2026年米国中間選挙でS&P500はどう動くか――3つの議会シナリオと11セクター予想

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1.室井のマーケット視点―中間選挙でもS&P500を売らない

先に結論を書きます。私は、2026年11月3日の中間選挙を理由に、S&P500連動ETFを売りません。

選挙前には世論調査や議席予測が連日報道され、株価の変動も大きくなるでしょう。しかし、長期的なS&P500の方向を決めるのは、選挙結果より企業利益、AI投資、インフレ、長期金利、原油、関税です。

2026年11月に行われるのは大統領選挙ではありません。トランプ大統領の任期途中に行われる中間選挙です。下院の全435議席と上院の35議席が改選され、政権後半の政策実行力が決まります。

私の選挙結果予想

2026年8月末時点の世論調査、議席予測、予測市場を総合し、私は次の確率を置きました。

選挙結果 私の予想確率 株式市場への評価
民主党が上下両院を奪還 44% 最初は下落しても、政策停止と金利低下で回復する可能性
民主党下院・共和党上院 41% 株式市場には最も扱いやすい結果
共和党が上下両院を維持 14% 初期上昇の後、財政赤字と長期金利に注意
共和党下院・民主党上院 1% 発生確率が低いため分析の中心から除外

単独で最も確率が高いのは、民主党による上下両院の奪還です。ただし、民主党が議会を取っても、トランプ大統領には拒否権があります。法人増税や規制強化がそのまま成立するとは限りません。

私が株式市場にとって最も好ましいと考えるのは、民主党下院・共和党上院です。トランプ政権による追加減税と財政拡大を下院が抑え、民主党による大幅な増税と規制強化を上院が止めるからです。

S&P500の中心予想は8,300

選挙結果ごとの騰落率を確率加重し、対数収益率(複利の変化を正しく扱う計算方法)で合成すると、中間選挙後1年間の中心収益率は+7.9%となりました。

2027年11月のS&P500予想

  • 中心値:8,300前後
  • 通常の予想範囲:8,000~8,650
  • 強い上昇の場合:8,650~9,000
  • 下振れした場合:7,000~8,000

この予想は、選挙後に一直線で8,300へ上昇するという意味ではありません。選挙前後に5~10%、条件によっては15%を超える調整が入る可能性があります。

過去19回の中間選挙では、選挙前の最大下落率が平均-16.2%、中央値-13.5%でした。それでも選挙後1年間は19回すべて上昇し、騰落率の中央値は+16.6%でした。

ただし今回は、S&P500がすでに最高値圏にあり、米10年国債利回りも4%台後半です。過去の中央値である+16.6%を、そのまま現在の株価へ足すのは強気すぎると考え、中心予想を+7.9%まで抑えました。

平均値より中央値、通常軸より対数軸

私は原子力発電所の耐震壁に関する実験データを扱った経験から、非負値のデータを分析するときは、正規分布だけでなく対数正規分布を考えるようにしています。

株価は0より小さくならず、毎日の騰落率が掛け算で積み重なります。そのため、通常の価格軸より対数軸、外れ値の影響を受けやすい平均値より中央値を重視します。

もちろん、非負値という理由だけで、株価が必ず対数正規分布になるわけではありません。実際の市場には急落、戦争、政策変更、投資家心理があります。対数正規分布は将来を当てる法則ではなく、長期間の倍率変化を比較するための分析方法として利用します。

今回のAI相場は半導体だけではない

2026年の米国株を過去の中間選挙年と分けるのが、AI関連の設備投資です。

私はデータセンターの建設・改修工事で現場責任者を経験しましたが、AIはGPUだけでは動きません。

  • 大量の電力を受け入れる受変電設備
  • 独立2系統、場合によっては独立3系統の電源
  • 非常用発電機と無停電電源装置
  • 高速通信網
  • 空調設備と水冷設備
  • 免震構造を採用した建物
  • 膨大な情報を管理するデータベース

AI投資は、先端技術だけでなく、工業・産業、公益事業、通信サービス、素材へ広がります。この構造を踏まえ、選挙後1年間のセクター予想では、先端技術、工業・産業、ヘルスケア、通信サービスを上位に置きました。

一方、設備投資が急増しても、AIサービスから十分な利益を回収できなければ株価は下がります。これからは、AIにいくら投資したかではなく、AIからいくら利益を得たかが問われます。

選挙より確認したい5項目

私は中間選挙の議席予測より、次の5項目を優先します。

  1. 企業利益とAI投資
  2. インフレ、FRB、米10年国債利回り
  3. 原油価格と中東情勢
  4. 関税と世界貿易
  5. 財政赤字と40兆ドルを超えた政府債務

企業利益が増え続け、米10年国債利回りが5%未満なら、S&P500の上昇予想を維持します。

反対に、長期金利が5.25%を超え、同時に企業利益予想が下方修正へ転じた場合は、8,300という中心予想を大きく見直します。

市場ニュースは売買のためだけに見るものではない

私は毎日、米国株式市場、企業決算、経済指標、原油、金利、為替を確認してブログに記録しています。

それでも、ニュースを見るたびにETFを売買することはありません。市場のニュースを知る目的は、株価が下落した理由を理解し、必要以上に怖がらないためです。

コロナショックでは何日も暴落が続きましたが、定期積立だけは止めませんでした。株価回復の時期を当てるのではなく、市場に居続けることを選んだからです。

私ならこれ

私なら、中間選挙を理由にS&P500連動ETFを売りません。

2年分の生活資金を円で確保し、それとは別の余裕資金を、直近高値から5%、10%、15%、20%下落した段階で分けて投資します。定期積立も継続します。

選挙結果を当てることより、予想が外れても投資を続けられる資金管理を選びます。この考え方を出発点として、次章から中間選挙の日程、トランプ大統領の支持率、上下両院の予測、過去の中間選挙、S&P500と全11セクターの予想を順番に検証します。

2.2026年11月に行われるのは大統領選挙ではなく中間選挙

2026年11月3日に米国で行われるのは、大統領選挙ではなく中間選挙です。トランプ大統領の任期途中に実施されるため、政権に対する有権者の中間評価という性格を持ちます。次の大統領選挙は2028年です。

中間選挙では、下院の全435議席と、上院の約3分の1が改選されます。大統領は交代しませんが、どの政党が議会の多数派になるかによって、トランプ政権が残り2年間に進められる政策の範囲が大きく変わります。

現在は共和党が上下両院を支配

2026年8月30日時点では、共和党が下院と上院の両方で多数派です。ただし、下院の差は小さく、数議席が動くだけで民主党へ多数派が移る可能性があります。

議会 共和党 民主党 その他・欠員
下院 218議席 212議席 無所属1、欠員4
上院 53議席 45議席 無所属2

上院の無所属2人は民主党と共同歩調を取るため、実質的には共和党53対民主党系47です。採決が50対50になった場合は、共和党のバンス副大統領が決定票を投じます。そのため、民主党が上院を支配するには、実質的に4議席を上積みして51議席に到達する必要があります。

中間選挙で決まるのは「トランプ政策をどこまで進められるか」

米国では、減税、歳出拡大、新しい法律の制定などには、原則として下院と上院の両方の可決が必要です。民主党が下院を奪還すれば、トランプ大統領が追加減税や大型の財政支出を成立させることは難しくなります。

下院の多数派は、予算案や税制法案の審議に加え、政権に対する議会調査でも主導権を握ります。民主党が下院を取れば、トランプ政権の関税政策、政府支出、企業との関係などを巡る公聴会や資料提出要求が増える可能性があります。

一方、上院には閣僚、政府高官、連邦裁判所判事などを承認する権限があります。共和党が上院を維持すれば、民主党が下院を取ったとしても、トランプ大統領は人事面で比較的動きやすい状態を保てます。

政策・権限 議会の多数派交代による影響
追加減税・税制改正 上下両院の可決が必要なため、ねじれ議会では成立しにくくなります。
大型の財政支出 議会が予算を決めるため、野党が一方の院を取れば規模を抑えられます。
政府高官・裁判官の人事 上院の承認が必要です。上院を支配する政党の影響が大きくなります。
議会調査 下院または上院を野党が取れば、政権への調査が増える可能性があります。
関税・行政命令 既存の法律で大統領に与えられた権限を使えるため、議会がねじれても継続する可能性があります。

民主党が議会を取っても、関税政策が直ちに止まるとは限らない

ここは株式市場を考えるうえで重要です。米国憲法上、通商を規制する基本的な権限は議会にあります。しかし議会は過去の法律によって、国家安全保障や不公正貿易への対応として関税を発動する権限の一部を大統領や政府機関に与えてきました。

したがって、民主党が下院を奪還しても、トランプ大統領が既存の法律を使って進める関税や行政命令を、下院だけで直ちに止めることはできません。新しい法律で大統領権限を制限する場合も、上下両院での可決が必要であり、さらに大統領が拒否権を使えば、覆すには両院で3分の2以上の賛成が必要です。

つまり、中間選挙で民主党が議会の一部を取れば、追加減税や大型支出は進みにくくなりますが、関税や規制運用を巡る不確実性までは消えません。株式市場にとって中間選挙は、トランプ大統領を交代させる選挙ではなく、政策を実行する速度と範囲を変える選挙と考えるのが適切です。

参考資料

3.株価は最高値でも、トランプ大統領の支持率が低い理由

2026年のS&P500は8月25日までに約12%上昇し、最高値を更新してきました。AI関連企業の業績拡大や設備投資ブームによって、米国株式市場だけを見れば、トランプ政権下の経済は好調に見えます。

ところが、トランプ大統領の支持率は低下しています。8月下旬のReuters/Ipsos調査では支持率が33%、Pew Research Centerの調査でも34%でした。Pew Research Centerによると、第1次トランプ政権の同じ時期にあたる2018年8月の40%を6ポイント下回っています。

調査・指標 結果 読み取れること
Reuters/Ipsos支持率 33% 第2次トランプ政権で最低水準です。
Pew Research Center支持率 34% 第1次政権の同時期を6ポイント下回ります。
生活費問題で民主党を支持 36% 共和党を8ポイント上回っています。
生活費問題で共和党を支持 28% 経済政策を得意としてきた共和党には厳しい数字です。
イランへの軍事行動を支持 31% 戦争の長期化とガソリン高への不満が表れています。

有権者が見ているのは株価より生活費

株価が上がっても、食品、ガソリン、家賃、電気料金、医療費などが上昇すれば、一般家庭は景気が良いとは感じません。米労働統計局によると、2026年7月の消費者物価指数は前年同月比+3.4%でした。

内訳を見ると、食品は+3.0%、エネルギーは+14.7%、ガソリンは+24.6%、電気料金は+4.2%でした。特にガソリン価格の上昇は、通勤、物流、航空運賃、食料品価格まで広い範囲に波及します。

一方、物価上昇分を差し引いた実質平均時給は、2025年7月から2026年7月までの1年間で0.2%減少しました。賃金の額面が増えても、物価上昇に追いつかなければ、実際に買える商品やサービスは増えません。

2026年7月の物価・賃金 前年同月比
消費者物価指数 +3.4%
食品 +3.0%
エネルギー +14.7%
ガソリン +24.6%
電気料金 +4.2%
実質平均時給 -0.2%

インフレ率低下と物価下落は同じではない

ここで間違えやすいのが、インフレ率の読み方です。インフレ率が前年の6%から3%へ低下しても、物価が元の水準に戻ったわけではありません。値上がりする速度が遅くなっただけで、すでに上がった生活費は高いままです。

例えば、100ドルだった買い物かごが1年目に6%値上がりすると106ドルになります。翌年のインフレ率が3%へ低下しても、価格は約109ドルです。有権者は「インフレ率が下がった」というニュースより、支払時に109ドル必要になった現実を強く感じます。

8月の消費者信頼感指数も89.4と7カ月ぶりの低水準になりました。消費者が予想する今後1年間のインフレ率は5.8%です。政府が公表する実際の物価上昇率よりも、家庭が予想する物価上昇率の方が高く、政策への不信感につながっています。

株価上昇の恩恵は均等ではない

Gallupの調査では、米国成人の約6割が個別株、投資信託、確定拠出年金などを通じて株式を保有しています。しかし、保有率と投資額には大きな所得格差があります。

世帯年収75,000ドル以上では8割を超える人が株式を保有する一方、30,000ドル未満では24%にとどまります。株式を保有していても、退職口座に少額を積み立てている家庭と、多額の株式資産を持つ富裕層では、株価上昇による利益がまったく違います。

S&P500が最高値を更新すると、資産を多く持つ家庭の評価額は増えます。しかし、株式を持たない人や保有額が少ない人にとって、株高よりも毎週のガソリン代や食料品代の方が家計への影響は大きくなります。

S&P500の上昇が米国企業全体の好調を示すとは限らない

S&P500は時価総額加重平均(企業規模が大きい会社ほど指数への影響が大きくなる計算方法)です。そのため、AI関連の巨大企業が大きく上昇すると、多くの企業が伸び悩んでいても指数は最高値を更新できます。

2026年第2四半期のS&P500企業の利益は大幅に増加しましたが、AmazonやMicrosoftなど一部のAI関連企業の寄与が非常に大きくなっています。S&P500の上昇率だけでは、中小企業、地域企業、一般家庭の経済状態までは分かりません。

私も毎日S&P500の値動きを見ていますが、指数が上昇した日に下落銘柄や下落セクターの方が多いことがあります。指数の表面だけではなく、上昇銘柄数、下落銘柄数、騰落率の中央値を見る必要があると感じています。

長期化するイラン戦争も支持率を押し下げる要因

トランプ大統領は、長期戦争を避ける姿勢を訴えてきました。しかし、イランとの戦争が長期化し、8月下旬のReuters/Ipsos調査では83%が戦争の長期化を予想しています。軍事行動への支持は31%まで低下しました。

さらに、ホルムズ海峡周辺の原油輸送が不安定になり、米国のガソリン価格は1ガロン4ドルを超えました。戦争、原油高、インフレが一本につながり、有権者の日常生活に直接影響しています。

株高と支持率低下は矛盾していない

株式市場は、企業が将来どれだけ利益を稼ぐかを先回りして評価します。一方、有権者は、現在の生活費、実質賃金、雇用の安定、戦争への不安を基準に政権を評価します。見ている対象と時間軸が違います。

AI投資によって一部の巨大企業が成長すれば、S&P500は上昇できます。しかし、物価高によって多数の家庭が苦しくなれば、大統領の支持率は低下します。現在の米国では「ウォール街の好調」と「一般家庭の不満」が同時に存在しています。

この差が11月の中間選挙で共和党にどの程度の逆風となるのか、次章では上下両院の選挙予測を確率で分析します。

参考資料

4.上下両院はどちらの党が取るのか

2026年8月30日時点では、民主党が下院を奪還する可能性はかなり高くなっています。一方、上院はほぼ五分五分ですが、私は共和党が維持する確率をわずかに高く見ています。

下院と上院では、選挙の仕組みが違います。下院は全435議席が改選されるため、全国的な政党支持率が議席数に反映されやすくなります。上院は改選される州が限られており、各州の政治的な傾向や候補者の人気によって結果が大きく変わります。

下院では民主党が全国支持率で約6ポイント先行

政党名だけを示して、どちらの党の下院候補に投票するかを尋ねる「一般投票意向調査」では、民主党が安定して先行しています。

Ballotpediaが8月28日に集計した直近30日間の平均は、民主党48%、共和党42%で、民主党が6ポイント上回っています。Nate Silverの集計でも民主党が6.6ポイント先行しています。

調査・集計 民主党 共和党 民主党の差
Ballotpedia直近30日平均 48% 42% +6ポイント
Reuters/Ipsos 41% 35% +6ポイント
Economist/YouGov 46% 40% +6ポイント
Nate Silver集計 民主党が先行 +6.6ポイント

米国の下院選挙は全国の得票数で議席を比例配分する制度ではありません。435の選挙区ごとに最も多く得票した候補者が当選します。そのため、民主党が全国得票で上回っても、選挙区の区割りによっては獲得議席が伸びない場合があります。

それでも、民主党が全国で6ポイント程度の差を維持すれば、現在の共和党の小さな多数を逆転する可能性は高いと考えます。Cook Political Reportもフロリダ州第14区、ミシガン州第10区などを接戦区へ変更しており、共和党側が守らなければならない選挙区が増えています。

下院の民主党奪還確率は約85%

世論調査、選挙区ごとの予測、予測市場を比較すると、下院では民主党優勢という方向がそろっています。

予測機関・市場 民主党が下院を取る確率
Nate Silverの選挙モデル 87%
VoteHub 77%
Kalshi予測市場 85%
Polymarket予測市場 約88%
私の予想 85%

ここでいう85%は、民主党が85%の議席を取るという意味ではありません。民主党が218議席以上を獲得し、下院の多数派になる確率です。15%程度は共和党が踏みとどまる可能性も残っています。

上院では民主党が4議席増やす必要がある

上院は共和党53議席、民主党系47議席です。採決が50対50になった場合は、共和党のバンス副大統領が決定票を投じます。そのため、民主党が上院を支配するには51議席が必要であり、現在から4議席増やさなければなりません。

2026年は通常改選の33議席に、フロリダ州とオハイオ州の特別選挙を加えた35議席が争われます。このうち23議席を共和党が、12議席を民主党系が守ります。数字だけを見ると、共和党側の改選議席が多いため、民主党にも奪還の機会があります。

しかし、上院選挙は民主党にとって簡単ではありません。民主党はまず、現在保有するミシガン州を守り、そのうえで共和党が保有する複数の州を奪う必要があります。

上院を決める6つの接戦州

Cook Political Reportは、次の6州を最も競争が激しい「Toss Up(どちらが勝つか判断できない接戦)」に分類しています。

現在の保有 選挙の特徴
ミシガン州 民主党 現職議員が引退するため、民主党にとって最大の防衛戦です。
メーン州 共和党 中道派の共和党現職スーザン・コリンズ氏が強いものの、州全体は民主党寄りです。
アラスカ州 共和党 順位選択投票制度があり、無党派層の動向が結果を左右します。
ネブラスカ州 共和党 無所属候補が共和党候補と競り合い、党派だけでは結果を読み切れません。
アイオワ州 共和党 共和党優勢から接戦へ移り、生活費や農業政策が争点になっています。
テキサス州 共和党 従来は共和党の安全州でしたが、生活費と候補者への評価によって接戦になっています。

民主党が上院を奪還する基本的な道筋は、ミシガン州を守り、共和党が保有する5つの接戦州のうち4州で勝つことです。全国的に民主党へ強い波が起きれば実現できますが、一つか二つ取りこぼすだけで共和党が上院を維持します。

8月20日にはCook Political Reportがアイオワ州とテキサス州を「共和党やや優勢」から「接戦」へ変更しました。共和党が大差で勝ってきた州まで競争が激しくなったことは、民主党にとって好ましい変化です。それでも4議席の純増という条件は厳しく、下院ほど民主党優勢とは言えません。

上院は共和党52%、民主党48%のほぼ五分五分

Kalshiの予測市場では、共和党が上院を維持する確率が52%、民主党が奪還する確率が48%です。Cook Political Reportも上院全体をほぼ五分五分としながら、共和党にごく小さな優位があると評価しています。

私は、民主党が4議席を純増する難しさを考慮し、共和党の上院維持を56%、民主党の奪還を44%と予想します。

上院の結果 Kalshi 私の予想
共和党が維持 52% 56%
民主党が奪還 48% 44%

上下両院を組み合わせた4つの確率

下院を民主党が取る確率を85%、上院を民主党が取る確率を44%として、全国的な投票の波によって両院の結果が連動する可能性も加えました。

選挙結果 私の予想確率 政治状況
民主党が下院、共和党が上院 43% 最も可能性が高い中心シナリオです。議会内でも上下院がねじれます。
民主党が上下両院を奪還 42% 民主党への全国的な波が上院の接戦州にも広がる場合です。
共和党が上下両院を維持 13% 共和党が下院の接戦区で予想以上に踏みとどまる場合です。
共和党が下院、民主党が上院 2% 下院と上院の現在の情勢から考えると、可能性はかなり低い組み合わせです。

当初は3つのシナリオで考えていましたが、確率を正確に合計すると「共和党下院・民主党上院」も存在します。ただし確率は2%程度と判断し、今後の株価分析では残りの3つを主要シナリオとして扱います。

予測市場の数字を過信しない

KalshiやPolymarketは、参加者が実際に資金を投じて将来の結果を予想する市場です。世論調査、候補者情報、経済指標などが価格へ素早く反映される利点があります。

一方で、予測市場の85%や48%は確定した未来ではありません。参加者の偏り、取引量、大口参加者の売買によって数字が動くことがあります。また、世論調査にも標本誤差(調査対象者の違いによって生じるずれ)があり、投票率を正確に予想することは困難です。

私は一つの予測を信じるのではなく、世論調査の平均、選挙区ごとの評価、予測モデル、予測市場を重ねて見ています。その結果、現時点の中心シナリオは「民主党が下院を奪還し、共和党が上院を維持する」と判断します。

ただし、「民主党が上下両院を奪還」との差はわずか1ポイントです。今後のガソリン価格、イラン戦争、景気、候補者討論会、投票率によって、この順位は入れ替わる可能性があります。

参考資料

5.過去の中間選挙年にS&P500はどう動いたか

中間選挙と株価の関係では、「選挙後のS&P500は平均で約14%上昇した」「ほとんどの年で上昇した」という数字がよく紹介されます。

確かに長期投資家にとって心強いデータですが、私は平均値だけで相場を判断しません。株価のように0より小さくならず、大きな上昇が平均値を押し上げるデータでは、中央値や対数による評価も必要だと考えています。

中間選挙年は、年間では伸び悩みやすい

RBC Wealth Managementが1932年以降のS&P500を調べた結果、中間選挙年の平均騰落率は+3.3%、中央値は+0.6%でした。平均値と中央値の両方が、4年間の大統領選挙周期の中で最も低くなっています。

大統領選挙周期 平均騰落率 中央値
大統領就任1年目 +7.0% +9.1%
中間選挙年 +3.3% +0.6%
大統領就任3年目 +14.0% +18.1%
大統領選挙年 +8.1% +11.8%

中間選挙年の中央値が+0.6%ということは、典型的な中間選挙年では、S&P500が年間を通してほぼ横ばいだったことを示します。平均値の+3.3%だけを見るよりも、中央値の方が実際の市場の姿に近いと私は考えます。

直近の中間選挙年を見ても、2018年は-4.4%、2022年は-18.1%でした。中間選挙年だから必ず上昇するわけではありません。

選挙前には大きな下落が起きている

First Trustが1950年から2022年までの19回を調べたデータでは、年初から中間選挙までの最大下落率は平均-16.2%、中央値-13.5%でした。

平均値だけでなく中央値を見ても、10%を超える調整が珍しくなかったことが分かります。19回のうち11回では、年初から選挙までに15%以上下落しました。

年初から中間選挙までの最大下落率 結果
平均値 -16.2%
中央値 -13.5%
15%以上下落した回数 19回中11回
最大の下落 1974年の-35.9%
最小の下落 1954年・1958年の-4.4%

ただし、平均-16.2%だから、2026年も必ずその水準まで下がるという意味ではありません。過去には-4.4%で済んだ年もあれば、-30%を超えた年もあります。平均値は予言ではなく、値動きの大きさを考えるための参考値です。

選挙までの12カ月は、上昇と下落が混在

1950年以降の19回について、中間選挙が行われる11月までの過去12カ月を調べると、平均騰落率と中央値はいずれも+7.3%でした。しかし、上昇したのは19回中12回で、上昇確率は約63%にとどまります。

選挙前の株価が不安定になる理由を、選挙だけに求めるのは適切ではありません。1974年にはオイルショック、2002年にはITバブル崩壊、2022年には急速な利上げとインフレが重なりました。株価を大きく動かした中心は、選挙より景気、企業利益、インフレ、金利でした。

期間 平均騰落率 中央値 上昇回数
中間選挙月までの過去12カ月 +7.3% +7.3% 19回中12回
中間選挙が行われる11月 +3.0% +2.4% 19回中15回
選挙月後の11カ月 +17.0% +14.1% 19回中19回
選挙から1年後 +18.8% +16.6% 19回中19回

選挙前には上昇と下落が混在していますが、選挙後は結果が大きく変わります。1950年から2022年までの19回では、選挙から1年後のS&P500はすべて上昇しました。

選挙後は3カ月、6カ月、12カ月とも好成績

Bloombergのデータを使った1961年以降の集計では、中間選挙後の平均騰落率は、3カ月後が+7.3%、6カ月後が+15.1%、12カ月後が+16.3%でした。

中間選挙後の期間 S&P500の平均騰落率
3カ月後 +7.3%
6カ月後 +15.1%
12カ月後 +16.3%

集計期間によって数字には差があります。Fidelityは1938年以降の選挙後12カ月について、上昇確率95%、平均騰落率約14%としています。LPL Financialは1954年以降の18回すべてで上昇し、平均+18.2%としています。

開始年、選挙日と月末の違い、配当を含めるかどうかによって結果は変わります。それでも「選挙前は不安定で、選挙後12カ月は上昇しやすかった」という大きな傾向は共通しています。

平均値より中央値を重視する理由

1950年以降の選挙後1年間の平均騰落率は+18.8%ですが、中央値は+16.6%です。平均値の方が2.2ポイント高いのは、一部の大幅上昇が全体を押し上げているためです。

例えば、1954年は+38.8%、1994年は+30.4%でした。一方、1986年は+4.3%、2010年は+5.8%にとどまりました。「過去平均が+18.8%だから、今回も18.8%上がる」と考えるのは危険です。

私は、典型的な値を考えるときは中央値の+16.6%を重視します。ただし、現在のS&P500の割高感や2026年にすでに上昇している分を考えると、今回の予想に+16.6%をそのまま使うこともしません。

株価は対数軸で考えた方が実態に合う

私は、株価、物価、為替のように負の値にならないデータは、普通の目盛りより対数軸で見る方が実態に合うと考えています。株価は金額の差よりも、何倍になったかという比率で増減するからです。

100から200への上昇は+100%ですが、200から100へ戻る下落は-50%です。単純平均すると+25%になりますが、資産額は元に戻っただけです。

これを対数収益率で表すと、100から200は+69.3%、200から100は-69.3%となり、合計は0です。長期の複利運用を考える場合、こちらの方が実際の資産変化を正確に表します。

1950年以降の選挙後1年間の騰落率を対数で平均し、通常の収益率へ戻すと約+18.5%です。単純平均の+18.8%との差は小さいものの、これは19回すべてが上昇し、極端な外れ値が比較的少なかったためです。

ただし、株価収益率の分布は厳密な対数正規分布ではなく、暴落のような極端な値が想定以上に発生します。対数軸は長期的な成長を見るうえで有効ですが、急落リスクがなくなるわけではありません。

私が中間選挙を理由に売らない理由

私は2020年のコロナショックで、米国株が何日も続けて暴落したときも定期積立を止めませんでした。底値を正確に予想することはできませんでしたが、市場から退出しなかったことで、その後の回復局面にも参加できました。

中間選挙年の過去データも同じことを示しています。選挙前には平均-16%程度の下落がありましたが、選挙後1年間は高い確率で回復しました。下落を恐れて売却すると、その後の大きな上昇へ戻る時期も判断しなければなりません。

相場から一度離れると、「もっと下がってから買おう」「まだ危ない」と考え続け、結局は高くなってから買い戻しやすくなります。私は選挙結果を予想して保有するS&P500を売るより、下落しても保有を続け、余裕資金があれば分けて買う方が合理的だと考えています。

過去の中間選挙データから得られる教訓は、「選挙後は必ず上昇する」ではありません。「選挙前の下落を受け入れて市場に残った投資家が、その後の回復を得やすかった」ということです。

参考資料

6.今回は過去の中間選挙と何が違うのか

過去の中間選挙後は、S&P500が高い確率で上昇してきました。しかし、2026年の相場には、過去の平均だけでは説明できない特徴があります。

企業利益とAI投資は非常に強い一方、株価はすでに上昇し、長期金利、原油、関税、財政赤字という不安定要因も残っています。過去の中間選挙後1年間の中央値である+16.6%を、そのまま現在のS&P500に足すのは少し強気すぎると私は考えています。

項目 2026年8月時点 株式市場への影響
S&P500 8月25日までに年初来約+12% 選挙後の上昇余地を一部先取りしている可能性
企業利益 2026年は前年比+31.2%予想 株価上昇を正当化する最大の要因
予想PER 19.6倍 極端な割高ではないものの、安値とも言えない
消費者物価指数 前年同月比+3.4% 利下げより利上げを警戒する環境
米10年国債利回り 約4.72% 高PERの成長株には厳しい水準
WTI原油先物 約83ドル インフレと企業コストを再び押し上げる可能性
米国政府債務 40兆ドルを突破 追加減税や財政出動に伴う金利上昇リスク
ドル円 160円前後 円建ての米国資産を押し上げる一方、円高反転には注意

すでに株価が上昇している

過去の中間選挙年では、選挙前に株価が大きく下落し、その反動で選挙後に上昇するケースが多くありました。

ところが2026年のS&P500は、8月25日時点ですでに年初来約12%上昇し、最高値圏にあります。今回は「大きく売られた状態からの回復」ではなく、「高値圏からさらに上昇できるか」を考えなければなりません。

ただし、株価が上がったという理由だけで割高と決めることもできません。2026年のS&P500構成企業の利益は、前年比+31.2%と予想されています。株価だけでなく利益も急速に増えているため、現在の上昇には業績という裏付けがあります。

AI投資は半導体だけの話ではない

今回の中間選挙相場を過去と大きく分けるのが、AI関連の設備投資です。大手IT企業は、データセンター、AI半導体、高速通信網、発電・送電設備に巨額の資金を投入しています。

私はデータセンターの建設・改修工事で現場責任者を経験しました。データセンターは、GPUを並べれば完成するような単純な建物ではありません。

  • 大容量の電力を安定して受け入れる受変電設備
  • 停電に備えた独立2系統、場合によっては独立3系統の電源
  • 非常用発電機と無停電電源装置
  • 大量のデータを送受信する高速通信網
  • 発熱を抑える空調設備と水冷設備
  • 災害時にも稼働を続ける免震構造

こうした設備を考えると、AI投資の恩恵を受けるのはエヌビディアなどの半導体企業だけではありません。電力会社、送電設備会社、空調・冷却設備会社、建設会社、通信機器会社、銅などを供給する素材会社まで広がります。

私はBIM(建物情報をデータとして管理する仕組み)の活用にも携わりましたが、その中心にあるのは精密なデータベースです。AIも同じで、表面に見える生成AIの裏側には膨大なデータと、それを保存・処理・送信する設備があります。

今回のAI相場には実際の設備投資があります。その意味では、期待だけで株価が上がった過去の一部のIT相場とは違います。

一方で、設備投資が急増しても、AIサービスから得られる収益が追いつかなければ、企業のフリーキャッシュフロー(事業から自由に使える現金)は減少します。今後は「AIにいくら投資したか」ではなく、「AIからいくら利益を回収できたか」が問われる段階に入ります。

19.6倍のPERは安くない

S&P500の予想PER(株価が今後1年間の利益の何倍まで買われているか)は19.6倍です。過去5年平均の19.9倍は下回っていますが、過去10年平均の19.0倍は上回っています。

私はこれを極端なバブル水準とは考えていません。ただし、悪材料を十分に吸収できるほど安い水準でもありません。

企業利益が予想どおり増えれば、株価が上昇してもPERは次第に低下します。反対に、AI投資の回収が遅れたり、原油高や関税によって利益率が悪化したりすれば、株価は同じでもPERが上昇します。

現在のS&P500は、良い決算が続くことを前提にした価格です。決算が市場予想を上回るだけでは足りず、今後の見通しまで強くなければ売られる銘柄が増えているのは、そのためです。

今回は利下げではなく、利上げの可能性がある

過去の中間選挙後には、景気減速やインフレ低下によってFRBが金融緩和へ向かい、株価が上昇しやすくなる時期がありました。

2026年は事情が異なります。7月の消費者物価指数は前年同月比+3.4%、エネルギー価格は+14.7%でした。FRBの政策金利は3.50~3.75%ですが、8月末には9月利上げを予想する市場参加者も増えています。

米10年国債利回りも約4.72%まで上昇しました。安全性の高い米国債から4%台後半の利回りを得られるなら、投資家は高いPERの株式に対して、より高い成長率を求めます。

特に影響を受けやすいのが、利益の多くを何年も先に期待されている成長株です。反対に、現在の利益と配当が安定している企業は、相対的に評価されやすくなります。

原油高と中東情勢がインフレを複雑にする

中東情勢と原油価格も、過去の平均には含めにくい要因です。8月28日のWTI原油先物は約83ドルでしたが、その1週間前にはブレント原油が94ドル台まで上昇する場面がありました。

原油高はエネルギー企業の収益を増やす一方、輸送、航空、化学、小売など幅広い企業のコストを引き上げます。ガソリンや電気料金が上がれば、消費者が自由に使えるお金も減ります。

最も警戒したいのは、景気が減速しているのに物価だけが上がるスタグフレーションです。この状態では、FRBは景気を守るための利下げを簡単に実施できません。

関税は中間選挙後も残る

トランプ大統領の関税政策は、中間選挙の結果だけでは止まりません。民主党が下院を奪還しても、大統領権限を使った関税政策は続く可能性があります。

ニューヨーク連銀の分析では、関税コストの大部分を米国企業と米国の消費者が負担しているとされます。輸入品の値段が上がれば、企業は利益率を下げて吸収するか、販売価格に転嫁する必要があります。

関税は米国内の製造業や一部の素材企業に利益をもたらすことがあります。しかし、国境をまたいで複雑な供給網を持つ自動車、一般消費材、工業製品の企業には負担となります。

中間選挙で議会がねじれても、関税を巡る株価変動は終わらないと見ています。

40兆ドルの政府債務を無視できない

米国の政府債務は2026年8月に40兆ドルを超えました。議会予算局は、2026会計年度の財政赤字を1.9兆ドル、GDP比で5.8%と予想しています。

景気後退中ではないのに、これだけ大きな財政赤字が続いている点は気になります。国債の発行が増えれば、投資家はより高い利回りを求める可能性があります。

共和党が上下両院を維持し、追加減税を進めた場合、短期的には企業利益が増えても、財政赤字の拡大によって長期金利が上昇することがあります。減税による利益増加と、金利上昇によるPER低下のどちらが大きいかという勝負になります。

民主党が下院を奪還して政策が進みにくくなれば、大規模な減税や歳出拡大も実現しにくくなります。政治的には対立が増えますが、債券市場には安心感を与える可能性があります。

日本人投資家には為替という別の問題がある

日本から米国株へ投資する場合、S&P500の値動きだけでは投資成績が決まりません。

ドル円は一時1ドル=164円まで円安が進み、日米共同の為替介入後も160円前後で推移しています。円安が進めば、米国株が横ばいでも円建て評価額は増えます。

反対に、中間選挙後に米長期金利が低下し、ドル円が150円や145円へ戻れば、S&P500が上昇しても円建ての利益は小さくなります。

米国株のドル建て収益と、為替を含めた円建て収益は分けて考える必要があります。今の円安によって増えた評価額を、すべて株価上昇による利益だと思わないことも大切です。

過去より強い部分と、弱い部分が同時にある

2026年の米国株には、過去の中間選挙年より強い部分があります。企業利益は大幅に増え、AI投資は半導体から電力、通信、冷却、建設、素材へ広がっています。

その一方で、株価はすでに高値圏にあり、長期金利は4%台後半です。原油高、関税、40兆ドルを超えた政府債務も、企業利益と株価評価の両方に影響します。

したがって私は、「中間選挙後は過去19回すべて上昇したから、今回も同じ上昇率になる」とは考えません。過去のデータは方向を考える参考にはなりますが、上昇幅まで保証するものではないからです。

今回の相場を決めるのは、中間選挙だけではありません。AI投資が利益に変わる速度、インフレ、長期金利、原油、関税、財政政策が重なり、その結果としてS&P500の水準が決まります。

次章では、民主党が上下両院を奪還する場合、民主党が下院だけを奪還する場合、共和党が上下両院を維持する場合に分けて、S&P500がどのように動くかを予想します。

参考資料

7.3つの選挙結果でS&P500はどう動くのか

中間選挙後の株価は、どちらの党が勝ったかだけでは決まりません。市場が事前に予想していた結果と、実際の結果の差が重要です。

8月29日時点の予測市場では、民主党が下院を奪還する確率は約85%、共和党が上院を維持する確率は約52%です。上下両院の組み合わせでは、民主党が両院を取る場合と、民主党下院・共和党上院になる場合が接近しています。

選挙結果 私の予想確率 選挙直後 選挙後1年間
民主党が上下両院を奪還 44% -5~+1% +3~+10%
民主党下院・共和党上院 41% 0~+3% +7~+14%
共和党が上下両院を維持 14% +1~+4% -2~+12%
共和党下院・民主党上院 1% 影響は限定的 予想対象から除外

表の騰落率は、選挙当日のS&P500終値を基準にした予想です。選挙までに株価が大きく動けば、指数の具体的な水準も変わります。

シナリオ1.民主党が上下両院を奪還する

現在の予測市場で、単独では最も確率が高い結果です。ただし、民主党が上下両院を取っても、トランプ大統領が退任するわけではありません。

民主党が成立させた法案にトランプ大統領が拒否権を行使すれば、それを覆すには上下両院で3分の2以上の賛成が必要です。民主党が通常の過半数を取るだけでは、大幅な法人増税やトランプ減税の廃止は成立しにくいでしょう。

一方、民主党は議会で次のような動きを強めると考えられます。

  • トランプ政権に対する議会調査
  • 関税政策や中東政策への追及
  • 薬価と民間医療保険への監視
  • 石油・ガス企業への環境規制要求
  • 巨大IT企業への規制強化要求
  • 富裕層と大企業への増税案

これらの政策が直ちに成立しなくても、ヘルスケア、エネルギー、金融、巨大ITには売りが出る可能性があります。選挙直後のS&P500は、-2~-5%程度下落する場面を想定しています。

ただし、その後は見方が変わる可能性があります。民主党議会と共和党大統領が互いの法案を止めれば、追加減税や大規模な財政支出も進みにくくなります。

米国政府債務が40兆ドルを超え、米10年国債利回りが4%台後半にある現在、財政拡大の停止は長期金利の低下につながる可能性があります。金利が下がれば、先端技術や通信サービスなどの成長株には有利です。

最大の問題は、予算と債務上限を巡る対立です。政府機関の一部閉鎖や国債の格下げが起これば、一時的に10%前後の調整もあり得ます。

このシナリオでは、選挙直後に下落しても、企業利益が維持されれば次第に回復すると見ています。選挙後1年間の予想は+3~+10%です。

シナリオ2.民主党下院・共和党上院になる

私は、株式市場にとって最も扱いやすい結果だと考えています。

民主党下院は、トランプ大統領による追加減税や大規模な財政支出を止めることができます。一方、共和党上院は、民主党が求める法人増税や規制強化を止めます。

さらに共和党が上院を維持すれば、大統領が指名する閣僚、政府高官、連邦裁判所判事の承認を進めやすい状態が続きます。民主党が上下両院を取る場合より、政権運営の混乱は小さくなるでしょう。

この組み合わせでは、次の政策が成立しにくくなります。

  • 大幅な法人増税
  • 大型の追加減税
  • 医療制度の全面的な変更
  • 石油・ガス産業への大規模な規制
  • 財政赤字を急拡大させる歳出法案

企業は政治が動かないことを必ずしも嫌いません。税制や規制が頻繁に変わらない方が、設備投資や採用計画を立てやすいからです。

AI関連の設備投資、企業利益の増加、金利低下が続けば、S&P500は選挙後1年間で+7~+14%上昇すると予想します。

先端技術だけでなく、データセンター建設に関係する工業・産業、公益事業、通信設備、素材にも資金が広がる可能性があります。市場の上昇が一部の巨大IT企業だけに依存しなくなれば、相場の安定性も高まります。

このシナリオの主なリスクは、民主党下院とトランプ大統領の対立が激しくなり、予算成立が遅れることです。それでも、民主党が上下両院を取る場合より、政策の振れ幅は小さいと考えています。

シナリオ3.共和党が上下両院を維持する

現在の予測市場では約16%、私の予想では14%です。実現すれば予想外の結果になるため、選挙直後の反応は3つのシナリオで最も大きくなる可能性があります。

市場は最初に、次の政策を期待すると考えられます。

  • 追加減税
  • 金融・エネルギー分野の規制緩和
  • 防衛費とインフラ投資の拡大
  • 米国内の製造業支援
  • AI、電力、データセンター投資への支援

選挙直後は金融、エネルギー、工業・産業、防衛関連が買われ、S&P500も+1~+4%程度上昇すると予想します。

しかし、1年間で考えると最も不安定なシナリオです。

追加減税によって企業利益が増えても、財政赤字が拡大すれば米国債の発行額が増えます。米10年国債利回りが5%を超えれば、高PERのAI関連株や不動産、公益事業には厳しい相場になります。

関税強化も問題です。関税によって米国内の製の製造業が一部保護される一方、輸入原材料や部品を使う企業のコストは上がります。企業が価格転嫁すれば、インフレが長引き、FRBが追加利上げへ動く可能性もあります。

このため、選挙直後は上昇しても、その後に長期金利が上がれば利益を失う展開を想定しています。選挙後1年間の予想範囲は-2~+12%と、3つの中で最も広くしています。

民主党勝利が必ず株安になるわけではない

投資家の中には、「民主党は増税と規制、共和党は減税と規制緩和だから、共和党勝利の方が株高になる」と考える人もいます。

しかし、2026年の中間選挙では、議会をどちらの党が取っても大統領はトランプ氏です。民主党が議会を取っても、大幅な増税を単独で成立させることは困難です。

現在の市場が警戒しているのは、増税だけではありません。40兆ドルを超えた政府債務、長期金利の上昇、関税による物価上昇も重要です。

民主党が議会を取って財政拡大を止めた場合、債券市場が落ち着き、結果としてS&P500にプラスとなる可能性があります。

共和党勝利が必ず株高になるわけでもない

共和党が上下両院を維持すれば、減税と規制緩和への期待から最初は買われるでしょう。しかし、減税の財源がなく、国債発行で穴埋めするなら話は変わります。

企業の1株利益が10%増えても、長期金利の上昇によってPERが10%低下すれば、株価はほとんど上がりません。

現在は、米10年国債利回りが約4.72%です。5%を明確に超えると、株式と債券の比較が厳しくなります。共和党勝利後は、株価だけでなく米国債市場の反応を同時に見る必要があります。

実際に株価を動かす順序

選挙結果が判明した後、市場はおおむね次の順序で反応すると考えています。

  1. 予想どおりの結果かを判断する
  2. 法人税、関税、規制への影響を計算する
  3. 財政赤字と国債発行額を予想する
  4. 米10年国債利回りが動く
  5. 企業利益とPERを計算し直す
  6. 各セクターへ資金を配分し直す

選挙直後に株価が上昇しても、長期金利が急上昇すれば、その上昇は続かない可能性があります。反対に、最初は株価が下落しても、長期金利が低下すれば、成長株を中心に回復することがあります。

私はこうする

私が最も期待するのは、民主党下院・共和党上院です。追加減税による財政悪化と、民主党による増税・規制強化の両方が進みにくくなるためです。

ただし、この結果だけを予想してETFを売買することはしません。選挙結果を正確に当てても、市場がすでに織り込んでいれば利益にならないからです。

私はS&P500を中心とした長期保有を続け、選挙前後に5%、10%と下落する場面があれば、余裕資金の範囲で分けて投資します。

参考資料

8.確率を加重したS&P500の予想

前章では、中間選挙後のS&P500を3つの選挙結果に分けて予想しました。この章では、それぞれの確率を加重し、全体として最も起こりやすい水準を計算します。

結論は、選挙後1年間の中心値が+7.9%、S&P500では8,300前後です。

通常の予想範囲は8,000~8,650とします。ただし、米10年国債利回りが5%を超える場合は、7,400前後まで下落する可能性があります。

単純平均ではなく対数収益率を使う

株価は0より小さくならず、上昇と下落が足し算ではなく掛け算で積み重なります。そのため私は、通常の騰落率よりも対数収益率(複利の変化を対数で表した数値)を使う方が適切だと考えています。

例えば、株価が50%下落した後に50%上昇しても、元の価格には戻りません。

  • 100から50へ下落:-50%
  • 50から75へ上昇:+50%
  • 最終結果:100から75なので-25%

通常の騰落率を足すと0%ですが、実際には-25%です。こうした違いを避けるため、今回も対数を使って計算します。

計算式は次のとおりです。

中心収益率=exp{各シナリオの確率×ln(1+騰落率)の合計}-1

expは対数を元に戻す計算、lnは自然対数です。計算自体は少し複雑ですが、目的は複利を正しく扱うことです。

各シナリオの中央値を設定する

選挙結果 確率 選挙後1年間 計算に使う中央値
民主党が上下両院を奪還 44% +3~+10% +6.5%
民主党下院・共和党上院 41% +7~+14% +10.5%
共和党が上下両院を維持 14% -2~+12% +5.0%
共和党下院・民主党上院 1% 発生確率が低い +8.0%

この条件で計算すると、通常の加重平均は+7.95%、対数収益率による中心値は+7.92%です。今回は騰落率の差が比較的小さいため、両者はほぼ同じ結果になりました。

ただし、暴落と急騰が含まれる計算では差が大きくなります。長期間の株価分析では、対数収益率を使う意味があります。

8月28日の終値から計算すると8,323

2026年8月28日のS&P500終値は7,711.76でした。これに+7.92%を掛けると、次の計算になります。

7,711.76×1.0792=8,323

1ポイント単位の予想には意味がないため、実際の中心値は8,300前後とします。

ただし、これは8月28日の終値を基準にした計算です。11月3日の選挙日までにS&P500が下落すれば、選挙後1年間の到達水準も低くなります。

選挙日のS&P500 +7.92%上昇した水準
7,200 7,770
7,500 8,094
7,700 8,310
7,900 8,526
8,100 8,742

時点別のS&P500予想

時点 中心値 通常の予想範囲 主な変動要因
2026年11月3日 7,650 7,200~8,100 世論調査、FRB、原油、利益確定売り
2026年末 7,900 7,400~8,300 選挙結果、長期金利、年末の資金流入
2027年11月 8,300 8,000~8,650 企業利益、AI投資、金利、関税

2026年末の中心値7,900は、Reutersが集計した市場関係者46人の予想中央値とも一致します。

私は2027年11月を8,300前後と予想しますが、一本道で上昇するとは考えていません。選挙前後や決算発表時には、5~10%程度の調整が入る可能性があります。

企業利益とPERから確認する

指数予想が妥当かどうかを、企業利益とPER(株価が利益の何倍まで買われているか)からも確認します。

現在の予想PERは19.6倍です。今後1年間で企業利益が10%増えると仮定し、PERがどこまで変化するかで計算すると次のようになります。

1年後の予想PER S&P500の試算値 8月28日からの騰落率
17.5倍 約7,570 -1.8%
18.5倍 約8,010 +3.8%
19.5倍 約8,440 +9.4%
20.5倍 約8,870 +15.1%

私の中心予想である8,300前後は、企業利益が10%増え、PERが19倍前後を維持する場合に近い水準です。

極端な楽観を前提にした数字ではありません。ただし、長期金利の上昇によってPERが17倍台まで低下すると、企業利益が増えてもS&P500は上昇できません。

通常範囲は8,000~8,650

各選挙シナリオの下限と上限を確率加重すると、選挙後1年間の騰落率はおおむね+4~+12%になります。

8月28日の終値から計算すると、約8,020~8,640です。端数を丸め、通常の予想範囲を8,000~8,650とします。

この範囲に入るためには、次の条件が必要です。

  • S&P500の企業利益が増加を続ける
  • AI関連の設備投資が実際の売上と利益に結びつく
  • 米10年国債利回りが5%を大きく超えない
  • 原油価格が再び100ドルを超えて定着しない
  • 関税によるインフレが制御不能にならない
  • 米国政府の債務問題が金融危機へ発展しない

下振れすると7,000台前半もある

通常範囲とは別に、発生確率は低いものの影響が大きいリスクも考えておく必要があります。

次のうち複数が同時に起きた場合、S&P500は7,000~7,500まで下落する可能性があります。

  • 米10年国債利回りが5.25%を超える
  • WTI原油先物が110ドルを超える
  • FRBが連続利上げを実施する
  • AI関連企業の利益見通しが下方修正される
  • 政府機関の閉鎖や債務上限問題が長期化する
  • 関税合戦によって世界貿易が急減する

現在の7,711.76から7,200への下落率は-6.6%、7,000では-9.2%です。米国株では十分に起こり得る調整幅であり、長期的な上昇予想と矛盾しません。

過去の中間選挙年でも、選挙後は上昇している一方、選挙前には平均-16.2%の最大下落を経験しています。最終的に上昇することと、途中で大きく下落することは両立します。

日本人投資家はドル円も計算する

S&P500が予想どおり+7.92%上昇しても、円建ての投資成績はドル円によって変わります。

現在のドル円を1ドル=160円として計算すると、1年後の円建て収益率は次のようになります。

1年後のドル円 S&P500のドル建て収益率 円建て収益率
165円 +7.92% 約+11.3%
160円 +7.92% 約+7.9%
150円 +7.92% 約+1.2%
145円 +7.92% 約-2.2%

S&P500が上昇しても、160円から145円へ円高が進めば、円建てでは損失になります。

反対に、円安が続けば円建て評価額は増えます。ただし、現在の160円前後では為替介入の可能性もあるため、円安だけを前提に資産計画を立てるのは危険です。

予想は1本の線ではなく範囲で見る

株価予想では「S&P500は8,323になる」という数字だけが注目されがちです。しかし、実際の株価がその数字と一致する確率は、ほとんどありません。

私が重視するのは、中心値よりも分布です。

  • 中心値:8,300前後
  • 通常範囲:8,000~8,650
  • 強い上昇の場合:8,650~9,000
  • 下振れした場合:7,000~8,000

株価は正規分布(平均値を中心に左右対称となる分布)より、対数正規分布に近い動きをします。上限は決まっていませんが、下限は0です。したがって、平均値より中央値、通常の価格軸より対数軸で考える方が、長期投資の実感に合います。

私はこうする

私は、2027年11月のS&P500を8,300前後、通常範囲8,000~8,650として資産計画を考えます。

ただし、8,300を目標に売買することはしません。選挙前後に7,200や7,000まで下がる可能性も受け入れ、S&P500連動ETFの保有を続けます。

確率が最も高いのは上昇ですが、途中経過まで穏やかになるとは限りません。長期投資家に必要なのは、予想を当てることより、予想範囲の下側に株価が動いても投資を続けられる資金管理だと考えています。

参考資料

9.中間選挙後のS&P500を11セクター別に予想する

中間選挙の結果は、S&P500全体よりもセクター間の差に強く表れる可能性があります。

ただし、選挙だけでセクターの騰落率が決まるわけではありません。先端技術はAI投資、金融と不動産は長期金利、エネルギーは原油、一般消費材は関税と家計負担の影響を強く受けます。

次の予想は、選挙日の終値から2027年11月までの約1年間を対象としたドル建ての株価騰落率です。配当は含めていません。

順位 セクター 予想範囲 中心値 有利になりやすい結果
1 先端技術(Technology) +8~+16% +12.0% 民主党下院・共和党上院
2 工業・産業(Industrials) +8~+15% +11.5% 共和党が上下両院を維持
3 ヘルスケア(Healthcare) +7~+15% +11.0% 民主党下院・共和党上院
4 通信サービス(Communication Services) +7~+14% +10.5% 民主党下院・共和党上院
5 金融(Financials) +5~+12% +8.5% 共和党が上下両院を維持
6 素材(Basic Materials) +4~+12% +8.0% 共和党が上下両院を維持
7 一般消費材(Consumer Cyclical) +2~+11% +6.5% 民主党下院・共和党上院
8 公益事業(Utilities) +3~+10% +6.5% 民主党下院・共和党上院
9 生活必需品(Consumer Defensive) +2~+8% +5.0% 民主党が上下両院を奪還
10 不動産(Real Estate) -2~+10% +4.0% 長期金利が低下する結果
11 エネルギー(Energy) -5~+12% +3.5% 共和党が上下両院を維持

中心値の順位は、上昇の確実性を保証するものではありません。特にエネルギー、不動産、素材は予想範囲が広く、原油や金利によって順位が大きく変わります。

1.先端技術(Technology) +8~+16%

最も高い上昇率を予想するのは先端技術です。半導体、AIサーバー、通信部品、クラウド、サイバーセキュリティ、半導体製造装置への投資が続いています。

2026年4~6月期は、S&P500の全11セクターで利益が増加しました。特にAI関連企業の利益増加が大きく、エヌビディアの強い業績見通しもAI設備投資の継続を示しています。

民主党が上下両院を取ると、巨大IT企業への独占禁止法、個人情報保護、AI規制が強まる可能性があります。ただし、トランプ大統領の拒否権があるため、厳しい法案がそのまま成立する可能性は高くありません。

共和党が上下両院を維持すれば、規制面では有利です。一方で、財政赤字から米10年国債利回りが5%を超えると、高PERのAI関連株は売られやすくなります。

最大の確認点は、AI設備投資が実際の売上と現金収入に変わるかです。投資額だけ増えて利益回収が遅れれば、予想範囲の下限に近づくでしょう。

2.工業・産業(Industrials) +8~+15%

過去の中間選挙年では、工業・産業の平均騰落率は+0.6%にとどまりました。しかし、今回は過去より高い+8~+15%を予想します。

理由は、AIデータセンター、防衛、送電網、電力設備、工場の米国内回帰が同時に進んでいるからです。

私はデータセンターの建設・改修工事に携わりましたが、建物の中にサーバーを置くだけでは稼働できません。受変電設備、非常用発電機、無停電電源装置、高速通信、空調、水冷設備、免震構造が必要です。

この投資は、電気設備、空調設備、建設機械、産業機械、航空・防衛など幅広い企業の受注につながります。S&PのAIデータセンター・電力インフラ指数でも、工業・産業の構成比は約35%で最大です。

共和党が上下両院を維持すれば、防衛費、国内製造、インフラ投資の拡大が期待できます。ただし、鉄鋼、銅、アルミニウムの価格上昇と関税によって、建設費が上がる点には注意が必要です。

3.ヘルスケア(Healthcare) +7~+15%

ヘルスケアは、過去の中間選挙年で平均+10.7%と、11セクターの中で最も良い成績でした。

景気が減速しても医薬品や医療サービスの需要は急減しにくく、高齢化による長期的な需要もあります。AI関連株と比べて株価評価が高すぎない企業が多いことも利点です。

民主党が上下両院を取ると、薬価引き下げ、民間医療保険、病院の請求制度への監視が強まります。特に製薬会社と医療保険会社は、選挙直後に売られる可能性があります。

それでも法改正には大統領の署名が必要です。医療機器、バイオテクノロジー、医療サービスまで一律に悪くなるとは考えていません。

景気と金利の両方に不安がある局面では、安定した利益を持つヘルスケアの評価が上がりやすくなります。

4.通信サービス(Communication Services) +7~+14%

通信サービスには、通信会社だけでなく、アルファベットやメタ・プラットフォームズなどの巨大企業が含まれています。

広告収入、動画配信、クラウド、生成AIの収益化が利益を増やす要因です。AIを使って広告の対象を細かく選び、広告効果を高められれば、売上だけでなく利益率も改善します。

民主党が上下両院を取る場合は、巨大IT企業への規制や未成年者保護、個人情報の利用制限が株価変動を大きくする可能性があります。

一方、民主党下院・共和党上院では、強い規制法案が成立しにくく、現在の事業環境が大きく変わらないと考えられます。この組み合わせが最も有利です。

5.金融(Financials) +5~+12%

金融は共和党が上下両院を維持する場合に、最も分かりやすく反応するセクターです。銀行規制の緩和、企業買収の増加、資本市場の活発化が収益を増やす可能性があります。

長期金利の上昇は、銀行の貸出金利を高くします。ただし、金利が上がりすぎると住宅ローン、自動車ローン、企業融資の延滞が増えます。

したがって金融株にとって良いのは、景気が底堅く、長短金利差(長期金利と短期金利の差)が適度に拡大する状態です。急激な金利上昇は必ずしも好条件ではありません。

民主党が上下両院を取る場合は、大手銀行、クレジットカード、プライベートエクイティ(未上場企業へ投資する会社)への監視が厳しくなる可能性があります。

6.素材(Basic Materials) +4~+12%

素材では、銅、アルミニウム、鉄鋼、特殊金属の需要増加を予想します。

AIデータセンター、送電網、発電設備、電気自動車、米国内の工場建設には大量の銅が必要です。AI投資が続けば、半導体より手前にある素材需要も増加します。

共和党が上下両院を維持した場合、鉱山開発や米国内の資源生産に関する許認可が進みやすくなる可能性があります。

一方、素材は中国を含む世界景気に影響されます。米国の関税と各国の報復関税で世界貿易が縮小すれば、需要が弱くなることもあります。

銅価格の上昇は鉱山会社には有利ですが、銅を購入する電気設備会社や建設会社にはコスト増となります。同じAIインフラ関連でも、立場によって影響が異なります。

7.一般消費材(Consumer Cyclical) +2~+11%

一般消費材には、自動車、住宅関連、衣料品、旅行、インターネット通販などが含まれます。

このセクターを決めるのは、選挙よりも家計の可処分所得(税金や社会保険料を引いた後に使えるお金)です。

現在は、食品、ガソリン、住宅、医療費の上昇が続いています。Reuters/Ipsos調査でも、生活費が中間選挙の主要な争点になっています。

共和党の追加減税は消費を増やす可能性がありますが、関税が輸入品価格を引き上げれば、その効果が小さくなります。自動車、家電、衣料品は関税の影響を受けやすい分野です。

FRBが利下げできれば、自動車ローンや住宅ローンの負担が軽くなります。反対に追加利上げとなれば、予想範囲の下限に近づくでしょう。

8.公益事業(Utilities) +3~+10%

公益事業は、従来の安定配当セクターから、AIインフラ関連セクターへ変わりつつあります。

S&P Global Market Intelligenceは、米国のデータセンター電力需要が2025年から2030年にかけて、ほぼ2倍になると予測しています。

発電所を建設するだけでなく、送電線、変電所、蓄電設備を増強しなければなりません。独立した複数系統から電力供給を受けるデータセンターでは、系統全体の信頼性も求められます。

ただし公益事業は、設備投資に多額の借入金を使います。長期金利が上昇すると、利払い負担が増え、配当利回りも米国債と比較されます。

AIによる電力需要増加と高金利が反対方向に働くため、中心値を+6.5%に抑えました。

9.生活必需品(Consumer Defensive) +2~+8%

生活必需品には、食品、飲料、日用品、小売りなど、景気が悪化しても需要が減りにくい企業が含まれます。

選挙後に株式市場全体が強く上昇する場合は、先端技術や工業・産業より出遅れる可能性があります。一方、選挙結果を巡って相場が下落する場合は、比較的安定した値動きが期待できます。

問題は原材料、包装、輸送、人件費です。企業が値上げを続けると、低価格商品への乗り換えが増え、販売数量が減ることがあります。

民主党が上下両院を取った場合でも、医薬品や石油会社ほど直接的な政策変更を受けにくく、資金の避難先になりやすいと考えています。

10.不動産(Real Estate) -2~+10%

不動産は、11セクターの中で米10年国債利回りの影響を特に強く受けます。

金利が低下すれば、不動産会社の借り換え負担が軽くなり、配当利回りの魅力も高まります。米10年国債利回りが4%台前半まで低下すれば、予想範囲の上側に近づく可能性があります。

反対に5%を超える状態が続けば、オフィス、住宅、商業施設の評価額が下がり、-2%を超える下落もあり得ます。

同じ不動産でも、データセンター、物流施設、通信塔は需要構造が異なります。従来型オフィスより、AIとインターネット通販に関係する施設を運営する会社の方が有利だと考えています。

11.エネルギー(Energy) -5~+12%

エネルギーは、選挙結果より原油価格で決まるセクターです。そのため予想範囲を最も広くしました。

共和党が上下両院を維持すれば、石油・ガス開発、パイプライン、輸出設備の許認可が進みやすくなります。民主党が上下両院を取れば、環境規制や企業調査が強まる可能性があります。

しかし、民主党勝利でも中東からの供給が減れば、原油価格の上昇によってエネルギー企業の利益は増えます。反対に共和党勝利でも、停戦や増産で原油が急落すれば株価は下がります。

WTI原油先物が80~95ドルで推移する場合は、利益と配当を維持しやすいと考えます。100ドルを大きく超えるとエネルギー株には有利でも、米国経済全体にはインフレという問題が生じます。

選挙結果別に有利なセクターを整理する

選挙結果 相対的に有利 注意が必要
民主党が上下両院を奪還 生活必需品、公益事業、不動産、ヘルスケアの一部 エネルギー、金融、民間医療保険、巨大IT
民主党下院・共和党上院 先端技術、通信サービス、ヘルスケア、一般消費材 政策より金利と企業利益を確認
共和党が上下両院を維持 金融、エネルギー、工業・産業、素材 不動産、公益事業、高PERの先端技術

過去の中間選挙実績だけでは順位を決めない

1990年以降の中間選挙年では、ヘルスケアが平均+10.7%、エネルギーが+8.9%でした。一方、工業・産業は+0.6%、金融は-0.6%でした。

今回もヘルスケアを上位に置きましたが、工業・産業は過去平均より大幅に高く予想しています。AIデータセンター、防衛、送電網、米国内の工場建設という、過去の中間選挙にはなかった設備投資があるためです。

セクター分析でも、過去の平均値をそのまま使うのではなく、現在の利益、金利、設備投資を加えて修正する必要があります。

私はこうする

私は、S&P500連動ETFを中心に据えたまま、選挙結果を予想した大幅なセクター入れ替えは行いません。

追加するセクターを1つだけ選ぶなら、工業・産業です。AIデータセンター、防衛、送電網、空調・冷却設備、米国内の工場建設という複数の需要を取り込めるからです。

ただし、先端技術も工業・産業もS&P500の中に含まれています。セクターETFを追加する場合でも、資産全体の一部にとどめます。

参考資料

10.中間選挙より重要な5つの要因

中間選挙は株価を動かすきっかけにはなりますが、S&P500の長期的な方向を決める主役ではありません。

株価を最も単純に表すと、次の式になります。

株価=1株利益×PER

PERは、株価が利益の何倍まで買われているかを示す数値です。

企業利益が増えれば株価は上昇しやすくなります。一方、インフレや金利が上がるとPERが低下し、利益が増えても株価が上がらないことがあります。

私は、中間選挙後のS&P500を考えるうえで、次の5項目に重要度を配分します。この比率は統計上の確率ではなく、現在の相場を分析するための私の配分です。

順位 要因 重要度 現在の判定
1 企業利益とAI投資 35% 良好
2 インフレ、FRB、米10年国債利回り 25% 警戒
3 原油価格と中東情勢 15% 注意
4 関税と世界貿易 15% 注意
5 財政赤字と政府債務 10% 警戒

企業利益は強いものの、インフレと政府債務から長期金利が上昇しています。現在の米国株は、強い利益と高い金利が綱引きしている状態です。

1.企業利益とAI投資 重要度35%

S&P500を最も強く動かすのは、選挙ではなく企業利益です。

FactSetによると、2026年4~6月期のS&P500構成企業の利益は前年同期比+52.0%、売上高は+15.5%でした。2026年通年でも、利益は前年比約31%増加すると予想されています。

ただし、+52.0%という数字をそのまま受け取るのは危険です。

アルファベットは保有株式の評価益、アマゾンはAnthropicへの投資による利益を計上しました。この2社を除くと、S&P500の利益成長率は+33.8%まで下がります。

それでも30%を超えているため、企業利益は十分に強いと言えます。一時的な投資利益と、本業による利益を分けて確認する必要があります。

AI投資で確認する数字
  • 半導体とAIサーバーの売上高
  • クラウド事業の売上高と利益率
  • AIサービスから得られた実際の収入
  • 設備投資額に対するフリーキャッシュフロー
  • データセンターの稼働率
  • 電力、通信、冷却設備の受注残高

フリーキャッシュフローは、事業で得た現金から設備投資を引いた後に残る現金です。AI投資が増えすぎると、売上が伸びても自由に使える現金は減ります。

私はデータセンターの建設・改修工事に携わりましたが、設備投資は建物を完成させれば終わりではありません。受電容量、無停電電源、非常用発電機、冷却設備、通信回線の増強が続きます。

AI投資が半導体だけでなく、工業・産業、公益事業、通信、素材へ広がっている点は評価できます。問題は、投資した金額以上の収益を回収できるかです。

今後の企業利益 S&P500への判断
利益予想が10%以上増加 上昇予想を維持
利益予想が+5~+10% 緩やかな上昇
利益予想が+5%未満 8,300予想を引き下げ
利益予想が減少へ転換 10~20%調整の可能性

選挙結果が理想的でも、企業利益が減れば株価は下がります。反対に政治が混乱しても、利益が増え続ければ株価は回復できます。

2.インフレ、FRB、米10年国債利回り 重要度25%

2番目に重要なのがインフレと金利です。2026年7月のPCE物価指数は前年同月比+3.7%、食品とエネルギーを除いたコアPCEも+3.3%でした。

PCE物価指数は、米国の消費者が購入した商品やサービスの価格変化を示し、FRBが金融政策で重視する指標です。

FRBの物価目標は2%です。現在の3.7%は、目標から1.7ポイント高い状態です。

8月28日のジャクソンホール会議で、ウォーシュFRB議長は、インフレが2%へ明確に向かわなければ追加利上げが必要になる可能性を示しました。市場が予想する9月利上げ確率は、演説前の35.4%から55.7%へ上昇しました。

政策金利は3.50~3.75%、米10年国債利回りは約4.72%です。

なぜ長期金利が株価を動かすのか

S&P500の予想PERは19.6倍です。企業利益が変わらなくても、金利上昇によってPERが19.6倍から18倍へ低下すると、株価は約8.2%下がります。

仮に企業利益が10%増加しても、PERが19.6倍から18倍へ低下すれば、株価上昇率は約1%に縮小します。

利益+10%×PER-8.2%=株価はほぼ横ばい

利益が増えているのに株価が上がらない場合は、長期金利とPERの関係を確認する必要があります。

米10年国債利回り S&P500への判断
4.25%未満 8,650以上も可能
4.25~5.00% 企業利益が増えれば吸収可能
5.00~5.25% 高PER銘柄の下落に注意
5.25%超 S&P500予想を大幅に引き下げ

現在の4.72%は、まだ企業利益で吸収できる範囲ですが、余裕は大きくありません。

3.原油価格と中東情勢 重要度15%

原油価格は、エネルギー株だけの問題ではありません。ガソリン、航空運賃、物流費、化学製品、農産物、電気料金を通じて、企業利益と消費者物価の両方に影響します。

8月28日のWTI原油先物は1バレル=83.40ドル、ブレント原油は89.31ドルでした。前週からは下落しましたが、ホルムズ海峡の輸送量は通常より少ない状態です。

ホルムズ海峡は、世界の石油輸送量の約20%が通過する重要な航路です。完全に閉鎖されなくても、輸送の遅れや保険料の上昇によって原油価格は動きます。

WTI原油先物 市場への影響
80ドル未満 インフレ低下に有利
80~100ドル 企業利益で吸収できる可能性
100~120ドル 消費減速と追加利上げを警戒
120ドル超 景気後退とインフレが同時進行する可能性

原油が一時的に100ドルを超えるだけなら、市場は耐えられるかもしれません。100ドルを超えた状態が数週間続く場合は、企業利益とインフレ予想の両方を修正する必要があります。

中間選挙の結果が判明しても、中東情勢が解決するわけではありません。選挙翌日の世論調査より、毎日の原油価格とホルムズ海峡の輸送量の方が、株価には重要です。

4.関税と世界貿易 重要度15%

関税は、外国企業が米国政府へ支払う罰金ではありません。米国へ商品を輸入する企業が関税を支払い、その費用を米国企業や消費者へ転嫁する仕組みです。

ニューヨーク連銀の分析では、トランプ政権による関税コストのほぼ全額を、米国企業と米国の消費者が負担しているとされます。

関税が株価へ伝わる経路は次のとおりです。

  1. 輸入原材料や部品の価格が上昇する
  2. 企業の製造原価が増える
  3. 企業が利益率を下げるか販売価格を上げる
  4. 値上げによってインフレ率が上がる
  5. FRBが利下げできなくなる
  6. 長期金利が上昇してPERが低下する

関税は企業利益とPERの両方に影響するため、税率以上に株価への影響が大きくなることがあります。

一方、米国内で生産する鉄鋼、資源、機械、防衛関連企業には有利になる場合があります。国内生産を増やすための工場建設も、工業・産業の受注を増やします。

関税の状態 S&P500への判断
米国と各国が段階的に引き下げ 企業利益とインフレに有利
現在の関税が継続 企業ごとの価格転嫁力で差が出る
報復関税が複数国へ拡大 売上高と利益率の下方修正
世界的な貿易量が急減 景気後退の可能性

民主党が下院を取っても、大統領権限を使った関税は残る可能性があります。関税については、中間選挙で議会がねじれれば完全に止まるとは考えない方がよいでしょう。

5.財政赤字と政府債務 重要度10%

米国政府債務は、2026年8月に40兆ドルを超えました。米議会予算局は、2026会計年度の財政赤字を1.9兆ドル、GDP比5.8%と予想しています。

米国政府の年間利払い費は約1.1兆ドルに達し、国防費を超えています。2026年度の途中では、メディケアを上回り、社会保障に次ぐ2番目に大きな支出項目となりました。

政府債務が直ちに金融危機を起こすとは限りません。米国はドルで国債を発行でき、米国債は世界の金融市場で担保として使われています。

問題は、投資家が国債を購入するために、より高い利回りを要求することです。

国債発行額が増え、買い手が減れば、長期金利が上昇します。住宅ローン、自動車ローン、企業融資の金利も上がり、最終的に株価へ影響します。

米30年国債利回り 財政に対する判断
4.75%未満 国債市場は比較的安定
4.75~5.25% 高いが管理可能な範囲
5.25~5.50% 株式のPER低下を警戒
5.50%超 財政不安が相場の中心になる可能性

利回りの水準だけでなく、国債入札の応札倍率(募集額に対して何倍の購入希望があったか)や外国人投資家の購入状況も確認する必要があります。

共和党が上下両院を維持して追加減税を進めれば、企業利益にはプラスでも、国債市場にはマイナスとなる可能性があります。民主党が下院を取って財政支出を止めれば、政治対立は増えても長期金利が低下する場合があります。

5つの要因は互いにつながっている

この5項目は、別々に動くわけではありません。

例えば、中東情勢が悪化すると、次のような流れが起こります。

  1. 原油価格が上昇する
  2. インフレ率が上がる
  3. FRBが追加利上げを行う
  4. 米国債利回りが上昇する
  5. 企業の資金調達費用が増える
  6. PERが低下する
  7. S&P500が下落する

反対に、中東情勢が落ち着き、関税が引き下げられれば、インフレ率が低下します。FRBが利下げできるようになり、企業利益の増加とPERの上昇が同時に起こる可能性があります。

中間選挙は、この流れの一部に影響するだけです。選挙結果だけを見て相場を判断すると、原油や金利による大きな変化を見落とします。

毎週確認する5項目

確認項目 現在値 予想を下方修正する基準
S&P500企業利益 2026年は約31%増予想 今後の利益成長予想が+5%未満
PCE物価指数 前年同月比+3.7% 4%を超えて上昇が続く
米10年国債利回り 約4.72% 5.25%を超える
WTI原油先物 83.40ドル 100ドル超が数週間続く
米30年国債利回り 約5.2% 5.5%を超える

日本人投資家にはドル円が加わる

ここまでの5項目は、ドル建てのS&P500を予想するための要因です。日本人投資家の円建て成績には、さらにドル円が加わります。

米国のインフレと金利が上昇すれば、ドル高・円安になる場合があります。この場合、S&P500が下落しても、円安によって円建て評価額の下落が小さくなることがあります。

反対に、米国のインフレが低下して金利が下がれば、S&P500には有利でも円高になる可能性があります。ドル建て株価と円建て評価額が同じ方向に動くとは限りません。

私はこれを見る

私は、選挙の世論調査よりも、企業利益予想と米10年国債利回りを優先して見ます。

企業利益の上方修正が続き、米10年国債利回りが5%未満なら、S&P500連動ETFの保有を続けます。長期金利が5.25%を超え、同時に利益予想が下方修正へ転じた場合に、初めて8,300という予想を大きく見直します。

市場のニュースを知る目的は、毎日売買することではありません。相場が下落したときに、何が起きているのかを理解し、慌てて投資をやめないためだと考えています。

参考資料

11.長期投資家は中間選挙にどう備えるか

私の結論は、中間選挙を理由にS&P500連動ETFを売らないことです。

選挙結果を正確に当てても、それが市場予想と同じなら株価はほとんど動きません。反対に選挙予想を外しても、企業利益が増え、長期金利が低下すれば株価は上昇することがあります。

長期投資家が準備するべきなのは、選挙結果を当てることではありません。株価が5%、10%、15%と下落しても、生活と投資を続けられる状態を作ることです。

中間選挙だけを理由に売らない

過去の中間選挙年では、選挙前にS&P500が高値から平均-16.2%、中央値でも-13.5%下落しました。

一方、選挙後1年間は高い確率で上昇してきました。Fidelityの集計では、中間選挙後12カ月の平均上昇率は約14%です。

つまり、選挙前に怖くなって売ると、その後の回復局面へ戻れない可能性があります。

売却した投資家は、次に買い戻す時期も決めなければなりません。

  1. 選挙前に売る時期を当てる
  2. 株価の底を見極める
  3. 選挙後に買い戻す時期を当てる

1回の判断ではなく、3回続けて正しい判断が必要になります。私はこの方法に再現性があるとは考えていません。

コロナショックでも積立を止めなかった

コロナショックでは、米国株が何日も続けて急落しました。毎朝、評価額が大きく減っていくのを見るのは、長期投資家でも楽ではありませんでした。

それでも私は定期積立を止めませんでした。

相場が急落している最中は、「今回は過去と違う」「経済が元に戻らないかもしれない」という話が必ず出てきます。コロナショックのときも同じでした。

しかし、積立を止めなかったことで、安くなったS&P500を自動的に買うことができました。株価回復の時期を当てる必要もありませんでした。

この経験から、私は中間選挙前に相場が下落しても、企業利益の長期的な成長が崩れていなければ、積立を続けます。

生活資金と投資資金を分ける

株価下落に耐えるために最も重要なのは、株価予想ではなく現金です。

現金の必要額は、総資産の10%や20%といった比率だけでは決められません。実際の生活費から計算するべきです。

私は、生活に必要な現金を2年分確保する考え方です。

1カ月の生活費 1年間 2年分の現金
20万円 240万円 480万円
25万円 300万円 600万円
30万円 360万円 720万円

年金や給与などの安定収入がある場合は、その金額を生活費から差し引いて計算できます。

この2年分は、株価が下落したときに追加投資するお金ではありません。生活を守るための現金です。

生活資金と投資資金を同じ財布に入れると、株価下落時に生活への不安が生じ、安値で売却しやすくなります。

追加投資は4回に分ける

選挙前後の下落に備えて追加投資資金を用意する場合は、一度に全額を投資しません。

私は、直近高値からのS&P500の下落率を基準に、次のように分ける考え方です。

直近高値からの下落率 追加資金の投入割合 累計投入割合
-5% 20% 20%
-10% 30% 50%
-15% 30% 80%
-20% 20% 100%

例えば追加投資に使える資金が100万円なら、-5%で20万円、-10%で30万円、-15%で30万円、-20%で20万円です。

これは下落率を予言する方法ではありません。底値が分からないことを前提に、購入価格を分散させる方法です。

株価が-5%で反転し、残りの資金を投資できなくても問題ありません。すでに保有しているETFが上昇するからです。

追加投資の資金と生活資金を混ぜない

追加投資に使えるのは、少なくとも数年間使う予定がない余裕資金です。

次のお金を下落時の買い増しに使うべきではありません。

  • 2年以内に必要となる生活費
  • 住宅の修繕費
  • 医療費や介護費
  • 納税資金
  • 法人の運転資金
  • 借入金

特に退職後は、株価が戻るまで給与収入で待つという方法が使いにくくなります。投資期間だけでなく、取り崩し開始までの期間も考える必要があります。

個別株で選挙に賭けない

共和党勝利を予想してエネルギー株、民主党勝利を予想して環境関連株を集中購入する方法は、当たれば大きな利益になります。

しかし、選挙結果を当てても原油や金利が反対方向へ動けば、株価予想は外れます。

個別株では、次の複数の予想が必要です。

  • 選挙結果
  • 政策が成立するか
  • 企業業績への影響
  • 市場がどこまで織り込んでいるか
  • 購入する時期
  • 売却する時期

私は米国株の値動きの大きさを経験し、個別株よりもVOO、VYM、QQQなどのETFを中心に投資してきました。

10倍になる銘柄を探して10万円を100万円にするより、投資元本を増やして50万円を100万円にする方が、必要な上昇率は低くなります。

  • 10万円から100万円:+900%必要
  • 50万円から100万円:+100%必要

テンバガー(株価が10倍になる銘柄)を狙う方法は、私にとって資産形成の中心ではありません。銘柄を当てることより、投資額、投資期間、継続率を高める方を優先します。

インデックスファンドを中心にする

専門家が銘柄を選ぶアクティブファンドでも、長期にわたってS&P500を上回り続けるのは簡単ではありません。

S&P Dow Jones IndicesのSPIVA調査によると、2025年は米国大型株のアクティブファンドの79%がS&P500を下回りました。

15年間では約90%がS&P500を下回っています。さらに、途中で運用を終了したファンドもあるため、現在残っている成功例だけを見ると実態を誤解することがあります。

アクティブ運用が必ず失敗するという意味ではありません。しかし、長期間にわたって指数を上回るファンドを、事前に選ぶのは難しいということです。

私はこの確率を考え、資産形成の中心を低コストのS&P500連動商品に置きます。

日本上場ETFでも為替リスクは残る

私は年齢、管理のしやすさ、法人での運用を考え、米国市場で直接保有していたETFを売却し、日本市場で購入できるETFへ切り替えました。

これは米国株の将来を悲観したためではありません。税務、資金管理、取引時間を含めた運用方法の変更です。

ただし、日本市場に上場しているS&P500連動ETFでも、為替ヘッジなしの商品にはドル円の影響があります。

  • S&P500上昇、円安:円建て評価額は大きく増加
  • S&P500上昇、円高:円建て利益は縮小
  • S&P500下落、円安:円建て下落率は小さくなる可能性
  • S&P500下落、円高:円建てでは下落率が拡大

取引所が日本に変わっても、投資対象が米国企業であることは変わりません。

純金は株式の代わりではなく保険

私は、純金を資産の5%程度保有する考え方です。

金には企業利益も配当もありません。そのため、S&P500の代わりに資産を増やす中心商品にはしません。

一方、インフレ、戦争、通貨不安、政府債務への警戒が強まる局面では、株式や債券と異なる動きをする可能性があります。

純金は利益を最大化するためではなく、予想外の事態に備える保険として保有します。

債券と超短期商品を待機資金に使う

追加投資を予定している資金を、長期間普通預金のまま置く必要はありません。満期の短い国債、短期債券、外貨建MMFなどで運用する方法もあります。

ただし、米国債や外貨建MMFには為替リスクがあります。ドル建てで元本が保たれても、円高になれば円換算では損失になる可能性があります。

2年分の生活資金は円預金、当面使わないドル資金は米国債や外貨建MMFというように、使用する通貨と時期を合わせる考え方が分かりやすいでしょう。

ニュースを見る目的を間違えない

私は毎日、米国株式市場、経済指標、企業決算、原油、金利、為替を確認しています。

しかし、ニュースを見るたびに売買するためではありません。

ニュースを確認する目的は、株価下落の理由を理解することです。

  • 企業利益が悪化したのか
  • 金利上昇によってPERが低下したのか
  • 原油や関税による一時的な下落なのか
  • 投資先の長期的な成長が崩れたのか

下落理由が分かれば、必要以上に怖がらずに済みます。市場の状況を知ることと、短期売買を繰り返すことは別です。

相場別の行動を先に決めておく

市場の状態 確認すること 私の行動
選挙前に上昇 PERと長期金利 追いかけて一括購入しない
-5~-10%下落 企業利益予想が維持されているか 積立継続、余裕資金で分割購入
-10~-20%下落 景気後退と信用不安の有無 生活資金に触れず、計画どおり追加
20%超下落 金融システムと企業利益 積立を止めず、無理な一括購入もしない
選挙後に急上昇 資産配分の偏り 売買せず、必要なら定期的に配分を戻す

信用取引と借入金は使わない

株価は長期的に上昇しても、途中で20%、30%と下落することがあります。

現物で保有していれば、株価回復まで待つことができます。しかし信用取引や借入金を使うと、追加保証金や返済期限によって、安値で売却させられる可能性があります。

過去の中間選挙後に上昇してきたという統計も、途中の下落や必要な保証金までは守ってくれません。

私は、長期投資と借入金による投資は相性がよくないと考えています。

放置できる仕組みを作る

株式投資で良い結果を残す人は、毎日売買する人とは限りません。投資したことを忘れるほど長く保有していた人が、大きな利益を得ることがあります。

ただし、本当に何も確認しないという意味ではありません。

  • 生活資金を別に確保する
  • 低コストのETFを選ぶ
  • 定期積立を自動化する
  • 年に1回程度、資産配分を確認する
  • 企業利益と長期金利の大きな変化を確認する

日々の判断を減らし、相場が荒れても計画が自動的に続く仕組みを作ることが大切です。

私の方針

私なら、中間選挙を理由にS&P500連動ETFを売りません。

2年分の生活資金を円で確保し、それとは別に追加投資資金を用意します。直近高値から5%、10%、15%、20%下落したところで分けて投資し、定期積立も止めません。

選挙結果を当てるより、市場に居続けられる資金管理を選びます。コロナショックでも積立を続けられた経験から、これが私にとって最も再現性の高い方法です。

参考資料

12.おわりに

2026年11月3日に行われるのは、大統領選挙ではなく中間選挙です。下院の全435議席と上院の35議席が改選され、トランプ政権後半の政策実行力が決まります。

8月末時点の私の予想は、民主党が上下両院を奪還する確率44%、民主党下院・共和党上院が41%、共和党が上下両院を維持する確率14%です。

選挙結果を確率加重したS&P500の予想は、選挙後1年間で+7.9%、2027年11月の中心値は8,300前後です。通常の予想範囲は8,000~8,650としました。

セクター別では、先端技術、工業・産業、ヘルスケア、通信サービスを上位に置きました。特に今回は、AI投資が半導体だけでなく、データセンター、電力、通信、冷却設備、建設、素材へ広がっている点が、過去の中間選挙とは異なります。

ただし、中間選挙より重要なのは企業利益、インフレ、米国債利回り、原油、関税、政府債務です。選挙結果が理想的でも、米10年国債利回りが5.25%を超え、同時に企業利益予想が下方修正されれば、S&P500は大きく調整する可能性があります。

予想は外れることを前提に使う

今回、できる限り最新の数字を使い、確率と予想範囲を示しました。しかし、相場は1本の線に沿って動きません。

株価は上限のない一方で、下限は0です。そのため私は、平均値だけでなく中央値を確認し、通常の価格軸より対数軸で長期的な変化を見ることを大切にしています。

8,300という中心値を当てることより、7,000台へ下落しても投資を続けられる準備の方が重要です。

私の方針

私は、中間選挙を理由にS&P500連動ETFを売りません。

2年分の生活資金を円で確保し、それとは別の余裕資金を、直近高値から5%、10%、15%、20%下落した段階で分けて投資します。定期積立も止めません。

コロナショックでは、何日も続く暴落を経験しました。それでも積立を続けたことで、株価回復の時期を当てずに済みました。今回の中間選挙でも、選挙を当てることより、市場に居続けることを選びます。

毎日の市場ニュースを確認するのは、短期売買を繰り返すためではありません。株価が下落した理由を理解し、必要以上に怖がらないためです。

長い記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました。今回の分析が、中間選挙と米国株を落ち着いて考えるためのお役に立てば嬉しいです。

それでは、今日も一日、明るく元気に笑顔で過ごしましょう。

ご参考になりましたらこちらから応援いただけると嬉しいです。

おことわり

本記事の数値と予想は、2026年8月末時点の情報に基づく私個人の分析です。将来の株価や投資成果を保証するものではありません。選挙情勢、企業利益、金利、原油、為替などの変化によって予想は修正されます。

投資は自己責任にてお願いします。

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