9月23日 テクノロジー

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本日の焦点は、AI基盤の競争範囲が半導体だけでなく、海底通信、分散処理、データセンター冷却、医療・鉄道への実装へ広がったことです。

特に注目されるのは、毎秒1ペタビット級の海底ケーブル、最大50万基を接続できる中国製AI半導体、4台のMacによる1兆パラメータ級AIのローカル処理です。

🇯🇵🇺🇸🇫🇷 世界初の商用ペタビット級海底ケーブル「Petal」

Meta、NEC、住友電工は、米国とフランスを結ぶ約7,000kmの光海底ケーブル「Petal」を構築します。2029年の運用開始を予定しています。

通信容量は毎秒1ペタビット、すなわち毎秒1,000テラビットです。従来の海底ケーブルと比べ、同じ太さの光ファイバ内に2本の光信号経路を設けるマルチコアファイバを採用します。

  • 24ファイバペアに2コアファイバを使用し、実質48コアペアを構成
  • 既存の大西洋横断ケーブル「Anjana」の約2倍の伝送容量
  • 片側の陸上局からの給電だけでも運転できる設計
  • AIデータセンター間の大容量通信と障害時の耐久性を強化

AIモデルの大型化により、データセンター間で移動するデータ量も急増します。Petalは、日本企業の光ファイバ技術が世界のAIインフラに組み込まれる代表例です。

上場銘柄:Meta Platforms[NASDAQ:META]、NEC[東証:6701]、住友電気工業[東証:5802]

情報源:住友電工 9月22日

🇨🇳 Alibaba、最大50万基を接続できるAI半導体「Zhenwu V900」

Alibabaは、傘下の半導体部門T-Headが開発したAI半導体「Zhenwu V900」を発表しました。従来製品M890の約3倍の性能を持ち、最大50万基を接続した大規模クラスターを構築できるとしています。

  • 2027年第1四半期に量産・商用出荷を予定
  • 次世代AIモデルは5兆~10兆パラメータを計画
  • 現在の主力モデルQwen 3.8 Maxは2.4兆パラメータ
  • Alibaba Cloudのデータセンター能力を2032年までに20GW以上へ拡大

50万基接続は技術目標を含む発表であり、実際の歩留まり、消費電力、通信速度は今後の検証が必要です。それでも、米国製GPUに依存しない中国独自のAI基盤が、製品化段階に進んだ点は重要です。

上場銘柄:Alibaba Group[NYSE:BABA]

情報源:Reuters 9月22日

🇺🇸 Apple、4台のMacで1兆パラメータ級AIを処理

Appleは、新型Mac Studioを4台接続し、1兆パラメータ級のAIモデルを動かす実演を行いました。通常は大規模なデータセンターが必要になる処理を、一般の壁面コンセントから電力を取る小型システムで実行しました。

中核技術は、CPU、GPU、メモリーが同じ大容量メモリーを共有するユニファイドメモリーです。さらにThunderbolt経由のRDMA(複数コンピューターが互いのメモリーを高速利用する技術)で4台を接続します。

  • クラウドAIの利用料金を抑えられる可能性
  • 企業の機密情報を社内で処理しやすい
  • 通信障害時でも一定のAI処理を継続可能
  • 高性能構成は約2万ドルに達するため、初期費用は高い

企業向けPC市場におけるAppleのシェアは4.6%で、Windowsの91.3%とは大差があります。しかしながら、AI処理では消費電力と大容量メモリーが強みになり、企業向け市場へ食い込む余地があります。

上場銘柄:Apple[NASDAQ:AAPL]

情報源:Reuters 9月22日

🇰🇷 LG、2.5MW級のAIデータセンター液冷装置

LG Electronicsの2.5MW級CDUが、NVIDIAの「DSX Ready」認証を取得しました。CDUは、サーバーへ冷却液を循環させて熱を外へ運ぶ装置です。

2.5MWは、複数の高密度AIサーバーラックを列単位で冷却できる能力です。LGはすでに600kWと1MWの装置でも認証を取得しています。

  • 2026年上期のデータセンター冷却設備受注は約6,000億ウォン
  • 年間受注は1兆ウォン超が見込まれる
  • 受注から売上計上まで6~9カ月程度
  • AI半導体の発熱増加により、液冷設備の重要性が上昇

AI投資の恩恵は半導体メーカーだけに限定されません。電力設備、冷却装置、蓄電池、建築設備へ需要が波及していることを示しています。

LG ElectronicsとLG Energy Solutionは韓国上場企業で、現時点で日本または米国市場の主要な普通株上場はありません。

情報源:Seoul Economic Daily 9月22日

🇩🇪 欧州発・触れずに心拍、呼吸、酸素飽和度を測定

ドイツのフラウンホーファー応用光学・精密工学研究所は、身体に触れずに心拍数、呼吸数、血中酸素飽和度を測る小型センサー「goVISCAN」を9月23日に初公開します。

装置の大きさは10×7.5×2.5cmです。青色から近赤外線まで9種類の波長を使うカメラで、皮膚のわずかな明るさの変化から血流を読み取ります。

  • 測定距離は70cm~1.3m
  • 呼吸数の平均誤差は毎分1.3回
  • 心拍数の平均誤差は毎分2.8回
  • 酸素飽和度の平均誤差は3.8ポイント

病院、介護施設、遠隔医療、運転手の疲労監視などへの応用が期待されます。ただし、現段階の試験人数は12人であり、医療機器として利用するには臨床試験の拡大が必要です。

フラウンホーファー研究機構は非上場です。

情報源:Fraunhofer IOF 9月21日

🇪🇺 欧州鉄道、保守作業をデジタル化

ベルリンで始まったInnoTrans 2026では、3,100社以上が参加し、180件の世界初公開技術が展示されています。欧州ではAIを単なる分析用途から、鉄道の検査、運転支援、保守作業へ移す動きが鮮明です。

  • UER:鉄道車輪の残留応力を超音波で測定し、検査作業を約3分の1削減
  • PASAWIS:車軸、車輪、走行面を1台で検査し、1輪軸約15分で完了
  • LEADER Flow:前方列車の運行データを使い、試験で平均10%超の省エネ
  • 軌道整備:2本の枕木を同時処理する完全デジタル化ロボットを公開

欧州の特徴は、AIモデルそのものより、安全基準が厳しい交通・医療・産業設備へ技術を組み込む「実装力」にあります。

情報源:Fraunhofer IZFP 9月10日

情報源:InnoTrans 9月14日

技術別の定量評価

技術 経済波及 実現確度 本格普及時期
Petal海底ケーブル 5/5 4/5 2029年
Alibaba V900 5/5 3/5 2027年以降
Mac分散AI 4/5 4/5 現在~2年
LG液冷設備 4/5 5/5 現在
goVISCAN 3/5 2/5 3~7年
欧州鉄道保守DX 3/5 4/5 現在~3年

注:経済波及は市場規模、供給網、他産業への広がりを5段階で評価。実現確度は量産計画、認証、試験規模、運用開始時期を基にした独自評価です。

室井のテクノロジー視点

AI投資の重心は、演算性能だけを競う段階から、通信容量、冷却能力、電力効率、現場への組み込みを競う段階へ移りつつあります。

Petalでは日本企業が光ファイバと海底通信システムを担い、LGは冷却設備、欧州勢は医療・鉄道への実装で存在感を示しています。半導体そのものを製造しなくても、AI基盤のボトルネックを解消する企業には大きな商機があります。