■ 本日の要点
- 🇺🇸 10月16日(金)の米国市場で、ナスダック総合は2.1%安の26,140.03、週間では4.5%安でした。フィラデルフィア半導体株指数は週間で11.4%下落しました(AP 10/16、FourWeekMBA 10/19)。
- 🇨🇳🇰🇷 DeepSeekが10月17日に「V4.1-Flash-1017」を公表しました。小幅な更新ですが、メモリー需要への不安が再燃し、アジアの半導体株指数は2%超下がって7月以来の低水準になりました(Bloomberg 10/17)。
- 🇺🇸 AI向け計算設備を貸す「ネオクラウド」の資金不安が続いています。CoreWeaveは週間で約25%下落し、本日のプレマーケットでは反発しています(FXStreet 10/19)。
- 🇺🇸 FRBのウォーシュ議長は10月16日に金融政策の方向を示さず、10月の追加利上げ確率は約27%から15%未満へ下がりました。12月の利上げ観測は残っています(Bloomberg 10/16)。
- 🇮🇳 リライアンス傘下のJio Platformsが、インド史上最大となる約32億ドルのIPO(新規上場)の公募を10月21日に始めます(Reuters 10/16)。
- 🇨🇭🇯🇵 ロシュの抗体医薬Enspryng(中外製薬が創製)が、甲状腺眼症で米FDA(食品医薬品局)の承認を得ました。在宅で自己注射できる初の治療薬です(RTTNews 10/16)。
■ 🇺🇸 金曜の米国市場:半導体指数が週間11.4%安、今夜の確認点
10月16日(金)の米国市場は、S&P500が84.62ポイント(1.1%)安の7,659.44、ナスダック総合が572.99ポイント(2.1%)安の26,140.03、ダウ工業株30種平均が175.28ドル(0.3%)安の52,002.41で終えました。ナスダックは週間で1,226.14ポイント(4.5%)下げ、S&P500とナスダックはともに6月以来で最悪の週でした。個別では、マイクロンが5.6%安、インテルが5.8%安でした(AP 10/16)。半導体ETF(上場投資信託)のSOXXは4.14%安で、S&P500の下落率の約3.8倍です(本稿試算)。AMDは5.96%安、ブロードコムは4.53%安でした。恐怖指数と呼ばれるVIX(市場の不安度を示す指数)は22.5%上がって20.16でした(TechStock² 10/16)。
フィラデルフィア半導体株指数は、週間で11.4%下がったとCNBCが伝えています(FourWeekMBA 10/19)。Bloombergは、この指数の連続下落が2008年以来で最長になったと報じました(GGMA 10/19)。金曜の売りの特徴は、金利が主因ではない点です。米10年債利回りは5.09%と前日の5.10%とほぼ同じでしたが、株は大きく下がりました。AP通信は、高い金利がAI関連の設備投資、特にデータセンター事業者の投資を妨げるとの懸念が強まったと伝えています(TechStock² 10/16、Reuters 10/19)。つまり売りの中心は、金利そのものよりも「借金でAI設備を増やす事業者の資金繰り」への不安だった可能性があります(本稿の分析)。
本日の月曜は反発して始まっています。Reutersによると、プレマーケットでCoreWeaveが1.3%高、ブロードコムが2.3%高、NVIDIAが1.1%高でした(Reuters 10/19)。ナスダック先物は約1.1%高で、米10年債利回りは約5.10%、原油先物は2%下落しています(Stocktwits 10/19)。AP通信によれば、10年債利回りは10月初めに2002年以来の高水準である5.35%をつけ、本日は5.07%前後に下がっています(AP 10/19)。先物の反発は「売られすぎの戻り」を映すことが多く、取引開始後に向きが変わる場合もあります。NVIDIAのフアンCEOは、今回の下げについて「これらはすべて過ぎ去る」との趣旨で述べたとBloombergが伝えています(GGMA 10/19)。
金利の見通しは、ウォーシュFRB議長の10月16日の発言で少し変わりました。前回記事ではBloombergの見出しを紹介するにとどまりましたが、その後の報道で内容が確認できました。バンコクで開かれたIMF・世界銀行の年次総会で、議長は金融政策の見通しを示さず、会合の前に結論を語らない姿勢を示しました。この発言の後、10月27〜28日のFOMC(連邦公開市場委員会)で利上げが行われる確率は、発言前の約27%から15%未満に下がりました。ゴールドマン・サックスは、10月は据え置き、12月に最後の利上げを行うと予想しています(Bloomberg 10/16)。CMEのデータでは12月の利上げ確率は74.3%で、1か月前の50.2%から上がっています(TechStock² 10/16)。議長はAIを、これまで見たなかで最も大きな変化だと述べ、世界経済の底堅さにも触れました(AFP 10/16)。10月は様子見でも、12月の利上げが意識される間は、借入に頼るAI設備投資に重しが残ります。
今夜の関連銘柄は、エヌビディア(NVDA・エヌビディア)、マイクロン(MU・マイクロン・テクノロジー)、ブロードコム(AVGO・ブロードコム)、AMD(AMD・アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)、インテル(INTC・インテル)です。今週は企業決算が集中します。NetflixとSpaceXが20日、TeslaとMeta、IBM、QuantumScapeが21日の米国時間で、Metaは米東部時間16時30分(日本時間22日5時30分)に説明会を開きます(Stocktwits 10/19、TechStock² 10/16)。AI設備投資の計画額が下がるか、維持されるかが、半導体株の次の材料です。
■ 🇨🇳🇰🇷🇯🇵🇹🇼 DeepSeekの更新版とメモリー需要への不安
中国・杭州のAI企業DeepSeek(非上場)は10月17日(土)、AIモデル「V4.1-Flash-1017」を公表しました。9月初めに出した軽量版V4.1-Flashの「小幅な更新」と説明し、「より高い性能、より速い処理、より短い出力」をうたっています。AIの難問を集めた評価試験Humanity’s Last Examの得点は、従来版の36.8〜39.1から36.8〜42.6に上がり、上限で3.5ポイントの改善です。同社は今週、サーバーが約5時間つながらない障害を起こしており、計算資源の不足が一因との見方も出ています(Bloomberg 10/17)。API(外部から利用する窓口)の価格は据え置きで、既存の窓口からそのまま使えます(Crypto Briefing 10/18)。これは企業の発表であり、第三者による性能検証は本稿では確認できていません。
株式市場が反応した理由は、更新そのものより、9月初めのV4.1-Flashの主張が再び意識されたことです。同社は、推論(学習済みのAIが質問に答える段階)で必要なHBMが従来の4分の1、SSD容量が8分の1で済むと説明していました(Crypto Briefing 10/18)。HBM(広帯域メモリー)は、複数のDRAMを積み重ねてAI計算向けにデータを高速で送るメモリーです。同じ処理に必要な量が4分の1なら、75%減る計算です。ただし、今回の10月17日版でメモリー使用量がさらに減ったという数値は、本稿の調査では確認できていません。Bloombergは、週末の更新が「より速く、より軽い」とされたことで、メモリーの必要量が減るとの懸念が強まったと伝えています(FourWeekMBA 10/19)。
本日のアジア市場の動きです。Bloombergのアジア半導体株指数は2%超下がり、7月以来の低水準になりました。TSMC、SKハイニックス、アドバンテストが指数を押し下げました。KOSPI(韓国総合株価指数)は一時3%超下げた後に戻しました。前週は2008年10月以来で最大の週間下落率でした(KuCoin 10/19)。AP通信の更新版では、KOSPIは1.8%高の5,768.01で、サムスン電子が1.2%高、SKハイニックスが0.4%高でした。KOSPIは過去1か月で17%超下がり、6月に超えた9,000のピークから約36%低い水準です(本稿試算)。日経平均株価は0.6%安の64,916.70円で、東京エレクトロンが2.6%安、ソフトバンクグループが2%安でした。台湾のTAIEX(加権指数)は0.6%安、上海総合指数は0.4%高の3,730.92でした。中国のメモリー半導体メーカーCXMTは、1〜9月期の強い利益を予想したにもかかわらず7%超下がりました(AP 10/19)。日経平均の前週の下落率は5.4%でした(Investing.com 10/19)。
この反応をどう見るかです。サムスン証券のアナリストは、9月の同種の局面で、DeepSeekの新モデルは「市場心理を冷やす材料」であり、GPUの発注減少やAI設備投資の削減が確認されない限り、HBM需要の見直しとは言えないとの見方を示しました(BigGo 9月)。AIの効率が上がると、1回あたりのメモリーは減ります。一方、利用が増えれば総量は増える可能性があり、どちらが勝つかは、HBMの出荷量と価格を示す決算で確認する必要があります(本稿の分析)。韓国の運用会社の幹部は、韓国のチップ企業の利益は米国のAI設備投資の継続に大きく依存し、米企業のAI資金調達が主なリスクだと述べています(KuCoin 10/19)。日本については、前回以降に投資判断に使える新しい技術発表は確認できませんでした。
関連銘柄は、SKハイニックス(SKHY・SKハイニックス。日本の証券会社での取扱いは確認が必要です)、サムスン電子(005930・韓国市場の銘柄)、マイクロン(MU・マイクロン・テクノロジー)、サンディスク(SNDK・サンディスク)、キオクシアホールディングス(285A・キオクシアホールディングス)、アドバンテスト(6857・アドバンテスト)、東京エレクトロン(8035・東京エレクトロン)です。DeepSeekは非上場、CXMTは中国本土の市場の銘柄で、日本の個人投資家が通常の口座で買えるかは別途確認が必要です。今回の報道で各社の受注が減ったことを示す情報は確認できていません。
■ 🇺🇸🇰🇷🇹🇼 ネオクラウドの資金繰りとNVIDIA、HBM「ベースダイ」の報道
ネオクラウドとは、NVIDIAの半導体を大量に買ってAI企業に貸し出す新興のクラウド事業者です。CoreWeaveとNebiusの株価は、本日のプレマーケットで反発しています。背景として、NVIDIAが上位のネオクラウドに信用面の支援を提供するとの報道があるとStocktwitsは伝えています。ただし、報道元や条件は同記事では示されておらず、確認できていません。一方、NVIDIAのフアンCEOは10月15日、ストックホルムでBloombergに対し、CoreWeaveの財務は日々強くなっており、NVIDIAが下支えする必要はないと述べました(Stocktwits 10/19、TNW 10/15)。報道とCEOの発言は食い違っており、今夜の確認点です。CoreWeaveは週間で約25%下がりました。Nebiusの取締役が先週、約5万ドルの自社株を買ったことも、SEC(米証券取引委員会)の提出書類で分かっています(FXStreet 10/19、Stocktwits 10/19)。
数字を更新します。前回記事では、債務不履行に備える保険料であるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)を約1,000ベーシスポイント(10%)と伝えました。最新の報道では、CoreWeaveの5年物CDSは10月15日に過去最高の1,194.5ベーシスポイント(11.945%)をつけ、市場が5年以内の不履行確率を60%超と見積もる水準でした(TNW 10/15)。10億ドル分の債務を保険で守る場合、年間の保険料は約1.19億ドルです(本稿試算)。これは市場の見方であり、実際に不履行になることを示すものではありません。総債務は6月末時点で約350億ドルでした(Capacity)。NVIDIAはCoreWeaveの2番目の大株主で、持ち分は約10%です(TNW 10/15)。さらにNVIDIAは、CoreWeaveが使い切れなかった計算能力を2032年4月13日まで買い取る義務を負っています(Dow Jones 10/15)。
なぜ重要か。ジェフリーズの高利回り債担当は、ネオクラウドの存続と拡大がNVIDIAの成長に重要であり、NVIDIAが資金面の下支えに動く必要があると指摘しました。他方でDow Jonesは、NVIDIAが自社の財務を使ってAI支出を維持すれば、「循環取引」との批判が強まると伝えています(Dow Jones 10/15)。循環取引とは、半導体の売り手が買い手に資金を出し、その資金で自社の半導体を買わせる構図です。借入コストが上がると利益が減り、さらに不安が強まって調達コストが上がる、という悪循環にもなりえます。決算書では、有利子負債の額、受注残、受注先の信用力の3点を並べて見ると、事業者ごとの強さの違いが数字で分かります(本稿の分析)。
同じStocktwitsの記事は、NVIDIAがサムスン、SKハイニックス、マイクロンに対し、次世代HBMの「ベースダイ」にTSMCの3ナノ(回路線幅が3ナノメートル級の製造技術)を使うよう求めていると報じています。出所は明示されておらず、報道段階です。ベースダイとは、HBMの土台にあたる制御用の論理回路です。TrendForceによると、SKハイニックスはHBM4でTSMCの12ナノの論理チップを使い、より先端の3ナノはHBM4Eや特注HBMで優先される方向です。サムスンは自社製のベースダイを基本にしつつ、特注HBMではTSMC製との二本立てを検討していると伝えられています。マイクロンはHBM4のベースダイを自社で作り、HBM4EからTSMCに移すとの見方があります(TrendForce 10月、TrendForce)。
実現すれば、TSMCには新たな受注が生まれ、NVIDIAはメモリー会社を切り替えやすくなります。一方、メモリー会社の付加価値の一部が外部に出ます。課題は、TSMCの先端ラインの生産枠が限られていることと、コストの上昇です。3ナノは「報道」であり、受注額や時期は確認できていません。関連銘柄は、CoreWeave(CRWV・コアウィーブ)、Nebius(NBIS・ネビウス)、エヌビディア(NVDA・エヌビディア)、TSMC(TSM・台湾積体電路製造のADR)、SKハイニックス(SKHY)、マイクロン(MU)です。サムスン電子(005930)は韓国市場の銘柄で、日本から買えるかは証券会社ごとに確認が必要です。
■ 🇨🇳🇮🇳 中国の成長率4.5%と、インドの記録的IPO
中国国家統計局は10月19日、7〜9月期のGDP(国内総生産)が前年同期比4.5%増と発表しました。市場予想は4.4%で、わずかに上回りました。小売売上高は前年比1.1%増で、予想の0.5%を上回ったとNordFXは伝えています(NordFX 10/19)。9月の鉱工業生産とハイテク製造業の最新統計は、本稿の時点では確認できていません。直近で確認できる8月分では、鉱工業生産が5.2%増に対し、ハイテク製造業は16.7%増、産業用ロボットの生産は34.6%増でした(China Daily 9/15)。ハイテク製造業の伸びは全体の約3.2倍です(本稿試算)。1〜8月のAI関連の集積回路製造の売上収入は67.7%増でした(CGTN 9/22)。成長は、ハイテク分野に偏って支えられています。
前回までの記事の補足です。10月15日の記事で触れた中国のヒューマノイド大手Unitreeは、8月19日に上海のSTAR市場へ上場済みです(銘柄コード688836)。公募価格は150.80元で、調達額は約60.99億元でした。初日の終値は公募価格を460%上回りました(TechNode 8月、Al Jazeera 8/19)。上場後の株価の推移は本稿では確認していません。中国本土の市場の銘柄で、日本の個人投資家が通常の口座で買えるかは別途確認が必要です。
インドでは、リライアンス・インダストリーズ傘下のJio Platformsが、インド史上最大のIPOを行います。新株2億7,000万株を1,065〜1,119ルピーで売り出し、上限価格なら調達額は約32億ドルです。これまでの記録であるHyundai Motor Indiaの約29億ドル(2024年)を上回ります。応募は10月21日に始まります(Reuters 10/16)。ルピー建ての公募総額は30,213クロール・ルピー(約3兆ルピー)で、従来の記録を約8%上回ります。応募期間は21〜23日、機関投資家(アンカー投資家)の入札は本日19日、上場は10月28日が見込まれています(FPJ 10/15、StartupTalky)。今回は既存株主の売出しがなく、調達資金はすべて会社に入ります。
Jioの契約者は5億3,000万人超で、インドの携帯データ通信量の約6割を扱います(Reuters 10/16)。課題は、AI関連株が揺れる局面で、大型の新規上場が需給を吸収できるかです。本日のインドのSensex(ムンバイ証券取引所の主要株価指数)は0.9%安でした(AP 10/19)。Jioは未上場で、リライアンス・インダストリーズはインドの市場の銘柄です。日本の個人投資家が通常の口座で買えるかは証券会社ごとに確認が必要です。インドの半導体では、タタ・エレクトロニクスのドレラ工場(28ナノ級)で「初のチップ」を2026年12月に目指すとの報道がある一方、完成の目標を2028年とする資料もあり、報道により異なります(IMARC 7/10、Anantamias)。
■ 🇪🇺🇷🇺 欧州とロシア:GTCベルリン、欧州版衛星網、ロシア制裁の保留
欧州では、NVIDIAの動きが焦点です。フアンCEOは10月13日、パリで1週間以内に追加20億ドルの欧州投資を発表すると述べました。過去1年の約80億ドルに上乗せされます(Semafor 10/13)。前回記事までに扱った内容ですが、今回の差分は日程です。同社の欧州向けAI会議「GTCベルリン」が10月20〜22日にあり、フアンCEOの基調講演は21日にベルリンのTempodromで予定されています(NVIDIA 公式)。20億ドルの内訳は未発表で、実際の発表内容は確認が必要です。
欧州委員会は、米SpaceXのStarlinkに対抗する欧州版の衛星通信網「IRIS²」の整備を加速する構えだとBloombergが10月15日に報じました。背景には、ウクライナ軍がSpaceXの軍向けサービスStarshieldで不具合を経験したとの報道があり、欧州が米国の通信網に依存する懸念があります(PYMNTS 10/15)。計画では、最初の打上げは2029年、初期の安全な通信サービスは2030年からです。それまでは、加盟国の衛星の能力をまとめるGOVSATCOMが2026年1月から運用されています(ROIC 10/15)。2024年12月の契約では、約290基、事業費106億ユーロの規模でした(Payload 2024)。欧州委員会の担当者は、IRIS²をStarlinkと同じ用途の置き換えとは位置づけていません。Starlinkが先行する現状を、すぐに覆す計画ではありません。関連銘柄として、OneWebを運営するユーテルサットがパリ市場にありますが、日本の個人投資家が買えるかは証券会社ごとに確認が必要です。
ロシアに関する本日の材料は制裁です。トランプ米大統領は10月16日(金)の遅くに、ロシアへの広範な新規制裁を保留する大統領令に署名しました。発動予定の数日前でした。ロシアのエネルギー輸出が増えるとの見方で、原油は2%超下がり、ブレント原油は107.16ドル、米国産標準油種(WTI)は96.84ドルでした(AP 10/19)。11月3日の米中間選挙の前に燃料価格を下げる狙いも報じられています。データセンターや半導体工場は電力を大量に使うため、エネルギー価格は設備投資の採算に影響します。技術面では、ロスコスモスが民間の光学観測衛星2基を10月にボストーチヌイ宇宙基地から打ち上げる予定とされています(Interfax 9/22)。打上げが実施されたかは確認できていません。前回以降、ロシアで投資判断に使える新しい技術発表は確認できませんでした。
■ 🇺🇸 宇宙とM&A・IPO:SpaceX決算、Rocket Lab、CCC、Intuit
SpaceX(SPCX・スペースX)は10月20日(火)の米国時間夕方に決算を発表します(Stocktwits 10/19)。前四半期(4〜6月期)は、売上高が78億ドル(前年同期比92%増)、純損失が5.41億ドル、調整後EBITDA(利払い・税・償却前の利益)が35億ドルでした(SpaceQ)。成長を支えるStarshipは、9月28日の14回目の飛行で初めて軌道に到達し、Starlink V3衛星26基を放出しました(KeepTrack)。15回目の飛行について、マスク氏は10月10日に「4〜6週間後、感謝祭の少し前」と述べ、上段船体をタワーで受け止める試みを行うとしています(NeoTeo 10/10)。以前の「10月19日以降」とする報道は、これにより実現しない見込みです。決算では、V3衛星の配備計画と赤字幅の推移が確認点です。
宇宙分野のM&A(企業の合併・買収)では、Rocket Lab(RKLB・ロケット・ラボ)が提案している80億ドルのIridium買収について、AST SpaceMobileの提携先であるLigadoが、米連邦通信委員会(FCC)に精査を求めたと報じられています。Rocket Labは先週、Neutronロケットの遅れも伝えられ、本日は2%ほど反発しています(Stocktwits 10/19)。計画段階の案件であり、承認は決まっていません。
ソフトウェア分野では、10月15日に2件の発表がありました。前回までの記事では未掲載です。自動車保険の損害査定向けソフトを手がけるCCC Intelligent Solutions(CCC・CCCインテリジェント・ソリューションズ)は、GTCRとElliott Investment Managementの陣営に、総額約61億ドルで買収されます。1株7.75ドルの全額現金で、売却観測が出る前の7月9日の終値に44%を上乗せした価格です。完了は2027年1〜3月期の予定で、ナスダックから上場廃止になります(RTTNews 10/15)。また、Intuit(INTU・イントゥイット)は、請求と価格設定を自動化するAI基盤を持つ新興企業Sequenceの買収で合意しました。金額は非公表で、Intuit株は一時5.33%高の326.99ドルでした(RTTNews 10/15)。CCCの買収は、売却観測前の株価に44%を上乗せした価格で成立しており、AI投資の過熱とは別に、ソフトウェア企業の評価が見直されている面があります(本稿の分析)。
IPOについては、前述のJioのほか、米国ではAI企業AnthropicとNscaleのIPOへの期待が冷えたとBloombergが伝えたと、ChainCatcherが報じています。詳細は確認できていません(ChainCatcher 10/19)。AI関連株の下落は、新規上場の時期や価格にも影響し始めています。なお、この記事を作成しているClaudeはAnthropicが開発したAIです。
■ 🇨🇭🇯🇵 医療:ロシュのEnsprynGが甲状腺眼症で承認、在宅注射は初
ロシュは10月16日、抗体医薬Enspryng(一般名サトラリズマブ)が、成人の甲状腺眼症で米FDAの承認を得たと発表しました。甲状腺眼症は、目が飛び出す、物が二重に見える、腫れや痛みが出る自己免疫疾患(自分の体を誤って攻撃してしまう病気)で、視力を脅かすこともあります。Ensprynは炎症に関わるインターロイキン6の受容体の働きを抑える薬で、患者や介助者が自宅で皮下注射でき、維持の投与は4週間ごとです。在宅で使える皮下注射としては初めてです(RTTNews 10/16)。
承認の根拠は、19か国の258人を対象にした第3相試験(承認申請のために、多くの患者で効果と安全性を確かめる段階)2本です。SatraGO-2では、目の突出が改善した人の割合が薬の群で52.9%、偽薬(有効成分のない薬)の群で23.4%でした。差は29.5ポイントです(本稿試算)。複視(二重に見えること)の改善は60.7%と25.8%で、差は34.9ポイントです。一方、SatraGO-1は、24週時点で突出を2ミリ以上減らす主要目標を達成できませんでした(RTTNews 10/16)。SatraGO-1の改善割合は49%と39%で、差は10ポイントでした(Eyes On Eyecare 10/16)。2本の結果にばらつきがあり、承認後の実際の使用データで確認が必要です。
この疾患の既存薬は、アムジェンのTepezzaなど、点滴で投与するIGF-1R(インスリン様成長因子の受容体)阻害薬が中心でした。ビリディアン社のLumvoaも直近で承認されたと報じられています(承認日は本稿では確認できていません)(AllSci)。EnsprynはIGF-1Rとは別の仕組みで、自宅で使える点が違いです。この薬はロシュ傘下の中外製薬が創製した抗体で、同社の抗体を再利用する技術が使われています(Roche 発表)。EnsprynはNMOSD(視神経脊髄炎スペクトラム障害)で2020年に承認済みで、今回が2つ目の適応です。MOGAD(MOG抗体関連疾患)についても、FDAは2027年1月10日までに判断する予定です(ChemXplore)。
関連銘柄は、ロシュ(RHHBY・ロシュ・ホールディングの米国預託証券。店頭市場で取引)と、中外製薬(4519・中外製薬)です。中外製薬が受け取る収益の条件は、今回の資料では確認できていません。ビリディアン・セラピューティクス(VRDN・ビリディアン・セラピューティクス)は競合の一つです。売上への影響は、発売後の処方実績と保険の償還で確認する必要があります。
■ 投資家が確認したい指標
- 米国市場:今夜のプレマーケットの反発が取引開始後も続くか。フィラデルフィア半導体株指数の連続下落が止まるか。VIXが20を下回るか。
- ネオクラウド:CoreWeaveのCDSが1,194.5ベーシスポイントから下がるか。NVIDIAによる信用面の支援の有無と条件。
- 金利:米10年債利回りが5.07%前後で落ち着くか。10月27〜28日のFOMCに向けた据え置き確率(約84%)と、12月の利上げ確率(74.3%)。
- メモリー:DeepSeekの更新が、HBMの出荷や価格に影響を与えるかを示す決算とDRAM契約価格。10月29日のサムスン電子の確定決算。
- 決算日程:Netflix・SpaceX(20日)、Tesla・Meta・IBM・QuantumScape(21日)、Western Digital(22日)の設備投資見通し。VertivとGE Vernovaは28日の取引開始前です(Vertiv 10/14、GE Vernova)。
- インド・欧州:Jioの応募倍率と10月28日の初値。NVIDIAが欧州で発表する20億ドルの内訳。
- 電力・冷却・量子:データセンター向けの電力・冷却機器、量子コンピューター、固体電池は、今週はVertiv、GE Vernova、QuantumScape、IBMの決算で確認します。今回、これらの分野で新たな技術発表は確認できていません(QuantumScapeの決算は21日の取引終了後です(QuantumScape 10/8))。
10月19日の材料で新しいのは、AI関連の評価の軸が「どれだけ作れるか」から「誰が資金を出し、メモリーはどれだけ必要になるか」へ動いていることです。金曜の米半導体株指数の週間11.4%安、CoreWeaveのCDSの過去最高、DeepSeekの更新で再燃したメモリー不安は、いずれも需要そのものの減少ではなく、資金と効率化への評価の変化です。ただし、Jioの約32億ドルのIPOや、CCCの約61億ドルの買収のように、資金は別の分野に向かっています。投資家は「何が新しいか」に加え、「誰が費用を払い、誰が利益を得て、いつ実績に表れるか」を追う必要があります。メモリーの価格は数四半期後の利益に、ネオクラウドの資金繰りは数か月後の設備投資に、Starshipや欧州の衛星網は数年後の売上に、新薬の承認は発売後の処方実績に、それぞれ表れます。時間のずれを意識して、発表と実績を分けて確認することが大切です。本稿は情報の整理であり、売買の推奨ではありません。
参考記事:
・AP 10/16
・TechStock² 10/16
・FourWeekMBA 10/19
・Reuters(Investing.com) 10/19
・GGMA 10/19
・Stocktwits(Yahoo Finance) 10/19
・AP(WSLS) 10/19
・FXStreet 10/19
・NordFX 10/19
・KuCoin(Bloomberg引用) 10/19
・Investing.com 10/19
・Bloomberg(Yahoo Finance) 10/17
・Crypto Briefing 10/18
・BigGo 9月
・TNW 10/15
・Dow Jones(iTiger) 10/15
・Capacity
・TrendForce 10月
・TrendForce
・Bloomberg(China Daily) 10/16
・AFP(Kuwait Times) 10/16
・China Daily 9/15
・CGTN 9/22
・TechNode 8月
・Al Jazeera 8/19
・Reuters(NST) 10/16
・FPJ 10/15
・StartupTalky
・IMARC 7/10
・Anantamias
・Semafor 10/13
・NVIDIA 公式
・PYMNTS 10/15
・ROIC 10/15
・Payload 2024
・Interfax 9/22
・SpaceQ
・KeepTrack
・NeoTeo 10/10
・RTTNews(CCC) 10/15
・RTTNews(Intuit) 10/15
・ChainCatcher 10/19
・RTTNews(Enspryng) 10/16
・Eyes On Eyecare 10/16
・AllSci
・Roche 発表
・ChemXplore
・Vertiv 10/14
・GE Vernova
・QuantumScape 10/8