室井のマーケット視点
9月18日の米国市場で最も重要だったのは、米10年国債利回りが5%目前まで上昇しても、AI・半導体株への資金流入が止まらなかったことです。S&P500とNASDAQは上昇しましたが、Dow30は下落し、値下がり銘柄の方が多い一日でした。指数だけを見て「市場全体が強い」と判断するには、少し違和感があります。
一方、Sandisk、Seagate、Lam Researchなどが大きく上昇しました。AI投資の対象はGPUから、メモリー、記憶装置、光通信、製造装置へ広がっています。何度も言っていますが、AIを動かすには膨大なデータに加え、電力、冷却、通信設備が欠かせません。この流れは一時的な人気ではなく、数年単位の設備投資になる可能性があります。
ただし、金利5%、原油96ドル台、ドル円156円台という環境は楽観できません。私は個別株を追わず、ETFで市場全体の成長を持ち続けます。毎日のニュースは確認しますが、日々の値動きで長期方針まで変えないことが大切です。
S&P500ヒートマップ
5%以上上昇したS&P500構成銘柄
- TER:Teradyne, Inc.(先端技術) +5.19%
半導体関連株への買いが広がる中、半導体試験装置を手掛けるTeradyneも上昇しました。AI向け半導体の高性能化に伴い、製造後の検査工程が複雑になるため、試験装置需要が拡大するとの期待が株価を押し上げました。 - AMAT:Applied Materials, Inc.(先端技術) +6.51%
AI関連株への資金流入を背景に、半導体製造装置大手のApplied Materialsが買われました。AI向け半導体や高性能メモリーの増産には新たな製造設備が必要となるため、中長期的な設備投資の拡大期待が続いています。 - STX:Seagate Technology Holdings PLC(先端技術) +6.93%
AIデータセンターで保存される情報量の急増を背景に、大容量ハードディスク需要への期待から上昇しました。AI投資の恩恵がGPUだけでなく、データを低コストで長期間保存するストレージ分野にも広がっています。 - LRCX:Lam Research Corporation(先端技術) +6.98%
半導体製造装置株がそろって上昇する中、Lam Researchにも買いが集まりました。AI向け高性能メモリーや先端半導体の増産により、同社が強みを持つ成膜・エッチング装置(半導体の回路を形成する装置)の需要拡大が期待されています。 - COHR:Coherent Corp.(先端技術) +7.22%
AIデータセンター向け光通信部品の需要拡大期待から上昇しました。大量の情報を高速でやり取りするには光通信網の増強が欠かせません。AI設備投資の対象が半導体から通信部品へ広がる流れが、同社株への買いにつながりました。 - HOOD:Robinhood Markets, Inc. Class A(金融) +9.12%
ビットコインが前日比で大きく上昇したため、暗号資産取引を扱うRobinhoodも急伸しました。暗号資産価格の上昇局面では個人投資家の売買が活発になりやすく、取引関連収入が増えるとの期待が高まりました。 - SNDK:Sandisk Corporation(先端技術) +10.99%
AI関連株と半導体株への買いが強まる中、データ保存用フラッシュメモリーを手掛けるSandiskが大幅高となりました。AIデータセンターの増設による記憶装置需要の拡大に加え、メモリー市況改善への期待も株価上昇につながりました。 - COIN:Coinbase Global, Inc. Class A(金融) +11.66%
ビットコインが約5%上昇して8万ドル前後まで回復したことを受け、暗号資産取引所大手のCoinbaseがS&P500構成銘柄で最大の上昇となりました。取引量と手数料収入の増加を期待する買いが集中しました。
5%以上下落したS&P500構成銘柄
- GM:General Motors Company(一般消費材) -5.10%
自動車関連株への売りが広がる中、GMも大幅に下落しました。長期金利の上昇による自動車ローン負担の増加や、原油高による大型車需要への影響が警戒されました。明確な単一材料というより、高値圏からの利益確定売りが重なった動きです。 - QCOM:QUALCOMM Incorporated(先端技術) -5.82%
半導体株の一部が上昇する一方、QUALCOMMには売りが集中しました。Appleが自社開発モデムへの移行を進め、将来的に同社製品への依存を減らすとの懸念が続いています。米10年国債利回りが5%近くまで上昇したことも、高PER銘柄の売却を促しました。 - NUE:Nucor Corporation(素材) -6.32%
第3四半期の調整後EPS見通しを5.55~5.65ドルと発表し、市場予想の約5.87ドルを下回ったため急落しました。原材料部門で販売価格と出荷量が低下し、前四半期に計上した一時的な還付金もなくなります。鉄鋼事業の需要見通し自体は維持されています。
セクター別騰落率
市場全体では、半導体株への買いが続き、先端技術(Technology)だけが明確に上昇した。一方、米10年国債利回りが5%近くまで上昇したため、公益事業(Utilities)や不動産(Real Estate)など金利の影響を受けやすいセクターが下落した。原油高と追加利上げへの警戒から、資金がAI・半導体関連へ集中する展開であった。
- 公益事業(Utilities) -1.27%
米長期金利の上昇を受け、電力会社を中心に売りが広がった。公益事業は安定した配当が魅力だが、国債利回りが上昇すると相対的な投資妙味が低下しやすい。原油高による燃料費や資金調達費用の増加も警戒され、Constellation EnergyやVistraなどの下落がセクター全体を押し下げた。
主要3指数とドル円の動き
- S&P500(7,650.50、前日比+0.17%)
S&P500は小幅に上昇しました。原油価格の反落でインフレへの警戒がやや和らぐ一方、米10年国債利回りが一時5%を上回り、上値は抑えられました。半導体株が指数を押し上げましたが、値下がり銘柄の方が多く、市場全体が強かったとは言えません。長期投資家としては、指数の上昇率より資金がAI関連へ偏っている点を見ておきたい一日です。 - Dow30(51,682.64、前日比-0.18%)
Dow30は小幅に下落しました。高い金利が続くとの見方から、景気敏感株や安定配当株への売りが優勢となりました。原油価格は下落したものの100ドル台にあり、企業コストや消費への影響は残っています。ハイテク株の比率が低いDow30はAI・半導体株の上昇効果を受けにくく、NASDAQとの違いが表れました。 - NASDAQ(26,522.54、前日比+0.39%)
NASDAQは主要3指数で最大の上昇となりました。AIへの投資意欲が戻り、NVIDIA、Broadcom、Micronなどの半導体株が買われました。米長期金利が5%近くまで上昇する環境では、本来グロース株(将来の成長期待が高い株)に不利ですが、今回はAIの成長期待が金利上昇の影響を上回りました。ただし、銘柄ごとの差は大きく、全面高ではありません。 - ドル円(156.8550円、前日比+0.58%)
ドル円は円安・ドル高となりました。日銀は政策金利を1.25%へ引き上げましたが、2人の委員が反対し、今後の追加利上げに慎重な印象を与えました。一方、FRBは追加利上げの可能性を残しており、日米の金融政策の差からドルが買われました。一時は157円台後半まで上昇しましたが、日本当局によるレートチェック(為替介入に備えた相場確認)の報道を受け、156円台へ戻しました。
原油先物・米10年国債利回り・VIX・金先物の動き
- WTI原油先物(96.08ドル、前日比-1.18%)
WTI原油先物は下落しました。サウジアラビアのパイプライン攻撃による供給懸念は残っていますが、部分的な操業再開や代替輸送への期待から、供給不足への過度な警戒が後退しました。ただし96ドル台は依然高く、企業コストや米国のインフレを再び押し上げる水準です。 - 米10年国債利回り(4.998%、前日比+1.03%)
米10年国債利回りは5%目前まで上昇しました。FRBが政策金利を引き上げ、追加利上げの可能性も残したため、債券が売られました。長期金利の上昇は住宅や企業の借入負担を増やし、高PER銘柄には不利です。それでもNASDAQが上昇しており、AI関連への投資意欲の強さが表れています。 - VIX指数(14.81、前日比-4.08%)
VIX指数は14台へ低下しました。原油価格が反落し、S&P500とNASDAQが上昇したことで、投資家の短期的な不安は和らぎました。一般に20を下回ると市場心理は落ち着いているとされます。ただし、長期金利が5%に接近し、中東情勢も不安定なため、現在の低さには少し楽観的すぎる印象もあります。 - 金先物(4,424.90ドル、前日比+0.57%)
金先物は1週間ぶりの高値圏まで上昇しました。原油価格の反落でインフレへの過度な警戒が和らぎ、FRBの利上げ後に金を売っていた投資家の買い戻しが入りました。ドル高と金利上昇は本来、金には不利ですが、中東情勢への備えやインフレ対策としての需要がそれを上回りました。
私の米国株ポートフォリオ 前日比+1.76%
私のポートフォリオは大きく上昇しました。iFreeETF FANG+とMAXISナスダック100上場投信がともに+2.40%となり、成長系ETFが全体を引っ張りました。S&P500連動商品も+1.18%から+1.88%と堅調です。一方、連続増配株ETFと高配当株ETFの上昇は1%未満にとどまり、AI・半導体を含む大型ハイテク株へ資金が集中したことが分かります。前日の米国市場と円安が日本市場のETFや投資信託へ反映された一日でした。上昇は素直にうれしいですが、米長期金利は5%目前です。私は短期的な勢いを追わず、ETF中心の構成を維持します。
経済指標発表結果
- 鉱工業生産(前月比0.0%、予想+0.3%、前回+0.2%)
8月の鉱工業生産は横ばいとなり、市場予想を下回りました。米国の生産活動に勢いが欠けることを示し、追加利上げには慎重になるべき内容です。ただし、市場では原油高によるインフレ懸念とFRBの強硬姿勢が優先され、米10年国債利回りは5%目前まで上昇しました。景気の弱さと金利上昇が同時に進む点には注意が必要です。 - 製造業生産(前月比-0.3%、予想+0.3%、前回+0.2%)
製造業生産は予想に反して減少し、7カ月続いた増加が途切れました。自動車やコンピューターなど耐久財の生産低下が響いています。高金利とエネルギーコストの上昇が企業活動へ影響し始めた可能性があります。AIや防衛関連の設備投資は続いていますが、製造業全体へ効果が広がっているとは言いにくい結果です。 - 設備稼働率(76.3%、予想76.4%、前回76.3%)
設備稼働率は前月から変わらず、市場予想をわずかに下回りました。長期平均より低く、工場などの生産設備に余力が残っています。需要が過熱して生産能力が不足している状態ではないため、製造業から強い物価上昇圧力が生じる可能性は限定的です。ただし、FRBの追加利上げ懸念を打ち消すほど弱い数字でもありませんでした。 - 米国景気先行指数(前月比-0.1%、予想+0.1%、前回+0.2%)
今後の景気を予測する景気先行指数は3月以来の低下となり、市場予想も下回りました。消費者心理の弱さが主な要因で、米国経済は成長を続けながらも減速方向にあります。S&P500とNASDAQは上昇しましたが、景気敏感株の多いDow30は下落しました。長期投資家としては、指数より企業利益の変化を丁寧に見たい局面です。
主要銘柄の決算発表結果
主要銘柄の決算発表はありませんでした。
主な経済ニュース
- 米10年国債利回りが5%目前まで上昇
FRBが政策金利を0.25ポイント引き上げ、追加利上げの可能性も残したため、米10年国債利回りは4.998%まで上昇しました。借入コストの増加は住宅や設備投資を抑え、高PER銘柄には不利です。それでもNASDAQは上昇しており、AI関連企業の利益成長への期待が金利上昇の影響を上回りました。(Reuters 9/18) - 原油は反落しても96ドル台の高水準
WTI原油先物は96.08ドルへ下落しました。サウジアラビアのパイプライン攻撃後も、代替輸送や部分的な操業再開が進むとの見通しから、供給不足への過度な警戒が後退しました。ただし、欧州向けの一部供給停止は続いており、原油高が長引けば米国の物価と企業コストを再び押し上げます。(Reuters 9/18) - AI・半導体株へ資金が集中
NVIDIA、Broadcom、Micronなどが上昇し、NASDAQは+0.39%となりました。Sandisk、Seagate、Lam Research、Applied Materialsも大きく買われ、AI投資の対象がGPUからメモリー、記憶装置、製造装置へ広がっています。データセンターでは電力、冷却、通信、保存装置まで一体の投資が必要です。(WSJ 9/18) - ビットコイン上昇で暗号資産関連株が急伸
ビットコインが約5%上昇して8万ドル前後を回復し、Coinbaseは+11.66%、Robinhoodは+9.12%となりました。暗号資産価格が上昇すると取引量が増え、取引所の手数料収入拡大が期待されます。一方、規制法案を巡る不透明感は残り、業績が市場心理に左右されやすい点には注意が必要です。(Barron’s 9/18) - 日銀利上げ後も円安が進行
日銀は政策金利を1.25%へ引き上げましたが、2人の委員が反対し、今後の追加利上げに慎重な印象を与えました。FRBが金融引き締めを続ける姿勢を示したこともあり、ドル円は156円台後半へ上昇しました。日本当局によるレートチェックの報道後は、為替介入への警戒から円安の勢いが弱まりました。(Reuters 9/18) - 米製造業生産が7カ月ぶりに減少
8月の製造業生産は前月比-0.3%となり、+0.3%の市場予想を下回りました。自動車やコンピューターなど耐久財の生産減少が響いています。高金利とエネルギーコストが製造業へ影響し始めた可能性があります。景気の弱さと金利上昇が同時に進む状況は、企業利益には厳しい組み合わせです。(Reuters 9/18) - AIの安全性評価へ20億ドルを投資
AnthropicとAccentureは、高度なAIモデルを独立して評価するため、5年間で少なくとも20億ドルを投じる計画を発表しました。AIが予想外の行動を取る事例が増える中、安全性検証や外部監査も成長分野になりそうです。AI投資は計算能力の競争だけでなく、セキュリティ、評価、監視へ広がる段階に入っています。(Reuters 9/18) - Nucorの利益見通しが市場予想を下回る
鉄鋼大手Nucorは、第3四半期の調整後EPSを5.55~5.65ドルと予想し、市場予想の約5.87ドルに届きませんでした。原材料部門で販売価格と出荷量が低下し、株価は-6.32%となりました。鉄鋼需要そのものは崩れていませんが、高金利と製造業の減速が素材企業の利益へ及ぼす影響を確認する必要があります。(Reuters 9/18) - 米国株ファンドから4週連続で資金流出
米国株ファンドから1週間で314.4億ドルが流出し、4週連続の売り越しとなりました。原油高、インフレ、追加利上げへの不安が投資家を慎重にしています。一方、先端技術、金融、一般消費材には資金が流入しており、株式市場から全面的に逃げるのではなく、成長が期待できる分野へ投資先を絞る動きです。(Reuters 9/18) - Volkswagenが業績見通しを大幅に引き下げ
VolkswagenはPorsche事業の不振などを受け、約100億ユーロの一時費用を計上し、2026年の利益率見通しを最大1%へ引き下げました。中国での販売低迷、米国の関税、アジア企業との競争が重なっています。欧州企業のニュースですが、GMなど米自動車株にも売りが波及し、世界の自動車産業が直面する構造変化を示しました。(Reuters 9/18)
経済指標発表予定
以下の経済指標が発表される予定です。
主要銘柄の決算発表予定
9/21には、主要銘柄の決算発表は予定されていません。
おわりに
米国株市場は、AIへの期待が続く一方、米長期金利は5%目前まで上昇し、原油高や中東情勢も残っています。指数だけを見れば穏やかな一日でしたが、その内側では銘柄ごとの差が広がっていました。こうした時ほど、目先の値動きを追いかけず、企業の利益成長を長い目で見ることが大切だと感じています。
毎朝このブログを読んでくださり、ありがとうございます。市場を調べ、記録し続ける励みになっています。
それでは、今日も一日、明るく元気に笑顔で過ごしましょう。
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おことわり
投資は自己責任にてお願いします。
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図表のレファレンス
- S&P500ヒートマップ: finviz
- 主要3指数とドル円: Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
- セクター別騰落率: finviz
- 経済指標結果/予定: investing.com日本語版
- 決算発表結果/予定: investing.com日本語版
- 主要指数の動き : Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
- 自分の米ドル建ポートフォリオ: Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
著者プロフィール
室井一夫(Kazuo Muroi)
Muroi Universal Research on Investment LLC 代表社員
一級建築士・建築1級施工管理技士・工学修士
Facebookグループ「米国株_投資の部屋」管理人(約4.7万人)
米国株式市場と経済動向に関する情報を毎日発信しています。
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