室井のマーケット視点
今週の米国株市場の本質は、「AI企業の利益成長」と「それを抑える高い金利」の綱引きでした。週前半はNVIDIA決算を前に半導体株から安定収益銘柄へ資金が移りましたが、原油と金利の低下を受けて成長株が買い戻されました。ただし、金利低下の背景には消費者心理や住宅販売の悪化があります。さらにGDP成長率が前回から鈍化する一方、PCE物価指数は予想を上回りました。景気が減速すれば金利が下がって株高になる、という単純な構図ではありません。
NVIDIAの好決算と次年度約70%の売上高成長見通しによって、AI投資の拡大は確認できました。しかし市場の関心は、GPUを何台売るかだけでなく、AIを実際の利益へ変えられるかへ移っています。SalesforceやCrowdStrikeの上昇は、その変化を示しています。
一方、相場の広がりは弱いままです。週間で上昇したのは11セクター中3セクターだけで、通信サービス、先端技術、金融に資金が偏りました。指数は一部の大型株に押し上げられており、平均値より中央値のほうが市場の実感に近い状態です。
週末にはウォーシュFRB議長の発言で利上げ観測が強まり、米10年国債利回りは4.72%、ドル円は160円台へ上昇しました。半導体と金が売られましたが、VIX指数は14.40です。恐怖による投げ売りではなく、高過ぎた期待を調整する動きと見ています。
今週はAI相場が崩れたのではなく、「AIなら何でも上がる相場」から「利益を生み出せる企業を選ぶ相場」へ一段進んだのでしょう。同時に、企業利益が伸びても金利が高ければ、株価が素直に上昇しないことも確認できました。私は短期の資金移動を追わず、ETFを保有したまま企業利益の成長を待ちます。相場の偏りや金利、為替を知ることは必要ですが、それを理由に毎日売買する必要はありません。市場に居続けることが、今週のような難しい相場への私なりの答えです。
S&P500ヒートマップ
5%以上上昇したS&P500構成銘柄
- WDAY:Workday +5.76%
前日の取引終了後に発表した決算が市場予想を上回り、買いが集まりました。調整後EPSは2.75ドル、売上高は前年同期比13%増の26.5億ドルでした。AIエージェントが新規年間契約額の25%超に関係したことや、通期のサブスクリプション収入見通しの下限を引き上げたことも評価されました。 - DPZ:Domino’s Pizza +5.40%
目立った新規材料は確認されませんでしたが、年初から大きく下落していた反動から、割安感に注目した買いが入りました。同社は米国ピザ市場で約23%のシェアを持ち、長期的な市場占有率の拡大余地が改めて注目されています。ただし、既存店売上高の伸び悩みは引き続き課題です。 - LULU:lululemon athletica +5.05%
9月3日の決算発表を前に、売られ過ぎとの見方から買い戻されました。株価は過去1年間で大幅に下落しており、著名投資家が割安感を指摘したことも投資家の関心を集めています。一方、主力の米州市場では既存店売上高が低迷しているため、今回の上昇は業績改善を確認した動きではなく、決算前の持ち高調整と考えるのが妥当です。
5%以上下落したS&P500構成銘柄
- PYPL:PayPal Holdings -12.71%
決済大手Stripeと投資会社Advent Internationalによる買収協議が打ち切られたとの報道を受け、急落しました。買収提案は1株60.50ドル、総額530億ドル超とされていましたが、評価額や規制上の問題で合意に至らなかったもようです。買収期待で上昇していた分が一気に剥がれました。 - MRVL:Marvell Technology -10.28%
決算は売上高27.4億ドル、調整後EPS0.94ドルと市場予想を上回りましたが、Google向け独自設計AI半導体から大きな売上が生じるのは2029年度以降との説明が嫌気されました。株価は年初から約3倍になっており、良好な業績だけでは高い期待に届かず、利益確定売りが膨らみました。 - PCG:PG&E Corporation -7.52%
出来高が通常の約4.9倍に膨らみ、大きく売られました。明確な新規の企業発表は確認できませんでしたが、カリフォルニア州の乾燥と強風を受けた計画停電の可能性や、山火事に伴う賠償リスクへの警戒が再燃したとみられます。公益事業株でありながら、同社は山火事関連の情報に株価が敏感に反応します。 - GNRC:Generac Holdings -6.84%
発電機やデータセンター向け電力設備を手掛ける同社には、確認できる新たな悪材料はありませんでした。データセンター関連株として先行して上昇していた反動に加え、FRB議長の発言を受けて9月の利上げ観測が高まり、高PER(株価収益率が高い状態)の成長株から資金を引き揚げる動きが強まったと考えられます。 - LITE:Lumentum Holdings -6.39%
Marvellの決算後、AIデータセンター向け光通信関連株全体に売りが波及しました。Lumentum固有の新たな悪材料は確認されていません。同社株は年初から約2.4倍、8月だけでも大幅に上昇していたため、AI投資への期待が高まり過ぎた銘柄をいったん売る動きが強く表れました。 - COIN:Coinbase Global -6.33%
ビットコインが一時3カ月ぶりの高値となる81,000ドル台に上昇した後、80,000ドルを割り込んだことで利益確定売りが広がりました。さらに、FRB議長の発言を受けて9月の利上げ確率が上昇し、暗号資産のような値動きの大きい資産への投資姿勢が慎重になりました。 - FIX:Comfort Systems USA -5.96%
空調・電気設備工事を手掛ける同社に新たな業績悪化材料は確認されませんでした。AIデータセンター建設の恩恵を受ける銘柄として株価は年初から大幅に上昇していましたが、直近では6営業日続落していました。割高感への警戒と、上昇局面で積み上がった利益を確定する売りが続いたとみられます。 - COHR:Coherent -5.48%
AIデータセンター向け光通信部品を手掛けるCoherentにも、Marvellの決算をきっかけとした連想売りが広がりました。同社固有の悪材料は確認されず、AI関連設備への需要は引き続き強いとされています。ただし、株価は過去1年間で大幅に上昇しており、高い成長期待を織り込んだ銘柄ほど売りが大きくなりました。 - CIEN:Ciena -5.35%
通信ネットワーク機器を手掛けるCienaも、Marvellから波及したAI・光通信関連株の売りに巻き込まれました。9月3日の決算発表を控え、事前に持ち高を減らす動きも加わったと考えられます。株価は過去1年間で約4倍となっているため、決算前に利益を確定したい投資家が増えやすい状況でした。 - LRCX:Lam Research -5.24%
Marvellの下落をきっかけに半導体関連株全体へ売りが広がり、半導体製造装置大手のLam Researchも下落しました。FRB議長の発言で利上げ観測が強まったことに加え、中国向け輸出規制への警戒も残っています。株価が過去1年間で約3倍に上昇していたため、利益確定売りが出やすい状態でした。 - HOOD:Robinhood Markets -5.01%
ビットコインが81,000ドル台から80,000ドル割れへ反落し、暗号資産取引収入への期待が後退しました。9月の利上げ観測が高まったことも、個人投資家の積極的な取引が収益を左右する同社には逆風となりました。Coinbaseとそろって下落しており、暗号資産関連株全体の利益確定売りと判断できます。
セクター別騰落率
11セクターのうち5セクターが上昇、6セクターが下落しました。Alphabet、Meta Platforms、Amazonなどの大型株が指数を支えた一方、半導体、電力設備、資源関連には売りが集中しました。上昇銘柄数より下落銘柄数が多く、指数の小幅な動き以上に市場内部の弱さが目立っています。大型インターネット株への資金集中と、AIインフラ関連株からの利益確定が同時に進んだ一日でした。
- 通信サービス(Communication Services) +1.43%
Alphabetが+1.70%、Meta Platformsが+1.21%、Netflixが+2.37%となり、セクターを押し上げました。広告収入やAIを活用したサービス拡大への期待が続くなか、半導体株から大型インターネット株へ資金を移す動きが見られました。セクター内の多くの銘柄が上昇しており、比較的広がりのある上昇でした。 - 一般消費材(Consumer Cyclical) +1.35%
Amazonが+3.95%と大きく上昇し、セクター全体を牽引しました。McDonald’sやChipotle Mexican Grillなどの外食株にも買いが入り、米国消費の底堅さが評価されています。一方、Teslaは-1.71%でした。自動車株の弱さを電子商取引と外食関連が補い、一般消費材としては力強い上昇となりました。 - 工業・産業(Industrials) -1.01%
GE Vernovaが-4.39%、Eatonが-3.19%、Caterpillarが-2.05%となり、電力設備や産業機械関連を中心に売られました。AIデータセンター向け需要への期待から株価が大きく上昇してきた銘柄が多く、利益確定売りが続いています。Deereは+1.23%でしたが、セクター全体の下落を補えませんでした。 - 公益事業(Utilities) -1.12%
PG&Eが-7.52%と急落し、NextEra Energyも-1.95%となりました。PG&Eでは計画停電や山火事に伴う賠償リスクへの警戒が再燃したとみられます。加えて、FRB議長の発言を受けて9月の利上げ観測が強まり、金利上昇に弱い高配当の電力株全体にも売りが広がりました。 - 先端技術(Technology) -1.41%
NVIDIAが-4.56%、Marvell Technologyが-10.28%、Lam Researchが-5.24%、Applied Materialsが-4.34%となり、半導体関連株が下落を主導しました。一方、Microsoftは+1.68%、Appleは+1.61%でした。大型ソフトウェア株の上昇では半導体株の下落を補えず、AI関連内部で明暗が分かれました。 - 素材(Basic Materials) -1.52%
11セクター中で最大の下落となりました。金価格が約3%下落したことでNewmontやBarrick Miningが売られ、Freeport-McMoRanも-2.51%となりました。金属価格の下落に加え、FRBの利上げ観測がドル高を招きやすいとの警戒も資源株には不利です。Lindeなど一部の化学株は上昇しましたが、鉱山株の下落が大きく響きました。
主要3指数とドル円の動き
- S&P500(7,711.76、前日比-0.25%)
S&P500は一時7,771.48まで上昇しましたが、終盤に売りが強まり、安値に近い水準で取引を終えました。FRBのウォーシュ議長が2%の物価目標を改めて重視し、9月の利上げ観測が高まったことが投資家心理を冷やしました。大型インターネット株は上昇した一方、半導体、公益事業、素材など幅広い業種が下落しており、指数の下落率以上に市場内部は弱い一日でした。 - Dow30(53,559.99、前日比-0.02%)
Dow30は前日終値を挟んで動き、一時53,819.65まで上昇したものの、ほぼ横ばいで終了しました。金融株や生活必需品株が比較的堅調だった一方、工業・産業、公益事業の下落が上昇分を打ち消しました。金利上昇が銀行株には有利でも、高配当株や設備関連株には不利に働くため、Dow30内部でも方向感が分かれています。指数だけを見れば平穏ですが、銘柄間の差は大きくなっています。 - NASDAQ(26,402.42、前日比-0.52%)
NASDAQは一時26,700.68まで上昇しましたが、半導体株への売りが強まり、主要3指数で最大の下落となりました。NVIDIAが-4.56%、Marvell Technologyが-10.28%、Lam Researchが-5.24%となり、AI関連の利益確定売りが目立ちました。一方、Microsoft、Apple、Alphabet、Meta Platformsは上昇しています。AI相場そのものが崩れたというより、半導体からソフトウェアや大型ネット企業へ資金が移動した一日と感じます。 - ドル円(160.0890円、前日比+0.45%)
ドル円は159.3750円で始まり、一時160.2020円まで上昇しました。ウォーシュ議長がインフレ抑制を優先する姿勢を示したことで、9月の利上げ確率が上昇し、日米金利差の拡大を見込んだドル買い・円売りが進みました。160円台は政府・日銀による為替介入への警戒が強まりやすい水準です。米国株を円で保有する投資家には評価額を押し上げる効果がありますが、今後の円高反転も考えておく必要があります。
原油先物・米10年国債利回り・VIX・金先物の動き
- WTI原油先物(83.39ドル、前日比-0.17%)
WTI原油先物は一時82.25ドルまで下落した後、83ドル台へ戻しました。ホルムズ海峡の安全な航路を確保する協議への期待や、米国とイランの対立が交渉へ向かうとの観測から、供給不安がやや後退しました。週間では約4%下落しています。ただし海峡を通過する船舶数は平常時を大きく下回っており、中東情勢次第で再び変動が大きくなる可能性があります。 - 米10年国債利回り(4.7200%、前日比+1.03%)
米10年国債利回りは4.6880%で始まり、一時4.7300%まで上昇しました。FRBのウォーシュ議長がインフレ率2%への回帰を重視し、追加利上げの可能性を残したことで国債が売られました。金利上昇は将来利益の現在価値を低下させるため、高PER(株価収益率が高い状態)の半導体株や成長株に売りが出やすくなります。この日のNASDAQ下落とも整合する動きです。 - VIX指数(14.40、前日比-0.76%)
VIX指数は一時14.84まで上昇しましたが、終値は14.40と前日を下回りました。S&P500とNASDAQが下落したにもかかわらず、VIXが上昇しなかった点から、投資家は今回の下落を市場全体の危機ではなく、半導体など上昇銘柄の利益確定と受け止めています。ただし14台は警戒感がかなり低い水準であり、長期投資家としても市場の油断には注意したいところです。 - 金先物(4,508.60ドル、前日比-3.33%)
金先物は4,656.00ドルで始まった後、一時4,495.00ドルまで急落しました。ウォーシュ議長の発言で利上げ観測が強まり、米国債利回りとドルが上昇したことが主因です。金は利息を生まないため、金利上昇時には相対的な魅力が低下します。直前まで3カ月ぶりの高値圏にあったため、利益確定売りも重なりました。地政学リスクが消えたのではなく、金融政策がこの日の値動きを上回った形です。
私のポートフォリオ +0.58%(前日比)
私のポートフォリオは、FANG+が+1.00%、NASDAQ100が+0.75%となり、成長株系ETFが全体を押し上げました。S&P500連動商品も+0.31%から+0.86%とそろって上昇しています。一方、米国連続増配株ETFは-0.12%でした。これは8月28日の日本市場での値動きであり、前夜の米国市場におけるAI・大型ハイテク株の上昇が反映されたものです。その後の米国市場では半導体株が下落したため、次の取引日には逆方向の影響も想定されます。こうした時間差はありますが、私は日々の上下を追い過ぎず、ETFを軸に市場全体の成長を長く取り込む方針を続けます。
経済指標発表結果
- ウォーシュFRB議長のジャクソンホール講演
ウォーシュ議長は、最近の物価指標だけではインフレの基調が改善したとは判断できないと述べ、2%の物価目標を重視する姿勢を示しました。9月の利上げ確率は講演前の約35%から約60%へ上昇し、米10年国債利回りは4.72%、ドル円は160円台まで上昇しました。半導体株や金先物が売られるなど、この日の市場を最も大きく動かした発言です。 - シカゴ購買部協会景気指数(47.1、予想57.9、前回57.6)
シカゴ地区の製造業景況感は予想を大幅に下回り、景気の拡大と縮小の境目である50も割り込みました。企業の受注、生産、雇用などが弱まっている可能性を示しています。本来は利上げ観測を抑える内容ですが、市場はウォーシュ議長のインフレ警戒発言をより重視しました。景気指標が弱いなかで金利が上昇するという、株式市場には居心地の悪い組み合わせです。 - ミシガン大学1年先期待インフレ率(4.0%、予想4.3%、前回4.2%)
消費者が予想する今後1年間のインフレ率は4.0%へ低下し、市場予想も下回りました。期待インフレ率は、値上げや賃上げを受け入れる心理を通じて実際の物価にも影響するため、FRBが注目する指標です。今回の低下はインフレ抑制の面では好材料ですが、4%は依然高い水準です。議長発言を打ち消すほどの安心材料にはなりませんでした。 - ミシガン大学5年先期待インフレ率(3.3%、予想3.3%、前回3.3%)
中長期の期待インフレ率は3.3%で横ばいとなりました。短期のインフレ見通しは改善したものの、消費者は物価上昇が長く続くと考えていることが分かります。FRBが利上げの可能性を完全には排除できない背景の一つです。長期金利が4.7%台へ上昇したことで、将来の利益への期待が株価を支える半導体株や成長株には厳しい環境となりました。 - ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値(51.7、予想51.0、前回55.2)
消費者信頼感は市場予想を上回りましたが、前月の55.2からは低下しました。消費者期待指数も51.5と予想の50.6を上回った一方、前回の55.4には届いていません。米国経済の約7割を占める個人消費に対し、物価高や高金利への不満が続いていることを示します。予想よりは良いものの、消費が力強く回復していると判断できる内容ではありません。
主要銘柄の決算発表結果
8/28には、主要銘柄の決算発表がありませんでした。
主な経済ニュース
- ウォーシュFRB議長の発言で9月利上げ観測が上昇
ウォーシュ議長はジャクソンホール講演で、最近の物価指標だけではインフレの基調が改善したとは判断できないと述べ、2%目標への回帰を優先する姿勢を示しました。9月の利上げ確率は約35%から約60%へ上昇し、米10年国債利回りは4.72%、ドル円は160円台へ上昇しました。高金利に弱い半導体株や金先物には売りが広がっています。(Reuters:08/28) - 半導体株の下落で主要3指数は終盤に失速
S&P500は-0.25%、Dow30は-0.02%、NASDAQは-0.52%で終了しました。Alphabet、Meta Platforms、Amazonは上昇しましたが、NVIDIA、Marvell Technology、Lam Researchなど半導体株が大きく下落しました。VIX指数は14台にとどまっており、市場全体の危機ではなく、上昇してきたAIハードウェア株から大型ソフトウェア・ネット企業への資金移動と見るのが自然です。(Reuters:08/28) - MarvellのGoogle向けAI半導体は本格寄与が2029年度以降
Marvell Technologyは市場予想を上回る決算と長期売上見通しの引き上げを発表しました。しかし、Google向け独自設計AI半導体から大きな売上が生じるのは2029年度以降との説明を受け、株価は-10.28%となりました。契約規模への期待が先行していただけに、収益化までの時間が厳しく評価されました。AI需要が弱いのではなく、高過ぎた期待の修正と考えられます。(Reuters:08/28) - NVIDIAがAIクラウド企業との収益分配型支援を一時停止
NVIDIAは、小規模なAIクラウド企業へ信用支援を行い、将来の収入の一部を受け取る計画について、一部の契約を停止したと報じられました。半導体を販売した相手へ資金も提供する仕組みには、需要を実態以上に見せる循環取引や独占禁止法上の懸念がありました。AI設備投資の拡大は続いていますが、投資資金の流れの健全性も確認する段階に入っています。(Wall Street Journal:08/28) - PayPal買収協議の打ち切り報道で株価急落
決済大手Stripeと投資会社Advent Internationalが、PayPalの買収計画を取り下げたと報じられました。両社は1株60.50ドル、総額530億ドル超を提示したとされますが、評価額や規制、資金調達上の問題で合意できなかったもようです。買収期待で上昇していた反動から株価は-12.71%となり、今後はPayPal自身の事業再建力が改めて問われます。(Reuters:08/28) - WorkdayはAIエージェントの普及で好決算
Workdayは調整後EPS2.75ドル、売上高26.5億ドルと市場予想を上回り、株価は+5.76%となりました。AIエージェントが新規年間契約額の25%超に関係し、5,500社を超える顧客が少なくとも1つを利用しています。AIによって従来型ソフトウェアが不要になるとの懸念に対し、AIを製品へ組み込み、契約拡大へ結び付けられる企業は成長できることを示しました。(Wall Street Journal:08/28) - 製造業と消費者心理は米国景気の減速を示唆
シカゴ購買部協会景気指数は47.1と、予想57.9を大幅に下回りました。ミシガン大学消費者信頼感指数は51.7と予想を上回りましたが、前回の55.2から低下しています。1年先期待インフレ率は4.0%へ改善したものの、消費者の景況感は弱いままです。景気指標が弱い一方でFRBが利上げ姿勢を示す状況は、企業業績にとって注意が必要な組み合わせです。(Investing.com:08/28) - ホルムズ海峡を巡る交渉期待で原油は週間下落
WTI原油先物は83.39ドルで終了し、週間では約4.2%下落しました。イランとオマーンがホルムズ海峡に安全な航路を設ける可能性や、米国の対イラン圧力が軍事衝突ではなく交渉につながるとの観測が供給不安を和らげました。ただし、海峡を通過する船舶数は平常時を大幅に下回っています。中東情勢が悪化すれば、原油とインフレが再び上昇する危険は残ります。(Reuters:08/28) - 米企業がベネズエラ油田への大型投資を協議
Chevronはベネズエラの重質油田2カ所を事業へ加える方向で協議し、Halliburtonも油田設備やサービスの提供を検討していると報じられました。複数の米企業による投資額は数十億ドル規模となる可能性があります。実現しても生産増加には時間が必要ですが、中東への依存を減らし、米国向けの原油供給源を分散する長期的なエネルギー政策として重要です。(Wall Street Journal:08/28) - 米国株式ファンドから3月以来最大の資金流出
8月26日までの1週間に、米国株式ファンドから223.3億ドルが流出しました。特に大型株ファンドから247.3億ドルが流出する一方、米国債券ファンドには71.2億ドルが流入しています。NVIDIA決算とジャクソンホール講演を前に、投資家が利益を確定し、債券へ資金を移した形です。指数が高値圏にあるなかでも、投資家全体が強気一辺倒ではないことが分かります。(Reuters:08/28) - ロシアが英国軍事施設への攻撃可能性を警告
ロシアは、ウクライナが英国製長距離ミサイルによるロシア領内への攻撃を続ければ、ウクライナ内外の英国軍事施設を攻撃対象にする可能性があると警告しました。英国はNATO加盟国であり、発言が実行に移されればロシアとNATOの直接対立へ発展する危険があります。現時点で株式市場の反応は限定的ですが、防衛株、原油、金、欧州市場へ影響し得る新たな地政学リスクです。(Reuters:08/28)
今週の動き
- 今週の個別銘柄ヒートマップ総括
今週はNVIDIAの好決算でAI投資への安心感が戻る一方、半導体内部では明暗が分かれました。NVIDIAは+1.32%でしたが、Marvell Technologyは-8.62%、Applied Materialsは-6.23%でした。対照的にSalesforceは+22.39%、CrowdStrikeは+13.78%、Microsoftは+6.27%となり、資金は半導体からソフトウェアへ移動しました。Apple、Meta Platforms、Amazonも上昇しており、大型株が指数を支えましたが、全面高とは言いにくい1週間でした。 - 今週のセクター別騰落率総括
11セクターのうち上昇は3セクターだけでした。通信サービス(Communication Services)が+1.27%、先端技術(Technology)が+1.22%、金融(Financial)が+0.95%となり、成長株と銀行株に資金が集中しました。一方、ヘルスケア(Healthcare)は-2.18%、エネルギー(Energy)は-2.12%、工業・産業(Industrials)は-1.49%でした。原油安とAIインフラ関連株の利益確定に加え、週末の利上げ観測も市場の広がりを抑えました。指数以上に選別色の強い相場だったと感じます。
経済指標発表予定
以下の経済指標が発表される予定です。
主要銘柄の決算発表予定
8/31には、主要銘柄の決算発表がありません。
おわりに
8月28日の米国市場は、主要3指数が小幅に下落しました。大型インターネット株は堅調でしたが、半導体や資源関連には売りが広がり、指数以上に銘柄選びの難しさを感じる一日でした。今週全体でも上昇したのは11セクター中3セクターだけで、市場の強さは一部の大型株に偏っています。それでも、短期的な資金移動を正確に予想することはできません。私はETFを中心に保有し、企業利益の長期的な成長を待つ姿勢を続けます。
今週もブログをお読みいただき、ありがとうございました。週末は市場から少し離れ、心と体を休めてください。
毎朝の更新が皆さまの市場理解に役立ちましたら、こちらから応援いただけると嬉しいです。
おことわり
投資は自己責任にてお願いします。
このブログには広告が挿入されています。この広告はGoogle社が読者の好みに応じて選んで提供しているものです。興味がございましたらご覧いただければ幸いです。投資に関する広告が表示されても、私の推奨ではないことをご理解ください。
図表のレファレンス
- S&P500ヒートマップ: finviz
- 主要3指数とドル円: Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
- セクター別騰落率: finviz
- 経済指標結果/予定: investing.com日本語版
- 決算発表結果/予定: investing.com日本語版
- 主要指数の動き : Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
- 自分の米ドル建ポートフォリオ: Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
著者プロフィール
室井一夫(Kazuo Muroi)
Muroi Universal Research on Investment LLC 代表社員
一級建築士・建築1級施工管理技士・工学修士
Facebookグループ「米国株_投資の部屋」管理人(約4.7万人)
米国株式市場と経済動向に関する情報を毎日発信しています。
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