9月22日 地政学的リスク

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調査時点:2026年9月22日 午前6時(日本時間)

9月22日の最大の焦点は、中東から原油が輸出されている一方、船舶不足と迂回輸送によって輸送費が急上昇していることです。加えて、ロシア・ウクライナのエネルギー施設攻撃、中国軍最高幹部の排除、朝鮮半島の偶発的衝突リスクが同時進行しています。

🇸🇦🇮🇷🇾🇪 中東:原油は流れているが、輸送能力が限界に接近

ホルムズ海峡を通過した商品輸送船は、9月19~20日の週末に17隻にとどまり、前週末の37隻から約54%減少しました。戦争前には1日平均約125隻が通過していたため、通常の輸送状態には戻っていません。

一方、サウジアラビアはフーシ派による東西パイプライン攻撃を受け、紅海側のヤンブー港からホルムズ海峡経由へ原油輸送を戻しています。サウジ産原油のホルムズ海峡経由輸送量は、直近6日間で日量約290万バレルとなり、8月の日量約70万バレルから約4倍に増えました。

供給量だけを見ると危機は緩和したように見えます。しかしながら、オマーン沖で行う洋上積み替えは9月に日量約250万バレルへ増加し、8月の日量約140万バレルから約79%増えました。大型タンカーの運賃は原油1バレル当たり30ドルを超えています。

すなわち、現在の問題は「原油がない」ことより、「高い費用を払わなければ原油を運べない」ことへ移っています。これは原油価格が下がっても、ガソリン、軽油、航空燃料、電力料金が下がりにくい構造を意味します。

  • 米国への影響:燃料価格上昇、物流費上昇、インフレ長期化、FRBの利下げ余地縮小
  • 日本への影響:貿易赤字拡大、円安圧力、電力・都市ガス料金上昇
  • プラス影響:エネルギー、海運、タンカー関連
  • マイナス影響:航空、陸運、化学、紙・パルプ、外食、小売
  • 関連銘柄:1605 INPEX、5020 ENEOSホールディングス、9101 日本郵船、9104 商船三井、9107 川崎汽船、9201 日本航空、9202 ANAホールディングス

(Reuters 9/21)
ホルムズ海峡の船舶通航状況

(Reuters 9/21)
洋上積み替えと輸送費上昇

(Reuters 9/21)
サウジアラビアの輸出回復

🇺🇦🇷🇺 ロシア・ウクライナ:エネルギー施設攻撃が首都圏へ拡大

ウクライナは週末、ロシア全土に1,000機を超える規模のドローン攻撃を実施し、モスクワ製油所などを攻撃しました。ロシア側は、モスクワ方面だけで約450機を迎撃したと主張しています。

モスクワ製油所の2024年処理量は年間約1,160万トンです。原油換算では日量約23万バレルに相当し、首都圏への燃料供給を担う重要施設です。操業停止が長引けば、ロシア国内のガソリンと軽油不足が深刻化します。

ロシア軍もザポリージャ、キーウ、ハルキウなどへの攻撃を継続しています。さらに、モルドバとルーマニアではドローンの領空侵入が報告されており、NATO加盟国を巻き込む偶発的衝突の危険が上昇しています。

ロシア下院選挙では与党「統一ロシア」が記録的な355議席を獲得しました。政権基盤が維持されたことで、短期的に戦争政策が転換する可能性は低いと判断します。

  • 市場への影響:欧州天然ガス、軽油、穀物価格の上昇リスク
  • プラス影響:防衛、サイバーセキュリティ、エネルギー
  • マイナス影響:欧州製造業、航空、化学、物流
  • 関連銘柄:7011 三菱重工業、7012 川崎重工業、7013 IHI、RTX、LMT、NOC

(Reuters 9/20)
モスクワ製油所へのドローン攻撃

(AP 9/21)
ロシアの報復攻撃と周辺国への波及

(Reuters 9/21)
ロシア下院選挙の結果

🇨🇳 中国:軍最高幹部2人を排除、指揮系統に不透明感

中国共産党は、中央軍事委員会副主席だった張又侠氏と、統合参謀部参謀長だった劉振立氏を党と軍から除名しました。両氏には汚職だけでなく、「派閥を形成し、党に不忠実だった」との異例の疑いが示されています。

中央軍事委員会は本来7人で構成されていましたが、相次ぐ失脚によって現役メンバーは習近平主席を含む2人だけとなりました。これは習近平氏への権力集中を強める一方、台湾有事を含む大規模作戦の意思決定と実行能力に不透明感を生じさせます。

9月24日には米中首脳会談が予定されています。中国は台湾への武器売却見直しを求め、米国側は貿易、AI、航空機、農産物を交渉材料とする可能性があります。台湾問題が経済交渉の交換条件に使われるかが最大の注目点です。

  • 市場への影響:米中関税、半導体規制、重要鉱物の輸出規制が変動する可能性
  • 影響セクター:半導体製造装置、電子部品、防衛、航空機、農業
  • 関連銘柄:2330 台湾積体電路製造、BA ボーイング、8035 東京エレクトロン、6857 アドバンテスト、6146 ディスコ

(Reuters 9/21)
中国軍最高幹部2人の除名

(Reuters 9/21)
日米韓と台湾海峡を巡る共同声明

(Reuters 9/21)
米中首脳会談の主要論点

🇰🇵🇰🇷 朝鮮半島:ミサイル発射に続き、DMZで爆発

韓国と北朝鮮の軍事境界線に近い非武装地帯で爆発が発生し、韓国軍将校3人が負傷しました。原因は確定していませんが、北朝鮮側が敷設した地雷の可能性を含めて調査されています。

北朝鮮は9月20日、元山付近から短距離弾道ミサイル2発を発射しました。飛行距離はそれぞれ約450キロと600キロ超で、いずれも日本の排他的経済水域外へ落下しました。

現時点では計画的な攻撃よりも事故の可能性が高いとみられます。しかしながら、北朝鮮軍が国境地帯へ地雷と障害物を増設する中、韓国軍との接触が誤射や報復へ発展する危険があります。

  • 日本への直接的影響:ミサイル警戒、防衛費増加、円相場の一時的変動
  • 影響セクター:防衛、造船、レーダー、サイバーセキュリティ
  • 関連銘柄:7011 三菱重工業、7012 川崎重工業、7013 IHI、6503 三菱電機

(Reuters 9/20)
北朝鮮の弾道ミサイル発射

(AP 9/21)
DMZ内の爆発と韓国軍将校の負傷

リスク評価

リスク 発生・継続確率 市場への影響 注視点
中東の輸送費高騰 5/5 5/5 タンカー運賃、ホルムズ通航数
露・ウクライナの製油所攻撃 4/5 4/5 軽油供給、NATO領空侵入
米中首脳会談と台湾問題 4/5 5/5 台湾武器売却、半導体規制
朝鮮半島の偶発的衝突 3/5 4/5 DMZ調査結果、追加発射

注:5段階評価は、発生・継続の可能性と、米国・日本の株式、金利、為替、資源価格への波及度を基にした独自評価です。

室井の地政学リスク視点

原油価格が1日下落しただけで、中東リスクが解消したとは判断できません。現在は原油の生産量よりも、海峡を通過する船舶数、洋上積み替え量、タンカー運賃が重要です。輸送費が1バレル当たり30ドルを超える状態が続けば、企業物価と消費者物価に時間差で転嫁されます。

中国軍幹部の排除は、直ちに台湾侵攻が近づいたことを示すものではありません。しかしながら、軍の指揮系統が習近平主席へ一段と集中したため、政策変更が少人数の判断で決まる危険は高まりました。