです。 - NASDAQ(25,373.85、前日比+1.00%)
NASDAQは主要3指数の中で最も高い上昇率となりました。Amazonの好決算をきっかけにクラウド、AI、通信網、電源、冷却設備まで買いが広がりました。ただしApple、Micron、NXP Semiconductorsなどは下落しています。AI需要そのものは強い一方、株価上昇に見合う利益や現金収入を示せる企業かどうかで選別されています。 - ドル円(158.8030円、前日比-0.50%)
ドル円は159.5990円で始まり、一時160.8780円まで上昇した後、158.1490円まで急落しました。ニューヨーク市場では値幅が2円70銭を超え、円買いが急速に進んでいます。米国株が上昇する一方でドル円が下落しており、株高とドル高が同時に進む相場ではありませんでした。円建てで米国株を保有する投資家には、株価上昇の一部を円高が相殺する動きです。
原油先物・米10年国債利回り・VIX・金先物の動き
- WTI原油先物(84.78ドル、前日比+1.42%)
WTI原油先物は上昇し、一時86.45ドルまで買われました。中東情勢による供給不安が続く中、前日の急落後に買い戻しが入りました。原油高が続けば、輸送費や製造コストを通じてインフレを押し上げる可能性があります。エネルギー株には有利ですが、消費関連企業やFRBの金融政策には注意が必要です。 - 米10年国債利回り(4.745%、前日比+1.76%)
米10年国債利回りは4.745%まで上昇し、取引時間中には4.747%を付けました。原油高によるインフレ再燃への警戒に加え、FRBが高い政策金利を長く維持する可能性が債券売りにつながりました。それでもNASDAQが上昇したのは、Amazonなどの利益成長が金利上昇の悪影響を上回ったためです。 - VIX指数(15.90、前日比-6.97%)
恐怖指数と呼ばれるVIX指数は15.90まで低下しました。米10年国債利回りが上昇したにもかかわらず、主要3指数がそろって上昇し、投資家の不安は後退しています。20を下回る水準は、市場が全面的な恐怖状態ではないことを示します。ただし、一部の大型株は決算後に急落しており、相場全体の安定と個別銘柄の危険度は分けて考える必要があります。 - 金先物(4,106.30ドル、前日比-1.31%)
金先物は54.30ドル下落しました。米10年国債利回りの上昇によって、利息を生まない金の相対的な魅力が低下したほか、VIX指数の低下も安全資産を売る動きにつながりました。中東情勢への警戒は残っていますが、この日は株式市場への資金流入が優勢でした。長期的なインフレ対策として、純金を資産の一部に保有する考え方は変わりません。
私の米国株ポートフォリオ +0.43%(前日比)
私の米国株ポートフォリオは前日比+0.43%となりました。iFreeETF FANG+が+2.70%、MAXISナスダック100上場投信が+1.49%となりましたが、S&P500連動型のETFと投資信託は小幅安となり、GX超短期米国債も-2.08%でした。ドル円が円高方向へ動いたため、米国市場での株価上昇が円換算では一部相殺されたと見ています。
市場ではAI、クラウド、データセンター関連への資金流入が続いていますが、Appleや一部半導体株は下落しており、全面高ではありません。ETF中心で分散しているため、個別銘柄の急落による影響を抑えながら、米国企業全体の成長を取り込めた一日でした。
経済指標発表結果
- 雇用コスト指数(前期比+0.9%、予想+0.8%、前回+0.9%)
雇用コスト指数は市場予想を上回り、賃金や福利厚生を含む人件費が依然として高い伸びを続けていることが示されました。人件費の上昇はサービス価格へ転嫁されやすいため、FRBがインフレ沈静化を確認するうえで注意が必要な結果です。米10年国債利回りの上昇と整合する内容で、早期利下げへの期待をやや後退させました。 - 雇用賃金(前期比+0.90%、前回+0.80%)
賃金の伸びは前期から加速しました。家計の所得を押し上げて個人消費を維持する効果がある一方、企業にとっては人件費負担の増加につながります。株式市場では、価格転嫁力のある大型企業や高収益企業が選ばれやすく、利益率の低い企業には厳しい環境です。景気の強さとインフレ圧力が同時に残る結果でした。 - 雇用給付(前期比+1.00%、前回+1.20%)
福利厚生などを示す雇用給付は前期から伸びが鈍化しました。賃金が加速する一方、給付の伸びは低下しており、人件費全体では一方向に過熱しているわけではありません。ただし、雇用コスト指数全体は予想を上回っているため、FRBが安心して利下げへ動けるほど弱い内容ではありませんでした。 - シカゴ購買部協会景気指数(57.6、予想56.0、前回56.7)
シカゴ購買部協会景気指数は市場予想と前回を上回り、製造業の活動が拡大していることを示しました。50を上回ると景気拡大を意味します。製造業の底堅さは工業・産業株には前向きですが、需要の強さが続けば物価上昇圧力も残ります。景気後退懸念を和らげる一方、金利低下を期待する市場には複雑な結果でした。 - ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値(55.4、予想54.0、前回50.7)
消費者信頼感指数は予想を上回り、前月から大きく改善しました。米国経済の中心である個人消費が急速に悪化する可能性は低いと受け止められ、一般消費材株には前向きな内容です。Amazonの好決算とも重なり、消費と企業収益の底堅さが確認されました。ただし、指数水準そのものはまだ高いとは言えません。 - ミシガン大学消費者信頼感指数(55.2、予想54.4、前回49.5)
消費者信頼感指数は市場予想を上回り、前月から改善しました。雇用と所得の安定が消費者心理を改善させていると考えられます。株式市場では景気後退への警戒が弱まり、景気敏感株や一般消費材株へ資金が向かいやすくなりました。一方、景気の強さはFRBの利下げを急がせない要因でもあります。 - ミシガン大学5年先インフレ予測(+3.3%、予想+3.3%、前回+3.3%)
5年先の期待インフレ率は予想、前回とも同じ+3.3%でした。期待インフレ率は、家計が将来の物価上昇をどの程度予想しているかを示し、FRBが重視する指標です。低下しなかった点から、インフレが完全に沈静化したとは言いにくく、米10年国債利回りが4.7%台へ上昇した背景の一つと考えられます。 - ミシガン大学1年先インフレ予測(+4.2%、予想+4.2%、前回+4.6%)
1年先の期待インフレ率は前回から低下しました。家計が予想する短期的な物価上昇率が和らいだことは、FRBにとって前向きな変化です。ただし、+4.2%という水準は依然として高く、原油価格も上昇しています。市場はインフレ鈍化を評価しつつも、利下げを急ぐほどの改善ではないと判断したようです。
主要銘柄の決算発表結果
- ABBV:AbbVie Inc.(ヘルスケア)
AbbVieは1株利益が3.65ドルとなり、市場予想の3.71ドルを下回りました。一方、売上高は169.9億ドルと予想の167.7億ドルを上回っています。通常取引では-2.54%となり、利益面の物足りなさが株価に表れました。時間外取引では-0.23%と小幅安です。医薬品株では売上高だけでなく、新薬構成や利益率の維持が重要です。 - CVX:Chevron Corporation(エネルギー)
Chevronは1株利益が6.06ドルとなり、市場予想の5.11ドルを大きく上回りました。売上高も700.6億ドルと予想の622.6億ドルを上回り、原油価格や生産量の改善が業績に反映された内容です。通常取引では+2.36%となりましたが、時間外取引では-0.02%とほぼ横ばいでした。原油高が続くかどうかが今後の収益を左右します。 - LIN:Linde plc(素材)
Lindeは1株利益が4.50ドルとなり、市場予想の4.49ドルをわずかに上回りました。売上高も92.9億ドルと予想の90.2億ドルを上回っています。ただし通常取引では-5.96%と大きく下落しました。決算自体は堅調でも、市場がより強い成長や見通しを求めていた可能性があります。時間外取引では+0.90%と一部買い戻されました。 - ETN:Eaton Corporation(工業・産業)
Eatonは1株利益が3.15ドルとなり、市場予想の3.07ドルを上回りました。売上高も85億ドルと予想の81.6億ドルを上回り、電力設備やデータセンター向け需要の強さが確認されました。通常取引では+7.43%と大幅高となりましたが、時間外取引では-0.53%でした。AI投資の恩恵が電源・配電設備へ広がっている点が重要です。 - MNST:Monster Beverage Corporation(生活必需品)
現時点で発表されていませんので、省略します。 - CL:Colgate-Palmolive Company(生活必需品)
Colgate-Palmoliveは1株利益が0.99ドルとなり、市場予想の0.95ドルを上回りました。売上高は53.6億ドルで市場予想と一致しています。通常取引では-0.34%、時間外取引では横ばいでした。安定した需要を持つ企業ですが、決算が予想の範囲内に収まったため、株価を大きく押し上げるほどの驚きはありませんでした。 - D:Dominion Energy Inc.(公益事業)
Dominion Energyは1株利益が0.79ドルとなり、市場予想の0.75ドルを上回りました。売上高も44.8億ドルと予想の41億ドルを上回っています。通常取引では-0.80%、時間外取引では-0.04%でした。公益事業は安定収益が期待される一方、長期金利上昇や設備投資負担に弱く、好決算でも株価が上がりにくい環境でした。 - CBOE:Cboe Global Markets Inc.(金融)
Cboe Global Marketsは1株利益が3.56ドルとなり、市場予想の3.36ドルを上回りました。売上高も7.316億ドルと予想の7.0012億ドルを上回っています。通常取引では+4.62%と上昇しましたが、時間外取引では-1.65%でした。取引高や市場変動率が収益を左右するため、VIX低下局面で今後の成長見通しが慎重に見られた可能性があります。 - TROW:T. Rowe Price Group Inc.(金融)
T. Rowe Priceは1株利益が2.57ドルとなり、市場予想の2.42ドルを上回りました。売上高も19.1億ドルと予想の18.5億ドルを上回っています。それでも通常取引では-6.31%と大幅に下落し、時間外取引では+0.51%となりました。低コストETFへの資金移動が続く中、アクティブ運用会社には資金流出や手数料競争への警戒が残ります。 - CHD:Church & Dwight Co. Inc.(生活必需品)
Church & Dwightは1株利益が0.89ドルとなり、市場予想と一致しました。売上高は15.3億ドルと予想の15億ドルを上回っています。通常取引では+1.16%、時間外取引では-0.02%でした。日用品需要は安定していますが、原材料費や販促費の上昇が利益率へ影響します。堅調な決算ではあるものの、市場予想を大幅に上回る内容ではありませんでした。 - MRNA:Moderna Inc.(ヘルスケア)
Modernaは1株損失が1.97ドルとなり、市場予想の2.03ドルの損失より良い結果でした。売上高も1億ドルと予想の0.9991億ドルをわずかに上回っています。ただし通常取引では-5.35%、時間外取引でも-0.44%となりました。新型コロナワクチン後の収益減少を補う新薬開発には時間が必要で、研究開発費への警戒が続いています。 - LYB:LyondellBasell Industries N.V.(素材)
LyondellBasellは1株利益が4.30ドルとなり、市場予想の3.33ドルを大きく上回りました。一方、売上高は91.8億ドルと予想の92.6億ドルを下回っています。通常取引では+2.71%、時間外取引でも+1.30%となりました。利益率の改善が評価された一方、化学需要や景気循環の影響を受けやすいため、売上高の伸びには注意が必要です。 - BEN:Franklin Resources Inc.(金融)
Franklin Resourcesは1株利益が0.72ドルとなり、市場予想の0.66ドルを上回りました。売上高も23.6億ドルと予想の17.3億ドルを大きく上回っています。通常取引では+2.08%、時間外取引では-0.03%でした。資産運用会社では運用資産残高と資金流入が重要ですが、ETFや低コスト商品の競争が続くため、収益の持続性が今後の焦点です。 - TRMB:Trimble Inc.(先端技術)
Trimbleは添付図では1株利益と売上高が未掲載であり、予想との比較はできません。通常取引では-0.81%、時間外取引では-0.23%となりました。同社は測量、建設、農業向けのデジタル技術を提供しており、建設DXや位置情報技術の成長が長期テーマです。ただし、今回の資料だけでは決算内容を詳しく評価できません。 - FRT:Federal Realty Investment Trust(不動産)
Federal Realty Investment Trustは1株利益が0.97ドルとなり、市場予想の0.72ドルを上回りました。売上高も3.357億ドルと予想の3.324億ドルを上回っています。通常取引では-0.06%とほぼ横ばいでした。REIT(不動産投資信託)は業績が堅調でも、長期金利上昇によって配当利回りの魅力が相対的に低下しやすい状況です。 - AES:The AES Corporation(公益事業)
AESは添付図では1株利益と売上高の実績が未掲載であり、市場予想との比較はできません。通常取引では+0.04%、時間外取引でも横ばいでした。再生可能エネルギーや発電事業の成長余地はありますが、設備投資額、借入金利、電力契約の採算が重要です。今回の資料からは、決算への市場評価は限定的だったと判断できます。
主な経済ニュース
- Amazon好決算でAI・クラウド関連株が急反発
AmazonはAWS(クラウド事業)の売上高が前年同期比約37%増となり、成長率が18四半期ぶりの高水準に達しました。巨額のAI設備投資がクラウド収入へ結び付き始めたとの評価から株価は15%を超えて上昇し、電力設備、冷却、光通信、ネットワーク関連にも買いが広がりました。(Reuters:07/31) - Appleが供給制約への警戒から大幅下落
Appleは決算後に7%を超えて下落しました。AIデータセンター向け需要の急増によって半導体やメモリー部品の供給が逼迫し、製品供給に影響する可能性を示したことが嫌われました。AI投資額の少なさが評価されてきたAppleですが、今度はAI投資競争による部品不足の影響を受けています。(Reuters:07/31) - AI関連でも利益を示せる企業への選別が進む
MicrosoftとAmazonの好決算を受け、AI関連株へ資金が戻りました。ただし、Appleや一部の半導体株は下落しており、「AI関連ならすべて上昇する」相場ではありません。設備投資額だけでなく、クラウド収入、利益率、現金収入まで確認できる企業へ資金が集中する局面に変わっています。(WSJ:07/31) - 米長期金利が4.7%台へ上昇
米10年国債利回りは4.745%まで上昇し、2025年1月以来の高水準となりました。中東情勢に伴う原油高がインフレを再加速させ、FRBが高金利を長く維持するとの警戒が背景です。それでもNASDAQが上昇したことから、今回は金利上昇よりもAmazonなどの利益成長が優先されたと考えられます。(WSJ:07/31) - 中東の供給障害で原油高が長期化する可能性
Reutersの調査では、ホルムズ海峡やバブ・エル・マンデブ海峡を通る原油輸送の制約により、原油価格は当面高止まりするとの予想が示されました。停戦が成立しても流通正常化には4~6カ月かかる可能性があります。原油高が続けば、企業コスト、消費、FRBの金利判断へ広く影響します。(Reuters:07/31) - 米消費者心理は改善したが物価への不満は残る
7月のミシガン大学消費者信頼感指数は55.2となり、6月の49.5から改善しました。雇用や所得の安定が消費者心理を押し上げた一方、前年同月を11%下回り、生活費や購買力への不満は根強い状態です。Amazonの電子商取引や広告事業には前向きですが、全面的な消費回復とは言えません。(Reuters:07/31) - 短期の期待インフレ率は低下、長期は高止まり
ミシガン大学調査の1年先期待インフレ率は4.6%から4.2%へ低下しましたが、5年先は3.3%で変わりませんでした。短期の物価不安はやや和らいだものの、FRBが目標とする2%を上回るインフレが長期化すると考える家計は少なくありません。原油高が続けば改善が止まる可能性があります。(Reuters:07/31) - ドル円が160円台から158円台へ急落
ドル円は一時160円台後半まで上昇した後、158円台へ急落しました。米長期金利の上昇は通常ドル高要因ですが、米当局が円相場への対応に備えるよう一部金融機関へ伝えたとの報道を受け、円買いが急速に強まりました。円建ての米国株投資では、株高の一部が円高によって相殺されています。(Reuters:07/31) - OpenAIを巡る巨額投資がAIインフラ需要を拡大
OpenAIは過去最大規模の資金を調達し、半導体、データセンター、通信網、人材への投資を拡大しています。巨額調達はAI需要の強さを示す一方、企業価値に見合う利益を生み出せるかが今後の焦点です。電源の多重化、冷却、水冷、高速通信など、AIを支える設備企業への需要は続くと見ています。(Bloomberg:07/31) - VIX低下でも7月は値動きの激しい相場
恐怖指数と呼ばれるVIX指数は15.90まで低下し、市場全体は落ち着きを取り戻しました。しかし7月は、中東情勢、原油高、FRB、AI設備投資、巨大IT企業の決算によって株価が大きく振れました。指数は上昇しても、Apple、暗号資産、素材、医療などでは急落が相次ぎ、分散投資の重要性を感じる相場です。(WSJ:07/31)
今週の動き
- 今週の個別銘柄ヒートマップ総括
今週はMicrosoftが+21.75%、Amazonが+17.00%、Alphabetが+11.38%と急伸し、大型IT企業の好決算が相場の中心となりました。Oracle、Salesforce、ServiceNow、Uberなどソフトウェア関連にも買いが広がり、AI投資の恩恵がクラウド、広告、業務ソフトへ波及しています。一方、Appleは-7.24%、Micronは-10.63%、AMDは-8.78%となり、半導体や端末関連には厳しい売りが出ました。AI需要そのものの後退ではなく、設備投資を利益へ変えられる企業と、供給制約や株価水準への懸念が残る企業との選別が進んだ1週間です。 - 今週のセクター別騰落率総括
セクター別では、Amazonの急伸を受けた一般消費材(Consumer Cyclical)が+6.92%、Alphabetなどが上昇した通信サービス(Communication Services)が+4.82%となり、巨大IT企業の決算が指数を押し上げました。生活必需品(Consumer Defensive)も+1.69%、金融(Financial)も+1.16%と上昇しています。一方、公益事業(Utilities)は-3.69%、工業・産業(Industrials)は-2.23%、不動産(Real Estate)は-1.91%となりました。米長期金利の上昇と原油価格の変動を受け、資金は金利に弱い分野やAI設備投資関連から、利益成長が確認された大型企業へ移ったと見ています。
経済指標発表予定
以下の経済指標が発表される予定です。
主要銘柄の決算発表予定
以下の主要銘柄の決算発表がなされる予定です。
おわりに
7月の米国株式市場は、AI関連株が一方向に上昇した月ではありませんでした。月前半はCPIやPPIの鈍化を受けて米長期金利が低下し、半導体や大型成長株が反発しました。その後は中東情勢の緊迫化と原油高、米10年国債利回りの上昇が重なり、AI・半導体株からエネルギー、生活必需品、ヘルスケアなどへ資金が移る場面もありました。
月後半になると、AI需要そのものよりも、巨額の設備投資を売上高、利益、現金収入へ変えられるかが厳しく問われました。Microsoft、Amazon、Alphabetのようにクラウド、広告、電子商取引など既存事業とAIを組み合わせられる企業が評価された一方、Appleや一部の半導体、メモリー関連株には大きな売りも出ています。AI相場は終わったのではなく、期待だけで買われる段階から、業績で企業を選ぶ段階へ進んだと感じています。
7月31日もS&P500、Dow30、NASDAQはそろって上昇しましたが、米10年国債利回りは4.7%台、WTI原油先物は84ドル台となりました。株価が上昇していても、インフレ、中東情勢、金利、ドル円の急変には引き続き注意が必要です。
私は7月を振り返り、個別銘柄の値動きを予測するより、ETFを中心に分散し、市場に居続けることの大切さを改めて感じました。上昇する銘柄と下落する銘柄が日々入れ替わるからこそ、銘柄選びだけでなく、資産配分と投資を継続できる余裕が重要です。
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投資は自己責任にてお願いします。
おことわり
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図表のレファレンス
- S&P500ヒートマップ: finviz
- 主要3指数とドル円: Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
- セクター別騰落率: finviz
- 経済指標結果/予定: investing.com日本語版
- 決算発表結果/予定: investing.com日本語版
- 主要指数の動き : Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
- 自分の米ドル建ポートフォリオ: Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
著者プロフィール
室井一夫(Kazuo Muroi)
Muroi Universal Research on Investment LLC 代表社員
一級建築士・建築1級施工管理技士・工学修士
Facebookグループ「米国株_投資の部屋」管理人(約4.7万人)
米国株式市場と経済動向に関する情報を毎日発信しています。
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