前日までの記事で取り上げた中国CXMTの新型DRAM構造、MicrosoftのAI半導体、米国の送電網、欧州の車載ロードマップなどは繰り返さず、今回は10月14日に発表された決算や、新たに確認できた契約・承認を中心にまとめました。10月9日(米国時間)に承認された旭化成の新薬など、前回までに掲載していなかった動きは日付を明記して補足しています。技術発表、企業の目標、市場予測、投資家向けの分析を区別しています。
本日の要点
- 🇳🇱🇺🇸🇰🇷🇹🇼 ASMLの7~9月期は売上高116億6,200万ユーロ、純利益49億6,000万ユーロ。顧客が2029~2030年の発注に関心を示し、会社は2027~2028年の供給が需要に足りないとみています。ただし打診は正式な発注ではありません。
- 🇹🇼🇺🇸 TSMCの決算は10月15日15時(日本時間)。会社見通しの売上は446億~458億ドルで、粗利益率の見通しは前期実績より低い水準です。
- 🇺🇸🇨🇳 9月の米CPIは前年比3.7%(予想3.6%)で、10年債利回りは5.3%台に上昇しました。AI設備投資の資金コストが焦点です。
- 🇰🇷🇨🇳🇺🇸 サムスン電子の7~9月期の営業利益は約107.4兆ウォン(営業利益率約55%)の見通し。一方、CXMTの世界DRAMシェアは約10%とHSBCが推計しています。
- 🇺🇸🇺🇿🇯🇵 AIデータセンターの電力で、原子力の電力購入契約、国の融資、小型炉の許認可が相次いでいます。
- 🇯🇵🇺🇸🇩🇪 旭化成が買収から約半年で、単純ヘルペスの新薬Hovilpriの米国承認を取得しました(10月9日・米国時間)。
🇳🇱🇺🇸🇰🇷🇹🇼 ASML:2029~2030年の注文打診と、2028年まで続く供給不足
ASMLは10月14日、2026年7~9月期の決算を発表しました。売上高は116億6,200万ユーロ、売上総利益率(売上から製造原価を引いた利益の割合)は57.5%、純利益は49億6,000万ユーロです。4~6月期の売上高93億2,600万ユーロ、純利益29億1,800万ユーロと比べると、売上は約25.0%、純利益は約70.0%増えました。新規に販売した露光装置(半導体の回路を光でシリコンの板に焼き付ける装置)は、86台から113台に増えています。会社は売上高と売上総利益率が過去最高だったと説明しています(ASML 10/14、MarketBeat 10/14)。CNBCによると、純利益は市場予想の41億ユーロを大きく上回った一方、売上高は予想の117億2,000万ユーロをわずかに下回りました(CNBC 10/14)。
注目点は受注の見通しです。ASMLのフーケCEOは、顧客がAI関連投資の規模と期間を理由に、短期・中期の装置需要の見通しを引き上げていると説明しました。一部の顧客は2029年や2030年の発注にも関心を示しています。さらに、2027年と2028年の計画供給量では顧客の需要を満たせないとして、2028年の生産能力を、これまで示した30%増からさらに広げる方法を検討しています(CNBC 10/14)。会社は2026年10~12月期の売上高を142億~152億ユーロと見込み(中央値は147億ユーロで、7~9月期より約26.1%増)、2026年通期は440億~450億ユーロと、下限を従来の430億ユーロから引き上げました(ASML 10/14、Quartz 10/14)。これらは会社の見通しであり、確定した実績や正式な発注ではありません。
なぜ重要なのか。露光装置は、半導体メーカーが工場を建てたり増設したりするときに必要な装置で、発注から納品まで長い時間がかかります。そのためASMLの注文の見通しは、半導体メーカーが数年先にどれだけ生産能力を増やすつもりかを映す指標になります。9月には、サムスン電子が2028年にメモリー(DRAM)の量産へ、TSMCが2030年に先端半導体の量産へ、次世代のHigh NA EUV(レンズの開口数を0.33から0.55に高め、より細かい回路を描ける最新の露光装置)を使う計画が報じられました(Invezz 9/8、Taiwan News 9/8)。この装置は1台が約4億ドルとされ(SentiSense 9/8)、今回の「2030年の発注打診」は、この投資の流れが続く可能性を示す材料です。
課題もあります。打診は注文書ではなく、半導体メーカーの設備投資は景気や資金調達の環境に左右されます。後述のとおり長期金利は5.3%台に上がっており、設備投資を借入で賄う企業には負担になります。また7月には、中国が国産の液浸DUV露光装置(EUVより一世代前の装置)の量産を始めたと、情報筋の話としてReutersが報じました(Reuters 7/28(The Standard掲載))。ただし台数の目標は2026年に約5台、2027年に約20台と小さく、最先端のEUV装置は米国などの規制で中国に売れません(TechWire Asia 7/29)。中国の国産化は長期の競争要因ですが、ASMLの2027~2028年の受注に直ちに影響する規模とは確認できていません。
関連銘柄は、ASML(ASML・ASMLホールディング、ナスダックに上場する米国預託証券)です。同じ装置分野では、アプライドマテリアルズ(AMAT・アプライドマテリアルズ)、ラムリサーチ(LRCX・ラムリサーチ)、KLA(KLAC・KLA)、東京エレクトロン(8035・東京エレクトロン)、レーザーテック(6920・レーザーテック)、ディスコ(6146・ディスコ)がテーマ関連として挙げられますが、今回のASML決算で各社の受注が増えたことを示す情報は確認できていません。市場では、ASMLが三たび通期見通しを引き上げたにもかかわらず、米国の半導体株ETF(iShares Semiconductor ETF)が取引開始前に0.65%安で7日続落の勢いとなり、マイクロンとインテルも1%超下げていると報じられました(WSJ 10/14(Yahoo Finance掲載))。個別の好材料が出ても、業界全体の売りが続く局面では株価が反応しにくい点に注意が必要です。
🇹🇼🇺🇸🇰🇷 TSMC決算(10月15日15時)の前に確認したい会社見通し
TSMCは10月15日の台湾時間14時(日本時間15時)に、2026年7~9月期の決算説明会を開きます。会社が示している7~9月期の見通しは、売上高446億~458億ドル、売上総利益率65.0~67.0%、営業利益率56.0~58.0%、想定為替レート1ドル=32.0台湾ドルです。4~6月期の実績は、売上高402億ドル、売上総利益率67.7%、営業利益率60.3%でした。決算前の10月5日から14日までは、投資家との対話を控える「沈黙期間」とされています(TSMC 投資家向け情報)。
数字を整理します。見通しの中央値(452億ドル)は、4~6月期の実績より約12.4%の増収、上限の458億ドルなら約13.9%の増収です。一方、売上総利益率の中央値(66.0%)は前期実績より1.7ポイント、営業利益率の中央値(57.0%)は3.3ポイント低い水準です。中央値で売上総利益を計算すると約298億ドルで、4~6月期の約272億ドルより約9.6%増にとどまり、売上の増加率(約12.4%)を下回ります(本稿の試算。TSMCの見通しと前期実績から計算)。売上が伸びても、利益の伸びは売上より小さくなる計算です。
市場の見方を確認します。TSMCの9月の月次売上は前年同月比54.6%増と報じられています。同じ記事は、TSMCの予想PER(株価が1株利益の何倍かを示す指標)が約21倍で、過去12か月の実績ベースの約33倍を下回ること、年初来の株価上昇率が半導体株全体より30ポイント以上低いことも伝えています(24/7 Wall St 10/12)。米国預託証券(ADR)の1株利益の予想は4.45ドルで、前年同期の2.92ドルから約52%増です(ChartRow 10/1)。これらは決算前の市場予想であり、確定した数字ではありません。
ASMLとの関係も押さえておきます。ASMLが「顧客は2029~2030年の発注に関心」と述べたことは、TSMCを含む顧客が長期の設備投資を考えていることを示唆します。ただしTSMC自身の投資額は、明日の説明会で確認が必要です。TSMCの2026年の設備投資は600億~640億ドルの見通しと報じられています(Reuters 10/12)。設備投資は、装置メーカーの受注と、TSMC自身の減価償却費(設備の取得費用を使用期間に分けて計上する費用)の両方に影響します。
確認したい点は三つです。第一に、売上高が会社見通しの範囲、特に上限に届くか。第二に、売上総利益率が65~67%の範囲に収まるか。第三に、2027年の設備投資とAI関連売上の見通しです。関連銘柄は、TSMC(TSM・台湾積体電路製造の米国預託証券、台湾市場では2330)、エヌビディア(NVDA・エヌビディア)、AMD(AMD・アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)、ブロードコム(AVGO・ブロードコム)、アップル(AAPL・アップル)です。決算内容は本稿の時点で未発表のため、顧客別の影響は決算後に確認する必要があります。
分析として補足します。ASMLの2026年10~12月期の売上高見通しの中央値(147億ユーロ)は、7~9月期の実績(116億6,200万ユーロ)より約26.1%多い水準です。装置メーカーの売上が先に伸び、その装置で作った半導体をTSMCが出荷する順番になるため、ASMLの見通しはTSMCの先行きの手がかりになります。ただし装置の納入から半導体の出荷まで数四半期の時間差があり、両社の数字は同じ時期の需要を表すわけではない点に注意が必要です。
🇺🇸🇨🇳 米CPI3.7%、長期金利5.3%台:AI設備投資の資金コストが試される
米国の9月のCPIは、前年同月比3.7%でした。市場予想は3.6%、前月は3.4%です。前月比は0.6%で、予想どおりでした。変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIは前年比2.6%で、予想の2.5%を上回りました(CNBC 10/14、Yahoo Finance 10/14)。発表後、10年債利回りは約6ベーシスポイント(1ベーシスポイントは0.01%)上がって5.278%となり、その後5.306%をつけました。30年債利回りは5.59%で、両方とも先週に24年ぶりの高水準をつけたと報じられています(CNBC 10/14、CNBC 10/14)。
株価指数先物は、CPI発表後に下げに転じました。米東部時間の8時台(日本時間21時台)の時点で、S&P500先物は7,832.50(0.30%安)、ダウ先物は51,863(0.14%安)、ナスダック100先物は30,595.50(196ポイント安)でした(Yahoo Finance 10/14)。米連邦準備制度理事会(FRB)は9月に0.25ポイントの利上げを行い、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は「緊急に動く必要はない」との趣旨を述べたと報じられています(WSJ 10/14(Yahoo Finance掲載))。次の確認日は、10月15日の生産者物価指数(PPI)、10月27~28日の連邦公開市場委員会(FOMC)、10月29日の個人消費支出(PCE)物価指数です(CNBC 10/14)。
技術株との関係を考えます。AIデータセンターは、建設費も電力設備も大きく、企業は社債や借入で資金を集めることが少なくありません。金利が上がると、同じ金額を借りても毎年の利息が増えます。例えば100億ドルを借りる場合、金利5.3%なら年間の利息は5億3,000万ドル、4.3%なら4億3,000万ドルで、差は年1億ドルです(説明用の試算で、実際の調達条件は企業ごとに異なります)。10月12日の記事で取り上げたとおり、ブロードコムのCEOは、AI成長の最大の制約は資金だと述べました(Reuters 10/12)。
中国の物価統計も確認します。9月の中国のCPIは前年比0.9%で、予想の1.0%を下回りました。一方、生産者物価(PPI)は前年比5.0%で、予想の4.5%、前月の3.8%を上回っています(InvestingLive 10/14)。工場出荷段階の価格が消費者価格より速く上がっていることになり、部品や素材を使う製造業では、コストの上昇を販売価格に転嫁できるかが利益率を左右します(本稿の分析)。
この日の注目は、金利の上昇が株式市場の評価をどこまで押し下げるかです。個別銘柄は特定しませんが、将来の利益への期待で株価が支えられている成長企業や、設備投資を借入に頼る企業は、金利上昇の影響を受けやすいと一般に指摘されます。半導体関連では、ASMLの強い受注見通しと、米国の半導体株ETFの続落が同じ日に並びました。企業の業績が好調でも、金利が高い間は株価が上がりにくい可能性があります。
分析として補足します。金利が上がると、将来の利益を現在の価値に直す割引率(先の利益を今の価値に換算するときの率)が上がるため、成長期待の高い企業ほど株価の理論値が下がりやすくなります。10年債利回り5.3%は、預金に近い安全資産でも年5%超の利回りが得られる水準です。AI関連株が上昇を続けるには、利益の伸びが金利の上昇分を上回る必要があり、本日夜のTSMCの決算発表前後の値動きは、その試金石になります。
🇰🇷🇨🇳🇺🇸 サムスン営業利益107.4兆ウォンとCXMTのシェア10%:メモリーの価格決定力は続くか
サムスン電子は10月8日、2026年7~9月期の暫定業績(ガイダンス)を発表しました。連結売上高は約195兆ウォン、営業利益は約107.4兆ウォンです。前年同期(売上高86.06兆ウォン、営業利益12.17兆ウォン)と比べると、営業利益は約782.5%、売上高は約126.6%の増加です。4~6月期(売上高171.5兆ウォン、営業利益89.49兆ウォン)と比べても、売上は約13.7%、営業利益は約20.0%増えました。営業利益を売上で割った営業利益率は約55.1%です(Samsung 10/8、TrendForce 10/8)。韓国の規則で範囲での開示ができないため、数字は会社の予想範囲(売上194兆~196兆ウォン、営業利益107.3兆~107.5兆ウォン)の中央値です。確定した決算は10月29日に発表される予定です。市場予想(FnGuide集計の約106.9兆ウォン)はわずかに上回りました(SammyFans 10/6)。
好調の背景は、AI向けメモリーの需要と価格の上昇です。ReutersはHBM(複数のDRAMを積み重ね、AI計算に必要なデータを高速で送るメモリー)の出荷ビット数(容量で数えた出荷量)が、前四半期比で約50%増えたと伝えています。NVIDIAの次世代AI半導体向けのHBM4が貢献しました。サムスンとマイクロンは、メモリーの供給が少なくとも2028年まで逼迫(需要に供給が追いつかない状態)すると見ています(TrendForce 10/8)。サムスンは7月の説明会で、7~9月期のHBM4売上が前期の3倍以上になり、下期のHBM売上の6割を大きく超えるとの見通しを示していました(SBS Biz 7/30)。
一方で、競争相手も育っています。CNBCは10月13日、中国のCXMTの時価総額が3.46兆元(約5,200億ドル)で、テンセントの3.87兆元に近いと報じました。世界のDRAM市場でのシェアは約10%で、1年前の約4%から上がったとHSBCは推計しています。AppleがCXMTのDRAMを中国向け製品で試験しているとも伝えられました(CNBC 10/13)。4%から10%への上昇は、シェアが2.5倍になった計算です。同社は新しいメモリーセル構造(4F²)の進展を発表しており、世界のメモリー株が下落しました(Digital Today 10/13)。これは、10月12日、13日の記事で取り上げた動きの続報で、今回は市場シェアと株価の反応を補足しました。
市場の反応を数字で確認します。13日の米国市場では、半導体株が6営業日続落し、アプライドマテリアルズが6.7%安、DRAM指数が3.44%安となり、CXMTとの競争が要因とされました。韓国のKOSPIは5日間で約12%下落しています(Saxo 10/14、Yahoo Finance 10/14)。14日はKOSPIと日経平均が朝は上昇し、サムスンとSKハイニックスも2%超上がりましたが、終値ではKOSPIが0.4%安、日経平均が0.05%安でした(Saxo 10/14、WSJ 10/14(Yahoo Finance掲載))。
投資家の分析として整理します。サムスンの営業利益率約55%は、供給が足りない間はメモリーメーカーが高い価格を維持できることを示します。一方で、メモリー各社が設備投資を増やせば、ASMLのような装置メーカーには追い風ですが、数年後の供給増により価格が下がるリスクも生まれます。中国勢のシェア拡大は、その時期を早める可能性があります。確認すべき指標は、10月29日のサムスンの確定決算、DRAMの契約価格、CXMTのシェア推移、顧客の採用です。韓国の報道では、サムスンが低消費電力メモリーやファウンドリー(半導体の受託製造)を組み合わせてロボット向け半導体を狙い、SKハイニックスがNVIDIAと次世代メモリーを開発していると伝えています。ロボット1台に載るDRAM容量が19GBから39GBへ2倍以上になるとの予想も紹介されましたが、対象期間は抜粋では確認できません(Metro Seoul 10/12)。
関連銘柄は、マイクロン(MU・マイクロン・テクノロジー)、サンディスク(SNDK・サンディスク)、ウエスタンデジタル(WDC・ウエスタンデジタル)、キオクシア(285A・キオクシアホールディングス)です。SKハイニックスは米国上場株(SKHY・SKハイニックス)が報じられていますが、日本の証券会社での取扱いは確認が必要です。サムスン電子(005930)は韓国市場の銘柄、CXMTは中国本土の上海STAR市場の銘柄で、日本の個人投資家が通常の口座で購入できるかは別途確認が必要です。
🇺🇸🇺🇿🇷🇺🇯🇵 AIデータセンターの電力を原子力で:既存炉の増強から小型炉、宇宙まで
10月13日の記事では、米国の送電網運営会社PJMがデータセンター需要が2030年までに約30ギガワット増えると予測していることを伝えました(Reuters 10/13)。送電線だけでなく、電気そのものを増やす動きも続いています。報道によると、Googleは10月6日ごろ、Constellation Energyから20年間で890メガワット分の原子力電力を購入する契約を結びました。ただし、対象が将来建設される分か、既存炉の出力増強分かは、報道で表現が分かれています(Motley Fool 10/14、Prinsights 10/13)。890メガワットは、PJMの需要増加予測30ギガワットの約3.0%にあたります(本稿の試算)。
国の支援も出ています。米エネルギー省は、Vistraに対し、ペンシルベニア州とオハイオ州の原子炉を改修して出力を引き上げるため、約42億ドルの融資を行うと10月8日ごろに発表しました(ANS Nuclear Newswire 10/8)。既存の原子炉の出力を上げる方法は、新しい発電所を一から建てるより早く電力を増やせる可能性があります。ただし、設備の老朽化への対応、燃料の確保、規制当局の審査が必要です。
小型モジュール炉(SMR)は、工場で部品を作って現地で組み立てる小型の原子炉です。米原子力規制委員会(NRC)は、テネシー川流域開発公社(TVA)がクリーンリバー(テネシー州オークリッジ)に建設する、出力300メガワットのGE Vernova Hitachi製沸騰水型炉に建設許可を出しました。審査は14か月で、予定より4か月早く終わったとNRCは説明しています(NRC 9/末)。10月8日には、Blue EnergyがテキサスでBWRX-300を1基建てる段階的な建設許可申請の通知がNRCから公表され、同社は48か月以内の送電開始を目標としています(Prinsights 10/13)。これらは計画や許可の段階で、発電を始めた実績ではありません。
計画の規模が大きい例もあります。Valar Atomicsは、ユタ州の連邦政府管理地9,000エーカー超に、456基の原子炉とデータセンター、燃料製造施設を併設する「Project Beehive」を計画していると報じられています(ANS Nuclear Newswire 10/5)。海外では、ウズベキスタンで、小型炉だけで動く出力50メガワットのデータセンターを建てる構想があり、日本の企業が協力に合意したと10月12日に報じられました(社名は報道では確認できません)。関連する小型炉はロシアが建設しており、最初の小型炉の運転開始は2029年、大型の2基は2033年と2035年の予定です(Times of Central Asia 10/12)。また、NASAとエネルギー省は、宇宙での原子力電源と推進の協力枠組みを結びました(ANS Nuclear Newswire 10/13)。
課題は、計画の数と実績の差です。世界原子力協会の推計では、計画中または建設中のSMRは70基超ある一方、本格的な商業運転に入ったものはないとされます(Motley Fool 10/14)。建設許可から運転開始までの期間、建設費、燃料の調達、地域の合意が、収益の時期を左右します。関連銘柄は、Constellation Energy(CEG・コンステレーション・エナジー)、Vistra(VST・ビストラ)、GE Vernova(GEV・GEベルノバ)、Oklo(OKLO・オクロ)、NuScale Power(SMR・ニュースケール・パワー)です。OkloとNuScaleは、Googleの契約の当事者ではないと指摘されています(Motley Fool 10/14)。日本では、GE Vernova Hitachi Nuclear Energyに関わる日立製作所(6501・日立製作所)がテーマ関連ですが、今回の許可による受注額は確認できていません。Blue Energy、Valar Atomicsは非上場です。
投資家の分析として整理します。原子力関連の計画は、承認、資金、燃料、建設人材という四つの関門を順番に越える必要があり、発表から発電開始までの距離は数年から十年単位です。そのため、短期の株価材料としては「承認や融資の決定」のように日付が確定した出来事を、長期の材料としては「実際に電力を売る契約」を、分けて確認するのが現実的です。発表の数が増えても、契約が増えなければ売上にはつながりません。
🇯🇵🇺🇸🇩🇪 旭化成の単純ヘルペス新薬:買収から半年で米国承認(10月9日・米国時間)
米食品医薬品局(FDA)は10月9日(米国時間)、旭化成グループのAsahi Kasei Therapeuticsが申請した経口薬Hovilpri(一般名プリテリビル、100mg錠)を承認しました。対象は、アシクロビルなどの標準的な抗ウイルス薬が効かない、免疫が弱い成人の皮膚・粘膜の単純ヘルペス病変です。免疫が弱い状態とは、臓器移植、がん治療、HIV感染などで、体の防御力が下がっている状態を指します。同社は、作用の仕組みが新しい単純ヘルペス治療薬としては約30年ぶりの承認だと説明しています(Pharmacy Times 10/12、Fierce Pharma 10/10)。
承認の根拠は、免疫が弱い成人101人を対象にした第3相試験(承認申請のために、多くの患者で効果と安全性を確かめる段階)です。医師が選ぶ既存治療(静脈注射のホスカルネットなど)と比べました。28日目に病変が完全に治った割合は、Hovilpriが約63%、既存治療が34%でした。42日目の反応率は82%と42%、副作用の発現率は22%と54%でした(Pharmaceutical Technology 10/12)。試験は非盲検(患者も医師も治療内容を知っている方式)で、参加者は101人と大規模ではありません。従来の薬は、ウイルスの酵素で活性化されてから効くため、その酵素が変異すると効きにくくなります。Hovilpriはウイルスの遺伝子の複製に必要なたんぱく質を直接止める仕組みで、この点が新しさです(PharmTech 10/9)。
事業の面では、旭化成が4月にドイツのAiCurisを7億8,000万ユーロ(約9億2,000万ドル)で買収し、この薬を取得しました。会社は、AiCurisの売上が2030年度に5億米ドル規模になる見込みとしていました(旭化成 4/20)。この売上には、メルクが販売するPrevymis(移植患者の感染予防薬)のロイヤルティー収入も含まれます。Reutersの報道によれば、旭化成は米国の対象患者を約1万5,000人、ピーク時の年間売上を2030年代半ばから後半に4億ドル超と見込んでいます(Medical Dialogues 10/12)。単純計算では、買収額9億2,000万ドルは、ピーク売上4億ドルの約2.3年分です。また、4億ドルを1万5,000人で割ると、1人当たり年約2万6,700ドルです。ただしこれは全員が治療を受けると仮定した説明用の計算で、実際の価格や売上ではありません。
課題もあります。対象は、標準薬が効かない免疫不全の成人に限られ、市場は大きくありません。薬の飲み合わせにも注意が必要で、薬剤師の役割が重要だと指摘されています(Pharmacy Times 10/12)。発売は米国で年内の予定です(Pharmaceutical Technology 10/12)。承認が売上になるまでには、保険の償還、病院での採用、処方実績の積み上げが必要です。
関連銘柄は、旭化成(3407・旭化成)です。旭化成は化学、住宅、素材など複数の事業を持つため、この新薬が全社の利益に占める割合は、発売後の実績で確認する必要があります。メルク(MRK・メルク)は、AiCurisが開発した感染予防薬Prevymisを販売する企業です(Fierce Pharma 10/10)。AiCurisは旭化成の子会社となり、独立した上場銘柄ではありません。
投資家が確認したい指標
- 半導体製造装置:ASMLの2028年の生産能力拡大の具体策、2029~2030年の打診が正式な発注に変わるか、各社の受注残と納期を確認します。
- TSMC(10月15日15時):売上高(見通し446億~458億ドル)、売上総利益率(見通し65~67%)、2027年の設備投資とAI関連売上の見通しを確認します。
- 金利:10年債利回りが5.3%台で推移するか、10月15日のPPI、10月27~28日のFOMCを確認します。
- メモリー:10月29日のサムスンの確定決算、DRAM価格、CXMTのシェア(HSBC推計で約10%)を確認します。
- 電力:原子力の電力購入契約の対象と期間、NRCの許認可、着工から運転開始までの実績を確認します。
- 医薬:Hovilpriの米国発売時期、保険の償還、処方実績を確認します。
- 来週のイベント:NVIDIAは欧州で追加20億ドルの投資を来週に発表する予定と報じられています(Benzinga 10/14(Yahoo Finance掲載))。
10月14日の材料で新しいのは、AI投資の「量」が数年先まで見えてきた一方、「資金コスト」と「競争」が同じ日に意識されたことです。ASMLには2030年の発注打診があり、サムスンの営業利益率は約55%に達しました。しかし、長期金利は5.3%台にあり、中国のCXMTはシェアを約10%まで高めたとされます。投資家は「何が新しいか」に加え、「誰が費用を払い、誰が利益を得て、いつ実績に表れるか」を追う必要があります。装置メーカーの受注は数年先の売上に、メモリーの価格は数四半期先の利益に、原子力の契約は2030年前後の電力に、新薬の承認は発売後の処方実績に、それぞれ表れます。時間のずれを意識して、発表と実績を分けて確認することが大切です。
参考記事:CNBC 10/14、ASML 10/14、Quartz 10/14、MarketBeat 10/14、TSMC 10/15予定、24/7 Wall St 10/12、CNBC 10/14、Yahoo Finance 10/14、WSJ 10/14、InvestingLive 10/14、CNBC 10/13、Samsung 10/8、TrendForce 10/8、Saxo 10/14、Motley Fool 10/14、ANS Nuclear Newswire 10/13、NRC 9/末、Times of Central Asia 10/12、Pharmacy Times 10/12、Pharmaceutical Technology 10/12、旭化成 4/20