9月18日 テクノロジー
本日の共通テーマは、「AI競争がチップ単体から、データセンター、光通信、ロボットまで含むシステム競争へ移っている」ことです。
🇺🇸 米国:AIデータセンターを「工場で作ってトラックで運ぶ」
米国のAIインフラ企業Crusoeが注目されています。同社は39億ドルを調達し、企業価値は309億ドルに達しました。
特に興味深いのが「Crusoe Spark」です。巨大なデータセンターを現地で一から建設するのではなく、モジュール型(工場で規格化して作る方式)のデータセンターを工場生産し、トラックで電力の確保できる場所へ運びます。
従来はAIデータセンターを建設するために、土地、電力、建物、冷却設備などを現地で整備する必要がありました。Sparkでは建設期間を「年単位から週単位」へ短縮することを狙っています。
Crusoeはすでに契約容量6GW超、稼働済み1GW、契約総額1,400億ドル超としています。AIの成長を制約する要因がGPU不足だけではなく、電力とデータセンター建設速度へ移っていることを象徴する動きです。(Crusoe 9/17、Wall Street Journal 9/17)
情報源:
Crusoe公式発表
Wall Street Journal報道
Crusoeは未上場企業です。ただし今回の資金調達にはNVIDIAも参加しています。NVIDIAはNASDAQ上場、証券コードはNVDAです。
🇨🇳 中国:Huawei、100万個のAIプロセッサをつなぐ構想
Huaweiは次世代AIチップ「Ascend 960DT」を2027年第1四半期に投入すると発表しました。従来計画より3四半期前倒しです。960PRも2027年第3四半期へ前倒しします。
さらに重要なのが「Peerium」という新しいコンピューティング・アーキテクチャ(コンピューター全体の設計方式)です。
Huaweiは中国製AIチップ1個の性能だけでNVIDIAと戦うのではなく、大量のプロセッサを高速接続して巨大な1台のコンピューターのように動かす方向へ進んでいます。最終的には最大100万プロセッサを接続する構想です。
Ascend 960のスーパーノードでは最大4,096個のAIプロセッサを接続します。すでに旧世代を使ったAscendスーパーノードは1,000システム以上導入され、Ascend 950システムも商用利用に入っています。
これは米国の輸出規制に対して、中国が「最先端チップ1個の性能」ではなく「大量接続によるシステム性能」で対抗しようとしている点で重要です。(Reuters 9/17、科創板日報 9/17)
情報源:
Reuters報道
科創板日報・Huawei Connect 2026報道
Huaweiは非上場企業です。一方、最大の競争相手であるNVIDIAはNASDAQ上場、証券コードはNVDAです。
🇰🇷 韓国:料理ロボットを試作から海外認証まで一気に支援
韓国政府は9月17日、浦項に国内初の「食品ロボット・フードテック研究支援センター」を開設しました。
対象となるのは、炒める、揚げる、麺を調理する、飲料を作る、配膳する、衛生管理するといった作業です。AIとロボットを組み合わせ、人手不足が深刻な飲食・食品産業の自動化を狙います。
特徴は単なる研究施設ではないことです。17種類の先端設備、試作品を実際に試す共有キッチン、スタートアップ用施設を整備し、試作→実証→製品化→海外認証までを一体化します。
さらに米国の衛生・安全認証NSFに対応する試験設備も導入します。韓国は2030年までに食品、3Dフードプリンティング、スマート製造、包装、流通など10分野へ研究支援拠点を広げる計画です。
自動車工場で進んだロボット化が、次に厨房や食品工場へ広がる可能性があります。高齢化と人手不足が進む日本にも直接関係する技術です。(電子新聞 9/17、韓国農林畜産食品部 9/17)
🇹🇼 台湾:AIデータセンターの「銅線の壁」を光で突破
台湾の工業技術研究院(ITRI)が、AIデータセンター向けの3.2Tシリコンフォトニクス光エンジンを公開しました。
シリコンフォトニクスとは、半導体技術を使って電気信号の代わりに光で大量のデータを送る技術です。
AIチップの計算能力が上がるほど、チップ同士でデータを交換する通信部分がボトルネック(全体の性能を制限する部分)になります。そこで銅配線を光通信へ置き換えます。
ITRIの3.2T光エンジンは、従来の1.6Tから伝送能力を2倍にし、毎秒約400GBを送れます。台湾メディアは、NVIDIAも3.2T規格へ向かっており、ITRIの開発水準は国際的な先端規格と並んでいると報じています。
すでに台湾国内外の20社以上が設計、製造、検査、パッケージングなどの供給網に参加しています。(経済日報 9/18)
情報源:
台湾・経済日報「工研院3.2T光引擎」
台湾の強みはTSMCだけではありません。AIサーバー、先端パッケージ、光通信まで一体化した巨大なAIインフラ産業へ発展する可能性があります。
🇯🇵 日本:国産フィジカルAIロボット7陣営の試作機が登場
AIロボット協会(AIRoA)が、国産汎用ロボット開発コンペティションに参加する7陣営の試作機を公開しました。
参加しているのはTHK、ugo、不二越、Keigan、Enacitic、Emplifi、HatsuMuvです。中心となるのは、左右2本の腕を持ち、自分で移動できる「双腕モバイルマニピュレータ」です。
目的は単に人型ロボットを作ることではありません。
フィジカルAI(現実世界を認識し、考え、実際に体を動かすAI)を学習させるには、人間が物を持つ、運ぶ、組み立てるといった大量の実世界データが必要です。そのデータを集めるためのロボットそのものを国産化します。
AIRoAは、中国製ロボットへの依存が進めば、地政学的な問題によって機材を入手できなくなった場合、日本のフィジカルAI開発まで止まる可能性を指摘しています。
試作機→改良機→量産準備という段階を進み、基準を満たした機体はAI学習用データ収集ロボットとして採用される予定です。(MONOist 9/17、AIRoA)
情報源:
MONOist「国産汎用ロボット7社の試作機」
AIRoA 国産汎用ロボット開発コンペティション
上場企業では、6481 THK、6474 不二越が東京証券取引所で購入できます。
本日の投資家視点
今日の5件を並べると、AI投資の対象が変化していることが見えてきます。
第1段階はGPUなど「計算するチップ」でした。しかし現在は、チップを大量につなぐ高速ネットワーク、光通信、電力、データセンター、そしてAIを現実世界で働かせるロボットへ投資領域が拡大しています。
Huaweiの「100万プロセッサ」、台湾の「3.2T光通信」、Crusoeの「運べるAIデータセンター」、日本と韓国の「フィジカルAI」は、別々のニュースに見えて実際には一本につながっています。
すなわち、これからのAI競争は「最も高性能な半導体を作った企業」だけではなく、「計算・通信・電力・ロボットを最も効率よくシステム化した国と企業」の競争になる可能性があります。
本日の注目順位
経済への波及可能性を「市場規模」「実用化までの距離」「産業への波及範囲」で評価すると、私なら①台湾3.2Tシリコンフォトニクス、②Huawei Peerium+Ascend 960、③日本の国産フィジカルAIロボットの順に注目します。
特に台湾の3.2T技術は、AIチップそのものではなく、その次にボトルネックとなる「チップ間通信」を狙っています。NVIDIA、TSMC、光通信、先端パッケージという巨大市場が交差する場所だからです。
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