【20260715】米国株式市場 投資研究レポート

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室井のマーケット視点

7月15日の米国市場は、S&P500が+0.38%、Dow30が+0.29%、NASDAQが+0.62%と、主要3指数がそろって上昇しました。6月の生産者物価指数(PPI)が前月比-0.3%、前年比+5.5%と市場予想を下回り、米10年国債利回りが4.545%へ低下したことで、大型成長株を買いやすい環境になりました。とはいえ、指数の上昇だけを見ると、この日の市場で起きた大きな資金移動を見落とします。通信サービス(Communication Services)が+2.65%、一般消費材(Consumer Cyclical)が+1.33%となる一方、Micron、Western Digital、SanDisk、Dell、Marvell、Arista Networksなど、AIサーバー、メモリー、ストレージ、通信機器に関係する銘柄は大幅に下落しました。企業のIT予算が従来型ソフトウェアからAIサーバー、メモリー、ストレージ、高速通信網へ移る構造は続いています。しかし、成長を先取りして急上昇した銘柄には、数年先の利益まで株価へ織り込んだものもあります。この日はAI関連の中でも、将来の成長期待より、現在の利益、現金収入、株価水準を厳しく比べる企業選別が進みました。

その一方で、Apple、Microsoft、Amazon、Alphabetなどの巨大IT企業を含む分野へ資金が戻り、NASDAQを押し上げました。AIの利用者を増やし、検索、広告、クラウド、電子商取引など既存事業と組み合わせて収益化できる企業が買われています。半導体や設備を供給する企業から、AIを使って利益を生み出す企業へ資金の一部が移ったと見ると、指数と個別株の違いを理解しやすくなります。

金融株では、BlackRockやBank of New York Mellonなどの好決算が目立ちました。BlackRockの運用資産拡大は、世界の投資資金が株式市場やETFへ流れ続けていることを示しています。私は個別銘柄よりETFを中心に運用していますが、こうした資金流入の積み重ねが、長期的な指数上昇を生み出す土台になります。

恐怖指数と呼ばれるVIX指数は15.67まで低下しており、市場全体は全面的な恐怖状態ではありません。ただ、Pentairが-15.00%、PayPalが+17.20%となるなど、個別株の値動きは非常に大きくなっています。指数が穏やかでも、内部では激しい値動きが起きているため、個別株へ集中する投資の難しさを改めて感じる一日でした。

WTI原油先物は80.37ドルへ上昇しました。PPIの鈍化によってインフレへの不安は一度弱まりましたが、原油高が続けば輸送費や製造コストを通じて物価を再び押し上げます。ドル円も162円台で推移しており、日本から米国株へ投資する場合は、株価だけでなく為替変動の影響も大きくなっています。

私の米国株ポートフォリオは+0.57%となり、FANG+やNASDAQ100が全体を押し上げました。個別のAI関連株が大きく下落しても、ETFでは上昇した巨大IT企業の恩恵を受けられます。私はこの分散効果を重視しています。市場の主役は日々入れ替わりますが、銘柄を当て続けるより、市場全体の利益成長に長く参加する方が再現性は高いと考えています。

投資は自己責任にてお願いします。

S&P500ヒートマップ

5%以上上昇したS&P500構成銘柄

  • PYPL:PayPal Holdings +17.20%
    決済大手Stripeと投資会社Advent Internationalが、PayPalに対して1株60.50ドル、総額530億ドル超の買収提案を行ったとの報道を受け、株価は急騰しました。前日終値に対して約28%の上乗せとなる条件です。ただし、関係各社から正式発表はなく、買収成立を確定的に捉える段階ではありません。
  • BLK:BlackRock +6.63%
    第2四半期の調整後EPSは13.91ドルとなり、市場予想を上回りました。運用資産残高は過去最高の15兆3,400億ドルに達し、ETFを中心に資金流入が拡大しています。株式だけでなく債券やプライベート資産にも資金が入り、収益源の多様化と利益率改善が確認されたことで、大幅高となりました。
  • CBRE:CBRE Group +6.22%
    予想を下回る生産者物価指数を受けて米長期金利が低下し、不動産取引や資金調達環境の改善を期待する買いが入りました。CBREは不動産売買仲介だけでなく、施設管理や投資運用など継続収入型の事業も拡大しています。不動産市況の回復と業績拡大を先取りする動きとなりました。
  • IVZ:Invesco +5.46%
    BlackRockの好決算を受け、資産運用会社全体へ買いが広がりました。Invescoの6月末の運用資産残高は前月比0.7%増の2兆4,703億ドルとなり、長期運用商品には80億ドル、マネー・マーケット商品には143億ドルが純流入しています。ETF市場の拡大と株高による運用報酬増加への期待が株価に反映されました。
  • BK:Bank of New York Mellon +5.08%
    第2四半期の売上高と利益が過去最高となり、通期の売上高成長見通しを従来の約5%から10~11%へ引き上げたことで買いが集まりました。預かり資産の増加に加え、金利収入と手数料収入がともに伸びています。資産管理銀行としての安定性に加え、増収効果による利益率改善も確認されました。

5%以上下落したS&P500構成銘柄

  • PNR:Pentair -15.00%
    プール設備や水処理機器を手掛けるPentairは、2026年通期の業績見通しを引き下げたことで急落しました。プール用品の流通在庫削減に加え、高金利と物価上昇が住宅関連需要を圧迫しています。経営陣の交代も重なり、投資家は業績回復の時期を慎重に見極めています。
  • DELL:Dell Technologies -9.80%
    AIサーバー関連として大きく上昇してきた反動から、利益確定売りが集中しました。AIサーバーの受注は堅調ですが、メモリーなどの部品価格上昇と低い利益率への懸念があります。AI需要そのものの失速というより、急騰したハードウェア関連株から資金が移動した動きです。
  • PGR:Progressive -9.43%
    自動車保険大手Progressiveは、6月の純利益が前年同月比で減少し、保険引受コストの上昇が警戒されました。コンバインド・レシオ(保険料収入に対する保険金と経費の割合)は90.0%へ上昇しています。契約件数は増えていますが、事故修理費などの上昇が利益率を圧迫しました。
  • WDC:Western Digital -8.78%
    データ保存装置大手Western Digitalは、メモリー・ストレージ関連株への一斉売りに巻き込まれました。AIデータセンター向け需要は強いものの、株価が先行して上昇していたため、利益確定売りが出やすい水準でした。中国企業の供給拡大による価格競争への警戒も加わっています。
  • ELV:Elevance Health -8.54%
    医療保険大手Elevance Healthは、市場予想を上回る決算を発表したものの、通期利益見通しの引き上げ幅が小さく、売りが優勢となりました。低所得者向け公的医療保険Medicaidの採算悪化や医療費増加への懸念が残り、好決算だけでは投資家の高い期待に届きませんでした。
  • SNDK:SanDisk -8.12%
    フラッシュメモリー大手SanDiskは、メモリー関連株の利益確定売りを受けて大幅安となりました。AI向けデータ保存需要は拡大していますが、価格上昇を見込んだ需要の前倒しや、中国メーカーの増産による将来の供給過剰が警戒されています。株価上昇が急だった反動も大きく表れました。
  • MU:Micron Technology -8.02%
    Micronは、AI向けメモリー需要の拡大によって大きく上昇してきましたが、この日は半導体・メモリー株から資金が流出しました。HBM(AI半導体向け高速メモリー)の需要は強いものの、将来の成長を株価が先に織り込んだとの警戒から、持ち高を減らす動きが広がりました。
  • LITE:Lumentum Holdings -7.71%
    AIデータセンター向け光通信部品への期待から急上昇していたため、利益確定売りが膨らみました。高速通信需要の拡大という成長テーマは変わっていませんが、設備投資の増加による供給能力拡大が、将来的な価格競争につながる可能性もあります。高いPER(株価収益率)も株価変動を大きくしました。
  • MRVL:Marvell Technology -7.27%
    AI向け通信半導体やカスタム半導体を手掛けるMarvellは、AIハードウェア株全体の調整を受けて下落しました。データセンター需要への期待は続いているものの、PERが高く、市場は数年先の成長まで織り込んでいます。好材料が不足すると利益確定売りが出やすい株価水準でした。
  • NTAP:NetApp -7.13%
    企業向けデータ管理を手掛けるNetAppは、ストレージ関連株の一斉下落に連動しました。生成AIの普及で保存データ量は増加していますが、企業の設備投資がクラウドやAIサーバーへ集中し、従来型ストレージへの予算配分が慎重になる可能性があります。市場は今後の成長率を厳しく評価しました。
  • GLW:Corning -7.05%
    光ファイバーや特殊ガラスを手掛けるCorningは、AIデータセンター関連として上昇してきた反動から売られました。高速通信網の増強に伴う光ファイバー需要は長期的に拡大する可能性がありますが、この日は通信・メモリー・サーバーなどAIインフラ関連株全体に利益確定売りが広がりました。
  • CIEN:Ciena -6.37%
    光通信ネットワーク機器大手Cienaは、AIデータセンター関連株からの資金流出を受けて下落しました。データ通信量の増加により高速ネットワーク需要は伸びていますが、株価は高い成長率を前提とした水準です。設備投資の変動や通信事業者の発注時期に左右されやすい点も警戒されました。
  • CDW:CDW Corporation -6.11%
    企業向けIT機器販売大手CDWは、ハードウェア関連株の下落に連動しました。企業のAI投資は拡大していますが、予算がAIサーバーやクラウドへ集中する一方、パソコンや従来型IT機器の更新需要には不透明感があります。販売数量だけでなく、利益率を維持できるかが今後の焦点です。
  • ANET:Arista Networks -5.83%
    AIデータセンター向け高速ネットワーク機器で成長してきたArista Networksは、光通信・サーバー関連株とともに下落しました。業績への期待は高いものの、株価には大手クラウド企業の設備投資拡大が相当程度織り込まれています。投資家は成長性よりも株価水準を重視する姿勢を強めました。
  • STX:Seagate Technology -5.69%
    ハードディスク大手Seagateは、Western DigitalやSanDiskなどストレージ関連株とともに売られました。AIデータセンターでは大容量データ保存需要が続く一方、株価は業績回復を先取りして大幅に上昇していました。この日は企業固有の悪材料より、関連銘柄全体の持ち高調整が中心でした。

セクター別騰落率

市場全体では、通信サービス(Communication Services)と一般消費材(Consumer Cyclical)が大きく上昇し、成長株や消費関連株へ資金が向かいました。一方、先端技術(Technology)、エネルギー(Energy)、公益事業(Utilities)は下落しています。ただし、下落幅はいずれも1%未満であり、市場全体から資金が逃げたというより、AI・半導体関連から通信サービスや金融、消費関連へ資金が移動した一日と考えられます。

  • 通信サービス(Communication Services) +2.65%
    通信サービスは全11セクターで最大の上昇となりました。大型インターネット企業やデジタル広告関連株への買いが強まり、前日に売られた成長株の一部へ資金が戻りました。ドル安や米長期金利の低下も、高PER(株価収益率が高い)銘柄を買いやすくする要因となっています。AI関連でも半導体やサーバーだけではなく、広告、検索、動画配信など、実際にAIを収益化できる企業へ投資対象が広がりました。
  • 一般消費材(Consumer Cyclical) +1.33%
    一般消費材は、米国景気と個人消費の底堅さを背景に上昇しました。インフレ指標が市場予想を下回り、今後の利下げ期待が強まったことで、自動車、住宅、インターネット通販など、金利の影響を受けやすい銘柄が買われました。高金利の長期化による家計負担は残っていますが、雇用と賃金が大きく崩れていないため、市場は急激な消費後退より、緩やかな景気拡大を織り込む動きとなりました。

主要3指数とドル円の動き

米国市場は、生産者物価指数(PPI)が予想外に低下したことでインフレへの警戒が和らぎ、主要3指数がそろって上昇しました。米長期金利の低下を受けて大型成長株が買われたほか、金融機関の好決算も市場心理を改善しました。ただし、AIサーバー、メモリー、光通信など直近で急上昇した銘柄には大幅な利益確定売りが出ており、指数上昇とは対照的に市場内部では大きな資金移動が起きています。

  • S&P500(7,572.40、前日比+0.38%)
    S&P500は取引開始後に一時7,526.95まで下落しましたが、その後は切り返して上昇しました。6月の生産者物価指数が前月比-0.3%となり、企業段階のインフレ圧力が弱まったことから、米長期金利が低下しました。通信サービスや一般消費材、金融が上昇する一方、AIサーバー、メモリー、ストレージ関連株には利益確定売りが集中しています。指数は上昇しましたが、全面高ではなく、業績と株価水準を見ながら資金を入れ替える相場でした。
  • Dow30(52,658.64、前日比+0.29%)
    Dow30は一時52,428.54まで下落したものの、金融株を中心に買い戻されてプラス圏で取引を終えました。BlackRockやBank of New York Mellonなど金融関連企業の好業績が確認され、資産運用や金融サービス分野へ資金が流れました。インフレ指標の弱さによって金利上昇への不安も薄れています。一方、工業株や公益事業は軟調で、Dow30全体が一方向に買われたわけではありません。大型ハイテク株に偏らない資金循環が続いています。
  • NASDAQ(26,269.23、前日比+0.62%)
    NASDAQは主要3指数で最大の上昇となりました。米長期金利の低下によって、将来の利益に対する評価が高まりやすい大型グロース株が買われました。ただし、Micron、Dell Technologies、Western Digital、Arista Networksなど、AIインフラ関連の一部は大幅に下落しています。AI需要が弱まったというより、企業のIT予算がソフトウェア、クラウド、サーバー、メモリー、通信設備の間で再配分される中、急上昇した銘柄から利益を確定する動きが強まりました。
  • ドル円(162.2230円、前日比+0.02%)
    ドル円は161.8850円から162.4230円の範囲で動き、最終的には前日とほぼ同水準でした。米国の生産者物価指数が予想を下回ったことで米長期金利とドルは低下しましたが、円を積極的に買う動きも限られました。日米の金利差が大きい状況は変わらず、円安基調が続いています。ただし、162円台は日本政府・日銀による為替介入への警戒が強まりやすい水準です。円建てで米国株を保有する投資家には評価額を押し上げる一方、急な円高反転にも注意が必要です。

原油先物・米10年国債利回り・VIX・金先物の動き

原油先物が上昇する一方、米10年国債利回りと恐怖指数と呼ばれるVIX指数は低下しました。生産者物価指数(PPI、企業間で取引される商品の価格動向)が予想を下回り、インフレと金利上昇への警戒が弱まったことで、株式市場は比較的落ち着いた状態となっています。ただし、原油が80ドル台へ上昇しており、エネルギー価格からインフレが再び強まる可能性は残っています。

  • WTI原油先物(80.37ドル、前日比+1.30%)
    WTI原油先物は80ドル台へ上昇しました。中東情勢を巡る供給不安に加え、米国の夏季ドライブシーズンによる燃料需要が価格を押し上げています。エネルギー株には収益改善要因となりますが、原油高が長引けば輸送費や製造コストを通じて物価を再び押し上げかねません。この日は生産者物価指数が弱かったものの、原油価格の動きは今後のFRBの金融政策を考えるうえで無視できない要素です。
  • 米10年国債利回り(4.545%、前日比-0.87%)
    米10年国債利回りは4.545%へ低下しました。生産者物価指数が市場予想を下回り、企業段階のインフレ圧力が弱まったことで、米国債を買う動きが強まりました。長期金利の低下は、将来の利益を現在価値へ換算した際の評価を高めるため、NASDAQを中心とする大型成長株には有利です。ただし、AI関連株の一部では株価上昇が先行しており、金利低下だけで一様に買われる相場ではありませんでした。
  • VIX指数(15.67、前日比-5.03%)
    恐怖指数と呼ばれるVIX指数は15.67まで低下しました。一般に20を下回る水準は、市場参加者が全面的な恐怖状態にはないことを示します。主要3指数がそろって上昇し、インフレと金利への不安が和らいだため、株価の急落に備える取引が減少しました。ただし、個別ではAIサーバー、メモリー、光通信関連に大幅安が相次いでいます。指数の落ち着きと個別株の激しい値動きが同時に起きた一日でした。
  • 金先物(4,067.70ドル、前日比-0.05%)
    金先物はほぼ横ばいでした。米長期金利とドルの低下は、利息を生まない金にとって有利な条件ですが、株式市場の上昇とVIX指数の低下によって、安全資産を急いで買う動きは限られました。一方、中東情勢や原油高への警戒は残っており、金を大きく売る状況でもありません。私は金を短期的な値上がり目的ではなく、インフレや地政学的な混乱に備える資産として一定割合保有する考え方が適していると思っています。

私の米国株ポートフォリオ

私の米国株ポートフォリオは前日比+0.57%となりました。日本市場で取引されるETFや投資信託には、前日の米国株式市場の上昇と円安の影響が反映されています。

特にiFreeETF FANG+が+1.45%、MAXISナスダック100上場投信が+1.20%となり、大型ハイテク株を多く含む成長系ETFが全体を押し上げました。一方、S&P500連動商品は+0.27%から+0.35%と堅調でしたが、GX超短期米国債は-0.09%となっています。

昨夜の米国市場ではNASDAQが上昇した一方、AIサーバー、メモリー、光通信関連の一部には大きな利益確定売りが出ました。それでも、Apple、Amazon、Microsoft、Alphabetなどの大型株を幅広く組み入れるFANG+やNASDAQ100は上昇しています。個別株の急落に直接振り回されにくい点は、ETF中心で運用する利点だと感じています。

経済指標発表結果

  • 生産者物価指数(PPI、前月比-0.3%)
    6月の生産者物価指数は前月比-0.3%となり、市場予想の0.0%を下回りました。前月の+0.6%から大きく低下し、企業間で取引される商品の価格上昇圧力が弱まったことを示しています。インフレ再加速への警戒が後退したことで米10年国債利回りは低下し、S&P500やNASDAQの上昇につながりました。FRBの利下げ余地を残す内容です。
  • 生産者物価指数(PPI、前年比+5.5%)
    PPIは前年比では+5.5%となり、市場予想の+6.2%、前月の+6.0%をともに下回りました。前年比の水準自体は依然として高いものの、上昇率の鈍化は企業の仕入れコストが落ち着き始めていることを示します。企業収益にとっては原材料費や物流費の負担軽減が期待でき、株式市場ではインフレと利益率の両面から前向きに受け止められました。
  • コア生産者物価指数(前月比+0.2%)
    食品とエネルギーを除くコアPPIは前月比+0.2%となり、市場予想の+0.3%を下回りました。変動の大きい食品やエネルギーを除いても価格上昇が抑えられており、基調的なインフレ圧力がやや弱まっています。FRBが金融政策を判断する際には一時的な価格変動よりも基調的な物価動向が重要であり、長期金利の低下と大型成長株への買いにつながりました。
  • コア生産者物価指数(前年比+4.7%)
    コアPPIは前年比+4.7%となり、市場予想の+5.2%を下回りました。前月の+4.6%からはわずかに上昇したものの、予想より低い結果だったため、市場はインフレの急激な再加速を警戒する必要が薄れたと判断しました。ただし、物価上昇率はFRBの目標を上回っており、直ちに大幅利下げへ進める状況ではありません。
  • ニューヨーク連銀製造業景気指数(15.60)
    7月のニューヨーク連銀製造業景気指数は15.60となり、市場予想の9.30、前月の5.70を大きく上回りました。0を上回る数値は製造業活動の拡大を示します。PPIが弱かった一方で製造業景況感は強く、米国経済がインフレを抑えながら成長を維持するソフトランディング(景気後退を避けた着地)への期待が高まりました。
  • MBA30年住宅ローン金利(6.65%)
    30年固定住宅ローン金利は6.65%となり、前週の6.58%から上昇しました。これを受け、住宅ローン申請件数は前週比-2.7%、住宅購入指数も169.5から157.2へ低下しています。高金利が住宅購入意欲を抑えている状況は続いており、不動産や住宅関連企業には慎重な見方が残ります。米長期金利の低下が今後も続くかが焦点です。
  • 米原油在庫(-169.2万バレル)
    米原油在庫は169.2万バレル減少しましたが、市場予想の180.0万バレル減少には届きませんでした。一方、ガソリン在庫は153.3万バレル減少し、夏場の燃料需要の強さが確認されています。原油先物は80ドル台へ上昇しており、エネルギー企業には増収要因となる反面、燃料費上昇を通じたインフレ再燃リスクも残ります。

主要銘柄の決算発表結果

  • ASML:ASML Holding(先端技術)
    1株当たり利益は8.68ドルとなり、市場予想の7.95ドルを上回りました。売上高も106.7億ドルと予想の102.9億ドルを超え、AI向け先端半導体の設備投資が続いていることを確認できる内容です。株価は通常取引で+3.00%となりましたが、時間外では+0.04%にとどまりました。好決算を評価する一方、これまでの上昇で高まった期待も相当程度織り込まれていたと考えられます。
  • JNJ:Johnson & Johnson(ヘルスケア)
    1株当たり利益は2.90ドルとなり、市場予想の2.86ドルを上回りました。売上高も253.1億ドルと予想の250.2億ドルを超えています。それでも株価は通常取引で-2.69%となり、時間外では+0.15%でした。市場予想を上回っただけでは株価上昇につながらず、医薬品の成長率や今後の費用負担など、決算の中身を慎重に評価する動きとなりました。
  • MS:Morgan Stanley(金融)
    1株当たり利益は3.46ドルとなり、市場予想の2.93ドルを大きく上回りました。売上高も213億ドルと予想の196.2億ドルを超え、株式市場の活況や企業の資金調達、資産運用事業の堅調さが表れた決算です。株価は通常取引で+0.37%、時間外では-0.07%でした。好業績でしたが、決算発表前から金融株が買われていたため、上昇幅は限定的でした。
  • BLK:BlackRock(金融)
    1株当たり利益は13.91ドルとなり、市場予想の12.57ドルを大幅に上回りました。売上高も70.8億ドルと予想の67.2億ドルを超えています。ETFや資産運用商品への資金流入が収益拡大につながり、株価は通常取引で+6.63%となりました。時間外では-0.30%でしたが、運用資産の増加と手数料収入の伸びを市場が高く評価した決算といえます。
  • PGR:Progressive Corporation(金融)
    1株当たり利益は5.67ドルとなり、市場予想の4.73ドルを上回り、売上高も215.7億ドルと予想の215.3億ドルをわずかに超えました。それでも株価は通常取引で-9.43%、時間外でも-0.21%となりました。決算数値は予想以上でしたが、自動車修理費や保険金支払いの増加による今後の採算悪化が警戒され、利益確定売りが集中しました。
  • BNY:Bank of New York Mellon(金融)
    1株当たり利益は2.45ドルとなり、市場予想の2.23ドルを上回りました。売上高も57億ドルと予想の53.9億ドルを超え、資産管理手数料と金利収入の両方が伸びたことを示す決算です。株価は通常取引で+5.08%となりましたが、時間外では-0.37%でした。市場環境の改善を収益へ結び付ける安定した事業構造が評価されています。
  • PNC:PNC Financial Services Group(金融)
    1株当たり利益は4.85ドルとなり、市場予想の4.47ドルを上回りました。売上高も68.8億ドルと予想の65億ドルを超えています。株価は通常取引で+0.90%、時間外では横ばいでした。融資収益や手数料収入の改善が確認されたものの、BlackRockやBNYほど株価は上昇しておらず、地方銀行の貸倒れリスクも含めて冷静に評価されたようです。
  • ELV:Elevance Health(ヘルスケア)
    1株当たり利益は7.45ドルとなり、市場予想の6.21ドルを大幅に上回りました。売上高も498億ドルと予想の486.3億ドルを超えています。しかし、株価は通常取引で-8.54%となり、時間外では+0.02%にとどまりました。市場は過去の実績より、医療サービス利用の増加による保険金支払いと今後の利益率を厳しく見ています。
  • CTAS:Cintas Corporation(工業・産業)
    1株当たり利益は1.29ドルとなり、市場予想の1.24ドルを上回りました。売上高も29.1億ドルと予想の28.7億ドルを超えています。株価は通常取引で+4.36%となり、時間外では横ばいでした。制服レンタルや職場向けサービスは景気変動の影響を受けにくく、継続的な契約収入と利益率の高さが改めて評価されました。
  • UAL:United Airlines Holdings(工業・産業)
    1株当たり利益は1.99ドルとなり、市場予想の1.85ドルを上回りました。売上高も177億ドルと予想の176.2億ドルを超えています。通常取引では+0.52%でしたが、決算発表後の時間外取引では-2.16%となりました。旅行需要は堅調だったものの、原油高による燃料費増加と次の四半期の利益見通しに慎重な評価が集まりました。
  • JBHT:J.B. Hunt Transport Services(工業・産業)
    1株当たり利益は1.91ドルとなり、市場予想の1.73ドルを上回りました。売上高も35億ドルと予想の32.3億ドルを超えています。通常取引では-1.63%でしたが、決算発表後の時間外取引では+8.77%と大幅に上昇しました。貨物需要の改善と輸送効率の向上が確認され、景気敏感な物流業界の業績回復を示す決算として受け止められました。

主な経済ニュース

  • 予想を下回るPPIで米長期金利が低下
    6月の生産者物価指数(PPI)は前月比-0.3%、前年比+5.5%となり、いずれも市場予想を下回りました。企業段階の物価上昇圧力が弱まったことで、FRBが追加利上げを急ぐ可能性は低下し、米10年国債利回りは4.545%へ低下しました。金利低下を受け、S&P500、Dow30、NASDAQはそろって上昇しました。(Reuters:07/15)
  • 主要3指数が上昇し最高値へ再接近
    S&P500は+0.38%、Dow30は+0.29%、NASDAQは+0.62%となりました。インフレ指標の鈍化と金融企業の好決算が買いにつながり、S&P500は過去最高値まで0.5%以内へ接近しています。ただし、半導体指数は下落しており、全面高ではありません。大型IT株、通信サービス、金融へ資金が移る選別相場でした。(WSJ:07/15)
  • BlackRockの運用資産が15兆ドルを突破
    BlackRockは市場予想を上回る決算を発表し、運用資産残高は過去最高の15兆ドル超へ拡大しました。ETFへの資金流入と株式市場の上昇が手数料収入を押し上げ、株価は+6.63%となりました。iSharesの運用資産も拡大しており、個別株よりETFを選ぶ投資家が世界的に増えている流れが数字に表れています。(Reuters・WSJ:07/15)
  • PayPalが買収観測で17%超の急騰
    PayPalは、決済大手Stripeと投資会社Advent Internationalから530億ドル超の買収提案を受けたとの報道で+17.20%となりました。提案価格は1株60.50ドルとされますが、正式な合意は確認されていません。業績ではなく買収観測による上昇であり、報道内容が否定された場合には急反落する可能性もあるため、通常の企業価値評価とは分けて見る必要があります。(WSJ:07/15)
  • ASMLがAI需要を背景に好決算
    半導体製造装置大手ASMLは、受注、売上高、1株当たり利益が市場予想を上回りました。AI向け先端半導体の増産投資が続いていることを示す内容です。一方、米国市場ではMicronやMarvellなどが下落しており、AI需要の失速ではなく、製造装置、メモリー、通信機器の間で評価が分かれました。(Reuters・WSJ:07/15)
  • メモリー・ストレージ関連株に大幅な利益確定売り
    Micronは-8.02%、Western Digitalは-8.78%、SanDiskは-8.12%、Seagate Technologyは-5.69%となりました。AI需要を先取りして急上昇した反動に加え、将来の供給増加や価格競争への警戒が売りを誘いました。企業のIT予算はAIサーバー、メモリー、ストレージへ移っていますが、成長期待を株価が先に織り込みすぎた銘柄は調整が大きくなります。(Reuters:07/15)
  • 大型IT株がNASDAQの上昇を主導
    Apple、Alphabet、Microsoft、Amazonなどの大型IT株が上昇し、NASDAQを押し上げました。一方、AIサーバーや光通信関連株は下落しており、市場では半導体やハードウェアから、利益と現金収入が安定した巨大IT企業へ資金が戻りました。AI関連株を一括して評価するのではなく、収益力と株価水準による企業選別が進んでいます。(WSJ:07/15)
  • FRBのウィリアムズ総裁がインフレ鈍化を予想
    ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、現在のインフレ率は依然として高すぎるとしながらも、関税による価格上昇、住居費、原油価格、AI投資に伴う供給不足が今後落ち着くとの見方を示しました。市場では追加利上げの必要性が低下したとの受け止めが強まり、米長期金利の低下につながりました。(Reuters:07/15)
  • 中東情勢を背景に原油が80ドル台へ上昇
    WTI原油先物は+1.30%の80.37ドルとなりました。米国とイランを巡る緊張が続き、ホルムズ海峡周辺の輸送や原油供給への懸念が残っています。原油高はエネルギー企業の利益にはプラスですが、輸送費や製造費を通じて物価を押し上げます。PPIの鈍化で安心した市場にとっても、原油価格が上昇を続ければインフレ再燃要因になります。(Reuters:07/15)
  • VIX指数は15台へ低下も個別株の変動は拡大
    恐怖指数と呼ばれるVIX指数は-5.03%の15.67まで低下しました。20を下回っているため、市場全体は全面的な恐怖状態ではありません。しかし、PayPalは17%超上昇する一方、Pentairは15%下落し、メモリーやAI通信関連にも大幅安が相次ぎました。指数は安定していても、決算、買収報道、株価水準によって個別銘柄の値動きが大きくなる相場です。(Reuters:07/15)

経済指標発表予定

以下の経済指標が発表される予定です。

主要銘柄の決算発表予定

以下の主要銘柄の決算発表がなされる予定です。

おわりに

7月15日の米国市場は主要3指数がそろって上昇しましたが、指数の内側では大型IT株や金融株が買われる一方、メモリー、ストレージ、光通信など、直近で急騰したAIインフラ関連株には大きな利益確定売りが出ました。AI需要の失速ではなく、高くなった株価を見直しながら資金が移動した一日だったと思います。

来日したNVIDIAのジェンスン・ファンCEOが、神田の居酒屋で気さくに食事を楽しんだ姿も話題になりました。世界のAI産業を率いる経営者が、日本の庶民的な店で杯を交わす光景には、少し親近感を覚えます。一方、AIを動かすには半導体だけでなく、電力、通信、冷却、建物まで必要です。この大きな流れは、短期的な株価調整だけで消えるものではないでしょう。

毎日の値動きに振り回されず、企業の利益成長と市場全体の変化を確認しながら、長期投資を続けたいと思います。毎朝このブログをお読みいただき、ありがとうございます。

それでは、今日も一日、明るく元気に笑顔で過ごしましょう。

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おことわり

投資は自己責任にてお願いします。
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図表のレファレンス

  • S&P500ヒートマップ: finviz
  • 主要3指数とドル円:  Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
  • セクター別騰落率: finviz
  • 経済指標結果/予定: investing.com日本語版
  • 決算発表結果/予定: investing.com日本語版
  • 主要指数の動き : Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
  • 自分の米ドル建ポートフォリオ:  Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ

著者プロフィール

室井一夫(Kazuo Muroi)
Muroi Universal Research on Investment LLC 代表社員
一級建築士・建築1級施工管理技士・工学修士
Facebookグループ「米国株_投資の部屋」管理人(約4.7万人)

米国株式市場と経済動向に関する情報を毎日発信しています。


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