今回は、これまで取り上げる機会が少なかったドイツと英国を重点的に調べました。研究段階の医療技術、承認された医薬品、契約につながった産業技術を区別してお伝えします。
🇬🇧 血液から、がんの診断より何年も前の兆候を探す
英オックスフォード大学などの研究チームは、採血時にはがんと診断されていなかった491人の保存血液を調べました。血液中のDNAの「メチル化」(遺伝子の働きを調節する化学的な目印)を分析したところ、後に前立腺がんと診断された人では、診断の5~8年前にさかのぼってリスクを示す特徴が見つかりました。乳がんにも早期の兆候はありましたが、判別の精度は前立腺がんより低い結果でした。(オックスフォード大学 9/23)研究発表を読む
現段階の評価:これは将来の発症リスクを調べた研究で、一般向けの検診として使えることが証明されたわけではありません。特に乳がんについて研究者は、単独で広く検診に使うには精度が足りず、既存の検査を補う用途を想定しています。検査会社の製品化や大規模な追加検証が次の焦点です。
🇬🇧 喘息の「3種類を1本にまとめた吸入薬」、EUで承認
英国に本拠を置くアストラゼネカは、喘息治療薬「Trixeo」がEUで承認されたと発表しました。対象は、従来の2種類の薬を組み合わせた吸入治療でも十分に症状を抑えられない12歳以上の患者です。炎症を抑える薬など3種類を1本の吸入器にまとめています。承認の根拠となった第3相試験(多数の患者で効果と安全性を確かめる最終段階の試験)では、比較対象の2剤併用療法より肺機能が改善し、重い発作の年間発生率も低下しました。(アストラゼネカ 9/23)承認発表を読む
経済への影響:研究成果が販売可能な製品に進んだ点が重要です。ただし、今回の発表はEUでの喘息治療への承認であり、売上高の増加額はまだ示されていません。この薬は日常的に症状を抑えるためのもので、急な発作に使う救急用吸入薬の代わりにはなりません。関連銘柄はアストラゼネカ(米NASDAQ:AZN)です。
🇩🇪 ドイツのシーメンス、ベルギー鉄道の運行システムを11年間支援
シーメンスとベルギーの鉄道インフラ管理会社Infrabelは、列車の運行を管理するデジタルシステムを更新・保守する11年間の枠組み契約を結びました。契約額は約2億1,500万ユーロです。信号制御のソフトウエアと機器を継続的に更新し、サイバー攻撃への対策も強化します。(シーメンス 9/24)契約発表を読む
技術と投資の視点:列車そのものに加え、運行を支えるソフトウエアと長期保守が事業になる例です。約2億1,500万ユーロは11年間の契約総額であり、今年度の売上額ではありません。シーメンスはドイツ市場の上場企業で、米国・日本の主要取引所への上場銘柄としては掲載しません。
🇩🇪🇹🇼 半導体の設計ミスをAIで探して修正へ
ドイツのシーメンスと台湾のTSMCは、半導体設計で製造上の決まりに反する箇所をAIが見つけ、修正を支援する仕組みを発表しました。半導体が複雑になるほど、設計図が製造ルールを満たすか確認する作業が増えます。両社は、この作業の自動化で技術者の手作業を減らす狙いです。(シーメンス 9/23)技術発表を読む
現段階の評価:設計支援機能の発表です。開発期間が何%短くなるかなど、量産現場での効果を示す数値は、この発表からは確認できません。関連銘柄はTSMC(米NYSE:TSM)です。
今日の見方
実用化の進み具合では、EU承認を得た喘息薬と、契約額が明らかになった鉄道システムが先行しています。がんの血液検査とAIによる半導体設計支援は、将来の市場を広げる可能性がありますが、前者は検診としての精度、後者は実際の開発時間の短縮を引き続き確かめる必要があります。