主要3指数を対数軸で評価してみる

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はじめに

突然ですが、「対数(たいすう)」という言葉を聞いて、高校数学の授業を思い出した方も多いのではないでしょうか。

私はかつて、原子力発電所の原子炉建屋(原子炉を格納する巨大なコンクリート構造物)の耐震壁が、地震のときにどのような挙動をするかを研究していました。その実験データの統計処理で使ったのが、「対数正規分布(たいすうせいきぶんぷ)」という考え方です。

この考え方の理論的な根拠となったのが、アメリカのアン(Alfredo H-S. Ang)先生とタン(Wilson H. Tang)先生が1975年に著した教科書です。

Probability Concepts in Engineering Planning and Design (工学の計画と設計における確率の概念) John Wiley & Sons, 1975年

この本の中で、ふたりはこんな考え方を示しています。

「自然界から得られるデータは非負値(ゼロより大きい値)であり、そのほとんどは対数正規分布と仮定すると全体の傾向をうまく把握できる」

株価も、ゼロ以上の非負値です。そして長期的に見れば、自然界の現象と同じように対数正規分布に近い振る舞いをするのではないか——この考えをヒントに、コロナ禍の底値(2020年3月23日)を起点として、S&P500・DOW30・NASDAQの3指数を対数軸でグラフ化してみました。


対数軸で見ると何がわかるのか

通常のグラフ(線形軸)で株価を描くと、ある問題が生じます。たとえば「100から200に上がった(2倍)」と「200から100に下がった(半減)」は、実質的には同じ規模の変動です。しかし線形軸では、上昇のほうが視覚的に大きく、下落のほうが小さく見えてしまいます。

対数軸を使うと、この問題が解消されます。2倍の上昇と半減が、グラフ上でまったく同じ高さの変化として表現されるからです。上下対称に評価できるというわけです。長期の株価チャートを対数軸で見ることは、プロの投資家の間では標準的な手法です。


対数移動中央値と標準偏差バンドとは

今回のチャートでは、単なる対数軸グラフにとどまらず、2つの指標を重ね合わせています。

移動中央値とは、過去N週間の価格の対数値を小さい順に並べたときの、ちょうど真ん中の値のことです。一般によく使われる移動平均とは異なり、急落・急騰などの外れ値に引っ張られにくいという特性があります。

**標準偏差バンド(±1σ・±2σ)**とは、その中央値からどれくらい離れているかを示す帯のことです。対数軸上で計算しているため、上下の幅が「同じ%変動」を意味する対称な帯になります。

  • ±1σの範囲内:約68%の確率で収まる「日常的な値動きの範囲」
  • ±2σの範囲内:約95%の確率で収まる範囲

つまり価格が±2σを超えているということは、統計的に見て「5%程度しか起きないはずの、異常な値動き」が発生していることを意味します。

過去のチャートを見ると、FRBの急激な利上げ局面(2022年)や2025年の関税ショックの場面で、NASDAQが±2σを大きく超えているのが確認できます。まさに市場に大きな事象が発生した証拠と見ることができます。


チャートの使い方

上部のボタンでS&P500・DOW30・NASDAQを切り替えられます。また移動窓を13週(約3ヶ月)・26週(約半年)・52週(1年)から選択できます。窓を短くするほどバンドが敏感に動き、長くするほど大局的なトレンドが見えやすくなります。グラフ上でマウスを動かすと、各データ点の詳細な数値も確認できます。


大切なお断り

最後に、重要なことをひと言。

このチャートはあくまで過去のデータの分析です。対数標準偏差バンドを使った分析は、「いまの価格が歴史的に見て異常水準かどうか」を判断する参考にはなります。しかし、将来の株価を予測する能力はほとんどありません

市場は合理的な計算式では動かない局面が多く、過去のパターンが未来に再現されるとは限りません。今回は、構造工学の世界で使われてきたデータ分析の考え方を株価に応用してみた、技術紹介としてお楽しみいただければ幸いです。


本記事のチャートは、コロナ禍の底値(2020年3月23日)を起点(= 100)として各指数を正規化した週次データをもとに作成しています。データは近似値であり、投資助言を目的としたものではありません。

 

Log-Scale Volatility Band
コロナ底(2020/3/23)起点 対数標準偏差バンド
対数移動中央値 ± 1σ / 2σ | 週次データ | 起点 = 100
移動窓(週)
データ: 週次近似値 対数標準偏差バンドは上下対称(騰落率ベース) © 2026 sp500-up.com

 


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