9月17日 地政学的リスク
観測時点:2026年9月17日午前6時(日本時間)
本日の最大リスクは、ホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡という二つの海上輸送路が同時に不安定化していることです。
原油・LNG価格の上昇が長期化すれば、米国ではインフレと長期金利、日本では輸入物価、貿易収支、円相場に影響します。日本経済への影響は米国より大きいと判断します。
1.中東:ホルムズ海峡の通航船が約8割減少
危険度:5段階中5
9月16日に確認されたホルムズ海峡の通航船は4隻にとどまり、直近10日平均の18隻から77.8%減少しました。確認された船舶には大型原油タンカーやLNG船が含まれておらず、エネルギー輸送の停滞が続いています。
船舶が位置情報を切って航行している可能性はありますが、保険料上昇や攻撃リスクを避け、船会社が航行を控えている状況は明らかです。
ホルムズ海峡は、平時には世界の原油・石油製品輸送の約2割を担います。したがって、通航量の低迷が数週間続けば、実際の供給不足だけでなく、備蓄積み増しによる追加需要も発生します。
(Reuters 9/16)
Strait of Hormuz ship crossings remain in single digits
2.フーシ派が紅海側でも攻勢、サウジの輸送路を圧迫
危険度:5段階中5
サウジアラビア軍は、フーシ派が発射した無人機をメッカ南方で迎撃しました。フーシ派はメッカを狙ったことを否定していますが、サウジ国内では広範囲に警戒態勢が敷かれています。
より重要なのは、フーシ派がイエメン西岸と周辺島嶼で支配地域を広げ、バブ・エル・マンデブ海峡への影響力を強めていることです。
サウジアラビアは、ホルムズ海峡を避けるため紅海側の港へ原油を送っています。しかしながら、その代替輸送路までフーシ派の無人機やミサイルの射程に入れば、サウジの輸出余力は一段と低下します。
すなわち、ホルムズ海峡と紅海ルートを使い分ける従来のリスク分散が機能しにくくなっています。
(Reuters 9/16)
Saudi-led coalition destroys Houthi drone south of Mecca
(Reuters 9/16)
Houthi offensive leaves Saudi Arabia exposed
3.中国が仲介外交、米国とイランに協議再開を要求
危険度:5段階中4
中国の王毅外相はイランのアラグチ外相と北京で会談し、米国とイランに対して、6月の暫定合意へ戻り、実質的な協議を再開するよう求めました。
中国はイラン産原油の主要輸入国です。したがって、中国の仲介は純粋な外交活動だけでなく、自国のエネルギー安全保障を守る目的があります。
中国がイランへの経済的影響力を使ってホルムズ海峡の安全航行を回復させられるかが焦点です。現段階では外交の糸口が残っているものの、具体的な停戦や航行保証には至っていません。
(Reuters 9/16)
China urges Iran and US to revive talks
4.ロシアがウクライナの鉄道網への攻撃を拡大
危険度:5段階中4
ロシア軍の無人機が、ウクライナ南部の旅客バスと旅客列車を攻撃し、バスでは5人が死亡、7人が負傷しました。列車の乗客・乗員168人は避難し、人的被害はありませんでした。
2026年に攻撃を受けたウクライナの鉄道関連施設は1,700件に達しました。2025年の1,206件から約41%増加、2024年の842件と比べると約2倍です。
- 旅客車両:120両
- 機関車:304両
- 駅:43カ所
攻撃対象が前線の軍事施設から鉄道、駅、機関車へ広がっていることは、ロシアがウクライナの兵站だけでなく、避難、通勤、経済活動を同時に弱体化させようとしている可能性を示します。
ポーランド国境に近い鉄道路線への攻撃も確認されており、誤爆や越境攻撃によってNATO加盟国を巻き込む危険が高まっています。
(Reuters 9/16)
Russian drones hit Ukrainian bus and train
5.EUが「欧州安全保障理事会」を提案
危険度:5段階中3
欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、EU、英国、ノルウェー、ウクライナ、カナダなどで構成する「欧州安全保障理事会」の創設を提案しました。
さらに、破壊工作、放火、サイバー攻撃、無人機侵入など、通常戦争には至らない攻撃へ共同対処する緊急手順の整備を求めています。
これは、米国の関与が不透明になるなかで、欧州が独自の安全保障能力を高めようとする動きです。一方、NATOとの役割重複や、各国間の意思決定の遅さは課題として残ります。
中長期的には、欧州の防空システム、無人機対策、弾薬、衛星通信への投資拡大につながる可能性があります。
(Reuters 9/16)
EU backs European Security Council proposal
6.中国が日本を念頭に「軍国主義」をけん制
危険度:5段階中3
中国の董軍国防相は北京香山フォーラムで、「覇権主義、軍国主義、歴史修正主義」に反対すると発言しました。国名は挙げませんでしたが、日本を念頭に置いた発言と受け止められています。
中国は、台湾有事が日本の存立に関わる可能性を示した日本政府の姿勢に反発しています。今回の発言は直ちに軍事衝突を意味しませんが、中国が台湾問題と歴史問題を結びつけ、日本への外交的圧力を強める流れです。
米中首脳会談を前に発言が抑制的だった点から、当面は軍事行動よりも外交・情報戦を重視するとみられます。
(Reuters 9/16)
China defence minister warns against historical regression
7.米中の宇宙軍拡競争が表面化
危険度:5段階中3
米空軍長官が、敵対的な行動から米国の衛星を守るため、軌道上に宇宙制御兵器を配備していると認めました。中国外務省は、宇宙での軍拡競争を引き起こすとして反発しています。
人工衛星は、通信、測位、金融決済、気象観測、ミサイル警戒、無人機運用を支える基盤です。宇宙空間で衛星妨害や破壊が起きれば、軍事分野だけでなく、民間通信や物流にも被害が及びます。
日本も米国の衛星測位・通信網への依存度が高く、宇宙領域の緊張は日本の経済安全保障に直結します。
(Reuters 9/16)
China warns US space weapons could fuel arms race
8.朝鮮半島:重大な軍事的変化は確認されず
過去24時間に、北朝鮮による新たな弾道ミサイル発射や核実験など、日本へ直接影響する重大な軍事的変化は確認されていません。
韓国の裁判所は、北朝鮮に対して、2020年に爆破した南北共同連絡事務所の損害として446億ウォンの支払いを命じました。ただし、北朝鮮が判決に応じる可能性は低く、安全保障上の直接的な変化は限定的です。
(Reuters 9/16)
South Korean court orders North Korea to pay damages
米国株式市場への影響
最大の経路は、原油高からインフレ、長期金利上昇へつながる流れです。原油価格が100ドル前後で長期化すれば、FRBの利下げ余地が狭まり、PER(株価収益率)の高い大型ハイテク株には逆風となります。
上昇要因となりやすい銘柄
- XOM エクソン・モービル
- CVX シェブロン
- SLB SLB
- LMT ロッキード・マーチン
- RTX RTX
- NOC ノースロップ・グラマン
下落要因となりやすい銘柄
- DAL デルタ航空
- UAL ユナイテッド航空
- AAL アメリカン航空
- CCL カーニバル
影響を受けるセクター
- エネルギー:プラス
- 防衛・宇宙:プラス
- 航空・旅行:マイナス
- 化学・運輸:燃料費上昇がマイナス
- 大型ハイテク:金利上昇を通じてマイナス
- 市場全体:中東情勢が一段と悪化すればマイナス
日本経済・日本株への影響
日本は原油の約9割を中東に依存しているため、米国よりも影響が大きくなります。
原油・LNG価格と海上保険料が同時に上昇すると、貿易赤字の拡大、円安、電気・ガス料金の上昇、企業利益の圧迫という経路で波及します。
プラスの可能性がある銘柄
- 1605 INPEX
- 5020 ENEOSホールディングス
- 7011 三菱重工業
- 7012 川崎重工業
- 7013 IHI
- 6701 NEC
マイナスの可能性がある銘柄
- 9201 日本航空
- 9202 ANAホールディングス
- 電力・ガスセクター
- 化学セクター
- 陸運・空運セクター
海運株は、運賃上昇が収益を押し上げる一方、燃料費、保険料、航路変更費用が増えるため、一方向ではありません。
- 9101 日本郵船
- 9104 商船三井
- 9107 川崎汽船
総合判断
| リスク | 危険度 | 市場への主な経路 |
|---|---|---|
| ホルムズ海峡・紅海 | 5 | 原油、LNG、インフレ、金利、海運 |
| ロシア・ウクライナ | 4 | 鉄道物流、防衛費、欧州景気 |
| 中国・日本・台湾 | 3 | 半導体、輸出、安全保障 |
| 米中宇宙軍拡 | 3 | 衛星、防衛、通信インフラ |
| 朝鮮半島 | 2 | 現時点の直接的影響は限定的 |
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