【20260714】米国株式市場 投資研究レポート

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室井のマーケット視点

7月14日の米国市場は、S&P500が+0.38%、NASDAQが+0.90%となる一方、Dow30は+0.02%にとどまりました。6月の消費者物価指数が市場予想を下回り、米10年国債利回りが4.585%へ低下したことで、AI・半導体を中心とする成長株が買われました。とはいえ、指数が示すほど単純な上昇相場ではありません。先端技術(Technology)は+1.86%、素材(Basic Materials)は+1.48%、通信サービス(Communication Services)は+1.18%となる一方、ヘルスケア(Healthcare)は-1.62%、生活必需品(Consumer Defensive)は-1.17%でした。市場全体へ一様に資金が入ったというより、金利低下の恩恵を受ける成長分野へ資金が移動しています。

成長株の中でも、Dell、Monolithic Power Systems、NetApp、Lumentum、Sandiskなど、AIサーバー、電源半導体、ストレージ、光通信に関係する企業が上昇しました。AI需要そのものが再び急拡大したというより、企業のIT予算が従来型ソフトウェアからAI設備へ移っていると考える方が自然です。この市場構造を象徴したのがIBMです。決算発表予定表に掲載されていなかったにもかかわらず、正式決算に先立って暫定業績と業績警告を突然公表し、株価は-25.21%となりました。昭和生まれの私にとってIBMは、世界を代表する安定した一流企業という印象が強く、米国株投資を始めた頃には個別株として保有していた会社です。それだけに、今回の急落には驚きました。IBMの下落は、AI需要の失速を示したものではありません。顧客企業の限られたIT予算が、従来型のソフトウェアやサービスより、AIサーバー、メモリー、ストレージなどへ集中した影響が表れたと考えられます。CrowdStrikeやPalo Alto Networksなどサイバーセキュリティ株が上昇したことからも、企業の支出先が変化しているのであって、IT投資全体が止まったわけではないと考えています。

Dow30はIBMの急落を、好決算で+9.00%上昇したGoldman Sachsなど金融株がほぼ相殺しました。同じ金融でもJPMorgan ChaseやBank of Americaが上昇する一方、CitigroupとWells Fargoは好決算にもかかわらず下落しています。市場は過去の利益だけではなく、今後の経費、利益率、成長速度まで厳しく選別しています。

恐怖指数と呼ばれるVIX指数は16.46まで低下し、20を下回っているため、株式市場は全面的な恐怖状態ではありません。しかし、WTI原油先物は79.83ドルへ上昇し、金先物も4,060.80ドルまで上がりました。米国とイランの緊張やホルムズ海峡の供給不安が続く中、投資家は成長株を買いながら、安全資産も確保しています。

原油高が長引けば、せっかく鈍化したインフレが再び加速し、米長期金利が上昇する可能性があります。今回はCPI低下と原油上昇が同時に起きており、株式市場にとって良い材料だけを見て安心できる状況ではありません。ドル円も162.24円と歴史的な円安水準にあり、円建てで米国資産を保有する投資家は株価だけでなく、為替の反転にも注意が必要です。

私は現在、個別株ではなくETFを中心に分散しています。今回のIBMのような予定外の発表と急落を事前に避けることは困難です。優良企業を選ぶ力よりも、1社の失敗で運用全体を大きく損なわない仕組みを作ることが、長期投資では重要だと改めて感じました。

投資は自己責任にてお願いします。

S&P500ヒートマップ

5%以上上昇したS&P500構成銘柄

  • CRWD:CrowdStrike Holdings +12.14%
    サイバーセキュリティ大手のCrowdStrikeが、この日のS&P500構成銘柄で最大の上昇となりました。IBMが業績見通しを下方修正する一方、顧客企業が急速に変化するサイバー攻撃への対応を迫られていると説明したことで、セキュリティ投資の拡大を見込む買いが集まりました。AIの普及で攻撃手法も高度化しており、企業が防御関連予算を削りにくい構造が改めて評価されています。
  • GS:Goldman Sachs Group +9.00%
    Goldman Sachsは市場予想を大幅に上回る決算を発表し、過去最高値を更新しました。株式取引部門の収入が前年同期比72%増となったほか、企業買収や株式公開の回復によって投資銀行部門も好調でした。1株利益は20.98ドルと市場予想を大きく上回っています。市場の変動や企業活動の活発化を収益に結び付ける同社の強さが数字で示されました。
  • CVNA:Carvana +8.29%
    中古車のオンライン販売を手掛けるCarvanaは大幅に上昇しました。米消費者物価指数が市場予想を下回り、金利上昇への警戒が後退したことで、自動車ローンへの依存度が高い中古車販売株にも買いが入りました。経営再建による利益率改善への期待も続いています。ただし、株価の上昇速度が速く、PER(株価が利益の何倍まで買われているかを示す指標)も高いため、値動きの大きさには注意が必要です。
  • DELL:Dell Technologies +7.12%
    Dell TechnologiesはAIサーバーとデータセンター関連への買いが戻り、大幅高となりました。IBMの業績警告から、企業のIT予算が従来型サービスからサーバー、メモリー、AI設備へ移っているとの解釈が広がり、ハードウェア企業が選好されました。AIサーバーの受注拡大に加え、米国政府関連の大型契約も成長要因です。今後は売上高だけでなく、薄くなりやすいサーバーの利益率が焦点となります。
  • PANW:Palo Alto Networks +6.84%
    Palo Alto NetworksはCrowdStrikeとともに、サイバーセキュリティ関連株への資金流入を受けて上昇しました。企業がAIを活用するほどクラウド上のデータや接続機器が増え、攻撃を受ける範囲も広がります。同社は複数のセキュリティ製品を統合するプラットフォーム戦略を進めており、企業の防御体制をまとめて受注できる点が強みです。AI投資の拡大と同時に、情報防御への支出も増える構図です。
  • MPWR:Monolithic Power Systems +6.58%
    電源管理半導体を手掛けるMonolithic Power Systemsは、AIデータセンター関連株の反発に乗って上昇しました。高性能GPUを大量に搭載するサーバーでは、電力を安定して変換・供給する半導体が不可欠です。同社の企業データ部門は急成長しており、AI設備投資の恩恵が演算用半導体から電源制御分野へ広がっています。データセンターでは計算能力だけでなく、電力効率と発熱管理が設備性能を左右します。
  • NTAP:NetApp +6.48%
    企業向けデータ管理を手掛けるNetAppは、ストレージ関連への資金移動を受けて上昇しました。生成AIでは大量のデータを保存するだけでなく、必要な情報を高速で読み出して処理する基盤が必要です。IBMの業績警告を受け、企業のIT支出が従来型サービスからサーバー、メモリー、ストレージへ移っているとの見方も強まりました。AIを裏側で支えるデータ基盤企業として評価されています。
  • LITE:Lumentum Holdings +6.07%
    光通信部品を手掛けるLumentumは、AIデータセンター向け高速通信需要への期待から上昇しました。GPUの性能が高まっても、サーバー間でデータを素早く受け渡せなければシステム全体の処理能力は上がりません。このため電気信号を光信号へ変換する光トランシーバーの重要性が増しています。AI設備投資が半導体から通信回線、電源、冷却設備へ広がっていることを示す銘柄です。
  • SNDK:Sandisk +5.01%
    フラッシュメモリー大手のSandiskは、AI向けデータ保存需要とメモリー市況の改善期待から上昇しました。生成AIの学習や推論では膨大なデータを継続的に保存・読み出すため、高速で省電力なNAND型フラッシュメモリーの需要が増えます。メモリー株は需給によって価格変動が大きくなりますが、今回はAIサーバー投資の拡大が記憶装置にも波及するとの期待から買い戻されました。

5%以上下落したS&P500構成銘柄

  • IBM:International Business Machines -25.21%
    IBMは市場予想を下回る暫定決算を公表し、過去最大級の下落となりました。第2四半期の売上高見通しは172億ドル、調整後EPSは2.93ドルにとどまりました。企業がソフトウェアへの支出を抑え、供給不足や値上がりに備えてサーバー、ストレージ、メモリーを優先したことが響いています。AI投資の拡大自体は続いていますが、資金の行き先が従来型ソフトウェアからデータセンター設備へ急速に移っていることを示す下落です。
  • BIIB:Biogen -8.17%
    Biogenはアルツハイマー病治療薬候補diranersenの第2相試験結果を発表しましたが、データの評価を巡って慎重な売りが出ました。同社は第3相試験へ進む方針を示したものの、用量ごとの効果や臨床上の有効性について市場の期待を十分に満たせなかったようです。新薬開発では承認まで長い期間と多額の費用が必要であり、良好な一部データだけでは株価が上昇しにくい局面となっています。
  • HCA:HCA Healthcare -6.95%
    米国最大級の病院運営会社HCA Healthcareは、第2四半期の手術件数が前年同期を下回ったと公表し、通期見通しを引き下げました。入院手術は2.3%減、外来手術は3.4%減となり、医療需要の伸びに対する市場の前提が崩れました。人件費や医療材料費が高止まりする中、手術件数の減少は病院の収益性へ直接影響します。この発表は医療機器メーカーにも売りを広げました。
  • ISRG:Intuitive Surgical -6.78%
    手術支援ロボット「ダヴィンチ」を展開するIntuitive Surgicalは、HCA Healthcareが手術件数の減少を報告したことで売られました。同社の成長は手術ロボット本体の販売だけでなく、手術ごとに使用される器具や消耗品の継続収入にも依存します。手術件数が伸び悩めば利用回数に連動する収益への影響も避けられません。ただし、ロボット手術の普及という長期的な方向性まで否定されたわけではありません。
  • SYK:Stryker -6.15%
    整形外科用インプラントや手術機器を手掛けるStrykerは、病院の手術件数減少を受けて大幅安となりました。人工関節や手術機器は予定手術の件数と関係が深く、病院側の需要鈍化は医療機器メーカーの売上予想にも影響します。同社のEPSは直近12カ月で増加していますが、成長期待を織り込んだ株価水準だったため、手術需要への警戒が強い値下がりにつながりました。
  • NOW:ServiceNow -5.76%
    企業向け業務ソフトウェア大手のServiceNowは、IBMの業績警告をきっかけとしたソフトウェア株売りに巻き込まれました。企業が限られたIT予算をAIサーバー、メモリー、ストレージなどの設備へ振り向ける中、従来型ソフトウェアへの支出が後回しになるとの懸念が強まっています。AI需要の失速ではなく、設備投資負担によって企業内の予算配分が変化していると見るべきでしょう。
  • GEHC:GE HealthCare Technologies -5.59%
    画像診断装置や医療機器を手掛けるGE HealthCareは、ヘルスケア関連株への売りが広がる中で下落しました。HCA Healthcareが手術件数の減少と慎重な業績見通しを示したため、病院による設備投資にも影響が及ぶとの警戒が生じています。同社は直近12カ月のEPSが減少しており、医療機関の予算抑制や機器更新の先送りに対して株価が敏感に反応しやすい状態です。
  • FICO:Fair Isaac -5.30%
    信用スコアを提供するFair Isaacは5%を超えて下落しました。業績は高い利益成長を維持していますが、信用評価市場における競争拡大や規制変更への警戒が続いています。住宅ローン審査などで別の信用スコアを利用できる制度が広がれば、FICOスコアの高い市場占有率や価格決定力が低下する可能性があります。高収益企業である一方、将来の独占的な事業構造に対する評価が修正されています。
  • C:Citigroup -5.29%
    Citigroupは第2四半期の売上高と利益が市場予想を上回ったにもかかわらず下落しました。株式取引や投資銀行業務は好調でしたが、今後の経費増加と下半期の収益見通しが警戒されています。経営陣が成長に向けた追加投資を進める方針を示したことで、短期的な利益率改善を期待していた投資家から売りが出ました。良い決算でも、将来の費用負担が株価を左右する典型的な値動きです。
  • MDT:Medtronic -5.11%
    心臓・血管治療機器や手術関連製品を展開するMedtronicは、医療機器株全体の下落に連動しました。HCA Healthcareが手術件数の減少を報告したことで、病院で使用される医療機器や消耗品の需要にも慎重な見方が出ています。同社は配当利回りが比較的高く、成長株というより安定収益株として評価されてきましたが、この日はディフェンシブ性よりも手術需要減少による業績への影響が重く見られました。

セクター別騰落率

市場全体では、先端技術(Technology)が大きく上昇し、素材(Basic Materials)と通信サービス(Communication Services)にも買いが広がりました。一方、ヘルスケア(Healthcare)と生活必需品(Consumer Defensive)は大幅に下落しています。指数は上昇しましたが、全面高ではなく、AI・半導体・通信インフラ関連へ資金が集中し、安定収益型のディフェンシブ株から資金が移動した一日でした。

  • 先端技術(Technology) +1.86%
    先端技術セクターは全セクター中で最大の上昇となりました。AIサーバー、電源管理半導体、ストレージ、光通信、サイバーセキュリティなど、データセンターを構成する幅広い企業が買われています。米10年国債利回りが低下したことで、高PER(株価が利益の何倍まで買われているかを示す指標)の成長株にも資金が戻りました。ただし、ソフトウェア株の一部は下落しており、AI関連でも企業選別が進んでいます。
  • 素材(Basic Materials) +1.48%
    素材セクターは工業用金属や資源関連株を中心に上昇しました。AIデータセンター、送電網、発電設備の増設には、銅やアルミニウムなど大量の素材が必要です。原油価格の上昇や地政学リスクも、実物資産に関連する企業への関心を高めました。AI投資の恩恵が半導体だけでなく、建物、電力設備、通信網を構成する素材分野へ広がっていることを示しています。
  • 通信サービス(Communication Services) +1.18%
    通信サービスセクターは、大型インターネット企業やデジタル広告関連を中心に上昇しました。米長期金利の低下によって将来利益の現在価値が高まりやすくなり、成長性の高い大型株が買われています。生成AIの普及は広告配信、検索、動画、クラウドサービスの利用拡大にもつながります。NASDAQの上昇と歩調を合わせ、成長株へ資金が戻る流れが鮮明でした。
  • 生活必需品(Consumer Defensive) -1.17%
    生活必需品セクターは、成長株や景気敏感株へ資金が移動する中で下落しました。食品、飲料、日用品などの企業は業績が比較的安定していますが、株式市場の不安が後退すると、投資家はより高い成長が期待できる分野を選びやすくなります。原油価格の上昇による輸送費や包装資材費の増加も、利益率への懸念につながりました。市場全体の上昇とは逆方向の動きです。
  • ヘルスケア(Healthcare) -1.62%
    ヘルスケアセクターは全セクター中で最大の下落となりました。病院運営会社が手術件数の減少と慎重な業績見通しを示したことで、医療機器、手術支援ロボット、整形外科関連まで売りが広がりました。新薬開発企業にも臨床試験結果を巡る失望売りが出ています。高齢化という長期テーマは変わりませんが、この日は個別企業の業績不安と成長株への資金移動が重なりました。

主要3指数とドル円の動き

  • S&P500(7,543.59、前日比+0.38%)
    S&P500は上昇して取引を終えました。AIサーバー、データストレージ、サイバーセキュリティ関連への買いが続き、NASDAQ寄りの成長株が指数を押し上げました。一方、IBMの急落やヘルスケア株の下落もあり、全面高ではありません。市場全体から資金が流入したというより、企業業績や成長分野を選別しながら資金が移動した一日です。ETFで長期投資する立場では、指数が最高値圏にあっても内部の強弱を確認しておきたい局面です。
  • Dow30(52,508.27、前日比+0.02%)
    Dow30はわずかな上昇にとどまりました。Goldman Sachsなど金融株が上昇した一方、構成比率の高いIBMが25%を超えて急落し、指数の上昇をほぼ打ち消しました。Dow30は30銘柄の株価を基準に計算する株価平均型指数であるため、値がさ株の急変動による影響を受けやすい特徴があります。終値だけを見れば横ばいですが、指数内部では金融株への買いとIBMへの売りが激しくぶつかる、かなり偏りの大きい相場でした。
  • NASDAQ(26,107.01、前日比+0.90%)
    NASDAQは主要3指数の中で最も大きく上昇しました。Dell、Monolithic Power Systems、NetApp、Lumentum、Sandiskなど、AIデータセンターを構成するサーバー、電源半導体、ストレージ、光通信関連が買われています。AI需要そのものが一律に再加速したというより、企業のIT予算が従来型ソフトウェアからAI設備へ移るとの見方が強まった結果です。成長株全体が上がったのではなく、ServiceNowなど一部ソフトウェア株は下落しており、企業選別が鮮明でした。
  • ドル円(162.24円、前日比-0.12%)
    ドル円は162円台前半で取引を終え、前日比では小幅な円高となりました。取引時間中には161.59円まで円高が進んだ後、162円台へ戻しています。米国のインフレ指標を受けて長期金利の上昇圧力が弱まり、ドルを買い進める動きが一時後退しました。ただし、日米金利差は依然として大きく、円高が継続する流れには至っていません。日本から米国株へ投資する場合、株価上昇の一部が円高によって相殺される可能性にも注意が必要です。

原油先物・米10年国債利回り・VIX・金先物の動き

  • WTI原油先物(79.83ドル、前日比+2.16%)
    WTI原油先物は一時81.27ドルまで上昇しました。米国とイランの対立やホルムズ海峡を巡る緊張から、原油輸送が滞る可能性を警戒した買いが続いています。終盤には上昇幅を縮小したものの、供給不安が解消したとは言えません。原油高が長引けば、ガソリン価格や輸送費を通じて物価を押し上げ、企業利益やFRBの金融政策にも影響します。
  • 米10年国債利回り(4.585%、前日比-0.52%)
    米10年国債利回りは4.585%へ低下し、一時4.525%まで下がりました。米国のインフレ指標が市場予想を下回ったことで、FRBが追加利上げを急ぐ必要性は低いとの受け止めが強まり、国債が買われました。長期金利の低下は高PER(株価収益率が高い)銘柄に有利で、NASDAQの上昇につながっています。ただし、原油高が続けば再び金利が上昇する可能性があります。
  • VIX指数(16.46、前日比-4.08%)
    恐怖指数と呼ばれるVIX指数は16.46へ低下しました。米国とイランの緊張や原油価格の上昇が続く一方、インフレ鈍化と米国株の上昇を受け、市場参加者は直ちに大幅下落へ発展するとは見ていません。VIXが20を下回っているため、株式市場は全面的な恐怖状態ではありません。ただし、地政学情勢が急変すれば短期間で上昇する余地は残っています。
  • 金先物(4,060.80ドル、前日比+1.38%)
    金先物は4,060.80ドルへ上昇しました。米10年国債利回りとドルが低下したことで、利息を生まない金を保有する不利が小さくなりました。加えて、中東情勢と原油供給への不安から、安全資産として金を確保する動きも続いています。株価上昇と金価格上昇が同時に起きており、投資家は成長株を買いながら地政学リスクにも備えていると考えられます。

私の米国株ポートフォリオ

私の米国株ポートフォリオは、ほぼ横ばいでした。前日の米国市場ではNASDAQが+0.90%上昇し、iFreeETF FANG+は+0.46%、MAXISナスダック100上場投信は+0.15%となりました。一方、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)が-0.66%となり、成長系ETFの上昇を打ち消しています。

日本市場のETFや投資信託は、米国市場の終値だけでなく、基準価額を計算する時間帯やドル円の動きによって反映時期に差が生じます。そのため、S&P500が上昇した翌日でも、保有商品の値動きが一致しないことがあります。個別株を避け、複数のETFと投資信託へ分散しているため、成長株が上昇する一方で他の商品が下落しても、全体では小幅な変動に収まりました。

経済指標発表結果

  • 消費者物価指数(CPI、前年比+3.5%)
    6月のCPIは前年比+3.5%となり、市場予想の+3.8%、前月の+4.2%を下回りました。インフレ鈍化が明確になり、FRBが追加利上げを急ぐ必要性は低下しています。株式市場では米10年国債利回りが低下し、NASDAQを中心に高PER(株価収益率が高い)銘柄が買われました。一方、原油価格が上昇しているため、今後も同じ速度で物価が鈍化するかは慎重に確認する必要があります。
  • コア消費者物価指数(前年比+2.6%)
    食品とエネルギーを除いたコアCPIは前年比+2.6%となり、市場予想の+2.8%、前月の+2.9%を下回りました。コアCPIは一時的に変動しやすい項目を除くため、FRBが物価の基調を判断する際に重視する指標です。サービス価格や住居費の上昇圧力が弱まりつつあることが示され、長期金利の低下と成長株への買い戻しにつながりました。
  • 消費者物価指数(前月比-0.4%)
    CPIは前月比-0.4%となり、市場予想の-0.1%を大きく下回りました。物価水準が前月から実際に低下したことになり、前年比の伸び鈍化以上に市場へ強い印象を与えています。インフレ再加速を警戒していた債券市場では国債買いが入り、米10年国債利回りは低下しました。株式市場にとっては金利負担が軽くなる方向ですが、1カ月の数字だけで利下げを断定する段階ではありません。
  • コア消費者物価指数(前月比0.0%)
    コアCPIは前月比0.0%となり、市場予想と前月の+0.2%を下回りました。基調的な物価が前月から上昇しなかったため、インフレ圧力が想定以上に弱まっている可能性が示されています。金利低下の恩恵を受けやすいAI、半導体、通信サービス関連が上昇する一方、金融株には金利低下による収益悪化への警戒も出ました。セクターごとの反応が分かれた理由の一つです。
  • 実質賃金(前月比+0.8%)
    物価変動を差し引いた実質賃金は前月比+0.8%となり、前月の-0.2%から大きく改善しました。物価が低下する一方で賃金の購買力が高まっており、米国の個人消費が急激に弱る可能性は低いと考えられます。インフレ鈍化と消費の底堅さが同時に確認され、景気後退を避けながら物価を抑えるソフトランディング(景気を大きく悪化させずにインフレを抑えること)への期待が強まりました。
  • NFIB中小企業楽観指数(97.4)
    中小企業楽観指数は97.4となり、市場予想の95.8、前月の95.3を上回りました。高金利や人件費負担が続く中でも、中小企業経営者の景況感が改善していることを示しています。CPIの鈍化と合わせると、米国経済は急減速せず、企業活動も一定の強さを保っていると判断できます。ただし、景況感が改善しすぎれば需要と賃金の上昇を通じて、インフレ鈍化を遅らせる可能性も残ります。
  • 対米証券投資(1322億ドル)
    5月の対米証券投資は1322億ドルとなり、前月の766億ドルから大幅に増加しました。海外投資家による米国株や米国債への資金流入が続いていることを示しています。米国市場の高い成長力や流動性に加え、地政学リスクが高まる中でドル資産を保有する需要も強いと考えられます。長期的には米国市場の需給にプラスですが、同時に米国資産への集中度が一段と高まっている点も確認しておきたいところです。

主要銘柄の決算発表結果

  • JPM:JPMorgan Chase & Co.(金融)
    JPMorgan Chaseは、EPSが7.70ドルと市場予想の5.55ドルを大幅に上回り、売上高も573.5億ドルと予想の506.1億ドルを上回りました。金利収入に加え、株式・債券取引や投資銀行業務が堅調だったとみられます。株価は通常取引で+2.50%となりました。米国最大の銀行が高金利環境と市場取引の活発化を収益へ結び付けており、米国経済の底堅さを確認できる決算です。
  • BAC:Bank of America Corporation(金融)
    Bank of Americaは、EPSが1.21ドルと予想の1.12ドルを上回り、売上高も316億ドルと予想の306.7億ドルを上回りました。貸出や預金業務に加え、市場部門の収益も業績へ寄与したと考えられます。株価は+1.88%となり、決算内容は素直に評価されました。一方、米10年国債利回りが低下しているため、今後は利ざや(貸出金利と預金金利の差)の維持が焦点となります。
  • GS:Goldman Sachs Group, Inc.(金融)
    Goldman Sachsは、EPSが20.98ドルと市場予想の14.38ドルを大きく上回り、売上高も203.4億ドルと予想の161.2億ドルを上回りました。企業買収、株式公開、債券発行などの投資銀行業務と、市場取引部門の回復が利益を押し上げたとみられます。株価は+9.16%と急伸しました。市場変動や企業活動の活発化を収益へ変える同社の強さが鮮明に表れた決算です。
  • WFC:Wells Fargo & Company(金融)
    Wells Fargoは、EPSが2.00ドルと予想の1.72ドルを上回り、売上高も226.2億ドルと予想の218.7億ドルを上回りました。しかし、株価は-2.65%となっています。好決算であっても、今後の金利低下による利ざや縮小や経費負担への警戒が上回った可能性があります。市場は過去の利益よりも、今後の収益成長を厳しく見ています。銀行株の中でも評価が分かれた決算でした。
  • C:Citigroup Inc.(金融)
    Citigroupは、EPSが3.15ドルと市場予想の2.73ドルを上回り、売上高も247.7億ドルと予想の236.6億ドルを上回りました。それでも株価は-5.29%と大幅に下落しました。市場取引や投資銀行業務は好調だったとみられますが、事業再編に伴う費用や今後の経費増加への警戒が強かったようです。決算の数字が良くても、利益率改善の速度が期待に届かなければ売られる相場となっています。
  • IBM:International Business Machines Corporation(先端技術)
    IBMは正式決算に先立ち、第2四半期の暫定業績と業績警告を公表しました。同社は、EPSが2.93ドルと市場予想の3.01ドルを下回り、売上高も172億ドルと予想の178.6億ドルに届きませんでした。株価は-25.21%と急落し、この日のDow30を大きく押し下げました。企業のIT予算がAIサーバー、メモリー、ストレージなどの設備へ移る一方、従来型ソフトウェアやサービスへの支出が伸び悩んだ可能性があります。AI需要の失速ではなく、IT予算内での資金配分の変化を示す決算です。

※昨日ブログを書いた時点ではIBMの決算発表が記載されていませんでしたので、私も含めて驚かれた方が多いと思います。IBMの正式決算発表は7月22日で、14日の暫定発表は決算カレンダーに通常掲載されない突発的な企業開示だったためです。

主な経済ニュース

  • 米CPIが予想以上に鈍化、追加利上げ観測が後退
    6月の消費者物価指数は前年比+3.5%と、市場予想の+3.8%、前月の+4.2%を下回りました。前月比では-0.4%、食品とエネルギーを除くコアCPIも0.0%となり、物価上昇圧力は大きく弱まりました。米10年国債利回りとドルが低下し、金利の影響を受けやすいAI・半導体株が買われ、NASDAQが主要3指数を上回りました。ただし、原油価格が再上昇しているため、7月以降も同じ傾向が続くとは限りません。(Reuters:07/14)
  • 米国株はNASDAQ主導で上昇、全面高ではなく企業選別
    S&P500は+0.38%、NASDAQは+0.90%となる一方、Dow30は+0.02%にとどまりました。インフレ鈍化と長期金利低下を受け、サーバー、メモリー、ストレージ、光通信、サイバーセキュリティ関連へ資金が向かいました。一方でIBMやヘルスケア株は急落しており、市場全体が一様に買われたわけではありません。AI需要の有無ではなく、設備投資の行き先と利益成長を巡る企業選別が鮮明になっています。(Reuters:07/14)
  • Goldman Sachsが急伸、株式取引と大型案件が収益を押し上げ
    Goldman Sachsは市場予想を大きく上回る決算を発表し、株価は+9%を超えて過去最高値を更新しました。市場変動の拡大によって株式取引収入が過去最高となり、投資銀行部門の手数料も前年同期比55%増加しました。100億ドルを超える大型M&A(企業の合併・買収)や株式・債券発行の回復が収益へ結び付いています。市場の不安定さを取引機会へ変えられる投資銀行の強さが示されました。(Reuters:07/14)
  • JPMorganが米銀史上最高の四半期利益を記録
    JPMorgan Chaseは大型企業買収や株式公開の増加を受け、米国銀行として過去最高となる四半期利益を計上しました。投資銀行手数料は2021年以来の高水準となり、市場取引部門も値動きの大きい相場を収益につなげています。Bank of Americaも予想を上回り、大手銀行の決算は米国企業の資金調達や企業再編が活発であることを示しました。景気が急速に悪化している兆候は、銀行決算からは見えません。(Reuters:07/14)
  • CitigroupとWells Fargoは好決算でも下落
    CitigroupはEPSと売上高が市場予想を上回り、四半期売上高は過去10年で最高となりました。それでも株価は大幅に下落し、Wells Fargoも好決算ながら売られています。市場は取引収入の増加より、経費の増加や下半期の収益見通しを厳しく評価しました。同じ金融セクターでもGoldman SachsやJPMorganとは株価反応が分かれており、現在の相場では過去の実績より将来の利益率が重視されています。(Reuters:07/14)
  • IBMが25%急落、AI投資による企業IT予算の偏りが表面化
    IBMは第2四半期の売上高とEPSが市場予想を下回る見通しを公表し、株価は過去最大の下落となりました。顧客企業がソフトウェアや従来型システムより、供給不足が続くAIサーバー、ストレージ、メモリーを優先したことが業績へ響いています。これはAI需要が弱まったのではなく、限られたIT予算が設備投資へ集中した結果です。ハードウェア企業が買われ、ソフトウェア企業が売られる資金移動を象徴しました。(Wall Street Journal:07/14)
  • FRB議長は高インフレを容認せず、政策判断は明言せず
    FRB議長は議会証言で、高インフレを容認しない姿勢を示す一方、次回会合での金利変更について明確な方向性を示しませんでした。6月CPIの鈍化を歓迎しつつも、1カ月分の数字だけで物価安定を判断することには慎重です。また、大統領から金融政策への圧力を受けても職務を遂行すると述べ、中央銀行の独立性を強調しました。市場では直近会合での追加利上げ確率が大きく低下しています。(Reuters:07/14)
  • 米国とイランの攻撃激化で原油が1カ月ぶり高値
    米国とイランの攻撃が続き、ホルムズ海峡を通過する原油輸送への懸念からWTI原油先物は約2%上昇しました。同海峡は世界の原油取引の約2割が通過する重要航路であり、船舶への攻撃や通航量の減少は供給価格へ直結します。エネルギー株には収益増加要因となる一方、原油高が長引けばガソリン価格、輸送費、商品価格を押し上げ、今回確認されたインフレ鈍化を一時的なものにする危険があります。(Reuters:07/14)
  • トランプ大統領がホルムズ海峡の20%通航料案を撤回
    トランプ大統領は、米国が船舶を防護する対価としてホルムズ海峡の貨物へ20%を課す案を撤回し、湾岸諸国からの投資協定に置き換える方針を示しました。通航料が実施されれば、原油や液化天然ガスの輸送費を直接押し上げる可能性がありました。撤回によって原油の上昇幅は一時縮小しましたが、米軍の攻撃とイランによる船舶攻撃は続いており、実際の供給障害への警戒は残っています。(Reuters:07/14)
  • 金価格が上昇、株高と安全資産需要が同時進行
    金先物は1%を超えて上昇し、4,060ドル台となりました。予想を下回るCPIによって米長期金利とドルが低下し、利息を生まない金を保有する不利が小さくなりました。同時に、米国とイランの衝突やホルムズ海峡の供給不安に備える安全資産需要も続いています。株式と金が同時に上昇している点から、投資家は成長株を買いながら地政学リスクにも備えていると考えられます。(Wall Street Journal:07/14)

経済指標発表予定

以下の経済指標が発表される予定です。

主要銘柄の決算発表予定

以下の主要銘柄の決算発表がなされる予定です。

おわりに

今回、決算発表予定に掲載されていなかったIBMが、正式決算を待たずに暫定業績と業績警告を突然公表し、株価が25%を超えて急落したことには驚きました。昭和生まれの私にとって、IBMは長年にわたり「安定した一流企業」という印象が強い会社です。米国株投資を始めた頃には、私自身も個別株として保有していました。しかし、一流企業であっても、事業環境や顧客の投資先が変われば、業績と株価は短期間で大きく動きます。今回もAI需要が消えたのではなく、企業のIT予算がソフトウェアからAIサーバー、メモリー、ストレージなどへ移った影響が表れました。

個別株の急変を予測することは困難です。私は現在、ETFを中心に分散して保有することで、1社の突然の業績警告に資産全体を左右されにくい運用を続けています。毎朝の市場確認は大切ですが、長期投資では市場に居続けられる仕組みを作ることが、何より重要だと改めて感じました。

本日もお読みいただき、ありがとうございました。それでは、今日も一日、明るく元気に笑顔で過ごしましょう。

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投資は自己責任にてお願いします。

おことわり

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図表のレファレンス

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  • セクター別騰落率: finviz
  • 経済指標結果/予定: investing.com日本語版
  • 決算発表結果/予定: investing.com日本語版
  • 主要指数の動き : Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ
  • 自分の米ドル建ポートフォリオ:  Yahoo!Finance米国版 をカスタマイズ

著者プロフィール

室井一夫(Kazuo Muroi)
Muroi Universal Research on Investment LLC 代表社員
一級建築士・建築1級施工管理技士・工学修士
Facebookグループ「米国株_投資の部屋」管理人(約4.7万人)

米国株式市場と経済動向に関する情報を毎日発信しています。


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